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6・執事、怪人に襲われる。
01怪人。
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俺、ナイン・ウィーバーはアビゲイル・バセットお嬢様に仕える執事だ。
今は学園に通い始めたお嬢様に同行して、主に身の回りの世話をしている。
お嬢様の暮らす屋敷で、食事を作ったり掃除したり洗濯をしたり。
風呂で身体を洗えという指示に関しては流石に驚いたが。
お貴族様となると、平民に裸を見られるくらい平気なのだろうか、お嬢様はその辺の羞恥心が偉く欠落しているように思える。
だがあの生傷だらけの身体を見るに、バセット家で虐げられ続けてきたことが原因なのだろう。
それにしてもあの振る舞いは身体を洗われ慣れているというか……、病人や老人が介護を受け入れるかのようにも思えたが……まあそれはいい。
それ以外に俺は、お嬢様の通う学園の内部を探るように言われている。
お貴族様の子息令嬢が集う学園だ、確かに平穏に過ごすには勢力や対立関係を把握するのは大切である。
あのプッツンお嬢様が慎重に動こうというのは良い傾向だ。
そこで俺は、この学園における一番の地雷原がどこなのかを調査することにした。
それはすぐにわかった。
教会派トップのマーク・リングストン公爵と婚約者の発展派中枢であるクーロフォード伯爵家令嬢のグロリア・クーロフォード嬢のグループだ。
教会派と発展派の婚約なんて問題起こらないわけがない。
このグループは避けて通らなくてはならない、それをお嬢様に伝えるとお嬢様はこの二人についてもう少し調べるように申し付けてきた。
この地雷を踏まないようにする為だろう、俺もそれには大いに賛成なので調べることにした。
とはいえ、俺に諜報の技術なんてものはない。
なので手当り次第に他の貴族の執事や侍女に聞いて回り、グロリア嬢を尾行したりして調べた。
自分としてはまあまあ上手くやっていたつもりだが、どうやら俺自身が地雷を踏んでしまったらしい。
「何ちょろちょろ嗅ぎ回ってんだ……? 何が目的か知らねえが、暫くお粥しか食えねえと思え」
諜報に勤しむ俺に対して、覆面を被った男が言った。
なるほど。
これが暴力マスクの怪人ってやつか。
いや今まで調べてきて、散々出てきた情報としてグロリア嬢を陥れようとすると、暴力マスクの怪人という覆面の男に顔が無くなるまで殴られる。というものだった。
恐らくこいつはクーロフォード家かリングストン家の護衛というか工作員だ。
事前に策を探り、マーク・リングストン公爵とグロリア嬢の脅威になり得るものを片っ端から潰していく。
そんな役割を担っているのだろう。
だが、俺はリングストン公爵にもグロリア嬢にも危害を加えるつもりは無い。
むしろ関わらない為に一番安全な距離を探ろうとしていたのだ。
顔が無くなるまで殴られる筋合いはない。
なので先程から怒涛のラッシュで殴りかかってくるのを、躱し続ける。
しかしてこれ、結構こいつの攻撃甘くない。
この数秒でかなり俺の動きに合わせて修正してきてやがる。
これ当たるまで時間の問題だ。
「待て、俺はそちらに危害を加えるつも――ッ」
弁解をしようとした瞬間に、思い切り右脇腹を打ち抜かれる。
肋が軋む、折れる寸前で回転して打を逃がす。
危ない、こいつ本当に甘くない。
そりゃあそうだ、もう始まってんのにお喋りしようなんてのは馬鹿だ。そんな段階はもうとっくに終わってる。
致し方なし。
回転して、距離を取って構える。
「……お粥は好きじゃないんでね」
俺はやり合うことに決めた。
脚を使って、フットワークで翻弄する。
こいつは甘くないし、かなり使うし、脅威を排除するプロだとは思うが、何かの武術の達人でもなければましてや暗殺者でもない。
超一流の喧嘩屋とでもいうのか、ただの馬鹿強い素人のように思える。訓練や修練などの匂いを感じない。
これでも一応前世では近接格闘戦もそれなりに訓練して、今も身体は鍛えている。
そこの差で茶を濁して逃げ切る。
相手の右フックを潜って躱し、肋骨に掌底を合わせる。
が、怯むこともなく左膝で顎を打ち抜かれる。
こちらが怯んだところを逃さず徹底的に打ち込んでくる。
