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31・怪人、巻き込まれる。
04新生勇者パーティ。
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「ぶ……っ! 痛……っ、え?」
僕の拳が通り始めて、ダグラスが驚きの表情を見せる。
姐さんに八極拳で発勁で吹き飛ばされ続けてきた、何度も受ければ当然慣れるし解る。
だから後出しで、弾かれるのを待ってからズラして通しただけである。
要領は掴んだ、とりあえず畳む。
グロリアの安眠を妨げたこいつは、しばらくお粥しか食えない程度に潰す。
今まで通りグロリアへの脅威を徹底的に潰す。
これまでもずっとそうしてきた、おかげで暴力マスクの怪人なんて不本意で不名誉な馬鹿な呼び名までついちまった。
まあ何でもいい、僕はただ脅威を排除するだけだ。
「……っ‼ ちょ、待……っ⁉」
なんて考えていたところで、かなり良い一撃が通る。
「おい、ダグラス……?」
この辺りでスペアシェリーがダグラスの異変に気づく。
「てめ……、痛っ、いい加減にしろおっ‼」
ダグラスは僕の腹に超弩級の発勁を打ち込む。
姐さんの出力を優に超える、まともに喰らったら身体が弾け飛ぶくらいの発勁。
だが、もう慣れている。
腹に通った勁を。
そのまま身体を通して拳に乗せて。
顔面に打ち返す。
「……何者なんだ、君は」
そう言って、同時にダグラスは顔中の穴から血を噴いて弾けるように倒れた。
ちっ、絨毯を汚しちまった。
清掃担当に謝らねえと、朝一で共有しなくては。
勇者様を畳んだので、次は自称自動人形の方を向く。
「おい君、落ち着くんだ。やめておけ」
そう言ってスペアシェリーは僕に手のひらを向けて、先程調理場で見せた謎パワーの術を使おうとする。
だが、それも見た。
謎パワーが何かはわからんが、アレは僕に接触したところを起点にするのではなく僕を含めた約二メートル四方の空間を対象にして、なんかする術だ。
故に、想定される範囲から最速で離脱して蹴りで脇腹をえぐる。
「ぐ……」
僕の反撃は想定外だったようで、腹を押さえて屈む。
間髪入れずにアゴが下がったところを膝で打ち抜き、スペアシェリーは絨毯に転がる。
さあ次。
僕は姐さんを見る。
重心を低く、真骨頂である迎撃特化の構えを取る、八極令嬢キャロライン・エンデスヘルツがそこにいた。
いやー、行けねえなあ……。
先の二人は知らねえ奴だからボッコボコに出来たけど、姐さんはグロリア嬢を凄く可愛がってくれてるし馬鹿でイカれているが悪い人じゃない。
同い歳なのに、姐さんなんて心の中で呼んでしまうくらいに面倒見のいい女なんよこいつ……超強いし。
少なくともグロリア嬢に害をなすことは絶対にない、故に僕が挑む理由もないのだが。
姐さんの連れをぶっ飛ばしちまったからには、報復が……、これ僕死ぬんじゃないのか?
