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20・執事、決闘をする。
03認めよう。
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攻めてはいるが非常にまずい、見られすぎている。
俺の速さと技が、動きの天井が把握されつつある。
こうも届かないのか、くっそ今の捌くのかよ決まっただろ極めすぎだこの女。
だがこうなったら連撃で固め続けるしかない、畜生これも別に得意なわけじゃあない。
不可視からの一撃必殺と離脱こそが俺の動きの真骨頂だ、そもそもこんな大立ち回りは想定してない。
全ての攻撃が必殺のつもりでナイフを振るが、届かない。
完全に相手の方が一枚上手だ。この女の方が強い。
だが勝敗において強さは重要な要素ではあるが、絶対じゃあない。
命令は勝利だ。
勝つ以外の終わりはない。
スタミナ差の域まで勝負は続かないだろう、それは狙っても仕方ない。
ここで押し切る。
十八度目の確信が弾かれたところで、夫人の動きが加速し突きを放つ。
来た。
隙間がバレ始めできている。
突きは俺の髪を何本か切り飛ばして、すぐに戻る。
修正矯正改善、動きを変えろ、読ませるな考えさせるな躊躇うな、動き続けろ。
攻めを切らせないように、強引にナイフを振り続ける。
だが十回に一回くらいの頻度で反撃が飛んでくるようになり、十回に一回が五回に一回になり、五回が三回になり、そして。
当初、思い描いていた。
剣撃入り乱れる大立ち回りが始まった。
弾いて躱して、刃が空を舞う。
お互いに細かく掠りながら、有効打を狙って舞う。
完全に動きを見切られた。
善戦しているように見えるがこうなった時点で劣勢だ。
だが布石は出来た。
ここからのもう一押し、もう一段階加速と技の冴えを上げられれば決まる。
この状態から放たれる、まだ見せていない隠された切り札、究極奥義。
なんてものが暗殺者にあるわけがない。
キャロライン嬢やこの夫人にはあるかもしれないが、ナイフで刺せば人は死ぬので基本的にそういう相手の技を上回ったり制する技術を磨いていない。
だが俺は知っている。
人が突然、もう一段階強くなる方法を知っている。
俺は前世で聖女を暗殺しろといわれたが、なんだかんだで聖職者となり。最期は俺の次の刺客であるナンバーテンと刺し違えて死んだ。
だがあの時、ナンバーテンがナイフを聖女ウェンディに向けた段階で本来なら絶対に間に合わなかった。
だが間に合って、相討ちで死んだ。
あの瞬間、俺は自分の天井を超えていた。
あるんだ、人間にはそういうことが。
人は誰かを好きになることで、本来の自分を超える瞬間がある。
グロリア嬢の怪人アーチが良い例だ。
あの馬鹿怪人は確かに屈強で狂気的ではあるが無敵でも最強でもない。
だがあいつはグロリア嬢に対する日々脅威を徹底的に排除している。
どんな強敵にも何人相手にしても、倒され潰され折られ砕かれても、何度でも立ち上がりグロリア嬢に呼ばれれば必ず応える。
それはあいつがグロリア嬢に惚れているからなのだ。
まあ、何が言いたいかといえば俺はもう認めるしかないってことだ。
この状況を切り抜けるにはそれしかない。
良い機会だ、認めよう。
毛先が波打つその赤毛が。
好奇心旺盛で勤勉なところが。
何でも楽しもうとするところが。
狡猾で打算的でいて大胆不敵なところが。
その桜色の唇が。
人として俺を頼ってくれるおまえが。
ただどうしようもなく、他に言葉を探しても見つからない。
俺はアビィが好きなのだ。
恋以外にこの感情を形容する言葉はない。
これはもう、恋でしかないのだ。
だから俺は勝たなくてはならない。
俺の全てをもってアビィの命令に応えなくてはならない。
つまり。
「俺はあっ‼ アビィを、幸せにするんだああああ――――っ‼」
そう叫んで、俺は最高速でナイフを振る。
これは弾丸を弾いた時よりも、速い。
自分でも信じられないくらいの速度だ。
