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第二章 富士野宮(ふじのみや)宏禎(ひろよし)王
2-3 新たに造り出したモノ
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明治36年の年明けに計画の第一段階として、花鳥宮邸の御不浄(便所)の改装を父宏恭王に進言し、特許申請をお願いしました。
そのために花鳥宮邸の庭の片隅に簡易炉を造り、庭土から抽出したセラミックスで洋式の温水洗浄便座及び便器を製造、その便器の設置に関わるご不浄の改装設計図及び仕様書、並びに簡易塵芥処理装置の設計図及び仕様書を作成しています。
同時に、今後軍事面で携帯型若しくは小型無線電話が必要とされると思われることから、その試作品を作り、中継器及び交換機と共に設計図、仕様書、取扱説明書の類を準備し、これが国家機密に指定されることを見越して、同じく特許申請をしたい旨父宏恭王に願い出たのです。
父が海軍軍人である所為もあって、父宏恭王との接触は休日等ごく限られた機会にしか無いことから、私の専属侍従である伊藤義之を通じてお願いをしました。
その結果として父から呼びつけられて色々と尋ねられはしたものの、結局のところ我が家の便所については水洗にすることが認められ、特許の申請も侍従である金子正明を伴にして申請することが認められました。
携帯型無線電話については、無線電話としてでも少なくとも30年以上、ガラケーのような携帯型でいえばおそらくは80年近くも未来に先行するオーバーテクノロジーであることから、父からも大いに質問され、挙句に特許の申請は当然のように待ったをかけられました。
まぁ、「待った」自体は想定の範囲内であり、逆にすんなり特許申請が許されてしまったならどうしようかと思っていたところなのです。
特許というものは原則として公開されるので、列強諸外国は直ぐにも秘密裏に真似をしようとするはずだからです。
それは取りも直さず我が大日本帝国に不利益を齎すことにもなりかねません。
尤も、技術的な問題もあって、如何にこの時代で覇を唱える列強諸国と雖もそう簡単にコピーが作れるような代物ではないのですがね。
いずれにしろ、その後、父宏恭王のお声掛かりで海軍横須賀工廠の電気関係技術将校である小野田中尉が我が家にやって来て、実物を確認し、実際に使用して性能も確認の上、半日以上も私が質問攻めにあうことになりました。
まぁ、質問には難なく答えたのですけれど、小野田中尉の方はおそらく説明した分の半分も理解はしていないだろうと思うのです。
何しろ、エジソン効果を踏まえて未だ米国で試作段階である筈の二極真空管を飛び越えて、いきなりトランジスタやLSIを多用した最新技術の世界なのです。
電磁気学や電子工学に左程精通していない明治の人間にそう簡単に理解できるわけもありません。
詳しい製法については秘密ですと言うと、ぷりぷり怒りながらも、理論そのものが余り理解できないので最終的に製法そのものには拘らず、携帯型無線電話二台、交換機一台、中継装置二台それに私が作った関連の書類を持ち帰って、工廠及び艦政本部で慎重に調査・検討することにしたようです。
その際にくどいほどこの品は軍機にもなりかねないので絶対に部外には知られないように願いますと父宏恭王に何度もお願いしていました。
まぁ、技術将校がシャカリキになるもの無理はないと思います。
僅かに200グラム足らずの電話機で、必要な交換機と中継装置が適切に設置されていれば千キロ先の相手と明瞭な双方向での通話が可能な性能を有しているのです。
軍艦の艦内について言えば、閉鎖区画であろうと所要の中継装置さえ設備されていれば、機関室、操舵室又は舵機室であろうとどこにでも通話が可能となります。
因みにこの時代は、帝国海軍の最新鋭艦でさえも、艦内の通信は伝声管でやっているのです。
しかもこの携帯型無線電話機は、一体型の骨伝導イヤホンと骨伝導マイクが取り付けられるようになっているために、周囲に多少の騒音があっても会話は可能なのです。
この骨伝導型マイク・イヤホンの説明だけはしておきましたが、実物を見せてはいないのでその利用価値を小野田中尉はわかっているかどうかは疑問ですけれどね。
交換機自体は、他の交換機若しくは中継装置と有線でつなぐか若しくは設置場所が見通し線上に限定されることになりますが無線でつなぐこともできます。
通常の地表及び海上面においては、現状の交換機や中継装置の出力からみて概ね最大500キロの範囲で交換機相互の無線通信が可能であるため、陸上においては高い鉄塔や山頂に交換機を設置し、200キロから500キロ程度の距離で有線又は無線でつないで行けば、台湾から北海道までの距離3200キロ(主要都市間をつないで行くと概ね4000キロ程度)を10個から20個足らずの交換機又は中継装置の設置で即時通話が可能となります。
携帯電話同士は、凡そ1キロ以内の範囲で使用できるのですが、小さな棒状アンテナを備えた中継装置を挟むことでその距離は10キロ以上に伸びることになります。
中継装置を交換機と有線でつなげば距離はほぼ無限であり、世界中に通信網を広げられる代物でもあります。