と、不安になった瞬間。
後ろから両肩を掴まれ、そのまま後ろに引っ張られ壁に押しつけられる。
鼻血だらだらのダグラスと外れたアゴを手で押し込むスペアシェリーが、力強く僕を抑える。
くっそ、動けねえ……、また謎パワーか畜生……。
「どう思う? スペアシェリー。彼の動き」
顔を潰された割には流暢にダグラスが問う。
「恐らくマリクと同じ類いの特異点だ。むらがあるとはいえ対応能力が常軌を逸している……、これは化けるぞ。興味深い」
アゴをはめて僕を観察するように、スペアシェリーは言う。
「決まりだな。僕、スペアシェリー、キャロライン、そして彼の四人で――」
鼻血を拭いながら、ダグラスは。
「新生勇者パーティの結成だ」
目を輝かせながらそう言った。
動けねえし、その決定に反応も反論も出来ないし、そもそもこいつらが何を言ってんのかもわからないけど。
これ以上ない馬鹿に巻き込まれることだけは、馬鹿な僕にも理解が出来た。
僕の拳が通り始めて、ダグラスが驚きの表情を見せる。
姐さんに八極拳で発勁で吹き飛ばされ続けてきた、何度も受ければ当然慣れるし解る。
だから後出しで、弾かれるのを待ってからズラして通しただけである。
要領は掴んだ、とりあえず畳む。
グロリアの安眠を妨げたこいつは、しばらくお粥しか食えない程度に潰す。
今まで通りグロリアへの脅威を徹底的に潰す。
これまでもずっとそうしてきた、おかげで暴力マスクの怪人なんて不本意で不名誉な馬鹿な呼び名までついちまった。
まあ何でもいい、僕はただ脅威を排除するだけだ。
「……っ‼ ちょ、待……っ⁉」
なんて考えていたところで、かなり良い一撃が通る。
「おい、ダグラス……?」
この辺りでスペアシェリーがダグラスの異変に気づく。
「てめ……、痛っ、いい加減にしろおっ‼」
ダグラスは僕の腹に超弩級の発勁を打ち込む。
姐さんの出力を優に超える、まともに喰らったら身体が弾け飛ぶくらいの発勁。
だが、もう慣れている。
腹に通った勁を。
そのまま身体を通して拳に乗せて。
顔面に打ち返す。
「……何者なんだ、君は」
そう言って、同時にダグラスは顔中の穴から血を噴いて弾けるように倒れた。
ちっ、絨毯を汚しちまった。
清掃担当に謝らねえと、朝一で共有しなくては。
勇者様を畳んだので、次は自称自動人形の方を向く。
「おい君、落ち着くんだ。やめておけ」
そう言ってスペアシェリーは僕に手のひらを向けて、先程調理場で見せた謎パワーの術を使おうとする。
だが、それも見た。
謎パワーが何かはわからんが、アレは僕に接触したところを起点にするのではなく僕を含めた約二メートル四方の空間を対象にして、なんかする術だ。
故に、想定される範囲から最速で離脱して蹴りで脇腹をえぐる。
「ぐ……」
僕の反撃は想定外だったようで、腹を押さえて屈む。
間髪入れずにアゴが下がったところを膝で打ち抜き、スペアシェリーは絨毯に転がる。
さあ次。
僕は姐さんを見る。
重心を低く、真骨頂である迎撃特化の構えを取る、八極令嬢キャロライン・エンデスヘルツがそこにいた。
いやー、行けねえなあ……。
先の二人は知らねえ奴だからボッコボコに出来たけど、姐さんはグロリア嬢を凄く可愛がってくれてるし馬鹿でイカれているが悪い人じゃない。
同い歳なのに、姐さんなんて心の中で呼んでしまうくらいに面倒見のいい女なんよこいつ……超強いし。
少なくともグロリア嬢に害をなすことは絶対にない、故に僕が挑む理由もないのだが。
姐さんの連れをぶっ飛ばしちまったからには、報復が……、これ僕死ぬんじゃないのか?
と、不安になった瞬間。
後ろから両肩を掴まれ、そのまま後ろに引っ張られ壁に押しつけられる。
鼻血だらだらのダグラスと外れたアゴを手で押し込むスペアシェリーが、力強く僕を抑える。
くっそ、動けねえ……、また謎パワーか畜生……。
「どう思う? スペアシェリー。彼の動き」
顔を潰された割には流暢にダグラスが問う。
「恐らくマリクと同じ類いの特異点だ。むらがあるとはいえ対応能力が常軌を逸している……、これは化けるぞ。興味深い」
アゴをはめて僕を観察するように、スペアシェリーは言う。
「決まりだな。僕、スペアシェリー、キャロライン、そして彼の四人で――」
鼻血を拭いながら、ダグラスは。
「新生勇者パーティの結成だ」
目を輝かせながらそう言った。
動けねえし、その決定に反応も反論も出来ないし、そもそもこいつらが何を言ってんのかもわからないけど。
これ以上ない馬鹿に巻き込まれることだけは、馬鹿な僕にも理解が出来た。
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