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39・怪人、着せ替えられる。
01与太話。
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僕、アーチボルト・エドワードはただいま自称勇者と自称自動人形と通称八極令嬢に攫われているクーロフォード伯爵家令嬢のグロリア嬢に仕える執事だ。
と、状況説明をさせてもらったがなんのこっちゃわからないとは思う。でも安心して欲しい。
僕もなんこっちゃわかっていない。
突然クーロフォード家の屋敷に押し入ってきたキャロラインの姐さんと勇者を騙るダグラスとかいう男と勝手に裏口から侵入してきた自動人形だと言うスペアシェリーって女と一悶着あった。
ぶっ飛ばして追っ払おうとしたが、魔王とやらを倒す為とかいう訳の分からない理由で拉致されてしまった。
何が腹が立つってこいつら、馬鹿つえーんだわ。
結構暴れてみたが抵抗虚しく拘束され、攫われちまった。
マジに意味わからん。
貴族の屋敷に押し入って、僕のようなただの執事を攫うって……。
狙うなら旦那様や奥様やグロリア嬢を狙えよ。
まあもしそんなことしたら、お粥も食えないくらいに叩き潰すが。
「よし、下がっていろ」
僕を抱えたスペアシェリーはそう言って立ち止まる。
凄まじい速さで空を飛び移動するという超常現象からの現実逃避に状況整理をしていたがどうやら目的地に到着したらしい。
あ? ここはクーロフォード鉱山じゃないか。
今度は鉱山を荒そうってのか?
「ここだな、良かった。まだ生きている」
そう言ってスペアシェリーが鉱山前の地面に触れると、地面に光の輪のようなものが浮かび上がる。
輪に沿って地面が昇降機のように地下へと降りていく。
なっ……、こいつ、勝手に鉱山にこんなもん……、いつの間に造りやがったんだ。
昇降機が下がりきり、自動で扉が開くとそこはかなり広い、何かの技術開発室のようだった。
「そろそろいいだろう」
スペアシェリーはそう言いながら僕を降ろして拘束を解く。
「……! いや、てめ! なに他人の家の鉱山の地下に、いつの間にこんなもん造ったんだ! クーロフォード家の土地だぞ馬鹿か‼」
色々と言いたいことが目白押しだが僕はとりあえず直近で思ったことをスペアシェリーにぶつける。
「昨日今日造れるわけがないだろう、二千年ほど前だよ。魔王を封印した後に研究者が鉱物資源実験の為に造った場所だよ。研究者は上で増やした鉱物を使ってここで再構築やらをしてオリハルコンやらミスリルやらアダマンチウムを錬成していたんだ」
部屋の中の様々な設備を軽く触りながらスペアシェリーは答える。
二千年……? また与太話を…………いや? 待て、研究者……?
かなり前になるが奥様から聞いたことがある。
初代クーロフォード伯爵夫人であるリンダ・クーロフォード様が何故この山を開拓したかという逸話だ。
リンダ様は辺境に住む当時ここらの地主であったウィリアム・クーロフォード様に嫁いだがこの辺りの過疎に嘆き新たな事業を展開することにした。
ウィリアム様より曽祖父が出会った山の調査をする研究者とやらに触発されて地質学にのめり込んだという。
リンダ様はクーロフォードが所有する山に研究者が調査をするような鉱物資源があるのではと考え、根性だけで鉱山を開拓し、当時のエンデスヘルツ公爵に推薦を受けてクーロフォード家は貴族の位を得た。
クーロフォード根性論の始まりの話である。
確かに、クーロフォードの歴史に研究者ってやつは関わって来るが……。
「……おまえがこの鉱山の生みの親で、初代様の曽祖父に地質学を教えたって事か……?」
僕は頭に過ぎった可能性をそのまま問いかける。
だとするとクーロフォード家は、こいつのおかげで食っていけてることになるのか……?
