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17・執事、魔女に会う。

04ナンバーシリーズ。

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 ちらりとお守りを見ると、ガラス玉の一つが黒く色を変えていた。

 とりあえずそちらは問題ないのなら、心置こころおき無くやれる。

 俺がお守りに目線をうつした隙に女は接近して俺の首を狙ってナイフを振ってくるのを寸前でけて、最速で浅く腹を斬りつける。

 俺は殺さない戦闘をこの間のバセット家サンドバッグで学んだ。

 俺の動きは攻撃としては正解すぎるのだ、急所狙いや死にいた損傷そんしょうあたえることに長けすぎている。

 なら話は簡単、意図的に俺の中で最善手から悪手に切り替えればいい。

 わざと殺せない、わざと失敗をすれば良いのだ。

「痛っ、この!」

 女は斬られた腹をおさえて距離をとる。

 この距離で俺に投擲とうてき武器の類いは効かない。

 落ち着いて、少しずつ追い詰める。

 距離をとった女は、先程さきほど鉄筒てつづつよりかなり小さいものを俺に向けていた。

 連続で先程さきほどより高い破裂音が鳴り。

 同時に、凄まじい速さで五発の弾が飛んでくる。

 

 俺はナイフで全ての弾を弾く。 
  
「……え、今……なにしたの? 弾丸を、斬ったの? ナイフで⁉ 嘘でしょ⁉」

 と、女は驚きの声を上げる。

 いや実際ギリだった、凄まじく集中力を要したし体調によっては食らった。

「……まさか、? なんでナンバーシリーズなんてのがこんなとこにいんのよ!」

 女の言葉に俺は驚愕きょうがくする。

 ナンバーシリーズは俺の前世であるナンバーナインをふくむ、今はない国で作られていた暗殺者集団だ。
 使い捨ての殺人用自動人形を量産するあの国はもうない、とっくにほろんでいる。

 ナンバーシリーズも、凍結とうけつされたはずだろ。

「……ナンバーシリーズについて何を知っている?」

 俺は動揺どうようを隠して女に問う。

「あら、お話できるのね。ナンバーシリーズって寡黙かもくなのかと――」

「良いから話せ」

 ナイフを向けて無駄口を止めさせる。

「……私が知っているのはナンバースリーオーワン、三百一番目の暗殺者。一回仕事がかぶってめたことがあるのよ。結局標的も取られたけど」

 女は観念したのか少し語り始める。

「私みたいなただの殺しを仕事にしてるまがい物じゃなく、本物の暗殺者だった。まさか今回もナンバーシリーズが関わって…………え? ?」

 女は俺の後ろを見ながら、驚いた顔でそう言う。

 俺はあわてて振り向き構える。
 本物のナンバーシリーズなら気配を殺しきることができる。
 振り向いて上下左右方向に気をくばり警戒する。

 が、誰もいない。

 すぐに女に向き直すも、女は上着を大きく広げ翼のようにして建物から滑空かっくうして逃走していた。

「ばっかが見るー! ぶったのケツー! 絶対いつか殺す! ばーかばーか!」

 そう捨て台詞をいて、女は飛び去っていった。

「……っ、畜生おおおおおがああああ‼」

 俺は感情的に地団駄じたんだを踏む。

 やられた、確かにこのタイミングのナンセンスは上手すぎる。
 俺もやるけど、これは引っかかるとなかなかどうして腹が立つ。

「ふー…………まあいいか」

 息を深く吐いて心を落ち着かせる。

 まあいい、とりあえず殺さずに撃退げきたい出来た。

 あの女が何者なのかをつかむことは出来なかったが、俺が何者なのかもあの女にはわからないはずだ。

 一旦、良しとしておこう。

 とりあえずあの屋敷がどうなったのか、人妻魔女がしっかり俺の願いを聞き届けてくれたのかを確認しに行こう。

 女の残していった、長物の武器を回収して俺はリングストン公爵ていへ向かった。
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