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29・居候、再会する。

02あの怪物のように。

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 そんなある日。
 突然、なんと国外追放されていたはずのキャロライン様が帰宅なされた。

「父上、お久しぶりですね。単刀直入たんとうちょくにゅうに言いますと、しばらく私が父上を護衛ごえいいたします」

 早々にキャロライン様はエンデスヘルツ公爵へとそうげた。

 話を聞くに、さるすじから魔王軍と名乗る不逞ふていやからが王族と三公爵、それに付随ふずいする主要貴族を狙っているとのこと。

 魔王軍はすでに少人数で城に攻め込み兵士数十名と騎士を十数名斬りせ現在は逃亡中だと言う。

 実は数ヶ月前からこの国へと別件べっけんで戻って来ていたが、ずるずると長居していたところに不穏ふおんな話を聞きつけたので念の為に家に寄ったという経緯けいいだそうだ。

 まだキャロライン様が学生だった頃に一度だけお会いしたことがあったが、その頃よりさらに美しく凛々りりしく少し野性味をびた様子でした。

 キャロライン様はこの国の状況や、発展派と教会派の結託けったくによる武装決起ぶそうけっきも知っておられたようですがすでに全てが吹っ切れたキャロライン様はこの国に対してそれほど興味がなく、ただ家族の身をあんじて行動しているだけということらしい。

 この人は強い。

 武術とかそういう話だけではなく、次期王妃になるはずだった人生を捨て国から追放され家族と離れても、しんがぶれることがない。

 やはり、私とは違う。
 私はただ、流されてここに流れ着いただけだ。

 なんてことを、夜更よふけに庭で一人で八極拳はっきょくけん稽古けいこをするキャロライン様を窓から見ながら考えていました。

 すると。

 突然、大剣を持ち子供を肩車した大男が門を吹き飛ばして現れた。

 一目見て分かる異様いようさで、キャロライン様がおっしゃられていた魔王軍と名乗るやからだとすぐに理解出来ました。

 流石キャロライン様です。
 キャロライン様の指示通り、もうすでにこの屋敷にはキャロライン様と私と数人の使用人しかいません。
 公爵は護衛ごえいと共に安全な場所に身を隠し終えている。

 ちなみに私もすぐに避難ひなんするように言われていたが、残った使用人たちの誘導ゆうどうとまだ持ち出せていない帳簿ちょうぼがあるのでその為に残りました。

 殿しんがりは私がつとめますというやつです。

 なんて考えていると、大男とキャロライン様の戦いが始まりました。

 まあ一打いちだで終わるでしょう。
 詳しくはありませんが、私は人が人のいきを超えた例を目の当たりにしたことがあります。
 キャロライン様もおそらくそのいきにあるのでしょう。

 キャロライン様はこの国最強格の淑女しゅくじょですから。
 魔王軍なんてふざけた名前のテロリスト集団に負けるわけがありません。

 ですが、大男は

 少しずつ不安が。
 万が一も、億が一もない、その可能性が私の脳裏のうりぎる。

 あの大男も人のいきを超えている。
 あの妹であるマリシュカ・ネビルのように。

 

 しばらくキャロライン様の戦いを見ていたが、いてもたってもいられずに庭へと走り出す。

 もし、妹と同じような存在なら不味い。
 私が庭に到着とうちゃくしたと同時に、キャロライン様は脚を斬られて膝を着く。

 間髪かんはつ入れずに容赦ようしゃなく大男は剣を振り上げた。

 私は無我夢中むがむちゅうでで拳銃を構える。

 この武装決起ぶそうけっきたずさわる者として拳銃は携行けいこうしていて、携行けいこうするからには簡単な訓練も受けています。

 練習通り狙いを定めて、引き金を引く。
 破裂音と共に、大男の腕に弾丸が当たったことを確認する。

 男は動きを止め、少し驚いた表情でこちらをにらむ。

「……は、は……離れなさい……、つ、次は、頭を撃ちま、すよ」

 しどろもどろになりながら、私は大男に警告をする。

「逃げなさい! サンディ! お父様のところへ!」

 キャロライン様が私に向けて叫ぶ。

 ほぼ同時に男は私の警告などまるで聞こえていないように無視して大男はキャロライン様へ剣を振り下ろす。

 私は反応出来ず、引き金を引けなかった。

 しかし、剣はキャロライン様に届かず突然現れた男に大男は吹き飛ばされた。

 超常的な現象が畳みけるように起こり、頭が真っ白になる。

 何か会話をしているようだけど、全く頭に入ってきません。

「ダグラァァァァァァアアスッ‼」

 いつからいたのか、大きな美女がそう叫ぶと凄まじい光が辺りをつつんだ。
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