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17・執事、魔女に会う。

03暗殺者の類い。

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 まあそれはさておき、俺はアビィとの待ち合わせの為にリングストン公爵の屋敷へと歩みを進めた。

 別に魔女が本物だろうと俺の知ったこっちゃない。

 へー、本当にいるんだなって程度ていどだ。

 アンジェラ嬢の話だと魔女がいると女神もいるかもみたいな話で、魔女が直接ちょくせつ女神と関係しているわけでもない。

 アンジェラ嬢やアビィだったらなかなかに興味を持つんだろうが、俺からしたら変わり者のグラマラスで美人な人妻ってだけだ。人妻じゃなきゃ一般的な成人男性程度ていどの興味もくかもしれんが。

 そんなことを考えながら路地を歩いていると。

 すれ違った一人の人間から、血の匂いを感じる。
 振り返らないように、視界のはしだけでそいつをとらえる。
 
 かなり目立たない格好をしてシルエットを隠すように上着を着ているが女だ。なにやら長い棒状のものを布にくるんで背負っている、なにかまではわからない。

 こいつ同族だ。
 暗殺者の類い、それも割と手練てだれやからだ。

 別に今の時代にも、人を殺めることを仕事にしているやつがいて然りだろう。め事の行き着く先はいつだって殺生せっしょうだ。

 なので普段なら人妻よりも興味がかないが……ここはリングストン公爵の屋敷に近く、屋敷には今アビィが居る。

 無視はできない。
 念の為に尾行することにした。

 距離を置いて、気配を完全に殺す。
 これに関してはあの超絶達人のキャロライン嬢をも超えている技術だ、それなりにきわめているつもりだ。

 尾行を続けると、女は背の高い建物の屋上に上がる。
 そこでつつみから鉄製のつつを取り出し、鼻歌交じりに何かを組み立てる。

 何をしているんだ?

 何かを組み終わると、組み終わった装置に取り付けられた望遠鏡で腹ばいに寝そべるように何かを見る。
 視線の先を追うとそこはリングストン公爵の屋敷だった。

 偵察ていさつか……? いやしかしだったら望遠鏡だけで良い気がするが。

 いや、まさか。
 

 そう気づいた時に、女から殺気がにじみ出る。

 かった、気づくのが遅すぎた。
 俺の暗殺のセオリーは三百年前で止まっている。
 まさか、この超長距離から人を殺せる道具が出来ているなんて考えもしなかった。

 最速で接近してそれを阻止しようとナイフを振りかぶったのと同時に。

 大きな破裂音。

 女の視線の先を注視すると窓の中で血が弾けたのがギリギリ視認できる。
 視力には自信があるが流石に遠すぎる、目標はリングストン公爵だろうが今はアビィも一緒のはずだ。

 この距離で正確に当てられるのか? アビィに当たったんじゃないのか?

 畜生、確認ができない、しかし今は。
 俺は一瞬の思考の後に、女にナイフを振り下ろす。

「なっ⁉」

 流石にかんが良くて避けられる。

「な、なによあんた! びっくりしたあ! 気配殺しすぎよ!」

 と、言いながらナイフを投げてくるがけきる。

 今から屋敷まで走っても仕方がない、とりあえず二射目を防ぐために今この場でこいつをどうにかするしかない。

「……何者なのよ。またわけわからない護衛が増えてるじゃないの、とりあえずまだ仕事中だから。殺すわよ」

 そう言って女は構える。
 誰相手に言ってんだ? この女。

 畜生、だが厄介だ。こいつは絶対に殺さずにらえるべきなんだろうが時間が。

 今すぐにでもアビィの元へ行きたいってのに。
 誰でもいい、アビィの元へ助けに行ってくれ!

『あらびっくりした、意外と早かったわね。願い事』

 頭の中に直接声が聞こえる。
 この声は。

『そうそう、美人魔女のサムよ。願い事はそれでいいのかしら?』

 ついに頭がイカれたとか、驚きとかそういうのは全部後だ。
 俺はその声に願う。

 たのむ、アビィの元へ助けに行ってくれ。怪我をしている奴がいたら治してやってくれ。

『おっけーい、心得こころえました』

 そう言って声は消えた。
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