当面実用化の予定はないのですが、相当数の通信衛星を打ち上げて利用すれば、地球上のどこででも通話は可能となるし、将来的に更なる改装により亜空間波を利用する携帯型無線電話装置にすれば、地下深くのトンネル内であろうと、海中深く潜航中の潜水艦であろうと通話は可能になるのですが、流石にそこまでは小野田中尉に説明はしていません。
これまでは、艦船同士の通信で距離が離れた場合の通信は無線電信以外には手段が無かったのですが、少なくとも見通し線上に中継装置や交換装置があれば艦船同士の通信は成り立つことになりますし、気球に交換装置を組み込んで陸上基地や艦船で見通し線上に浮かすことができれば遠距離通信でさえも可能となる旨の説明だけはしておきました。
単純計算で、高度1万mにまで上げた気球からの海上での見通し線は優に250キロを超えます。
ために二地点で1万mまで気球を上げれば、間に顕著な障害物がない限り500キロメートル程度の通信は十分に可能になるのです。
しかもこの通話は、極超短波の無線周波数であって、現状の諸外国の技術では探知ができないと推測されますし、無線周波数が特定されても周波数変調波信号とデジタル信号の併用により二重に秘匿されているので解読がされにくいものなのです。
少なくとも会話を傍受しようとするならば同じ程度の技術で作り上げた高性能の受信装置が無ければ不可能なのです。
おまけと言っては何ですが、搭載している小型電池も待ち受け・使用状態に関わらず2年以上もの耐久性能を有しており、その間の充電が不要です。
もちろん最終的には充電が必要となる筈ですが、使用を開始してから概ね2年より以降となる筈です。
「平成」に生まれ、平成天皇の譲位により「令和」への年号変更を経験した私が生きていた当時の日本は、様々な問題はあったにしても日々健康的な生活を送れる良い環境下にあったのですが、転生した日本は明治も後半とは言え、衛生環境は凄まじく悪いのです。
まぁ、一度アブサルロアで中世ヨーロッパ風の不衛生な世界を経験しているのでそれなりの耐性はできているのですが、トイレについては可能な限り速やかに善処しなければならない問題でした。
ぽっこり穴の空いた落とし込みのトイレでは、小さな身体の私自身がはまり込む恐れさえあるし、匂いが凄まじいのです。
そのために明治36年に洗浄機能を有する水洗トイレをデザインし、し尿処理槽のシステムを考案して特許を出願したのです。
これにも実は高性能電池が使われているのですが、こちらの方は使用頻度からみて10年以上は取り換えが不要と見ています。
尤も100ボルト交流電源の取り込みが可能な設計になっていますから、必要ならばコンセント等に配線を行うことで電池を取り除くこともできるようにしています。
機密漏洩防止のために便器に内蔵された小型電池は、予め定められた適正な手法とパスワードを使用して取り出さなければ自動的に自壊するようになっています。
そのために花鳥宮邸の庭の片隅に簡易炉を造り、庭土から抽出したセラミックスで洋式の温水洗浄便座及び便器を製造、その便器の設置に関わるご不浄の改装設計図及び仕様書、並びに簡易塵芥処理装置の設計図及び仕様書を作成しています。
同時に、今後軍事面で携帯型若しくは小型無線電話が必要とされると思われることから、その試作品を作り、中継器及び交換機と共に設計図、仕様書、取扱説明書の類を準備し、これが国家機密に指定されることを見越して、同じく特許申請をしたい旨父宏恭王に願い出たのです。
父が海軍軍人である所為もあって、父宏恭王との接触は休日等ごく限られた機会にしか無いことから、私の専属侍従である伊藤義之を通じてお願いをしました。
その結果として父から呼びつけられて色々と尋ねられはしたものの、結局のところ我が家の便所については水洗にすることが認められ、特許の申請も侍従である金子正明を伴にして申請することが認められました。
携帯型無線電話については、無線電話としてでも少なくとも30年以上、ガラケーのような携帯型でいえばおそらくは80年近くも未来に先行するオーバーテクノロジーであることから、父からも大いに質問され、挙句に特許の申請は当然のように待ったをかけられました。
まぁ、「待った」自体は想定の範囲内であり、逆にすんなり特許申請が許されてしまったならどうしようかと思っていたところなのです。
特許というものは原則として公開されるので、列強諸外国は直ぐにも秘密裏に真似をしようとするはずだからです。
それは取りも直さず我が大日本帝国に不利益を齎すことにもなりかねません。
尤も、技術的な問題もあって、如何にこの時代で覇を唱える列強諸国と雖もそう簡単にコピーが作れるような代物ではないのですがね。
いずれにしろ、その後、父宏恭王のお声掛かりで海軍横須賀工廠の電気関係技術将校である小野田中尉が我が家にやって来て、実物を確認し、実際に使用して性能も確認の上、半日以上も私が質問攻めにあうことになりました。
まぁ、質問には難なく答えたのですけれど、小野田中尉の方はおそらく説明した分の半分も理解はしていないだろうと思うのです。
何しろ、エジソン効果を踏まえて未だ米国で試作段階である筈の二極真空管を飛び越えて、いきなりトランジスタやLSIを多用した最新技術の世界なのです。
