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第十一章 ファンデンダルク侯爵
11―10 セカンダリオの様子
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セカンダリオの文明が地球で言えば18世紀半ば頃の文明と知って、俺は、多少の危険は承知の上で偵察衛星を魔法で周回軌道に上げた。
その結果、セカンダリオと言う世界は、地球よりも1.05倍ほど直径の大きな惑星であり、広大な海が一つと広大な大陸が一つである世界だ。
極地は氷の世界であるが、両極とも地球の北極のように大陸の無い海洋が凍り、そこに雪と氷が数百メートルも堆積(8割以上は海中)している。
地軸は公転軌道面に対して12度ほど傾いているから、当然に四季はある。
大陸の中央部が赤道帯に当たり、本来なら植物が密に繁茂しているのだろうけれど、生憎と造山運動が活発なために大陸中央部には至る所に亀裂が有ったり褶曲が有ったりするほか、火山活動が猛烈に活発だ。
その多数の火口から噴き上げる噴煙が貿易風に乗って熱帯地方を広範囲に覆っているために、概ね赤道付近は生物が棲み、命を育むには不向きな環境のようだ。
そんな過酷な環境でも生きている生物は居る様だが、少なくとも知的生命体ではないので詳細な説明は省く。
従って、生物は概ね大陸の南側と北側の領域に多く、植物も亜熱帯から温帯域にかけて多数繁茂している状況のようだ。
俺のドローンが発見した長城のような城壁は亜熱帯から温帯域の端境地域にあって、南北に伸びる二つの山脈に挟まれた広大な盆地に、多少の曲がりはあるもののほぼ緯度線に沿って城壁が築かれている様だ。
δ型ゴーレムの分析によれば、セコイア杉の化け物のような巨木は、放置すると植生域を拡大するので、分m里種族は城壁付近で伐採をして寝食を防いでいるらしい。
一方で、その境界周辺は魔物の棲み処でもあり、文明種族は主としてその魔物の侵攻を防ぐために城壁を築いたようだ。
因みに城壁の長さはこの地域ではおよそ千キロに近い。
最初に見つけた長城以外にも北半球に二か所、南半球に一か所似たような城壁があり、文明種族と魔物の鬩ぎ合いが続いている様だ。
南半球の文明種族の集落は北半球のそれよりもかなり大きく、長城の城壁だけで4000キロほどの長さがある。
概ね、文明圏は北緯33度以北、南緯36度以南に存在しているので、亜熱帯から亜寒帯ぐらいまではヒト族又はそれに類する文明種族若しくは動物等が住める環境のようだ。
流石に北極及び南極に近い地域はツンドラの荒野であり生物の気配は非常に薄い。
この世界では北半球と南半球においては海上を含めて交易ルートは無い。
大陸の火山群の噴煙が、赤道地帯とその周辺を取り巻いているために、南北の交流を妨げているのだ。
従って彼らは相互にその存在を知らないでいるようだ。
俺は最初に見つけた城壁内にある都市ヴェリャニャを訪れてみた。
俺のチートの一つである『言語能力:5』というクラスはほぼMax値だから、すぐに向こうの住民とも話ができた。
但し、城壁の外から入るとなるとやたら面倒な手続きになるので、俺は万里の長城ならぬ高い城壁内に転移した上で、ヴェリャニャに赴いたわけだ。
実はヴェリャニャにも都市を囲む低めの城壁があって、その通用門で身分証明書を要求されるのだが、一応偽造した証明書を見せたらすんなり通れてしまった。
脇が甘い様だね。ケモミミの衛兵さん。
でもまぁ、本物と寸分違わぬ代物だから台帳と付き合わせなければ絶対にわからないよな。
後で個々の役所に保管されている台帳にもこそっと俺の偽名を記載しておくつもりだけれど・・・。
俺の名?
