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15・執事、怪人に教わる。
02お姉様。
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「恨みつらみね……、まあ参考にしといてやるよ。ご指導ご鞭撻ご苦労だった」
「あ? なんでテメーが偉そうなんだコラ」
なんて適当な返しをして少し思考を巡らす。
怨恨の線か……、それであればアビィはそこまで他所様から恨みを買うようなことはしていないはずだ。
授業を真面目に受けてそこそこ優秀な成績は収めているが、この学園において成績を気にするようなやつは居ない。
グロリア嬢との繋がりこそが悪目立ちみたいなところはあるが、暴力マスクの怪人様の噂のおかげで下手に手出ししてくる輩も居ない。
わりと平穏なんじゃないか? 余程頭が悪くない限りアビィを陥れるリスクを考えられないわけがない。
「あーら、アビゲイル! 相変わらず下品なことを、愚か者なのは相変わらずのようですね!」
と、取り巻きと数人の屈強な肉体を持つ執事らしき男を従えて、あからさまに華美な服装でモラルのない声量でどっかの貴族令嬢がアビィに声をかける。
いや、待て見覚えが……。
あ、こいつエミリー・バセットだ。
アビィの姉であり、アビィを虐げ続けてきたバセット家の一人だ。
そうか、こいつが居た。
アビィの一つ上ならまだここの学生だ。
アビィと俺でバセット伯爵の心をへし折ったので、転校や休学をさせるのかと思っていたが、あのクソ伯爵何考えてんだ頭悪すぎんだろ。
完全に失念していた。
どうする、面倒なことになる前にアビィを連れて帰るか?
楽しんでいるところ悪いが、どうにもエミリー・バセットは仕掛けてくる気満々の様子だぞ。
割り込むか……、仕方ない。
「おい待て動くな馬鹿。貴族相手に執事が割り込むとアビィ嬢の立場が悪くなる、今は堪えろ」
動こうとしたところをアーチに止められる。
「こうならないように事前に脅威の排除を怠ったおまえが悪いんだよ、ここはアビィ嬢の立ち回りに任せるしかねえ」
さらにアーチは俺の目を見てそう付け加える。
確かに、いくら姉妹とはいえ貴族同士の会話にただの執事が割り込むのはアビィを不利にするだけだ。
畜生面倒なことになった、まさか一筆まで書かせたのに心が折れたバセット伯爵が契約を違反してくるとは思わなかった。
いや……、これはエミリーの独断で行っているのか?
どちらにしても頭が悪いやつが行動力あるってのはタチが悪すぎる。何をしでかすかわからない。
俺はアビィの様子を確認するためにちらりと目線を送る。
「うん! 美味しい! こっちのお肉すごいわよ!」
と、アビィは美味しそうに料理を頬張っていた。
完全に無視の構えである。
あんだけの場をわきまえない声量が耳に届いていないわけがない。
マジか、徹底抗戦で行く気なのかこのプッツンお嬢様は。
「無視するんじゃないわよ! 愚図!」
無視されたことが頭にきたようで、エミリーはアビィの腕を掴んで怒鳴りつける。
「痛っ……、あらお姉様。私に話しかけていらっしゃったのですか? あまりに品のない大声でしたので、てっきり何かの動物が騒いでいるのかと思いました。私は今友人とお食事中ですので、動物ごっこはお一人でお願いできますか? 気が向いたらいつかお付き合いいたしますから」
そう言ってアビィは掴まれた腕を振り払い、触られた場所をさっさっと埃を落とすように払って食事を続ける。
煽りが上手すぎるだろ、舌戦の天才かこいつは。
「あ? なんでテメーが偉そうなんだコラ」
なんて適当な返しをして少し思考を巡らす。
怨恨の線か……、それであればアビィはそこまで他所様から恨みを買うようなことはしていないはずだ。
授業を真面目に受けてそこそこ優秀な成績は収めているが、この学園において成績を気にするようなやつは居ない。
グロリア嬢との繋がりこそが悪目立ちみたいなところはあるが、暴力マスクの怪人様の噂のおかげで下手に手出ししてくる輩も居ない。
わりと平穏なんじゃないか? 余程頭が悪くない限りアビィを陥れるリスクを考えられないわけがない。
「あーら、アビゲイル! 相変わらず下品なことを、愚か者なのは相変わらずのようですね!」
と、取り巻きと数人の屈強な肉体を持つ執事らしき男を従えて、あからさまに華美な服装でモラルのない声量でどっかの貴族令嬢がアビィに声をかける。
いや、待て見覚えが……。
あ、こいつエミリー・バセットだ。
アビィの姉であり、アビィを虐げ続けてきたバセット家の一人だ。
そうか、こいつが居た。
アビィの一つ上ならまだここの学生だ。
アビィと俺でバセット伯爵の心をへし折ったので、転校や休学をさせるのかと思っていたが、あのクソ伯爵何考えてんだ頭悪すぎんだろ。
完全に失念していた。
どうする、面倒なことになる前にアビィを連れて帰るか?
楽しんでいるところ悪いが、どうにもエミリー・バセットは仕掛けてくる気満々の様子だぞ。
割り込むか……、仕方ない。
「おい待て動くな馬鹿。貴族相手に執事が割り込むとアビィ嬢の立場が悪くなる、今は堪えろ」
動こうとしたところをアーチに止められる。
「こうならないように事前に脅威の排除を怠ったおまえが悪いんだよ、ここはアビィ嬢の立ち回りに任せるしかねえ」
さらにアーチは俺の目を見てそう付け加える。
確かに、いくら姉妹とはいえ貴族同士の会話にただの執事が割り込むのはアビィを不利にするだけだ。
畜生面倒なことになった、まさか一筆まで書かせたのに心が折れたバセット伯爵が契約を違反してくるとは思わなかった。
いや……、これはエミリーの独断で行っているのか?
どちらにしても頭が悪いやつが行動力あるってのはタチが悪すぎる。何をしでかすかわからない。
俺はアビィの様子を確認するためにちらりと目線を送る。
「うん! 美味しい! こっちのお肉すごいわよ!」
と、アビィは美味しそうに料理を頬張っていた。
完全に無視の構えである。
あんだけの場をわきまえない声量が耳に届いていないわけがない。
マジか、徹底抗戦で行く気なのかこのプッツンお嬢様は。
「無視するんじゃないわよ! 愚図!」
無視されたことが頭にきたようで、エミリーはアビィの腕を掴んで怒鳴りつける。
「痛っ……、あらお姉様。私に話しかけていらっしゃったのですか? あまりに品のない大声でしたので、てっきり何かの動物が騒いでいるのかと思いました。私は今友人とお食事中ですので、動物ごっこはお一人でお願いできますか? 気が向いたらいつかお付き合いいたしますから」
そう言ってアビィは掴まれた腕を振り払い、触られた場所をさっさっと埃を落とすように払って食事を続ける。
煽りが上手すぎるだろ、舌戦の天才かこいつは。
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