恋を認めた、アビィの為に動く俺を止められるものは何もない。
突然の叫びと加速に夫人は反応できない。
完全に脇腹を捉えた。
俺の速さと技が、動きの天井が把握されつつある。
こうも届かないのか、くっそ今の捌くのかよ決まっただろ極めすぎだこの女。
だがこうなったら連撃で固め続けるしかない、畜生これも別に得意なわけじゃあない。
不可視からの一撃必殺と離脱こそが俺の動きの真骨頂だ、そもそもこんな大立ち回りは想定してない。
全ての攻撃が必殺のつもりでナイフを振るが、届かない。
完全に相手の方が一枚上手だ。この女の方が強い。
だが勝敗において強さは重要な要素ではあるが、絶対じゃあない。
命令は勝利だ。
勝つ以外の終わりはない。
スタミナ差の域まで勝負は続かないだろう、それは狙っても仕方ない。
ここで押し切る。
十八度目の確信が弾かれたところで、夫人の動きが加速し突きを放つ。
来た。
隙間がバレ始めできている。
突きは俺の髪を何本か切り飛ばして、すぐに戻る。
修正矯正改善、動きを変えろ、読ませるな考えさせるな躊躇うな、動き続けろ。
攻めを切らせないように、強引にナイフを振り続ける。
だが十回に一回くらいの頻度で反撃が飛んでくるようになり、十回に一回が五回に一回になり、五回が三回になり、そして。
当初、思い描いていた。
剣撃入り乱れる大立ち回りが始まった。
弾いて躱して、刃が空を舞う。
お互いに細かく掠りながら、有効打を狙って舞う。
完全に動きを見切られた。
善戦しているように見えるがこうなった時点で劣勢だ。
だが布石は出来た。
ここからのもう一押し、もう一段階加速と技の冴えを上げられれば決まる。
この状態から放たれる、まだ見せていない隠された切り札、究極奥義。
なんてものが暗殺者にあるわけがない。
キャロライン嬢やこの夫人にはあるかもしれないが、ナイフで刺せば人は死ぬので基本的にそういう相手の技を上回ったり制する技術を磨いていない。
だが俺は知っている。
人が突然、もう一段階強くなる方法を知っている。
俺は前世で聖女を暗殺しろといわれたが、なんだかんだで聖職者となり。最期は俺の次の刺客であるナンバーテンと刺し違えて死んだ。
だがあの時、ナンバーテンがナイフを聖女ウェンディに向けた段階で本来なら絶対に間に合わなかった。
だが間に合って、相討ちで死んだ。
あの瞬間、俺は自分の天井を超えていた。
あるんだ、人間にはそういうことが。
人は誰かを好きになることで、本来の自分を超える瞬間がある。
グロリア嬢の怪人アーチが良い例だ。
あの馬鹿怪人は確かに屈強で狂気的ではあるが無敵でも最強でもない。
だがあいつはグロリア嬢に対する日々脅威を徹底的に排除している。
どんな強敵にも何人相手にしても、倒され潰され折られ砕かれても、何度でも立ち上がりグロリア嬢に呼ばれれば必ず応える。
それはあいつがグロリア嬢に惚れているからなのだ。
まあ、何が言いたいかといえば俺はもう認めるしかないってことだ。
この状況を切り抜けるにはそれしかない。
良い機会だ、認めよう。
毛先が波打つその赤毛が。
好奇心旺盛で勤勉なところが。
何でも楽しもうとするところが。
狡猾で打算的でいて大胆不敵なところが。
その桜色の唇が。
人として俺を頼ってくれるおまえが。
ただどうしようもなく、他に言葉を探しても見つからない。
俺はアビィが好きなのだ。
恋以外にこの感情を形容する言葉はない。
これはもう、恋でしかないのだ。
だから俺は勝たなくてはならない。
俺の全てをもってアビィの命令に応えなくてはならない。
つまり。
「俺はあっ‼ アビィを、幸せにするんだああああ――――っ‼」
そう叫んで、俺は最高速でナイフを振る。
これは弾丸を弾いた時よりも、速い。
自分でも信じられないくらいの速度だ。
恋を認めた、アビィの為に動く俺を止められるものは何もない。
突然の叫びと加速に夫人は反応できない。
完全に脇腹を捉えた。
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