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32・小娘、はしゃいで笑う。

03狂っているから。

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 てな感じで、二人のぼっちの魔王軍は動き出した。

 私は私でこの国の情勢じょうせいを調べつつ、ルカはルカで物思ものおもいにふけっていた頃。

 ルカは竜の女王が復活したことに気づき、気配を探り見つけ出した。

 ちょっと大陸が消し飛びかけた程度ていどのいざこざはあったけど、竜の女王ニィラを懐柔かいじゅうというかなしくずし的に同行することになった。

 かつて魔王とも敵対していた竜の女王と和解出来たというわけでもない。
 竜の女王ニィラの感覚としてはウォール・バルカードに着いて行っただけだ。

 今の竜の女王は可愛い女児でしかない。
 見た目も中身も、面倒見のいいウォール・バルカードが大好きなだけの女児なのだ。

 ルカいわく、封印の影響で力が弱り不安定な状態にあるらしく。詳細はわからないけどニィラはルカや勇者に思うところはあれどうらんではないとのこと。
 ただ、安全圏から世界の運命を悪戯いたずらもてあそぶ女神に対しての怒りはあるらしい。まあニィラは言葉が達者じゃないのでニィラの本音を聞けたわけではないのだけれど。

 こうして、魔王軍に竜の女王と竜騎士が加わった。

 ルカがウォールを鍛えて、人のいきを超えさせて。
 魔女からリングストンの街への干渉かんしょう牽制けんせいされたり。
 魔王軍で城に乗り込んで勇者が現れたり。

 なんやかんやあって。

「お、リングストン公爵がリングストンの街を出たな。これで魔女の姉ちゃんを怒らすことはねえだろ、念の為そっちは俺が行くから、ウォールはエンデスヘルツに行け」

 と、ある日ルカは突然そう漏らして行動に出た。

 私はお留守番。
 なんてことはなく、人手不足の魔王軍は私のような小娘でも働かなくてはならない。

 ルカはリングストン公爵。
 ウォール&ニィラはエンデスヘルツ公爵。

 なら私はゴールドマン公爵を狙う。

 とはいえ、私にはルカたちと違って特別な力なんてないし剣も銃も使えないし体力も筋力も一般的な小娘と同じだ。私は特異点とくいてんでもなんでもないただの小娘である。

 

 なにせ、魔王を復活させてしまうほどに私はこの世界がにくいのだから、仕方がない。

 頭がおかしいだけでこの国の公爵を殺せるわけがないのだけれど、今の技術発展というのは凄まじいもので。人を殺すのに便利な道具がある。

 ルカは私の為にという兵器を調達してきた。

 みずからの推進装置すいしんそうちにより目標に向かって超長距離を飛翔ひしょうし、着弾時ちゃくだんじに爆発する兵器だ。
 発展派のワタナベとかなんだかの変な名前の男爵が開発し、フィリップス伯爵家の金属加工の工場で製造された最新鋭さいしんえいの兵器である。
 発展派はこんなものまで作り出しているなんて、なかなかどうしてエンデスヘルツ公爵は本気で王族とやり合うつもりらしい。ああ馬鹿馬鹿しい、自分だって一人娘をクズ王子とくっつけようとしたり他人の人生を矯正きょうせいして強制きょうせいしてきたくせに何よ民主主義って、笑えない。

 まあとにかく、そんな馬鹿な発展派のおかげで私でも公爵をぶっ殺せる兵器を手にすることが出来たのだ。せいぜい利用させてもらおう。

 私は真夜中にすでにミサイルを設置してある山に登る。
 ルカが封印されていたあの山だ。

 発射台の準備はおおよそ完了しているが、最後の微調整びちょうせいを行う必要がある。
 ここからゴールドマン公爵ていは双眼鏡でもほとんど見えない、目視もくしで狙いをさだめることは出来ないというかそういう運用うんようを想定していないのだろう。
 ゆえに目標までの距離で角度や推進剤すいしんざいの量を調整して狙わなくてはならない。
 
 すでに大まかな調整は終えているがまだまだここから計算をしないと正確に公爵ていを吹き飛ばせない。

 あ、ちなみにゴールドマン公爵は王族からすでに魔王軍の存在は聞いており中立派のコネで騎士団を動かし、公爵てい警護けいごさせてこもっているらしいので吹き飛ばせば殺せる。

 さて。
 私は簡易的かんいてきな机を照らして、紙とペンを広げる。

 発射台近くに取り付けていた各種計器で、風力温度湿度一気に確認。
 計算機のたまを弾いて計算を始める。

 私は特別かしこいわけじゃないし、勉強も全然してこなかったから効率的な計算方法も知らない。
 引っ張り出してきた参考書から使えそうな数字の求め方をひたすら計算するだけだ。

 かつての私だったら出来なかった、そもそも山を登る時点で断念だんねんしていただろう。
 でも私は狂っているから、おかしくなってしまっているから、こんな途方とほうもないことも出来てしまう。
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