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37・お嬢様、説き伏せる。
06それでも。
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さらに言えばこれは、終戦後に待つエンデスヘルツ公爵の処遇に大きく関わる。
魔王打倒に兵器開発という貢献を残せば、武装決起を目論んだことを不問には出来ないにしろ。かなり情状酌量の余地は生まれるだろう。
頭の良いエンデスヘルツ公爵ならこの意図を汲み、この提案に乗ってくるだろう。
なんせ愚かな貴族たちを淘汰する一歩目に繋がり、自身の地位も守られる。
終戦後に中立派から返金を求められても、その時徴収を行った王はもう居ない。新体制は王妃に聖女を据えている。
無理を通して信仰を敵に回す馬鹿は、流石に居ないだろう。
ここらが妥協点。
そして私は、バセット家が堕ちても教会派トップとの繋がりやこの会談での立ち振る舞いにより。
爵位を得たいと考えている。
アビゲイル・バセット男爵……、いやアビゲイル・ウィーバー男爵として爵位を得られれば私は、幸せを磐石にすることが叶う。
全てを踏み台に幸せになる。
魔王だろうが国王だろうが、使えるものはなんでも使う。
私は初めからそれで出来ている。
さて、ここからは対魔王戦に向けての具体的な――。
「ふふふ……あっはっはっはっはっはっ!」
場の雰囲気を切り裂くように、大きな高笑いが響き渡る。
笑い声の発信源は、エンデスヘルツ公爵であった。
「くっ、ふふ……、いや、すまない。素晴らしい、素晴らしいよアビゲイル・バセット。君の狡猾さ……、いや聡明さは、私の理想的なものだ。ジョーもそうだがやはり異世界の民というの基本的に我々の先にいるのだな。素晴らしいよ」
ゆっくりと立ち上がりながら、エンデスヘルツ公爵はそう述べる。
どうやら私の提案が大層お気に召したらしいけど……。
「それが耐えられないんだよ」
空気を一気に凍らせるような冷たい声で、エンデスヘルツ公爵はそう言った。
「私は、我々は愚かすぎる。このメルバリアは二千年の歴史を重ねて何を成した? ぬるま湯に停滞し、土地の豊かさと一部の才覚のある人間に甘えて人口だけが膨れ上がり、無能が無能を育て、繰り返す」
このエンデスヘルツ公爵の語りで、私は気づく。
そうか、私の思う愚かな貴族とエンデスヘルツ公爵の想定する愚かな貴族は違うんだ。
ずっと、そうだ、ずっと言っていた。
エンデスヘルツ公爵は我々と。
自身を含めて、愚かなんだと確かに言っていた。
「ジョーの居た世界は、月に旗を立てることすら出来たという。信じられるか? 一体なんの為に? 同じ二千年の間にそれだけの文明が発展しているんだ。クーロフォードが鉱山を開拓し、潤沢な資源があってもまだ我々は月を見上げるのみだ」
続けてエンデスヘルツ公爵はそう語る。
そうか、これが理由。
ワタナベ男爵の知恵が起点だとは思っていたけれども、この民主化を強行する起点は異世界、渡辺丈や高田まりえが生まれ育ったあの世界との比較。
知ってしまったんだ。
それが全ての始まりなんだ。
「私は耐えられない、エンデスヘルツが故に耐えられないのだ。これだけは誰にも負けないものを持てない私は、この世界が耐えられない」
噛み締めるように、言う。
これだけは誰にも負けないというものを持て。
確かエンデスヘルツ家の家訓だ。
キャロライン嬢も、その言葉を体現して生きている。
「アビゲイル君、君の提案は素晴らしい。聖女の爆弾は無くなり、教会派の支援も断たれ、もはや君の筋書き通りだ……。それでも――」
エンデスヘルツ公爵は言いながら、懐からゆっくりと拳銃を抜き。
「私は負けられんのだよ」
そう言って、王妃様へと銃口を向ける。
魔王打倒に兵器開発という貢献を残せば、武装決起を目論んだことを不問には出来ないにしろ。かなり情状酌量の余地は生まれるだろう。
頭の良いエンデスヘルツ公爵ならこの意図を汲み、この提案に乗ってくるだろう。
なんせ愚かな貴族たちを淘汰する一歩目に繋がり、自身の地位も守られる。
終戦後に中立派から返金を求められても、その時徴収を行った王はもう居ない。新体制は王妃に聖女を据えている。
無理を通して信仰を敵に回す馬鹿は、流石に居ないだろう。
ここらが妥協点。
そして私は、バセット家が堕ちても教会派トップとの繋がりやこの会談での立ち振る舞いにより。
爵位を得たいと考えている。
アビゲイル・バセット男爵……、いやアビゲイル・ウィーバー男爵として爵位を得られれば私は、幸せを磐石にすることが叶う。
全てを踏み台に幸せになる。
魔王だろうが国王だろうが、使えるものはなんでも使う。
私は初めからそれで出来ている。
さて、ここからは対魔王戦に向けての具体的な――。
「ふふふ……あっはっはっはっはっはっ!」
場の雰囲気を切り裂くように、大きな高笑いが響き渡る。
笑い声の発信源は、エンデスヘルツ公爵であった。
「くっ、ふふ……、いや、すまない。素晴らしい、素晴らしいよアビゲイル・バセット。君の狡猾さ……、いや聡明さは、私の理想的なものだ。ジョーもそうだがやはり異世界の民というの基本的に我々の先にいるのだな。素晴らしいよ」
ゆっくりと立ち上がりながら、エンデスヘルツ公爵はそう述べる。
どうやら私の提案が大層お気に召したらしいけど……。
「それが耐えられないんだよ」
空気を一気に凍らせるような冷たい声で、エンデスヘルツ公爵はそう言った。
「私は、我々は愚かすぎる。このメルバリアは二千年の歴史を重ねて何を成した? ぬるま湯に停滞し、土地の豊かさと一部の才覚のある人間に甘えて人口だけが膨れ上がり、無能が無能を育て、繰り返す」
このエンデスヘルツ公爵の語りで、私は気づく。
そうか、私の思う愚かな貴族とエンデスヘルツ公爵の想定する愚かな貴族は違うんだ。
ずっと、そうだ、ずっと言っていた。
エンデスヘルツ公爵は我々と。
自身を含めて、愚かなんだと確かに言っていた。
「ジョーの居た世界は、月に旗を立てることすら出来たという。信じられるか? 一体なんの為に? 同じ二千年の間にそれだけの文明が発展しているんだ。クーロフォードが鉱山を開拓し、潤沢な資源があってもまだ我々は月を見上げるのみだ」
続けてエンデスヘルツ公爵はそう語る。
そうか、これが理由。
ワタナベ男爵の知恵が起点だとは思っていたけれども、この民主化を強行する起点は異世界、渡辺丈や高田まりえが生まれ育ったあの世界との比較。
知ってしまったんだ。
それが全ての始まりなんだ。
「私は耐えられない、エンデスヘルツが故に耐えられないのだ。これだけは誰にも負けないものを持てない私は、この世界が耐えられない」
噛み締めるように、言う。
これだけは誰にも負けないというものを持て。
確かエンデスヘルツ家の家訓だ。
キャロライン嬢も、その言葉を体現して生きている。
「アビゲイル君、君の提案は素晴らしい。聖女の爆弾は無くなり、教会派の支援も断たれ、もはや君の筋書き通りだ……。それでも――」
エンデスヘルツ公爵は言いながら、懐からゆっくりと拳銃を抜き。
「私は負けられんのだよ」
そう言って、王妃様へと銃口を向ける。
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