58 / 83
第五章 サザンポール亜大陸にて
5ー10 湖畔にて その二
しおりを挟む
マルコがハンプティの街に戻ったのは、まだ夕焼けにもなっていない時間帯でしたが、ギルドは結構込み合っていました。
それでも薬草採取の成果を収めなければ実績として認められないのです。
マルコの場合、インベントリで保管すれば薬草も全く痛んだりはしませんが、周囲におかしな目で見られないようにするためには、ほかの魔木クラスの子供たちと同じようなふるまいをしなければなりません。
そのために草原に来ていた子供たちに合わせて引き上げたのです。
ギルドに戻ると、子供たちが早めに引き上げにかかったのもわかります。
いまだ夕焼けにもなっていない時刻ですけれど、徐々に冒険者たちがギルド支部へ戻ってくる時刻なのです。
ギルドが冒険者達の成果確認のために獲物等の査定及び買取り受付を行う時間は、日没以降も続けられますけれど、宿での食事の時間等を考慮すると可能な限り日没時にはギルドに入っていることが望ましいのです。
このために子供たちが引き上げた時間でも、既にギルド内では、窓口にそこそこの人が並んでいるのです。
マルコは、子供たちの一番後ですけれど、査定及び買取り窓口に並びました。
窓口はお姐さん達四人が対応していますけれど、相応に時間がかかります。
中には窓口のお姉さんと世間話をしたりする大人が混じっていたりするものですから作業が遅くなります。
生憎とマルコの並んだ列の女性冒険者が、受付のお姉さんと長話を始めた所為で、少し遅れそうな雰囲気ですね。
まぁ、これもギルドのいつもの風景なのでしょうから止むを得ません。
本当にギルドが立て込んできたらそんなことをしていると後列の人たちから怒鳴られるでしょう。
特に魔物の生肉などを持っている冒険者たちは、できるだけ新鮮なうちに買い取りを受けようとするからです。
ギルドもそうしたことを知っていますから、列が長くなるような場合にはそんな無駄な時間は作らないはずです。
後ろに並んでいるのが子供たちと知っているのでそんな不作法も許されるのでしょうね。
マルコの前の子供二人は露骨に嫌な顔をしていますね。
薬草だって時間が経てば新鮮さが失われますから、買取価格に響くのです。
それでも並んだ以上は順番を守らねばならないのが辛いうところです。
女性冒険者がようやく窓口から離れ、子供たちの査定・買取りが進み始めたときに、ギルド入り口のスイングドアが大きな音を立てて開かれ、若い男が飛び込んできた。
そうして大声で叫んだのだ。
「キャスが、キャスが大けがを負った。
誰か治癒ができる奴はいないか?
治癒師のところまで運んでいたんじゃ間に合わねぇ。
頼む。
誰か助けてくれぇ。」
大声でホールの中で叫ぶ若い男だったが、どうやら治癒魔法を使える者はこの場にいないようで、名乗り出るものはいなかった。
治癒魔法はマイジロン大陸でも使い手が少ないとカラガンダ翁から聞いてはいたが、冒険者ギルドの職員にはいないのだろうし、この中にいる冒険者にもいないのだろう。
但し、この若い男が助けを求めるのだから冒険者等に全く居ないというわけでもなさそうだ。
そうしてそのすぐ後に男が二人がかりで、引きずるように若い女をギルドのホールに運び入れてきた、
若い女は。腹部に深い傷を負っているようでかなりの出血をしている。
確かに放置すれば幾ばくも保たないだろう。
この街の治癒師がどれほどの能力かは知らないが、これを癒すのはかなり難しそうな気がする。
マルコが見て取った女の出血量では生半可の術者では助けられないだろうと思われたのだ。
一見したところ、怪我人は15歳くらいで成人はしているだろうが、未だ少女の範疇を抜け出ていない。
前世のフラブール世界の療養師アズマンの記憶が、この娘を助けよとマルコに強く働きかけたのだった。
マルコにしても、助けられる命を放置はできなかった。
やむを得ず、内心でため息をつきながらもマルコが名乗り出た。
「僕は、少しだけ治癒魔法が使えます。
応急的なものでよければやります。」
そう言って名乗りを上げたが、若い男が胡散臭げに言う。
「お前が治癒魔法を使えるって?
