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24・執事、復帰する。

04復帰を果たした。

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 話が終わったタイミングで俺のマッサージも終わり、アビィは身体を起こす。

「あ――――っ、気持ちよかった。いや本当にありがとう絶対また頼むわよこれ、溶けるかと思った。ヨダレ出ちゃったよ」

 アビィは肩をぐるぐる回しながらそう言う。

 とりあえずアビィの考えはわかったが、これはまだ客観視きゃっかんしの部分だ。もう少し聞かなくてはならない。

「グロリア嬢だって、王妃のさくで常日頃からおとしめられようとしてアーチの馬鹿が水面下すいめんかで暴れて食い止めてるんだろ。国がひっくり変えればそれもなくなるんじゃないのか」

 伸びをするアビィの主観しゅかんを引き出す質問をしてみる。

「んー確かに、でも多分それ全部が王妃様の暗躍あんやくじゃなくて発展派や教会派の自作自演もあると思うし、王妃様が暗躍あんやくする根底こんていは民主化運動の抑止よくしなわけでしょ。だったらマーク様が話し合うべきは発展派ではなく王族と手を取り合って婚姻こんいんを認めさせるべきだったと思うのよね」

「じ、自作自演……?」

 さらっと出てきた不穏ふおんさについ口を出してしまう。

「そもそもグロリアとマーク様の婚約は注目度が高い、発展派からもいい顔されないだろうし教会派からもいい顔されないし王族や中立派もそこがつながるとたがいに力をつけ過ぎるから困る、これが前提ぜんていなのよ。それが嫌だからマーク様は婚姻こんいんを強行する為に前リングストン公爵とエンデスヘルツ公爵の密約みつやくに乗っかった、それって――」

 こちらを見ずに続けて。

。グロリアをえさに協力を得る、まあこのままだと次期王妃は聖女になるみたいだし教会派をかかえておけば、発展派はキャロライン嬢の婚約破棄をチャラにできるしね」

 さらりと、独特どくとく見解けんかいべた。

盤面ばんめんを整理してちょっと考えれば見えてくるとこでもあるけどね。まあとにかくそれは一旦置いといたとして、私もグロリアが大好きだしこの婚姻こんいんは上手くいって欲しいと心から思ってるけど……んーこの話もしちゃうか」

 アビィはそう言ってソファに座る俺の方に向き直して。

「なんなら私は、マーク様の維新を止めようとすら思ってる。こんな方法じゃなくて、もっと良い方法はあるし強行するからこそグロリアは危険にさらされるからね。正誤性せいごとか善悪とか関係なく、私はグロリアの友達で私の幸せにグロリアは必要だから」

 そのアビィから出た爆弾発言に驚愕きょうがくする。

「それは……、王族側に付くってことか……? じゃあ何のために騎士に喧嘩売ったんだ。あの時取り調べにおうじとけばよかったんじゃ……」

「違うわよ。王族に協力するとか中立派に身を置くとかじゃないし、あの時あのまま話してたらグロリアまで一網打尽いちもうだじんにされちゃうじゃない。友達を売るなんてできないわよ」

 驚愕きょうがくする俺の疑問をアビィはさらり払い除ける。

「…………じゃあ、おまえは誰の味方なんだ?」

 困惑こんわくする俺の疑問に対して、不敵に、堂々と俺の目を見て。

愚問ぐもんねナイン、。私の幸せにグロリアは必要だけど維新も内戦も必要ない。この国の未来をどうこうとかする気もないけど、この国で暮らす以上この国は私の幸せに必要なの」

 それだけの話よ。と付け加えて俺の胸に飛び込んでくる。

 ごちゃごちゃ色々な思惑おもわくや思想や偶然やらがからまっているが、とどのつまり

 この話はただ、アビィが幸せになりたいというだけの話なのだから。

「……幸せにしてくれるんでしょ?」

 俺の胸に顔を埋めて、アビィは甘えるように声を出す。

 ああ、このお嬢様はやはりおかしい。
 打算的ださんてき狡猾こうかつ貪欲どんよく
 民主主義とかなんやらより、こいつの利己主義をどうにかするべきだろ。

「……はあ」

 俺はため息をついてアビィの頭をでる。

「……もちろんです。お嬢様」 

 今度は何に巻き込まれるのか考えても仕方がないので、俺はそう答える。

 こんなお嬢様にれてしまっている俺もまたおかしいのだろう。

 アビィお嬢様が何を踏み台にしても幸せになると言うのなら、俺は喜んで踏み台になろう。

 そんな感じで、俺は執事へと復帰を果たした。
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