一応、リューマ・セカンダリオにしたぜ。
街の中は意外と活気に溢れており、肌の色を含めて多種多様な種族が住んでいる様で、ヒト族の中でも俺のような種族はマイノリティかもしれない。
一方で軍人がやたらと多いのが目に付いた。
この町には冒険者ギルドは無いがその代わり傭兵ギルドがある。
ホブランド世界ならばどこにでも見かける冒険者が居ない代わりに傭兵が居て、どうやらそのほとんどが軍人か商人の護衛組織になっている様だ。
所謂、魔物狩りの冒険者はおらず、長城外の巨木の伐採と魔物討伐はもっぱら軍が行っている様だ。
長城内の地域では、害獣はいてもほとんど魔物が出現しないらしい。
傭兵団で商人の護衛をする場合はこの害獣対策と盗賊対応が主な仕事になるようだ。
傭兵でも剣や槍以外に小銃程度は保有している様だし、軍には砲兵部隊もあるようだ。
使用している大砲の砲弾は榴弾と徹甲弾の二種類のようだし、銃はフリントロック式のライフル銃になっている。
おそらくもう少し進化したなら雷管式のライフルに変わるのだろうと思う。
フリントロック式は速射性に劣っているから、市内で銃を持っている者も火皿に火薬を入れていない限り、すぐに撃てるわけではないようだが、火蓋があるので雨にもそれなりに強いという利点がある。
また、火縄銃と同様に先込め式なので不用意に銃口を下に向けず、銃口はできるだけ上に向けておく必要があるのかな?
そうして万が一の接近戦用に銃剣をつけているか、若しくは小型の剣を所持している場合が多い。
俺の場合は目に見える武器は身に着けていない。
インベントリには、たくさんの武器が入っているから必要な場合にはいつでも取り出せるけれどね。
まぁ、様子見なんで、ここでは余り俺の戦闘力をひけらかしたくないよね。
この世界の食事情はまぁそれなりだな。
どちらかと言うと、二つの山脈に囲まれた比較的狭い範囲にできる産物に限定されるからそれほどたくさんの料理
があるわけじゃない。
市場で見かけた屋台に近い食事処では、どちらかと言うとドイツ料理に近いような料理が出されていたな。
主食はイモ類のようだな。
小麦の栽培もしている様だが、土壌が悪いのか栽培方法が悪いのか都市の人口を支えるだけの収穫が望めないようだ。
それよりもイモ類の品種改良で、連作はできないけれど一度に多数の地下茎が収穫できる品種を育てて、食用にしている様だ。
総じて根菜類と肉が料理には多かったが、チーズやバターなどの乳製品は乳牛や羊が飼育されている割には高級品のようだ。
理由は不明だが、或いは製法を秘匿するとともに、産物の独占化を行っているのかもしれないな。
砂糖は、ビートに似たものから造られている様だが、精糖技術が左程進展していないようで、砂糖の色はやや茶色で雑味が多い。
塩は赤みの多い岩塩が主流で、稀に黒い岩塩も使われている様だ。
城壁が途切れる西の山脈では赤みの岩塩と淡いピンク色の岩塩が、東側の山脈では赤みの多い岩塩と黒っぽい岩塩が採れるようだが、生憎とピンク色の岩塩は西側で捌けてしまい、東側に近いヴェリャニャには出回らないようだ。
因みにヴェリャニャでも黒っぽい岩塩は色で嫌われているようで値が安い。
白い塩は市場では見かけなかったな。
香辛料は品種が少ないが一応ある。
市場で見かけたのは、