嘘をつくな。
魔木クラスの小僧が使えるはずないだろう。」
助けを求めたくせに、救いを申し出た者を馬鹿にする。
そんな馬鹿な男のために魔法は使いたくはないが、かたや命が消えかかっている人がいる。
マルコは男を無視して女性のそばに駆け寄り、即座に中程度の治癒魔法をかけた。
マルコのかざした両手からわずかに金色に輝く光が生じた途端にすっと消えた。
途端に大きく切り裂かれた腹部が一気に治癒され、傷跡は完全には治らないものの出血が止まった。
尤も、マルコも完全には治していないのだ。
これだけの大怪我を完全に治癒してしまうと、後々絶対に面倒ごとになるからである。
従って、とりあえず大きな怪我だけを癒してハンプティにいるであろう治癒師に後を任せたのだ。
尤も、大きな傷はとりあえず応急的に塞いだので、治癒師が行う施術は少なくて済むはずだ。
マルコならば、重傷者がすぐにも起き上がれるほどの治癒魔法もできるのだが敢えて抑えているのだった。
それなりの治癒師にかかり、十分な療養を行えば元気になれるはずである。
わずかな間に若い女性冒険者の命を救ったマルコを、その場にいた全員が仰天してみていたが、最初にギルドに飛び込んできた男が間もなく我に返って、言った。
「キャスの命を救ってくれてありがとう。
そうして、ごめん。
さっきはお前のこと馬鹿にしてしまった。
どうか許してほしい。」
そういって深く頭を下げた若い男の目にはうっすらと涙が光っていた。
「気にしないで、それよりもその女の人早く治癒師のもとへ連れて行ってください。
あくまで僕がやったのは応急措置です。
毒までは除去できていませんから。」
「毒?
毒を受けているのか?」
「多分、・・・。
体内に回っているようですので早めに毒素を抜いて貰った方がよいですよ。
中級のポーションが必要になるかもしれません。」
「中級?
わかった借金してでも何とかする。
ところで、君の名は?」
「僕はマルコ。」
「マルコだな?
この礼は後できっとするから、今は御免。
俺は、レウスの風のファルクスだ。
覚えておいてくれ。
おい、急いでリゲルトさんのところにキャスを運ぶぞ。」
男三人は、ギルドから担架を借りて女性を乗せ、慌ただしくギルドを出て行った。
しばらくはギルド内も今起きたことで騒然としていたが、いち早く受付嬢が立ち直り順に仕事をこなしていった。
マルコの薬草採取も無事に買取りが終わり、有効期間が三か月延長されたことになる。
但し、受付のお姉さんにすっかり顔と名前を憶えられた。
「さっきのすごかったね。
マルコ君って、始めて見る顔だけど別なところから来たのかな?」
「はい、マイジロン大陸からの旅の途中です。」
「そうなんだ・・・、
しばらくはこの町にいるのかな?」
「いいえ、明日には東に向けて旅立つ予定です。」
「そっかぁ、残念だねぇ。
ファルクスも君に礼をしたかっただろうけれど・・・・。
ウチも、君ほどの治癒魔法が使える人がいれば随分と助かるんだけどなぁ。」
「すみません。
連れもいますのでここに長居するのは無理です。」
「うん、わかった。
でもちょっと待ってて。」
そう言って、受付のお姉さんが背後のドアに消えた。
少し時間をおいて戻った時には大柄なひげもじゃの男を連れてきていた。
「俺はここの支部のギルマスをしているドハスだ。
うちに属する冒険者を助けてくれて心から礼を言う。
本当にありがとう。
ついては治癒師に対する報酬としては少ないんだが、ギルおからの礼金として受け取ってほしい。
レアスの風もいまだ駆け出しだからな。
治癒師に払う金なんぞ持ち合わせてはいないはずだ。
彼らが別途謝礼を考えているかもしれんが、それは置いておいて、これはあくまでギルドからの感謝の気持ちだ。
旅費にでも使ってくれればよい。」
ギルマスがそう言って、小袋に入った金を差し出した。