電磁気学や電子工学に左程精通していない明治の人間にそう簡単に理解できるわけもありません。
詳しい製法については秘密ですと言うと、ぷりぷり怒りながらも、理論そのものが余り理解できないので最終的に製法そのものには拘らず、携帯型無線電話二台、交換機一台、中継装置二台それに私が作った関連の書類を持ち帰って、工廠及び艦政本部で慎重に調査・検討することにしたようです。
その際にくどいほどこの品は軍機にもなりかねないので絶対に部外には知られないように願いますと父宏恭王に何度もお願いしていました。
まぁ、技術将校がシャカリキになるもの無理はないと思います。
僅かに200グラム足らずの電話機で、必要な交換機と中継装置が適切に設置されていれば千キロ先の相手と明瞭な双方向での通話が可能な性能を有しているのです。
軍艦の艦内について言えば、閉鎖区画であろうと所要の中継装置さえ設備されていれば、機関室、操舵室又は舵機室であろうとどこにでも通話が可能となります。
因みにこの時代は、帝国海軍の最新鋭艦でさえも、艦内の通信は伝声管でやっているのです。
しかもこの携帯型無線電話機は、一体型の骨伝導イヤホンと骨伝導マイクが取り付けられるようになっているために、周囲に多少の騒音があっても会話は可能なのです。
この骨伝導型マイク・イヤホンの説明だけはしておきましたが、実物を見せてはいないのでその利用価値を小野田中尉はわかっているかどうかは疑問ですけれどね。
交換機自体は、他の交換機若しくは中継装置と有線でつなぐか若しくは設置場所が見通し線上に限定されることになりますが無線でつなぐこともできます。
通常の地表及び海上面においては、現状の交換機や中継装置の出力からみて概ね最大500キロの範囲で交換機相互の無線通信が可能であるため、陸上においては高い鉄塔や山頂に交換機を設置し、200キロから500キロ程度の距離で有線又は無線でつないで行けば、台湾から北海道までの距離3200キロ(主要都市間をつないで行くと概ね4000キロ程度)を10個から20個足らずの交換機又は中継装置の設置で即時通話が可能となります。
携帯電話同士は、凡そ1キロ以内の範囲で使用できるのですが、小さな棒状アンテナを備えた中継装置を挟むことでその距離は10キロ以上に伸びることになります。
中継装置を交換機と有線でつなげば距離はほぼ無限であり、世界中に通信網を広げられる代物でもあります。
当面実用化の予定はないのですが、相当数の通信衛星を打ち上げて利用すれば、地球上のどこででも通話は可能となるし、将来的に更なる改装により亜空間波を利用する携帯型無線電話装置にすれば、地下深くのトンネル内であろうと、海中深く潜航中の潜水艦であろうと通話は可能になるのですが、流石にそこまでは小野田中尉に説明はしていません。
これまでは、艦船同士の通信で距離が離れた場合の通信は無線電信以外には手段が無かったのですが、少なくとも見通し線上に中継装置や交換装置があれば艦船同士の通信は成り立つことになりますし、気球に交換装置を組み込んで陸上基地や艦船で見通し線上に浮かすことができれば遠距離通信でさえも可能となる旨の説明だけはしておきました。
単純計算で、高度1万mにまで上げた気球からの海上での見通し線は優に250キロを超えます。
ために二地点で1万mまで気球を上げれば、間に顕著な障害物がない限り500キロメートル程度の通信は十分に可能になるのです。
しかもこの通話は、極超短波の無線周波数であって、現状の諸外国の技術では探知ができないと推測されますし、無線周波数が特定されても周波数変調波信号とデジタル信号の併用により二重に秘匿されているので解読がされにくいものなのです。
少なくとも会話を傍受しようとするならば同じ程度の技術で作り上げた高性能の受信装置が無ければ不可能なのです。
おまけと言っては何ですが、搭載している小型電池も待ち受け・使用状態に関わらず2年以上もの耐久性能を有しており、その間の充電が不要です。
もちろん最終的には充電が必要となる筈ですが、使用を開始してから概ね2年より以降となる筈です。
「平成」に生まれ、平成天皇の譲位により「令和」への年号変更を経験した私が生きていた当時の日本は、様々な問題はあったにしても日々健康的な生活を送れる良い環境下にあったのですが、転生した日本は明治も後半とは言え、衛生環境は凄まじく悪いのです。
まぁ、一度アブサルロアで中世ヨーロッパ風の不衛生な世界を経験しているのでそれなりの耐性はできているのですが、トイレについては可能な限り速やかに善処しなければならない問題でした。
ぽっこり穴の空いた落とし込みのトイレでは、小さな身体の私自身がはまり込む恐れさえあるし、匂いが凄まじいのです。
そのために明治36年に洗浄機能を有する水洗トイレをデザインし、し尿処理槽のシステムを考案して特許を出願したのです。
これにも実は高性能電池が使われているのですが、こちらの方は使用頻度からみて10年以上は取り換えが不要と見ています。
尤も100ボルト交流電源の取り込みが可能な設計になっていますから、必要ならばコンセント等に配線を行うことで電池を取り除くこともできるようにしています。
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