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32・小娘、はしゃいで笑う。

02溶けてもいい。

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 魔王となったルカは、女神の意向いこうと自身の正しさと最も相対そうたいする行動を取った。

 人類と竜の滅亡させ、世界を混沌こんとんに落とすことにした。
 暴走というか自暴自棄じぼうじきというか、魔王ルカは暴れに暴れた。

 自身の意向いこうと完全に違う行動を始めたルカに対して女神は、更に世界に干渉かんしょうすることでおさめようとした。

 竜狩りの民の中で最強の戦士だったダグラス・ヴィダルに、女神自身の力と考えを剣にしてあたえて勇者に書きえた。

 勇者は当時真理の研究を行っていたシェリー・ラスゴーランと世界最強の探求者マリク・ノアと共に、魔王討伐とうばつへと乗り出した。

 竜の女王もまた、魔王を打倒すると同時に竜狩りの民最強の勇者を打倒する為に軍勢ぐんぜいひきいていた。

 三つどもえの戦いである。

 激化する戦いにより、人類は減り、竜もほぼ滅んだ。

 そして戦いは最終局面さいしゅうきょくめんむかえ。

 初めに、竜の女王が研究者により封印された。
 これで事実上、竜は滅んだこととなった。

 魔王と勇者の一騎打いっきうちが始まり、三日三晩激動げきどうの殺し合いの最中に次元の壁を破壊してしまい。勇者は飛んでしまった。
 この時点で世界から魔王を殺すすべは失われた。

 疲弊ひへいしきった魔王は、探求者が力技で押さえ込み、研究者が封印を行った。

 これが魔王が封じられるまでの。
 魔王とはなんなのか。
 何が起きて何があったのか。
 私が聞いた、そんな歴史になる前の歴史の話は以上だ。

 その後、これは私が調べてまとめてルカに伝えた歴史の話だ。
 と、いってもほとんどがパウンダー家が保管していた賢者の研究記録から解読かいどくして、私の推測すいそくふくめて補完ほかんしたものだけれど。

 魔王を封印した後の世界はしばらく停滞が続いたようだった。

 人類はかなり減り、知恵を持った竜が滅び、人類の発展は遅れた。
 今でも実現不可能なほどの技術や知識を持っていたはずの二人の賢者である研究者と探求者は決して人類の発展の為に力を使わず、ましてやみちびくなんてことは全くしなかったようだ。

 各々おのおの自身の研究や探求にのめり込んでいったそうだ。

 やがて研究者は研究の末、この世界の真理である女神に自力でたどり着いた。
 そこで研究者は、女神から聖女として育てるように赤子を渡されたのだという。

 この赤子は人類の繁栄はんえいを望む女神が使わせた、第二のルカのような存在らしい。

 勇者やルカという女神に人生をしばられた存在をその目で見てきた研究者は、女神の言う通りにするのはしゃくということで聖女ではなく全く別のものに育てることにした。

 というところで、この件についての研究記録は途絶とだえてしまっているが。先日私たちの前に現れた魔女こそが研究者が女神から受け取った赤子なのだろう。つまり実質あの魔女はルカの妹なのだ。

 てな感じで、またも女神は人類をみちびく存在を失ってしまったので。今度は既存きそんの人類の中からみちびく者を選ぶことにした。まあ勇者と同じパターンだ。

 かしこく、人望が厚く、人の心を理解した上で非情になれる、そんな人間を選んだ。
 選んだ人間に神託しんたくというかたちで、人類の繁栄はんえいと発展をみちびくように書きえ、名前をあたえた。

 それが、メルバリア王国初代国王である。

 持ち前のかしこさと人望で女神への信仰を広げ、繁栄はんえいと発展の邪魔になる者を時には懐柔かいじゅうし時には切り捨て、小さなコミュニティからこつこつと規模きぼを広げ続け。
 何代にも渡り、やがて大陸一の大国となるまでにいたった。

 それがこの国、メルバリア王国の成り立ちである。

 そんな成り立ちを知ったルカは、自身の名前を使われ女神の意向いこう通りにさかえるこの国が正しいと思った。 

 しでいうならし、せいならせい
 ならば彼は魔王として、否定せずにはいられないのだ。

 しかし、今回の彼は滅びを選ばなかった。
 女神の意向いこう通りにおほかにも繁栄はんえいを続けた人類は滅びる必要はないからだ。

 おろかで頭の間違った人類は、魔王としては正しい。

 ゆえに彼はこのメルバリア王国だけを、女神信仰だけを、世界から取りのぞくことにした。

 王族、三派閥さんはばつトップの公爵家、それに付随ふずいする主要貴族つまりはこの国のまつりごとつかさどる人間たちを殺して、この国から女神への信仰を消す。

 だったら教会の、というか聖女も消した方が良いと私は思ったけれど。ルカにいわせればあんなに女神に存在をしばれたおろかで間違った人間はいないので外したそうだ。

 要するに、女神信仰により利益りえきを得るシステムを潰す。女神を信仰することが損になる世界に変える。

 魔王というそんを世界のシステムに組み込むのだ。

 まあ私は単純にこの国を腐敗ふはいさせた連中が全員死ぬならなんだって構わない。
 国政のバランス調整に人の人生をもてあそぶ王族や、それに乗じて利権りけんうばい合う貴族たち、それらに許され続けてきた残酷ざんこくな子供たち。
 こいつら全員がづらかいて、阿鼻叫喚あびきょうかすえに何が間違っていたかもわからないまま理不尽にぐちゃぐちゃになるのが見れたなら。

 私は、溶けてもいい。
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