葱、シソ(紫蘇)、ポピー・シード(けしの実)、山葵(わさび)、オニオン(玉葱)、オレガノ(花薄荷)、カホクザンショウ(華北山椒、花椒)、キャラウェイ(姫茴香)、クローブ(丁子)、ゴマ(セサミ)、コリアンダー(香菜、パクチー)、サフラン(番紅花)、サンショウ(山椒)、セージ、セロリ、タイム、タデ(蓼、water pepper)、タラゴン(エストラゴン)。チャービル(セルフィーユ)、陳皮擬き=地元産ミカンの皮、ディル(イノンド)、ニンニク(ガーリック)、ハッカ(ミント)又はペパーミント、ニラ、フェンネル、ブラッククミン、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、ポピー・シード(けしの実)、マージョラム、カラシナ、シロガラシ、ミョウガ(茗荷)、ラディッシュ(大根)及びその種子(=羅葡子(ライフクシ))、ローズマリー、ローリエ(月桂樹の葉)が地元産で値も安く容易に入手できるようだ。
このほかに海を隔てた島嶼で採取されたものとして非常に高い値が付けられているが、クミン、コショウ、唐辛子、生姜(ジンジャー)、コブミカンの葉(バイマックルー)があった。
生憎とカレー料理に必要な、カルダモン、ターメリックなどは見当たらず、グリーンペッパー(緑胡椒)、シナモン(肉桂)、スターアニス(八角)、ナツメグ(肉荳蔲)、パセリ、パプリカ、ラッキョウなども全く見当たらなかった。
一応、俺も度々地球各地の市場にも出向いているので、結構目が肥えてきているし、多少の違いはあっても鑑定を掛ければ概ねそれに類するモノは同定できる。
その意味ではこのセカンダリオでは、ホブランドとほぼ同等の香辛料が普及し料理にも使われている様だ。
その日、街中の比較的高そうな宿に泊まった。
安全を担保するには安宿よりも高級な宿の方が良いからね。
ついでにこの宿で食事をすることで食事情もある程度推量ができるだろう。
事前の情報により、本物と変わらない贋金を作っておいたので支払いに困ることは無い。
こちらでも貨幣経済であり、お札は無い。
価値の高い順に、宝貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、石貨がある。
石貨と呼ばれる黒曜石貨幣が一番安く、銅貨、大銅貨、銀貨と上に上がるにつれ10倍の価値がある。
市場で観察した限りでは、石貨で5円程度、銅貨で50円程度の価値ではないかと思われる。
従って、大金貨で500万円、宝貨では5000万円程度になるだろう。
因みに宝貨というのは、サファイアのことらしい。
他の金貨は丸いのだが、サファイアの宝貨だけは、どちらかと言うと不細工な六角形になっている。
多分、サファイアの硬度が高いので加工が難しいのだろうと思う。
それに、通常の場合、宝貨と大金貨については市中に出回らない貨幣らしいから、俺は宝貨と大金貨の贋金だけは作っていない。
俺が選んだ宿は一泊銀貨4枚、朝・夕の食事付きで銀貨6枚になる。
概ね3万円前後かなと思うのだが、貨幣価値と言うのは人件費や流通経済の動向に左右されるから確かなことは言えない。
因みに塩や砂糖は高くて、塩が1キロ程度で大銅貨二枚(千円?)、茶色っぽい砂糖ながらそれでも100グラム程度で大銀貨三枚(15000円?)になるからびっくりの値段だね。
砂糖1キロあれば、俺の泊まっている高級宿に5泊ぐらいできることになる。
物価とは需給次第だからそういうことも起きるよな。
それで、俺の泊まる宿だが、それなりに高級宿だな。
風呂は無かったが、トイレは水洗だった。
だが備え付けのトイレットペーパーはいただけないな。
用便後に使うのを躊躇うほどガサガサしてかたかったが、何とか揉み揉みして柔らかくしてから使ったよ。
これは俺が子供の頃に死んだ曽婆様から聞いた昔のトイレ事情からの知識だ。
紙が貴重な時代は縄でごしごしとやったとか、畑の傍で用を足すときは近くに有った草木の大きめの葉を使ったんだそうだ。
この辺は流石に話だけで、曽婆様が実際に良く使ったのは新聞紙を切ったものを使っていたと話していたが・・・。
新聞紙も結構かたいと思うんだが、揉んでやるとそれなりに使えるんだそうだ。
