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第十二章 異世界探訪

12ー9 クアルタス その一

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 俺はトロイジェム世界に一応の足掛かりは造ったものの、子供たちが気楽に訪問できるような世界ではないことを確認したので、セカンダリオ世界に続いてトロイジェム世界も探索というか商業活動をほぼ停止した。
 化粧品の製造については錬金術師を見つけて技術移転を行い、同時に商売についてはとある商会に一任した。

 その後、トロイジェム世界でどうなるかは一応の監視はつけているんだが基本的に手出しはしないようにしている。
 あぁ、亜空間で行き当たりばったりの異界に入るのではなく、実はある法則性を見つけたんだ。

 それは亜空間自体の時間圧縮度合いによる区別だった。
 単純に言うと亜空間尾経過時間を100倍に圧縮した場合と99倍に圧縮した場合では、出現する異界が違うんだ。

 概ね±0.1倍程度の誤差はありそうなんだけれど、99.0倍と99.2倍の圧縮時間で出現する異界のゲートが違うんだ。
 だから、その圧縮係数だけチェックしておけば、セカンダリオ世界もトロイジェム世界も行こうと思えばいつでも行けるようになったというわけだ。

 今は三番目の異界を探している。
 漠然とした考えなんだが、子供たちが遊びに行って安全に楽しめる世界は無いのだろうかと思っている。

 もちろんそこで現地の人との交流も有ることが望ましいし、子供たちの人生の糧になることが望ましい。
 まぁ俺の勝手な希望ではあるんだが、某ネズミやお姫様が主役の大型遊園地のような学園都市は無いものかなと思ってる。

 ジェスタ王国内の俺の領内でも勉強はできるんだが、どうも俺の子供達は普通の子供じゃないからね。
 かなり手加減をしないと、普通の子供達とは付き合えないらしい。

 まぁな、十代後半ほどの知識なり常識をそれなりに有し、大人顔負けの体力や魔力を持っているから、何をしても同世代の子供とは差がついてしまうわけだ。
 勢い、子供達は何をするにしても手加減をせざるを得なくなり、その分ストレスが溜まるわけだ。

 そのストレス発散に、たまには俺も付き合ってはやるんだが流石に数が多すぎるんだ。
 嫁sが9人、子供が3人ずつで27人も居れば一人一人の相手は、かなり厳しいぞ。

 しかも公平に機会を与えねばならないからそれだけで俺の方がストレスが溜まっちまう。
 まぁな、子供造っておいて後は知らんと放り出して置くわけにはいかないから、できるだけのことはしてるんだが、同じ時間線ではできないものはできない。
 
 だからできれば子供たちが自由に遊びに行けるような場所を見つけたいんだが、これがなかなか難しい。
 どこの世界も生きるための生存競争や男たちの意地を張った戦争が絶えない。

 エデンの園みたいなところには人は辿り着けないものなのかねぇ。
 もしも辿り着いたらそこが終焉の地でヒトではなくなるのかもな。

 で、見つけた複数のゲートにゴーレムやらドローンを送り込んで調査中なんだが、面白そうな異世界が有った。
 長命種族の世界のようなんだが、少なくとも同族で血を流すような戦いは無いようだ。

 単一種族なのかも知れないが、肌の色が微妙に違う種族が5種族存在する。
 やや褐色というか赤い肌の種族が一つ、所謂黄色人種のような肌を有する種族が一つ、そうして白い肌の種族が一つ、黒、いや、黒っぽい肌色だがそれにやや赤みが入っているような一風変わった色の種族が一つ、そうして最後は緑色の肌の種族が一つ。

 種族的にはその五つなんだが地球世界のように肌の種類によって顔つきが変わるようなことは無い。
 余程混血が進んでいるのかも知れないが、彫の深い印度・ヨーロッパ語族の典型みたいな顔つきと体つきをしている。

 だから、肌の色さえ違っていなければ、ほぼ同じ人種と言えると思う。
 髪や目の色は千差万別、いろんな色が存在する。

 それこそ、桃色とか明るい緑とか、コスプレで出て来そうな色合いの色が沢山ある。
 でも染めているんじゃないし、カラコンでもない。

 種族により法則性があるのかもと思って調べたが、全くバラバラで、各種族とも均一にばらけているみたいだ。
 そうして所謂美男美女の確率が結構高いな。

 もう一つの特徴は、彼らが非常に若く見えることだ。
 幼い子も居るんだが、所謂「老人」に見える個体が存在しない。

 不老不死かというとそうでもないようだ。
 住居地の近くには墓地があって、10万人ぐらいの都市では一月に一度程度の埋葬が行われているみたいだから、少なくとも不死では無いようだ。

 念のため最近地下に埋葬された遺骸を調べたが、外傷はなく、病気若しくは老衰で死んだ者ではないかと推測された。
 因みにこの死者の墓標には、「1631~1929」と記入してあったので300年近く生きた女性だったことがわかる。

 生憎とこの女性の死んだところは確認できていないが、死に顔を見る限り二十代半ばの顔であったし、そんな年代の肌艶であったと思う。
 因みに、俺が勝手に「クアルタス」と名付けたこの世界での年号は、トレヴァンド1929年らしく、彼女の亡くなった日は、「前乾季二の月」、「14の日」だ。

 この世界での一年は360日、12か月からなり、一月は30日、乾季が8か月、雨季が4か月ある。
 乾季を前後二つに分けて4か月を前乾季、後乾季と称し、残り4か月を雨季と称している。

