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10・執事、聞かされる。
03異世界転移。
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「じゃあまずは君の経緯から聞こうか、アビゲイルさん」
男爵も少し構えて、傾聴姿勢を作る。
「…………私には、前世である日本人、高田まりえの記憶があるの――」
そこからアビィは、荒唐無稽な与太話を語り出した。
まずアビィは、あの日、俺がバセット家に足を踏み入れた日に前世の記憶を思い出したのだと言う。
前世は、ここではない別の世界にあるニホンという島国に住む難病を抱えたタカダマリエという少女だった。
タカダマリエは難病により、生まれてからほぼ全ての時間を病院で過ごして死んだらしい。
アビィが体調不良で倒れたと同時に思い出した。
そして、元々のアビィの意思や自我というのは高熱の苦しみから死んでしまい、今の感覚としてはアビィの記憶と肉体を持つタカダマリエという状態だと。
「なるほど……」
そんな与太話を聞き終えて、男爵はそう呟く。
「どう? 驚いた?」
アビィは俺に向けて問う。
いや驚いただろ、こんな話。
要はバセット家で虐げられすぎて壊れてしまったアビィが作り出した妄想設定をこんなに堂々と話してしまうほどに、おまえは頭がいかれているってことだ。
なんて、流すことは俺には出来ない。
「いや、それ俺もなんだけど」
他ならぬ俺も、前世の記憶を持ち合わせているのだから。
「……え? どゆこと……?」
大口を開けてポカンと疑問符を頭に浮かべてこちらを見る、お嬢様の口を閉じさせる為に俺は語る。
「俺には生まれた時から、前世である三百年前の人生の記憶がある――」
そこから、俺は誰にも言ったことのないことを語った。
三百年前ある仕事をしていたこと。
とある小娘に出会い、生き方が変わったこと。
前世の記憶がある故に読み書きや計算を覚える必要がなかったこと。
小娘を守り死んだこと。
五十八人を殺した暗殺者だったことや、そもそも当時の聖女である小娘を暗殺するはずだったとかは伏せておいた。流石にこれは口にするのは躊躇う。アビィに嫌われたくはない。
「えー、言いなさいよ。あんた、そういうこと……」
「いや別にこれは言う必要ないことだろ、おまえの言うことを信じられる根拠としての話であって、誰それ構わずこんなこと言ってたら病院連れてかれるぞ」
それもそうか、とアビィが色んなことに納得がいったと同時に湧いた色んな疑問を後で質問攻めにしてやろうとしているのが透けて見えるところで。
「二人とも僕ともかなり違うな……」
と、男爵が呟き、続けて。
「まず僕は転生者じゃない、言うなれば転移者だ――」
ワタナベ男爵は語り出す。
男爵は、アビィの前世と同じくニホンの生まれで様々機械を作るエンジニアだったそうだ。
発電機や動力機構、陸海空を移動するもので作ってないものはなく、宇宙に行くための乗り物まで作っていたという。
ある日、いつものように開発に取り組んでいたら突然光に包まれ五年前にこの国へとやって来た。
その際に肉体は若返り、言葉も文字も読める状態にあったらしい。
「……全然違いますね。異世界転移……、異世界召喚パターンとでもいうんでしょうか」
アビィが粗方説明を聞いてそう漏らす。
確かに、全然違う。
記憶だけでなく肉体も若返り、言葉や文字の読み書きまでできる状態というのは。
何者かに贔屓されているようにしか思えない。
「そうだね、違う。何より……」
男爵はそう前置き、続けて。
「君たちはあの女神には、会っていないんだよね?」
とてつもなく、荒唐無稽な存在を口にした。
男爵も少し構えて、傾聴姿勢を作る。
「…………私には、前世である日本人、高田まりえの記憶があるの――」
そこからアビィは、荒唐無稽な与太話を語り出した。
まずアビィは、あの日、俺がバセット家に足を踏み入れた日に前世の記憶を思い出したのだと言う。
前世は、ここではない別の世界にあるニホンという島国に住む難病を抱えたタカダマリエという少女だった。
タカダマリエは難病により、生まれてからほぼ全ての時間を病院で過ごして死んだらしい。
アビィが体調不良で倒れたと同時に思い出した。
そして、元々のアビィの意思や自我というのは高熱の苦しみから死んでしまい、今の感覚としてはアビィの記憶と肉体を持つタカダマリエという状態だと。
「なるほど……」
そんな与太話を聞き終えて、男爵はそう呟く。
「どう? 驚いた?」
アビィは俺に向けて問う。
いや驚いただろ、こんな話。
要はバセット家で虐げられすぎて壊れてしまったアビィが作り出した妄想設定をこんなに堂々と話してしまうほどに、おまえは頭がいかれているってことだ。
なんて、流すことは俺には出来ない。
「いや、それ俺もなんだけど」
他ならぬ俺も、前世の記憶を持ち合わせているのだから。
「……え? どゆこと……?」
大口を開けてポカンと疑問符を頭に浮かべてこちらを見る、お嬢様の口を閉じさせる為に俺は語る。
「俺には生まれた時から、前世である三百年前の人生の記憶がある――」
そこから、俺は誰にも言ったことのないことを語った。
三百年前ある仕事をしていたこと。
とある小娘に出会い、生き方が変わったこと。
前世の記憶がある故に読み書きや計算を覚える必要がなかったこと。
小娘を守り死んだこと。
五十八人を殺した暗殺者だったことや、そもそも当時の聖女である小娘を暗殺するはずだったとかは伏せておいた。流石にこれは口にするのは躊躇う。アビィに嫌われたくはない。
「えー、言いなさいよ。あんた、そういうこと……」
「いや別にこれは言う必要ないことだろ、おまえの言うことを信じられる根拠としての話であって、誰それ構わずこんなこと言ってたら病院連れてかれるぞ」
それもそうか、とアビィが色んなことに納得がいったと同時に湧いた色んな疑問を後で質問攻めにしてやろうとしているのが透けて見えるところで。
「二人とも僕ともかなり違うな……」
と、男爵が呟き、続けて。
「まず僕は転生者じゃない、言うなれば転移者だ――」
ワタナベ男爵は語り出す。
男爵は、アビィの前世と同じくニホンの生まれで様々機械を作るエンジニアだったそうだ。
発電機や動力機構、陸海空を移動するもので作ってないものはなく、宇宙に行くための乗り物まで作っていたという。
ある日、いつものように開発に取り組んでいたら突然光に包まれ五年前にこの国へとやって来た。
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「……全然違いますね。異世界転移……、異世界召喚パターンとでもいうんでしょうか」
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確かに、全然違う。
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何者かに贔屓されているようにしか思えない。
「そうだね、違う。何より……」
男爵はそう前置き、続けて。
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