但し、新聞紙を揉むとインクが手に移って、両手が汚れたもんじゃと言ってたな。
俺が物心ついた時には水洗便所にトイレットペーパーだったから、本当にそんなことがあったのかどうかは知らん。
或いは曽婆様のホラだったのかもしれんのだが、ここで試すことになるとは思わなんだ。
そんなことは頭からすっ飛んでいたから、流石にインベントリにトイレットペーパーは準備していなかった。
今度来るときはちゃんとそれなりの紙を用意しておこう。
その結果、セカンダリオと言う世界は、地球よりも1.05倍ほど直径の大きな惑星であり、広大な海が一つと広大な大陸が一つである世界だ。
極地は氷の世界であるが、両極とも地球の北極のように大陸の無い海洋が凍り、そこに雪と氷が数百メートルも堆積(8割以上は海中)している。
地軸は公転軌道面に対して12度ほど傾いているから、当然に四季はある。
大陸の中央部が赤道帯に当たり、本来なら植物が密に繁茂しているのだろうけれど、生憎と造山運動が活発なために大陸中央部には至る所に亀裂が有ったり褶曲が有ったりするほか、火山活動が猛烈に活発だ。
その多数の火口から噴き上げる噴煙が貿易風に乗って熱帯地方を広範囲に覆っているために、概ね赤道付近は生物が棲み、命を育むには不向きな環境のようだ。
そんな過酷な環境でも生きている生物は居る様だが、少なくとも知的生命体ではないので詳細な説明は省く。
従って、生物は概ね大陸の南側と北側の領域に多く、植物も亜熱帯から温帯域にかけて多数繁茂している状況のようだ。
俺のドローンが発見した長城のような城壁は亜熱帯から温帯域の端境地域にあって、南北に伸びる二つの山脈に挟まれた広大な盆地に、多少の曲がりはあるもののほぼ緯度線に沿って城壁が築かれている様だ。
δ型ゴーレムの分析によれば、セコイア杉の化け物のような巨木は、放置すると植生域を拡大するので、分m里種族は城壁付近で伐採をして寝食を防いでいるらしい。
一方で、その境界周辺は魔物の棲み処でもあり、文明種族は主としてその魔物の侵攻を防ぐために城壁を築いたようだ。
因みに城壁の長さはこの地域ではおよそ千キロに近い。
最初に見つけた長城以外にも北半球に二か所、南半球に一か所似たような城壁があり、文明種族と魔物の鬩ぎ合いが続いている様だ。
南半球の文明種族の集落は北半球のそれよりもかなり大きく、長城の城壁だけで4000キロほどの長さがある。
概ね、文明圏は北緯33度以北、南緯36度以南に存在しているので、亜熱帯から亜寒帯ぐらいまではヒト族又はそれに類する文明種族若しくは動物等が住める環境のようだ。
流石に北極及び南極に近い地域はツンドラの荒野であり生物の気配は非常に薄い。
この世界では北半球と南半球においては海上を含めて交易ルートは無い。
大陸の火山群の噴煙が、赤道地帯とその周辺を取り巻いているために、南北の交流を妨げているのだ。
従って彼らは相互にその存在を知らないでいるようだ。
俺は最初に見つけた城壁内にある都市ヴェリャニャを訪れてみた。
俺のチートの一つである『言語能力:5』というクラスはほぼMax値だから、すぐに向こうの住民とも話ができた。
但し、城壁の外から入るとなるとやたら面倒な手続きになるので、俺は万里の長城ならぬ高い城壁内に転移した上で、ヴェリャニャに赴いたわけだ。
実はヴェリャニャにも都市を囲む低めの城壁があって、その通用門で身分証明書を要求されるのだが、一応偽造した証明書を見せたらすんなり通れてしまった。
脇が甘い様だね。ケモミミの衛兵さん。
でもまぁ、本物と寸分違わぬ代物だから台帳と付き合わせなければ絶対にわからないよな。
後で個々の役所に保管されている台帳にもこそっと俺の偽名を記載しておくつもりだけれど・・・。
俺の名?
