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第十一章 ファンデンダルク侯爵

11ー12 秘密のお話 その一

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 さてさて、子供たちが俺の秘密の一つを嗅ぎつけてしまったわけで、放置しておくと子供たちが勝手に別の世界に行きかねない事態になってしまった。
 俺の子供たちは皆かなりの魔法能力があるからね。

 少なくともジェスタ国やその周辺国で子供たちに匹敵するような魔法師はいないんじゃないかと思うぐらいなんだ。
 潜在的な能力はもっとあると思うが、例えば空間魔法だって扱えるから俺の亜空間の存在に気づき、なおかつ、現実世界と乖離させた遅延時空にまで入り込める能力は、俺の子供達じゃなければ無理の筈だ。

 嫁の一人でエルフのフレデリカや、エクトプラズムから蘇ったリサは、それなりの魔法を使えるが、それでも俺の子供達と比べると一クラスも二クラスも格落ちの感が拭えない。
 今回は俺の作った空間に子供たちが侵入して来たわけだが、恐らくは彼らが同じような亜空間を作ることも可能だと思うのだ。

 彼らが独自の亜空間を造り、そうしてセカンダリオとは別な異空間への穴を見出す恐れは十分にあると思われる。
 別にこれまで子供たちの教育を放置してきたわけではないが、彼らが強大な能力を有するが故に、きちんと教え込まないと間違いを起こす可能性もあるよな。

 だから、性根を入れて子供たちの教育指導に務めなければならんと思うわけよ。
 その過程で俺の秘密を子供たちに打ち明けることも視野に入れておかねばなるまい。

 その場合、嫁sへの対応はどうするか?・・・だ。
 家族内の秘密はできるだけ無い方が好ましいことは間違いない。

 特に子供たちは親を見て育っているからな。
 嫁sにも内緒にしている事柄があるのを知れば、相応の疑問を持つだろう。

 子供たちはそれなりに賢いから告げ口みたいなことはしないだろうけれど、その状態が良いわけはないよな。
 色々考えて、嫁sと子供達には俺の秘密をある程度打ち明けることにした。
 
 無論秘密の全公開はしないし、嫁sと子供たち以外には、信頼できる家宰やメイド長であろうと非公開にするつもり。
 俺は嫁sと子供達を全員第一の居間に集めた。

 カラミガランダの本宅にある第一の居間は、子供を含めて家族全員が集う時によく使われる。
 本来であれば、この居間に家族が集まればそれぞれの御付きのメイドや執事なども在室するのが普通なのだが、今日に限っては人払いで、付け人全員を室外に追い出した。

 その上で、家族全員を本宅の地下にある避難所に転移させた。
 この避難所は、カラミガランダに何らかの危難が迫った場合に、使うことになっている避難所だ。

 つづら折りの階段で地下4階まで降りて、三つの防壁を潜り抜けなければならないが、いつでも入れる施設ではある。
 その避難所の最奥にある絨毯敷の広間に俺は家族全員を転移させた。

 家族全員が集まることを命じたものの、この広間に転移することまでは伝えていない。
 上に何か異常があれば、要所に配置されているδ型ゴーレムが知らせて来ることになっている。

 集められた誰しもが疑問を感じたのだろう。
 嫁s筆頭なのかな?代表してコレットが俺に訊いた。

「アナタ?
 これはどういうことですの?
 人払いをした上で、今また、いきなり、恐らくは魔法でしょうけれど・・・。
 避難所に全員を移動させるのはとても尋常なこととは思えませんが・・・。
 何か、大きな問題が生じましたの?」

「おう、ある意味で家族にとっては非常に大事なことが起きる可能性がある。
 万が一の場合に備えて、色々と対策を講じなければならないこともあるんだが・・・・。
 その前に、家族皆の同意を得ておかなければならないと思うのでね、全員に集まってもらったわけなんだが・・・。
 上の居間では場合によって外に漏れる危険性も否定できないので、敢えてここに移ってもらった。
 現状で、この避難所への通路は全て閉鎖されているから誰もここには近づくことができないようになっている。
 そんなことをしてまで、ここに移動してもらったのは、俺の秘密、そうして子供たちの秘密などを皆に知っておいてもらいたいからだ。
 但し、ここで明かすことは、秘密の全てではない。
 特に俺の場合は、墓場まで持って行かねばならない秘密も結構あるんだが、それは必要に応じてこれから限定的に打ち明けることもあるだろうとは思ってはいる。
 人が生きてゆくうえで大なり小なり秘密は抱えてしまうものであり、例え家族と言えどもそれら全て打ち明ける必要は無いと思っているんだが、・・・。
 子供たちに関わる懸念がある以上は、母親であるお前たちにも知っておいてもらわねばならないと思っている。」

 ここでちょっと口調を替えた。
 闇魔法を使ってできるだけ俺の制御化に置くようにするためだ。

 尤も、フレデリカやリサには相応の抵抗力があるし、子供達は俺の制御下に置くことは難しいだろう。

「これから見聞きすることは誰にも口外してはならない。
 例え親兄弟であってもそれらしきことを匂わせることもしてはならない。」

 少し間をおいてまた話し出す。

「で、その内容だが、・・・。
 皆も知っているように、俺は、大魔法師と噂されるほどに魔法が使える。
 今ここへ皆を移動したのも『転移』と言う空間魔法の一種を使った。
 俺が空間魔法を使えることを知っている者は左程多くは無い。
 子供たちを除いてならば、ここにいる中ではフレデリカとリサぐらいが少し知っている程度かな。
 或いはコレットも国王陛下から何事か聞いているかもしれないが、少なくとも国王陛下と宰相殿他二名程は俺が空間魔法のインベントリを使えることは承知しているが、転移ができることは知らないはずだ。」