「あの、これでさっきの四人組に借金を負わせるのなら受け取れません。」
「それは心配ない。
こいつはあくまでギルド支部としての謝礼金で有って、俺の裁量の範囲で動かせる金だ。
まあ、その代わり少ないがな。
遠慮なしに受け取ってほしい。」
親切の押し売りというものは、なかなかに拒めないものだ。
やむを得ず、謝礼金を受け取り、マルコは宿へと向かったのである。
翌日早朝に宿を出発しようとした際に、ファルクスが駆け寄ってきた。
「昨日は本当にありがとう。
おかげでキャスは命をつなぎとめたよ。
俺らも結構な借金を抱える羽目になったもんで、今はお前に何も謝礼が出せない。
だがきっとお前に謝礼を支払うからそれまで待っていてくれ。
どこにいても冒険者なら、その所在は調べれば分かるようになっている。
だから、金を貯めてきっとお前のところへ行くからな。
悪いがそれまで待っていてくれ。
俺たちレウスの風の四人はお前に大恩を受けたが、この借りはきっと返すから。」
うーん、ファルクスの意気込みはわかったけれど、実現は難しいかもね。
だって、このサザンポール亜大陸どころか、隣のオズモール大陸を抜けてエルドリック大陸までの旅路なんだもの。
普通に旅をしていたなら数年はかかることになるから、その旅費だけでも大変なことになる。
このサザンポール亜大陸の東端で、カラガンダ夫妻はニオルカンに送り届けるつもりだけれど、そこからの旅路はとても早くなるはず。
おそらくはいくら頑張ってもファルクスでは追いつけないことになるだろう。
さりながら、せっかくの決意と意気地をへし折る必要もない。
だからにこやかに別れようと思って、マルコは言った。
「うん、命大事に頑張ってね。
僕も、旅路の空の下であなたたちの活躍を祈っています。」
「おう、まかせとけ。
そうして元気でな。
ほんとに、ほんとにありがとう。」
旅の間のつかの間の触れ合いを経て、無事にマルコ達はハンプティを旅立ちました。
マルコの際立った治癒能力が、貴族に知れるまでにはまだ時間がありそうですが、いずれは騒ぎになるかもしれません。
マルコはそのためにも暇があるときには、より東の転移場所を選定している最中です。
それでも薬草採取の成果を収めなければ実績として認められないのです。
マルコの場合、インベントリで保管すれば薬草も全く痛んだりはしませんが、周囲におかしな目で見られないようにするためには、ほかの魔木クラスの子供たちと同じようなふるまいをしなければなりません。
そのために草原に来ていた子供たちに合わせて引き上げたのです。
ギルドに戻ると、子供たちが早めに引き上げにかかったのもわかります。
いまだ夕焼けにもなっていない時刻ですけれど、徐々に冒険者たちがギルド支部へ戻ってくる時刻なのです。
ギルドが冒険者達の成果確認のために獲物等の査定及び買取り受付を行う時間は、日没以降も続けられますけれど、宿での食事の時間等を考慮すると可能な限り日没時にはギルドに入っていることが望ましいのです。
このために子供たちが引き上げた時間でも、既にギルド内では、窓口にそこそこの人が並んでいるのです。
マルコは、子供たちの一番後ですけれど、査定及び買取り窓口に並びました。
窓口はお姐さん達四人が対応していますけれど、相応に時間がかかります。
中には窓口のお姉さんと世間話をしたりする大人が混じっていたりするものですから作業が遅くなります。
生憎とマルコの並んだ列の女性冒険者が、受付のお姉さんと長話を始めた所為で、少し遅れそうな雰囲気ですね。
まぁ、これもギルドのいつもの風景なのでしょうから止むを得ません。
本当にギルドが立て込んできたらそんなことをしていると後列の人たちから怒鳴られるでしょう。
特に魔物の生肉などを持っている冒険者たちは、できるだけ新鮮なうちに買い取りを受けようとするからです。
