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39・怪人、着せ替えられる。

05着装。

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「……! 来るぞ、坊や着装ちゃくそうしろ!」

 余裕こいて城の掃除チェックをしていたところにスペアシェリーが突然号令ごうれいを出す。

 やるのか……、いや仕方ない。やるしかない。

「…………はあ、……解放ッ!」

 僕は腕輪を頭上にかかげて、習った通りに声を上げる。

 腕輪は光り輝き、よろいの形に変形していく。

「とおうっ!」

 僕もけ声を上げてその光に飛び込むように飛び上がると、四肢ししどうや頭によろいが次々に張り付いてくる。

 着地と同時に最後に残った仮面を付けて。

着装ちゃくそうッ! クォーターノアッ!! 燃える探究心で、つぶしてくだくぜ!」

 僕は言われた通りの文言と、ともに教えられた通りのポーズをとる。

 意味不明だがこうしないと腕輪の状態からよろいを着れないというので覚えた。

「はっはっは、まさか信じるとは。可愛いじゃないか坊や」

 スペアシェリーの言葉に僕はひざからくずれる。

 情けなさに涙が出る……、畜生、何やってんだ僕は……。
 そこに、怪しげな一団が突然姿を現す。
 あれが魔王軍ってやからか……、確かに異質いしつでヤバそうだ。

「……死にさらせやあああああぁぁぁああッ‼」

 ダグラスの雄叫おたけびと共に戦いが始まった。

 話の通りに、各々おのおのの相手に対峙たいじしてバシバシやり合い始める。

 向こうは小娘が一人、こちらは鎧男おれが一人残る。
 あれが例のマリシュカ・ネビル……ではないだろう。剣も持ってないし。

「……なんだ、じゃあ僕は要らないじゃん。よし、帰るか」

 僕はそう言って、きびすを返そうとする。

「貴様は中だ大馬鹿者ぉ――――――っ‼」

 途端とたんにスペアシェリーがそう叫びながら僕を城の窓へとぶん投げる。

「どっぉああああああああぁぁぁあああああああ――――っ⁉」

 情けない叫び声と共に、とんでもない加速度を体感しながら僕は城の中に突っ込み何かに衝突して止まる。

「……痛っ……くはねえけど……。無茶苦茶だ、あの馬鹿人形女……、よろいがすげえからって人をぶん投げるか普通……? 僕は普通の人間なんだぞ……」

 ぶつくさ文句をれて身体を起こすと、驚愕きょうがくする見慣れた顔が並んでいた。

「あ? マーク様と……アビィ嬢に馬鹿ウィーバーか⁉ なんでこんなところにいんだ!」

 僕は驚きながら仮面を外して、ここに居るはずのない二人に問う。

 馬鹿のウィーバーは顔色を変えなかったが、マーク様とアビィ嬢は驚いた顔を向ける。

 いや、今はそれどころじゃねえ。僕は勇者の剣とやらをマリシュカとかいう女から取り上げてダグラスに渡さなくてはならんのだ。

「あ、マリシュカって女知らないか? 多分剣を持ってると思うんだけど――」

 と、二人に聞こうとしたところで。

「「後ろ‼」」

 マーク様とアビィ嬢がそろって声を上げて振り向いた瞬間、目の前にやいばが光る。

 ギリギリで殴ってはじくが、手がしびれる。
 なんだ畜生、あっぶねえ……。

「びっくり! なにそれ! おしえて? て? てててててー!」

 と、目の前で支離滅裂しりめつれつな言葉を発するのは。

 異常なほどに目をキラキラと輝かせて、馬鹿でかい刀剣とうけんを軽々と持つ、女。

 ああ間違いない、これがマリシュカ・ネビルだ。

 僕は仮面をかぶり直し。

「すまねえ、うらみはねえけど……、しばらくおかゆしか食えねえ程度ていどに畳ませてもらうぞ」

 そう言って、構える。

「んんん~? んー! お~か~ゆ~は~………………、あんまり嫌いっ!」

 そうマリシュカとやらが言った、一瞬。

 剣がうねって乱れるように振り回された。
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