一応、リューマ・セカンダリオにしたぜ。
街の中は意外と活気に溢れており、肌の色を含めて多種多様な種族が住んでいる様で、ヒト族の中でも俺のような種族はマイノリティかもしれない。
一方で軍人がやたらと多いのが目に付いた。
この町には冒険者ギルドは無いがその代わり傭兵ギルドがある。
ホブランド世界ならばどこにでも見かける冒険者が居ない代わりに傭兵が居て、どうやらそのほとんどが軍人か商人の護衛組織になっている様だ。
所謂、魔物狩りの冒険者はおらず、長城外の巨木の伐採と魔物討伐はもっぱら軍が行っている様だ。
長城内の地域では、害獣はいてもほとんど魔物が出現しないらしい。
傭兵団で商人の護衛をする場合はこの害獣対策と盗賊対応が主な仕事になるようだ。
傭兵でも剣や槍以外に小銃程度は保有している様だし、軍には砲兵部隊もあるようだ。
使用している大砲の砲弾は榴弾と徹甲弾の二種類のようだし、銃はフリントロック式のライフル銃になっている。
おそらくもう少し進化したなら雷管式のライフルに変わるのだろうと思う。
フリントロック式は速射性に劣っているから、市内で銃を持っている者も火皿に火薬を入れていない限り、すぐに撃てるわけではないようだが、火蓋があるので雨にもそれなりに強いという利点がある。
また、火縄銃と同様に先込め式なので不用意に銃口を下に向けず、銃口はできるだけ上に向けておく必要があるのかな?
そうして万が一の接近戦用に銃剣をつけているか、若しくは小型の剣を所持している場合が多い。
俺の場合は目に見える武器は身に着けていない。
インベントリには、たくさんの武器が入っているから必要な場合にはいつでも取り出せるけれどね。
まぁ、様子見なんで、ここでは余り俺の戦闘力をひけらかしたくないよね。
この世界の食事情はまぁそれなりだな。
どちらかと言うと、二つの山脈に囲まれた比較的狭い範囲にできる産物に限定されるからそれほどたくさんの料理
があるわけじゃない。
市場で見かけた屋台に近い食事処では、どちらかと言うとドイツ料理に近いような料理が出されていたな。
主食はイモ類のようだな。
小麦の栽培もしている様だが、土壌が悪いのか栽培方法が悪いのか都市の人口を支えるだけの収穫が望めないようだ。
それよりもイモ類の品種改良で、連作はできないけれど一度に多数の地下茎が収穫できる品種を育てて、食用にしている様だ。
総じて根菜類と肉が料理には多かったが、チーズやバターなどの乳製品は乳牛や羊が飼育されている割には高級品のようだ。
理由は不明だが、或いは製法を秘匿するとともに、産物の独占化を行っているのかもしれないな。
砂糖は、ビートに似たものから造られている様だが、精糖技術が左程進展していないようで、砂糖の色はやや茶色で雑味が多い。
塩は赤みの多い岩塩が主流で、稀に黒い岩塩も使われている様だ。
城壁が途切れる西の山脈では赤みの岩塩と淡いピンク色の岩塩が、東側の山脈では赤みの多い岩塩と黒っぽい岩塩が採れるようだが、生憎とピンク色の岩塩は西側で捌けてしまい、東側に近いヴェリャニャには出回らないようだ。
因みにヴェリャニャでも黒っぽい岩塩は色で嫌われているようで値が安い。
白い塩は市場では見かけなかったな。
香辛料は品種が少ないが一応ある。
市場で見かけたのは、
葱、シソ(紫蘇)、ポピー・シード(けしの実)、山葵(わさび)、オニオン(玉葱)、オレガノ(花薄荷)、カホクザンショウ(華北山椒、花椒)、キャラウェイ(姫茴香)、クローブ(丁子)、ゴマ(セサミ)、コリアンダー(香菜、パクチー)、サフラン(番紅花)、サンショウ(山椒)、セージ、セロリ、タイム、タデ(蓼、water pepper)、タラゴン(エストラゴン)。チャービル(セルフィーユ)、陳皮擬き=地元産ミカンの皮、ディル(イノンド)、ニンニク(ガーリック)、ハッカ(ミント)又はペパーミント、ニラ、フェンネル、ブラッククミン、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、ポピー・シード(けしの実)、マージョラム、カラシナ、シロガラシ、ミョウガ(茗荷)、ラディッシュ(大根)及びその種子(=羅葡子(ライフクシ))、ローズマリー、ローリエ(月桂樹の葉)が地元産で値も安く容易に入手できるようだ。