ギルドもそうしたことを知っていますから、列が長くなるような場合にはそんな無駄な時間は作らないはずです。
後ろに並んでいるのが子供たちと知っているのでそんな不作法も許されるのでしょうね。
マルコの前の子供二人は露骨に嫌な顔をしていますね。
薬草だって時間が経てば新鮮さが失われますから、買取価格に響くのです。
それでも並んだ以上は順番を守らねばならないのが辛いうところです。
女性冒険者がようやく窓口から離れ、子供たちの査定・買取りが進み始めたときに、ギルド入り口のスイングドアが大きな音を立てて開かれ、若い男が飛び込んできた。
そうして大声で叫んだのだ。
「キャスが、キャスが大けがを負った。
誰か治癒ができる奴はいないか?
治癒師のところまで運んでいたんじゃ間に合わねぇ。
頼む。
誰か助けてくれぇ。」
大声でホールの中で叫ぶ若い男だったが、どうやら治癒魔法を使える者はこの場にいないようで、名乗り出るものはいなかった。
治癒魔法はマイジロン大陸でも使い手が少ないとカラガンダ翁から聞いてはいたが、冒険者ギルドの職員にはいないのだろうし、この中にいる冒険者にもいないのだろう。
但し、この若い男が助けを求めるのだから冒険者等に全く居ないというわけでもなさそうだ。
そうしてそのすぐ後に男が二人がかりで、引きずるように若い女をギルドのホールに運び入れてきた、
若い女は。腹部に深い傷を負っているようでかなりの出血をしている。
確かに放置すれば幾ばくも保たないだろう。
この街の治癒師がどれほどの能力かは知らないが、これを癒すのはかなり難しそうな気がする。
マルコが見て取った女の出血量では生半可の術者では助けられないだろうと思われたのだ。
一見したところ、怪我人は15歳くらいで成人はしているだろうが、未だ少女の範疇を抜け出ていない。
前世のフラブール世界の療養師アズマンの記憶が、この娘を助けよとマルコに強く働きかけたのだった。
マルコにしても、助けられる命を放置はできなかった。
やむを得ず、内心でため息をつきながらもマルコが名乗り出た。
「僕は、少しだけ治癒魔法が使えます。
応急的なものでよければやります。」
そう言って名乗りを上げたが、若い男が胡散臭げに言う。
「お前が治癒魔法を使えるって?
嘘をつくな。
魔木クラスの小僧が使えるはずないだろう。」
助けを求めたくせに、救いを申し出た者を馬鹿にする。
そんな馬鹿な男のために魔法は使いたくはないが、かたや命が消えかかっている人がいる。
マルコは男を無視して女性のそばに駆け寄り、即座に中程度の治癒魔法をかけた。
マルコのかざした両手からわずかに金色に輝く光が生じた途端にすっと消えた。
途端に大きく切り裂かれた腹部が一気に治癒され、傷跡は完全には治らないものの出血が止まった。
尤も、マルコも完全には治していないのだ。
これだけの大怪我を完全に治癒してしまうと、後々絶対に面倒ごとになるからである。
従って、とりあえず大きな怪我だけを癒してハンプティにいるであろう治癒師に後を任せたのだ。
尤も、大きな傷はとりあえず応急的に塞いだので、治癒師が行う施術は少なくて済むはずだ。
マルコならば、重傷者がすぐにも起き上がれるほどの治癒魔法もできるのだが敢えて抑えているのだった。
それなりの治癒師にかかり、十分な療養を行えば元気になれるはずである。
わずかな間に若い女性冒険者の命を救ったマルコを、その場にいた全員が仰天してみていたが、最初にギルドに飛び込んできた男が間もなく我に返って、言った。
「キャスの命を救ってくれてありがとう。
そうして、ごめん。
さっきはお前のこと馬鹿にしてしまった。
どうか許してほしい。」
そういって深く頭を下げた若い男の目にはうっすらと涙が光っていた。
「気にしないで、それよりもその女の人早く治癒師のもとへ連れて行ってください。
あくまで僕がやったのは応急措置です。
毒までは除去できていませんから。」
「毒?