 それぞれの季節は一の月から四の月まである。
 週という仕分けは無いが、0の付く日と五の付く日が区切りになっていて、地球世界で言う日曜日に当たりそうだ。

 時間については、俺が持ち込んだ時計で確認したところでは1日が概ね24時間43分ほどになるから、1年は8900時間ほどになり、地球の1年(平均8766時間)と比べてやや長い(134時間≒6日ほど)程度になるのかな。
 俺の見かけは今のところ20代前半ぐらいだから、歳だけで言えば中に紛れ込んでもおそらくは気づかれないとは思うんだが、生憎と地球世界の東洋人に近い顔つきはこちらの世界には無い顔つきなんだ。

 俺の体型も顔つきも、転移した際に幼女神様のお陰で多少西洋人ッポイ顔つきと体型にはなっているんだが、どっちかというと白人と東洋人のハーフだよな。
 だから、西洋人に近いとは言いながら、扁平の東洋人ッポイ顔つきがそのまま残っているんで、こっちのクオルタスでは間違いなく目立つことになる。

 色々迷ったが、最終的にはこの世界の黄色人種の顔つきに合わせて魔法で若干作り変えてみた。
 言っとくが魔法でもそんなに簡単にできることじゃないんだぞ。

 骨格から変えざるを得ないから、結構な痛みが伴う作業なんだ。
 それでも、このクアルタスに入り込むには必要なことと割り切ってやってみたが、変身した当座は丸々半日ベッドに寝込んで動けなかったぜ。

 そんなに苦労してまで異世界に入る必要があるのかって?
 ウーン、正直なところ自分でもよくわからん。

 表面的な事象はゴーレムやドローンで探れるとは思うんだが、ゴーレムには感情が無いからな。
 人間が感ずるようなことをゴーレムに期待しても無理なんだ。

 従って、多少の危険を冒しても調査のためには自分で行くしかない。
 で、やって来たのは黄色人種が半ば以上を占めている地域の小都市、エルベアだ。

 人口1万足らずの街なんだが、一応城塞都市になっている。
 この世界にも魔物は存在する。

 というよりは、この世界の主流の生き物は魔物じゃないかと思う。
 ヒト族というか、彼らは自分たちのことをセレナ族と呼んでいるが、クアルタス全体で500万人足らずなんだ。

 概ね半径が千キロ程度の範囲に集中して居住しているんだが、周囲は長城で囲まれているな。
 恐らくは魔物の侵入をこの長城で阻んでいるのだろう。

 長城には魔道具によって結界が施されており、魔物が長城内に侵入することは滅多にない。
 「滅多」にということは侵入された事も有るということであり、中央政庁にある記録によれば百年以上も前に、巨大なドラゴンであるオヴァデロンに襲撃されて結界が破壊され、長城も同時に破壊されたことにより彼らの安全圏に大いなる脅威が入り込んだようだ。

 記録によると全長600ヒーポ(概ね1ヒーボは、1.6~1.7m程度)、幅200ヒーポ、高さ140ヒーポもあるこの巨大なドラゴンは、六本脚で頑丈な甲羅を持つ魔物であり、動きは亀に似て非常に遅いのだが、進路を阻むもの全てを破壊して進むようだ。
 なんだかエルフの領域に現れたキメラトレントのブラバンクスを思い起こさせるような魔物だが、ブラバンクスは瘴気を発して周囲を害し、同時にその重量で全てをなぎ倒す害獣だったけれど、こっちのドラゴンは、ひたすら這いずり回ってモノを壊して歩くタイプのようだ。

 何でもかなり強力な結界を持っており、物理攻撃も魔法攻撃も受け付けないらしい。
 このヒト族の領域をファレズと呼んでいる様だが、過去に三度襲撃されているようで、いずれも概ね百年前後の時間をおいているらしい。

 或いは、その魔物の通り道に当たっているやもしれない。
 フレデリカの故郷であるシュルツブルドの領域に現れたフラバンクスは、周囲の生命力を奪うために移動していたが、このドラゴンはどうなのか?

 記録ではかなりの住民が捕食されたとあり、肉食のようだ。
 脚がのろい分、捕食も大変じゃないかと思うんだが、どうなんだろうね。

 何か捕食用のスキルでも持っているのかな?
 例えば闇魔法で精神を縛って動けなくするとか・・・。

 そうでもしなければ獲物に逃げられちゃうよね。
 まぁそっちの方は、今は関係ないな。

 全体では丸みを帯びたファレズの領域内でも南端にある小都市エルベアも念のためか城壁で覆われた町だ。
 こいつは、長城を破られた場合に外から襲来するであろう魔物から身を護るために造られているらしい。

 俺がエルベアを最初の訪問地に選んだのは、この町からさほど遠くないところに長城の出入り口があり、魔境と呼ばれる外界に出られるからだ。
 エルベアの街には、ハンターギルドがあり、魔境に棲息する魔物を刈るハンターたちが多数存在しているから、俺はそのハンターになろうと思っているのだ。

 ファレズ領域内での交易は盛んだし、人の行き来も結構有るようだから、俺一人が紛れ込んでも大丈夫と思っていたんだが、いきなり拘束されたよ。
 あれ、何か前提条件を間違っていたか?

 良くわからないが、俺の顔を見た途端、町の衛兵に槍を突き付けられて牢の中に放り込まれたんだ。
 何が何だか俺にはさっぱり分からないんだが・・・。

 仕方がないんで、ゴーレムに指示してその辺の事情調査をさせているところだ。
 此処でいきなりバッサリ処刑とかは嫌だから、仮にそうなるような雰囲気であれば即座にトンずらするけど、取り敢えずは様子見だな。

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