このほかに海を隔てた島嶼で採取されたものとして非常に高い値が付けられているが、クミン、コショウ、唐辛子、生姜(ジンジャー)、コブミカンの葉(バイマックルー)があった。
生憎とカレー料理に必要な、カルダモン、ターメリックなどは見当たらず、グリーンペッパー(緑胡椒)、シナモン(肉桂)、スターアニス(八角)、ナツメグ(肉荳蔲)、パセリ、パプリカ、ラッキョウなども全く見当たらなかった。
一応、俺も度々地球各地の市場にも出向いているので、結構目が肥えてきているし、多少の違いはあっても鑑定を掛ければ概ねそれに類するモノは同定できる。
その意味ではこのセカンダリオでは、ホブランドとほぼ同等の香辛料が普及し料理にも使われている様だ。
その日、街中の比較的高そうな宿に泊まった。
安全を担保するには安宿よりも高級な宿の方が良いからね。
ついでにこの宿で食事をすることで食事情もある程度推量ができるだろう。
事前の情報により、本物と変わらない贋金を作っておいたので支払いに困ることは無い。
こちらでも貨幣経済であり、お札は無い。
価値の高い順に、宝貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、石貨がある。
石貨と呼ばれる黒曜石貨幣が一番安く、銅貨、大銅貨、銀貨と上に上がるにつれ10倍の価値がある。
市場で観察した限りでは、石貨で5円程度、銅貨で50円程度の価値ではないかと思われる。
従って、大金貨で500万円、宝貨では5000万円程度になるだろう。
因みに宝貨というのは、サファイアのことらしい。
他の金貨は丸いのだが、サファイアの宝貨だけは、どちらかと言うと不細工な六角形になっている。
多分、サファイアの硬度が高いので加工が難しいのだろうと思う。
それに、通常の場合、宝貨と大金貨については市中に出回らない貨幣らしいから、俺は宝貨と大金貨の贋金だけは作っていない。
俺が選んだ宿は一泊銀貨4枚、朝・夕の食事付きで銀貨6枚になる。
概ね3万円前後かなと思うのだが、貨幣価値と言うのは人件費や流通経済の動向に左右されるから確かなことは言えない。
因みに塩や砂糖は高くて、塩が1キロ程度で大銅貨二枚(千円?)、茶色っぽい砂糖ながらそれでも100グラム程度で大銀貨三枚(15000円?)になるからびっくりの値段だね。
砂糖1キロあれば、俺の泊まっている高級宿に5泊ぐらいできることになる。
物価とは需給次第だからそういうことも起きるよな。
それで、俺の泊まる宿だが、それなりに高級宿だな。
風呂は無かったが、トイレは水洗だった。
だが備え付けのトイレットペーパーはいただけないな。
用便後に使うのを躊躇うほどガサガサしてかたかったが、何とか揉み揉みして柔らかくしてから使ったよ。
これは俺が子供の頃に死んだ曽婆様から聞いた昔のトイレ事情からの知識だ。
紙が貴重な時代は縄でごしごしとやったとか、畑の傍で用を足すときは近くに有った草木の大きめの葉を使ったんだそうだ。
この辺は流石に話だけで、曽婆様が実際に良く使ったのは新聞紙を切ったものを使っていたと話していたが・・・。
新聞紙も結構かたいと思うんだが、揉んでやるとそれなりに使えるんだそうだ。
但し、新聞紙を揉むとインクが手に移って、両手が汚れたもんじゃと言ってたな。
俺が物心ついた時には水洗便所にトイレットペーパーだったから、本当にそんなことがあったのかどうかは知らん。
或いは曽婆様のホラだったのかもしれんのだが、ここで試すことになるとは思わなんだ。
そんなことは頭からすっ飛んでいたから、流石にインベントリにトイレットペーパーは準備していなかった。
今度来るときはちゃんとそれなりの紙を用意しておこう。
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