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2・女はただ、騎士として生きたかっただけなのに。
7.鋼鉄の大矢。
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腹を打ち抜き。
顎を叩き。
目を潰し。
しっぽを砕き。
羽を裂き。
反撃を貰っても、確実に【竜の息吹】を発生前に潰して叩き続ける。
目に見えて竜の余裕が無くなっていくのが、私にもわかった。
依然として山の神優勢の中、強烈な前蹴りが竜の腹に刺さった。
「ゴェ……ッ」
竜は悶えるように口を開けて息を吐き切る。
その隙を狙って、山の神が攻撃を続けようとした刹那。
竜は口から【竜の息吹】を放った。
魔法は基本的に手から発動される。
出力の高い魔法は自身をも傷つけることがある。
なので、手より先や体外からしか放てない。
この出力の魔法を口内から……? 頭が弾け飛んでもおかしくな……そうか【完全魔法無効】で自身の魔法から受けるダメージを消しているのか。
山の神は咄嗟に倒れ込むように躱すが掠ってしまい背中を焼かれる。
そのまま蹴り飛ばされ、足の爪で裂かれながら吹き飛ぶ。
「舐めるなよ化物がぁあ――――――ッ!」
竜は怒声を上げ【竜の息吹】を連射する。
山の神は半身に構えて器用に躱す。
だが私の目から見ても、先程より動きが悪い。
間合いも遠く、打が届かない。
一転して、一気に劣勢だ。
しかもこれは……、竜はこのまま削り続けることを狙っているのではない。
弾幕を張って回避させ続けて慣れさせ。
回避行動の終わり、回避不可能なタイミングで三射目を同時に放つ。
通常魔法を三射同時に撃つのは大賢者などが持つ魔法スキルで魔法を空間発生させなくては出来ない。
でもあの竜は口内から【竜の息吹】を放てる。
というか、竜の息吹という名称はそもそも口から放てることから来た名称だったのか……今更ながら納得だ。
そして、恐らく私の推測は正しい。
私を超える弓使いはそうそう居ない。
遠距離から素早い相手を追い詰めるのなら、私ならそうする。
竜は怒鳴り声を上げてはいるが、思った以上に冷静だ。
だが山の神は顔には出さないが想像以上のダメージに焦ってきている。
非常に不味い。
伝えようにも言葉は通じない。
助けようにも私の攻撃力では竜に届かな――。
私はストレージから、それを出す。
鋼鉄の大矢。
過去に威力を求めて、特注で作った全て鋼鉄で出来た重くて硬い大きな矢だ。
仲間の騎士や鍛冶屋にも、笑われずにもはや悲しまれたほど迷走した結果に生まれたものだ。
何せ重くて飛ばないのだから。
何とか射出しようと繰り返したが、筋力ステータスが上がっただけで矢が飛ぶことはなかった。
でも今の私なら……!
私は鋼鉄の大矢を弓に添えて構える。
重い……、だが引ける!
弓が悲鳴を上げ、私も身体をブレさせないように中から骨と肉を絞める。
狙いは、口から【竜の息吹】を放つその瞬間。
口内であれば、私の攻撃力でも貫けるはず。
信じろ、確信しろ。
必中の感覚を体中に廻らせろ。
集中しろ、私は今、身体全体で弓に成れ。
厳しい角度から魔法を放たれ、山の神は回避不可能な体勢に追い込まれる。
予想通りそれを狙って、三射目を放とうと口を開く。
開いたな、開くよな、では必中だ。
筋繊維が千切れる音が身体の中を駆け巡りながら、私は矢を放った。
「ギョア……ッ⁉」
竜の口内を鋼鉄の大矢が貫いた。
顎を叩き。
目を潰し。
しっぽを砕き。
羽を裂き。
反撃を貰っても、確実に【竜の息吹】を発生前に潰して叩き続ける。
目に見えて竜の余裕が無くなっていくのが、私にもわかった。
依然として山の神優勢の中、強烈な前蹴りが竜の腹に刺さった。
「ゴェ……ッ」
竜は悶えるように口を開けて息を吐き切る。
その隙を狙って、山の神が攻撃を続けようとした刹那。
竜は口から【竜の息吹】を放った。
魔法は基本的に手から発動される。
出力の高い魔法は自身をも傷つけることがある。
なので、手より先や体外からしか放てない。
この出力の魔法を口内から……? 頭が弾け飛んでもおかしくな……そうか【完全魔法無効】で自身の魔法から受けるダメージを消しているのか。
山の神は咄嗟に倒れ込むように躱すが掠ってしまい背中を焼かれる。
そのまま蹴り飛ばされ、足の爪で裂かれながら吹き飛ぶ。
「舐めるなよ化物がぁあ――――――ッ!」
竜は怒声を上げ【竜の息吹】を連射する。
山の神は半身に構えて器用に躱す。
だが私の目から見ても、先程より動きが悪い。
間合いも遠く、打が届かない。
一転して、一気に劣勢だ。
しかもこれは……、竜はこのまま削り続けることを狙っているのではない。
弾幕を張って回避させ続けて慣れさせ。
回避行動の終わり、回避不可能なタイミングで三射目を同時に放つ。
通常魔法を三射同時に撃つのは大賢者などが持つ魔法スキルで魔法を空間発生させなくては出来ない。
でもあの竜は口内から【竜の息吹】を放てる。
というか、竜の息吹という名称はそもそも口から放てることから来た名称だったのか……今更ながら納得だ。
そして、恐らく私の推測は正しい。
私を超える弓使いはそうそう居ない。
遠距離から素早い相手を追い詰めるのなら、私ならそうする。
竜は怒鳴り声を上げてはいるが、思った以上に冷静だ。
だが山の神は顔には出さないが想像以上のダメージに焦ってきている。
非常に不味い。
伝えようにも言葉は通じない。
助けようにも私の攻撃力では竜に届かな――。
私はストレージから、それを出す。
鋼鉄の大矢。
過去に威力を求めて、特注で作った全て鋼鉄で出来た重くて硬い大きな矢だ。
仲間の騎士や鍛冶屋にも、笑われずにもはや悲しまれたほど迷走した結果に生まれたものだ。
何せ重くて飛ばないのだから。
何とか射出しようと繰り返したが、筋力ステータスが上がっただけで矢が飛ぶことはなかった。
でも今の私なら……!
私は鋼鉄の大矢を弓に添えて構える。
重い……、だが引ける!
弓が悲鳴を上げ、私も身体をブレさせないように中から骨と肉を絞める。
狙いは、口から【竜の息吹】を放つその瞬間。
口内であれば、私の攻撃力でも貫けるはず。
信じろ、確信しろ。
必中の感覚を体中に廻らせろ。
集中しろ、私は今、身体全体で弓に成れ。
厳しい角度から魔法を放たれ、山の神は回避不可能な体勢に追い込まれる。
予想通りそれを狙って、三射目を放とうと口を開く。
開いたな、開くよな、では必中だ。
筋繊維が千切れる音が身体の中を駆け巡りながら、私は矢を放った。
「ギョア……ッ⁉」
竜の口内を鋼鉄の大矢が貫いた。
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◇ ◇ ◇
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