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13・聖女、異変に気づく。

03民を導く。

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 そうです、王族がいました。

 私は目を閉じて、頭の中で全ての点を線でむすんでいきます。

 まず数年前のキャロライン・エンデスヘルツ公爵令嬢と第一王子プライデル・メルバリアの婚約破棄騒動そうどう

 これも思えば発展派がこころざす民主化が進み、王族が不利益ふりえきこうむるものでした。

 ですが第一王子は大怪我を負い、王位継承は第二王子へとうつりました。
 第二王子は聖女である私と婚約関係にあり、このまま婚姻こんいんが成されれば今度は教会派に力がかたむいてしまう。

 そうなれば今度は技術的な進歩が遅れてしまう。

 故の聖女退任案と婚約破棄、しかしこれは私の抵抗ていこうにより現状維持いじになりました。
 それで教会派の力をぐ為に中立派ゴールドマン公爵家と教会派侯爵家であるアンジェラの婚約破棄が行われたのです。

 さらに今度は中立派にもいくつか婚約破棄を仕掛けていたことでしょう。

 そして、発展派クーロフォード伯爵家と教会派リングストン公爵家の婚姻こんいんに関しても両派閥りょうはばつにかなり力を付けさせてしまうことになります。

 リングストン公爵が発展派の意見に同調どうちょうすれば民主化の波が、リングストン公爵が発展派を取りめばただでさえ力をつけている教会派がより強固きょうこなものになってしまう。

 その為に幾度いくども婚約破棄させようと画策かくさくして、失敗に終わっていたのでしょう。

 ゆえに、クーロフォード家の味方を減らす為に親交の深いフィリップス家をおとしいれようしたとすれば、その噂に信憑性しんぴょうせいが生まれてきます。

 しかして、味方を減らすこと自体には成功しましたが、ネビル家で起きた事件も合わさり発展派の立場が弱くなりすぎてしまったということでしょうか。

 それでもなお昨今さっこんのワタナベ男爵の技術革新ぎじゅつくしんによりまだまだ民主化の火は消えていない。

 だからいまだにクーロフォード家をおとしいれようと画策かくさくしているのでしょう。

「……つながりました」

 私は思考を終え、そう言って目を開く。

「びっくりした、急に寝ちゃったのかと思ったよ。たまにやるよねそれ、やめた方がいいよ怖いから」

 そんな私にやや引きながらアンジェラはそう言う。

 確かにそうですね、申し訳ございません。
 それはともかく、この国の異変からその現況まである程度ていど突き止めることが出来ました。

 そうなれば後は。

 

 そういうことでしょう。

 王族の不正を正すのも聖女の役割なのです。

 神託しんたくなのでしょうか。

 ただ、一つだけ私は迷う。

 王族の不正を正すことによってジャレッド王子との関係が変わってしまうのではないのか……不安になってしまいます。

 ジャレッド王子の両親やご兄弟を糾弾きゅうだんしたら、この国がひっくり返すようなことになりかねません。

 …………迷う?

 

 神の教えに迷い、躊躇ためらい、動揺どうようするなんて。

 私は私の異変に気づいてしまう。

 私は確かに変わりました、でもそれは聖女という基準の中での話だと思っていました。

 それでは、まるで……。

「ジュリアナさ、何を考えるかはわからないけど、それって――」

 内心で動揺どうようする私にアンジェラが不意に語りかける。

「ちゃんと人間みたいだよ。貴女はこの国始まって以来初めて、聖女から人になって、人間として民をみちびく聖女になるのかもね」

 アンジェラは優しい顔でそう言った。

 そう、今の私はまるで人間なのです。
 それは変化なのでしょうか、悪化なのでしょうか。

 私は手首に付けられた爆弾の遠隔えんかくスイッチをねた腕輪を触り、再び思考する。

 と、まあ、祈るのではなく考えることをしてしまうようになったのが聖女として一番の変化だということには。

 私はこの時、まだ気づけてはいないのでした。
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