「いやここを造ったのは研究者だ。しかしその初代の曽祖父とやらは私が前に一度エラーで覚醒してしまった時に会ったこの地の民だな。そうかあの家はあの時の民の流れか、因果なものだ」
僕の問いへ興味無さそうに答えながら、部屋の設備をいじる。
マジかよ……。
信じられねえ、いや、信じたくねえ。
触れずに僕を吹き飛ばしたり、空を飛んだり、昨日今日出来たわけじゃねえ鉱山の地下施設。
いやマジに、馬鹿に生まれたことを後悔する。
こんな与太話を、僕は信じてしまいそうなのだから。
と、状況説明をさせてもらったがなんのこっちゃわからないとは思う。でも安心して欲しい。
僕もなんこっちゃわかっていない。
突然クーロフォード家の屋敷に押し入ってきたキャロラインの姐さんと勇者を騙るダグラスとかいう男と勝手に裏口から侵入してきた自動人形だと言うスペアシェリーって女と一悶着あった。
ぶっ飛ばして追っ払おうとしたが、魔王とやらを倒す為とかいう訳の分からない理由で拉致されてしまった。
何が腹が立つってこいつら、馬鹿つえーんだわ。
結構暴れてみたが抵抗虚しく拘束され、攫われちまった。
マジに意味わからん。
貴族の屋敷に押し入って、僕のようなただの執事を攫うって……。
狙うなら旦那様や奥様やグロリア嬢を狙えよ。
まあもしそんなことしたら、お粥も食えないくらいに叩き潰すが。
「よし、下がっていろ」
僕を抱えたスペアシェリーはそう言って立ち止まる。
凄まじい速さで空を飛び移動するという超常現象からの現実逃避に状況整理をしていたがどうやら目的地に到着したらしい。
あ? ここはクーロフォード鉱山じゃないか。
今度は鉱山を荒そうってのか?
「ここだな、良かった。まだ生きている」
そう言ってスペアシェリーが鉱山前の地面に触れると、地面に光の輪のようなものが浮かび上がる。
輪に沿って地面が昇降機のように地下へと降りていく。
なっ……、こいつ、勝手に鉱山にこんなもん……、いつの間に造りやがったんだ。
昇降機が下がりきり、自動で扉が開くとそこはかなり広い、何かの技術開発室のようだった。
「そろそろいいだろう」
スペアシェリーはそう言いながら僕を降ろして拘束を解く。
「……! いや、てめ! なに他人の家の鉱山の地下に、いつの間にこんなもん造ったんだ! クーロフォード家の土地だぞ馬鹿か‼」
色々と言いたいことが目白押しだが僕はとりあえず直近で思ったことをスペアシェリーにぶつける。
「昨日今日造れるわけがないだろう、二千年ほど前だよ。魔王を封印した後に研究者が鉱物資源実験の為に造った場所だよ。研究者は上で増やした鉱物を使ってここで再構築やらをしてオリハルコンやらミスリルやらアダマンチウムを錬成していたんだ」
部屋の中の様々な設備を軽く触りながらスペアシェリーは答える。
二千年……? また与太話を…………いや? 待て、研究者……?
かなり前になるが奥様から聞いたことがある。
初代クーロフォード伯爵夫人であるリンダ・クーロフォード様が何故この山を開拓したかという逸話だ。
リンダ様は辺境に住む当時ここらの地主であったウィリアム・クーロフォード様に嫁いだがこの辺りの過疎に嘆き新たな事業を展開することにした。
ウィリアム様より曽祖父が出会った山の調査をする研究者とやらに触発されて地質学にのめり込んだという。
リンダ様はクーロフォードが所有する山に研究者が調査をするような鉱物資源があるのではと考え、根性だけで鉱山を開拓し、当時のエンデスヘルツ公爵に推薦を受けてクーロフォード家は貴族の位を得た。
クーロフォード根性論の始まりの話である。
確かに、クーロフォードの歴史に研究者ってやつは関わって来るが……。
「……おまえがこの鉱山の生みの親で、初代様の曽祖父に地質学を教えたって事か……?」
僕は頭に過ぎった可能性をそのまま問いかける。
だとするとクーロフォード家は、こいつのおかげで食っていけてることになるのか……?
「いやここを造ったのは研究者だ。しかしその初代の曽祖父とやらは私が前に一度エラーで覚醒してしまった時に会ったこの地の民だな。そうかあの家はあの時の民の流れか、因果なものだ」
僕の問いへ興味無さそうに答えながら、部屋の設備をいじる。
マジかよ……。
信じられねえ、いや、信じたくねえ。
触れずに僕を吹き飛ばしたり、空を飛んだり、昨日今日出来たわけじゃねえ鉱山の地下施設。
いやマジに、馬鹿に生まれたことを後悔する。
こんな与太話を、僕は信じてしまいそうなのだから。
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