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6・執事、怪人に襲われる。

04お開き。

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 兎に角。
 グロリア・クーロフォードとマーク・リングストンの周辺は危険すぎる。

 あの怪人にも二度と会うことはないだろう。
 まあ流石に次は最初から殺す気でやるので問題はない。

 そんなことを考えながらふらふらと、お嬢様との合流場所へと向かっていると。

「ナイン! 近くにいますか!」

 と、お嬢様の声が耳に入る。

 呼ばれたならば行くしかない、俺は執事だ。

 なるべく平然をよそおい、お嬢様の後ろから。

「……お呼びでしょうか、お嬢様」

 そう声をかけたところで気づく、隣に座っているのはこの学園の弩級どきゅう地雷であるグロリア・クーロフォードその人じゃあないか。

「ええ、こちらグロリア・クーロフォー…………ってなにあんた! どうしたのよ!」

 お嬢様はこちらを振り向き驚愕きょうがくする。

 まあそりゃそうだ、俺は今それなりに死にそうなのだから。

「何したらそんな大怪我できるのよ! おま、学校だぞここ!」

 お嬢様が口調をくずすほどあわてて駆け寄る。

 説明はするべきだが、グロリア・クーロフォードに聞かれて良い話じゃない。

 一旦誤魔化ごまかすしかない。

「……階段から落ちました。ご心配なく」

 古今東西ここんとうざい、怪我を誤魔化ごまかすための定型文はこれに限る。 

 絶対なんかあっただろ、という顔でお嬢様は俺を見つめる。いや本当にさっしてくれ。

「た、大変ですの! だ、誰か、アーチ! アーチボルトはどこですの! 怪我の手当を!」

 俺の姿を見てグロリア嬢は取り乱して自身の執事を呼ぶ。

 いや大事にされたくはないのだが、流石にこれ以上は誤魔化ごまかしようがないか。

「……はい。お呼びでしょうか、グロリア様」

 すると呼び掛けに答えるように、アーチとやらが現れる。

 その姿に俺は驚愕きょうがくする。

 刺傷さしきずと切り傷で血だらけの割に、覆面でもかぶっていたのかの如く顔だけ血が付いてないボロボロの男が現れた。

 こいつが、怪人じゃねえか。

「な! どうしたのですアーチ!」

 グロリア嬢はボロボロの執事に当然の質問を投げかける。

 怪人アーチはちらりと、俺の方を見てアイコンタクトを取る。

 さっした。
 こいつ、グロリア嬢にも秘密裏ひみつりに脅威の排除を行っているのか。

 この場で殺り合う気はない、そういうことだな。

 俺も流石にこの場でどうにかする気はないと、怪人アーチに目で伝える。

 すると。

「…………階段から落ちました」

 と、どこかで聞いたようなことを答えた。

「また落ちたのですの⁉ あなたこの間もそう言っていたでないですの! そんなに階段が苦手なのですの⁉」

 グロリア嬢は怪人アーチの言葉をに受けて大いに心配をする。

 とりあえずその場は二人のあわてるお嬢様によりお開きとなった。

 引いてくれて助かった。
 流石に先程さきほどの状態にまで緊張感を戻すのは難しいし、なかなかにこちらもダメージが深刻だ。

 殺すにしてもせいするにしても、俺は再起不能になっていただろう。

 ただ何より、俺がここまで苦労してグロリア嬢との距離取るために諜報ちょうほういそしんでいたのに。

 なんでこのプッツンお嬢様は楽しくお喋りしてんだこいつ。

 まあ、今回はあの怪人と俺の大怪我でお開きにすることができたので良しとしておこう。

「で? 何があったのよ。あのアーチ執事と、説明しなさい。ナイン」

 屋敷に戻り、お嬢様は自分で傷の手当をする俺に説明を求める。

「……かしこまりました。お嬢様」

 俺は、怪人に襲われるという奇妙な体験を語り出した。
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