俗にいうサンドバッグ状態というやつだ。
いや、本当にまずい。
これ以上は無理だ。
今は学園に通い始めたお嬢様に同行して、主に身の回りの世話をしている。
お嬢様の暮らす屋敷で、食事を作ったり掃除したり洗濯をしたり。
風呂で身体を洗えという指示に関しては流石に驚いたが。
お貴族様となると、平民に裸を見られるくらい平気なのだろうか、お嬢様はその辺の羞恥心が偉く欠落しているように思える。
だがあの生傷だらけの身体を見るに、バセット家で虐げられ続けてきたことが原因なのだろう。
それにしてもあの振る舞いは身体を洗われ慣れているというか……、病人や老人が介護を受け入れるかのようにも思えたが……まあそれはいい。
それ以外に俺は、お嬢様の通う学園の内部を探るように言われている。
お貴族様の子息令嬢が集う学園だ、確かに平穏に過ごすには勢力や対立関係を把握するのは大切である。
あのプッツンお嬢様が慎重に動こうというのは良い傾向だ。
そこで俺は、この学園における一番の地雷原がどこなのかを調査することにした。
それはすぐにわかった。
教会派トップのマーク・リングストン公爵と婚約者の発展派中枢であるクーロフォード伯爵家令嬢のグロリア・クーロフォード嬢のグループだ。
教会派と発展派の婚約なんて問題起こらないわけがない。
このグループは避けて通らなくてはならない、それをお嬢様に伝えるとお嬢様はこの二人についてもう少し調べるように申し付けてきた。
この地雷を踏まないようにする為だろう、俺もそれには大いに賛成なので調べることにした。
とはいえ、俺に諜報の技術なんてものはない。
なので手当り次第に他の貴族の執事や侍女に聞いて回り、グロリア嬢を尾行したりして調べた。
自分としてはまあまあ上手くやっていたつもりだが、どうやら俺自身が地雷を踏んでしまったらしい。
「何ちょろちょろ嗅ぎ回ってんだ……? 何が目的か知らねえが、暫くお粥しか食えねえと思え」
諜報に勤しむ俺に対して、覆面を被った男が言った。
なるほど。
これが暴力マスクの怪人ってやつか。
いや今まで調べてきて、散々出てきた情報としてグロリア嬢を陥れようとすると、暴力マスクの怪人という覆面の男に顔が無くなるまで殴られる。というものだった。
恐らくこいつはクーロフォード家かリングストン家の護衛というか工作員だ。
事前に策を探り、マーク・リングストン公爵とグロリア嬢の脅威になり得るものを片っ端から潰していく。
そんな役割を担っているのだろう。
だが、俺はリングストン公爵にもグロリア嬢にも危害を加えるつもりは無い。
むしろ関わらない為に一番安全な距離を探ろうとしていたのだ。
顔が無くなるまで殴られる筋合いはない。
なので先程から怒涛のラッシュで殴りかかってくるのを、躱し続ける。
しかしてこれ、結構こいつの攻撃甘くない。
この数秒でかなり俺の動きに合わせて修正してきてやがる。
これ当たるまで時間の問題だ。
「待て、俺はそちらに危害を加えるつも――ッ」
弁解をしようとした瞬間に、思い切り右脇腹を打ち抜かれる。
肋が軋む、折れる寸前で回転して打を逃がす。
危ない、こいつ本当に甘くない。
そりゃあそうだ、もう始まってんのにお喋りしようなんてのは馬鹿だ。そんな段階はもうとっくに終わってる。
致し方なし。
回転して、距離を取って構える。
「……お粥は好きじゃないんでね」
俺はやり合うことに決めた。
脚を使って、フットワークで翻弄する。
こいつは甘くないし、かなり使うし、脅威を排除するプロだとは思うが、何かの武術の達人でもなければましてや暗殺者でもない。
超一流の喧嘩屋とでもいうのか、ただの馬鹿強い素人のように思える。訓練や修練などの匂いを感じない。
これでも一応前世では近接格闘戦もそれなりに訓練して、今も身体は鍛えている。
そこの差で茶を濁して逃げ切る。
相手の右フックを潜って躱し、肋骨に掌底を合わせる。
が、怯むこともなく左膝で顎を打ち抜かれる。
こちらが怯んだところを逃さず徹底的に打ち込んでくる。
俗にいうサンドバッグ状態というやつだ。
いや、本当にまずい。
これ以上は無理だ。
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