 俺は再度間をあけた。
 少なくとも、嫁sに、俺が空間魔法で転移ができることとインベントリが使えるということをしっかりと認識してもらうためだ。

「そうして、フレデリカは、シュルツブルドに関わる事件で短い時間でシュルツブルドとの間を行き来せざるを得なかったので、俺が空間魔法を使えることを承知している。」

 あの時は、古代文明の飛空艇を使ってもいるんだが、敢えてそこはぼかしている。
 フレデリカも俺の目を見て小さく頷いている。

 少なくともフレデリカから飛行可能な飛空艇を俺が所持していることについて漏れることは無いだろう。

「リサについては、コレットとシレーヌも承知しているんだが、リサは実は一度死んだ娘なのだが、俺が秘密の魔法で蘇らせた。
 その際に俺が空間魔法を使ったので、そのことはリサも承知している。」

 リサも俺の目を見て小さく頷いた。

「一度死んだ者を甦らせるなど簡単にできることでは無いんだが、リサの場合はたまたまできたとだけ言っておこう。
 但し、この事実が外に漏れれば、大変なことになるだろうことは皆もわかるだろう。
 従って、空間魔法の件も含めて、決して他言してはならない。
 そうして、こんなことを話さざるを得ない理由の一つを説明しておくと・・・。
 俺とお前たちの子は、皆魔法が使える。
 それも、このジェスタ国と周辺国では並ぶ者が居ないほどの潜在的能力を持っている。
 単純に言って、子供たちの半分以上は空間魔法が使えるはずだ。
 残りの子も左程時間を置かずして空間魔法を覚えるだろう。
 何しろ、お兄ちゃんやお姉ちゃんが、手取り足取り教えてくれるから色々と覚えも早いようだ。
 フレデリカ、それにリサの二人は結構な魔法が使えるけれど、子供達には教えたことがあるかい?」

 フレデリカがすぐに答えた。

「いいえ、子供たちに相応の魔力があるのは知っていますけれど、未だ魔法を教えるのは早いと思い何もしていません。
 特にエルフの場合は時間がありますので・・・。」

 リサも頷きながら言った。

「私も子供たちが幼いうちは何もしない方が良いかなと思って特に何もしていません。
 もう二年ぐらい経てば、貴方と相談して魔法について教え初めても良いのかなと思ってはいました。」

「俺も、子供たちに特段の魔法教育はしていないんだが、子供たちは自分で覚え、そうして弟や妹たちに教えているけれど、お母さんたちにはそのことを内緒にしている様だね。」

 それぞれの母親たちが焦ったように我が子を見ているのがある意味で面白いのだが、母親としては心配なのだろうな。
 特に生活魔法以外は使えない普通の者ならばなおさらだ。

 母親でありながら子供たちを導けないのは、彼女たちにとっては苦痛になりかねない。

「嫁達は、俺の嫁になった時から、生まれて来る子供がもしかすると魔法を使えるようになるかもと予測していたはずだが、相応に覚悟をしておきなさい。
 お前たちの息子や娘は、親を乗り越える存在だ。
 しかしながら、彼らは、母としてお前たちを敬愛している。
 これまでどおり、子供たちに愛情を注いでやってほしい。
 特に左程魔法を使えない者が子供たちに魔法を教える必要はない。
 また、そのことで劣等感にさいなまれる必要も無い。
 親は自分を乗り越えて行く子供を後ろから支え、その行末を見守ってあげるだけでいい。
 これは魔法を使える子供を持った母親の心得として覚えておきなさい。
 さて本題なんだが・・・。」

「俺は、この世界の通常空間と異なる亜空間を生み出せる。
 インベントリも似たような空間なのだが、インベントリは物の収容に特化していて、生きているものは入れられない。
 しかしながら亜空間には生きているものも収容できる。
 また俺の能力でその亜空間の時間をも操作できる。
 例えば、子供たちは既にその存在に気付いているんだが、ディアトラゾ空間という俺たちの住んでいるこの時空とはほんの少し時間がずれた亜空間も作れる。
 そうしてそこには俺が作ったゴーレムを配置して、俺の妻たちであるお前たちや子供を守護させている。
 それらの守護ゴーレムを統括するδデルタ001号も俺の傍に入る。
 お前たちや子供たちを24時間見守っている守護ゴーレムを統括しているが、いちいち全ての活動を俺に報告しているわけじゃない。
 むしろ俺はここ数年間は特段の報告も受けてはいない。
 この守護ゴーレムたちは、嫁のお前達や子供たちに危害が加えられるような場合は、亜空間から飛び出してお前たちを助けてくれるだろうが、余程大事な局面でない限りは出て来ないな。
 例えば幼い俺の子供達の一人が床で転びそうになっても特に手は出さない。
 但し、階段で転んだことにより頭を打つなどの致命傷を負う可能性がある場合は、傍目はためが有っても姿を現して救助することになるだろう。
 彼らは必要とあれば言葉を発することもできる。
 δデルタ001号、ちょっと出てきて皆に挨拶をしてくれるかな?」

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 明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願い申します。

   By サクラ近衛将監
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