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7・お嬢様、お茶会を開く。

04お友達。

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 私が台所の扉を開けると、そこには上着の内側に手をしのばせてピクリとも動かないナインと。

 革の手袋して、腰を落として低重心に拳を構えて同じくピクリとも動かないアーチ執事が。

 空気が震えるほどの気迫でにらみ合っていた。

「いや、ちょ、何やってんのよ! やめなさい!」

 私の静止に、ナインはゆっくりと上着の内側から手を抜き出して。

「……かしこまりました。お嬢様」

 と、気迫を解いて力を抜くように答えた。
 その様子を見てアーチ執事も、構えを解いた。

 そんなアーチ執事に。

「アーチボルト・エドワードさん、先日はうちのナインがご迷惑をかけました。まずはそれを謝罪いたします。申し訳ございませんでした」

 私は深く頭を下げる。

 それに合わせて。

「済まなかった」

 ナインも頭を下げる。

「……なっ! 何が目的なんだ、てめえら! やめろやめろ怖い怖い、頭を下げ続けるな! 僕も殴りすぎたから!」

 アーチ執事は私たちの様子にあわてる。

「そうですか、ありがとうございます。ではお話をいたしましょう」

 私は頭を上げてアーチ執事にそう言って、続けて。

「お茶の時間なんだから、お喋りするの。喧嘩はやめましょう?」

 不敵にのたまった。

「…………目的はなんだ?」

 私の言葉の意図をさっしたアーチ執事は諦めるように、口を開いた。

「私はグロリア嬢とリングストン公爵と、お友達になりたいだけです。二人に危害を加えたり、脅威になるつもりはありません。中立派とも違う、発展派と教会派が手を取り合うなんて面白そうな二人と仲良くなりたい」

 素直に率直に答える。
 まあバセット家を振り切るのに、革命派は都合が良いというのもあるが、大枠はおおむねこれだ。

「……信用出来るわきゃねえだろ、そんな暗殺者みてえなやつ連れてて、きなくせえったらありゃしねえぞ。それだけが理由だとは思えないね」

 私の説明に、アーチ執事はかなり怪しんだ様子で答える。

「そうですね……、確かにそれだけではないです」

 私はアーチ執事の反応を加味して、更に本音を語る。

「私は幸せになりたいのです。学園に通い、友達を作って、勉強して、美味しいものを食べて、恋をして、そんな幸せをつかみたいのよ。幸せになるには友達は誰でも良いわけじゃない、面白そうで可愛らしい。純真で無垢むくな、あのグロリア嬢とお友達になりたいと思ったのよ」

 真っ直ぐアーチ執事の目を見て。

「つまり、私の為よ。文句あんの?」

 そう啖呵たんかを切った。

「…………はあ……、こいつも馬鹿の類いか……」

 私の話を聞き終えたアーチ執事は、頭を抱えてあきれるように。

「わかったよ。僕の負けだ、グロリア嬢の幸せにも友達は必要だ。仲良くしてやってください」

 アーチ執事は少し緊張を解き、私に向けてそう言った。

勿論もちろん、そのつもりよ」

 私は、にこりと笑顔でそう返す。

「とりあえず早く戻った方が良いですよ。僕らもすぐにお茶をお持ちしますから、お菓子を持って戻ってください。うちの馬鹿令嬢は恐らく余計なことしてるんで、一人にするとろくな事しないので」

「? まあ、はい」

 アーチ執事の言葉を受けてダイニングに戻ると。

「あ、アビィ! 違うのです! いや、その、ごめんなさい! 助けて欲しいのですわ!」

 グロリア嬢はダイニングに置かれていた棚にぶら下がって、今にも落ちそうになりながら私を出迎でむかえた。

「ええ⁉ 何がどうなって、そうなった⁉ ちょ、椅子、ほら、もう足付くからゆっくり、慎重に、そうそう……ほっ……」

 椅子を移動してグロリア嬢を下ろして、胸をで下ろす。

「助かりましたわ……、ありがとうアビィ、好きに部屋を見ても良いと言われたので、普段見れないところを見ようと椅子に登ったら椅子が倒れてしまったのですわ」

 と、グロリア嬢は今の状況に対する説明を述べた。

「…………ぷっ、……く、……、あっははははは! なんで登っちゃうのよ! あっははははは!」

 私はその説明にこらえきれずに大笑いしてしまう。

「笑いすぎですわ! ふふふっ」

 グロリア嬢も釣られて笑い出す。
 なるほど、これはアーチ執事も過保護になる。

 兎に角、今日私に初めての友達、それもとびきり可愛くて面白い友達が出来たのだった。
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