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2・使用人、間違える。

02襲撃犯。

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 しかして職務内容は給仕と納品と雑務だったのだが、まあこのくらいは雑務にふくんでも良いだろう。

 俺は上着の内側に入れていたナイフを抜いて、六人の男の首にすべらす。

 二秒はかかると踏んでいたが一秒で終わってしまった。

「……なんだ? きゃくってわけではないのか?」

 あまりのごたえのなさに首をかしげる。
 貴族の屋敷を襲撃するのならある程度の訓練を受けた玄人くろうとだと思っていたのだが、全員素人だ。おそらく自分たちが死んだことにも気づけていないだろう。

 まだ動くことを想定して動いたのでモロに返り血を浴びてしまった。このくらいの相手なのならもっとていねいに動いて良かった。

 貴族の襲撃は死罪のはずだ。
 はこちらにある、どうせ殺されるならこんなこと誰がやっても変わりはしない。

 と、まあ当たり前のように。
 ごく当然のように俺は六人もの命をうばってしまったわけだが、一般的な平民の家に生まれ育ち木材加工所で働いていたような善良な人間が

 

 とっぴょうもないことだし、こうとうけいだと自覚もしているし、他にこんな経験をしている者がいるとも思えないが嘘ではない。 

 今から三百年は前になるだろうか、俺は今はもうない国の暗部にぞくするいわゆる暗殺者だった。

 標的を殺す為に使い捨ての自動人形として九番目に生まれて育てられ鍛えられ矯正され強制された暗殺兵器。

 ナンバーナイン、それが俺の名前だった。

 人間ではなく暗殺用自動人形として五十八人を殺し、人間として五人を殺し、さいはそのうちの一人と刺し違えて死んだ。

 聖女……いやただの小娘との出会いによって俺は人間となり、人間として死んだ。

 まあ俺の前世で語るべきところは、ただの小娘と出会い以降だけだ。

 なんなら今の人生の方が語るべきことは多い、なんせ今度は生まれた時から人間なのだ。もうすでに前世よりも長生きしているし。

 俺はあくまでも少々魂なんてものに、暗殺用自動人形としての習性が染み付いたままで読み書きや計算を勉強する必要が無かっただけの一般的な平民なのである。

 かんきゅうだい
 俺は命令通り、お嬢様の命を狙うていやからから助け出したのでゆっくりと振り返り。

「完了いたしました。お嬢様」

 そう報告をする。
 まあ厳密には襲撃犯が総勢何人いるのか分からないので気は抜けないのだが。

 お嬢様はその報告を、目を丸くして聞いていた。
 無理もない、今の今まで追っかけ回してきた人間が目の前で六人も死ねば誰だって処理が追いつかなくもなる。

 数秒ののち、お嬢様は口を開く。

「ありがとう、それから、私は今から意識を失います」

 そう言って、お嬢様はくずれるように倒れた。

「え、ええ……?」

 思いもよらない宣言のあとかんはつ入れずに意識を失ったのことにまどう。

 すぐに駆け寄りみゃくはくや呼吸と矢や針を撃ち込まれていないかを確かめる。

 ……よし、矢や針のこんせきも毒物などの反応もない。

 発熱を確認したがすぐに命に関わるものではないだろう。医学的な知識はとぼしいが死にいたるかどうかの判断には自信がある。体調不良と疲労と緊張がけたのが重なったのだろう。 

 さて、どうするかだ。
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