毒を受けているのか?」
「多分、・・・。
体内に回っているようですので早めに毒素を抜いて貰った方がよいですよ。
中級のポーションが必要になるかもしれません。」
「中級?
わかった借金してでも何とかする。
ところで、君の名は?」
「僕はマルコ。」
「マルコだな?
この礼は後できっとするから、今は御免。
俺は、レウスの風のファルクスだ。
覚えておいてくれ。
おい、急いでリゲルトさんのところにキャスを運ぶぞ。」
男三人は、ギルドから担架を借りて女性を乗せ、慌ただしくギルドを出て行った。
しばらくはギルド内も今起きたことで騒然としていたが、いち早く受付嬢が立ち直り順に仕事をこなしていった。
マルコの薬草採取も無事に買取りが終わり、有効期間が三か月延長されたことになる。
但し、受付のお姉さんにすっかり顔と名前を憶えられた。
「さっきのすごかったね。
マルコ君って、始めて見る顔だけど別なところから来たのかな?」
「はい、マイジロン大陸からの旅の途中です。」
「そうなんだ・・・、
しばらくはこの町にいるのかな?」
「いいえ、明日には東に向けて旅立つ予定です。」
「そっかぁ、残念だねぇ。
ファルクスも君に礼をしたかっただろうけれど・・・・。
ウチも、君ほどの治癒魔法が使える人がいれば随分と助かるんだけどなぁ。」
「すみません。
連れもいますのでここに長居するのは無理です。」
「うん、わかった。
でもちょっと待ってて。」
そう言って、受付のお姉さんが背後のドアに消えた。
少し時間をおいて戻った時には大柄なひげもじゃの男を連れてきていた。
「俺はここの支部のギルマスをしているドハスだ。
うちに属する冒険者を助けてくれて心から礼を言う。
本当にありがとう。
ついては治癒師に対する報酬としては少ないんだが、ギルおからの礼金として受け取ってほしい。
レアスの風もいまだ駆け出しだからな。
治癒師に払う金なんぞ持ち合わせてはいないはずだ。
彼らが別途謝礼を考えているかもしれんが、それは置いておいて、これはあくまでギルドからの感謝の気持ちだ。
旅費にでも使ってくれればよい。」
ギルマスがそう言って、小袋に入った金を差し出した。
「あの、これでさっきの四人組に借金を負わせるのなら受け取れません。」
「それは心配ない。
こいつはあくまでギルド支部としての謝礼金で有って、俺の裁量の範囲で動かせる金だ。
まあ、その代わり少ないがな。
遠慮なしに受け取ってほしい。」
親切の押し売りというものは、なかなかに拒めないものだ。
やむを得ず、謝礼金を受け取り、マルコは宿へと向かったのである。
翌日早朝に宿を出発しようとした際に、ファルクスが駆け寄ってきた。
「昨日は本当にありがとう。
おかげでキャスは命をつなぎとめたよ。
俺らも結構な借金を抱える羽目になったもんで、今はお前に何も謝礼が出せない。
だがきっとお前に謝礼を支払うからそれまで待っていてくれ。
どこにいても冒険者なら、その所在は調べれば分かるようになっている。
だから、金を貯めてきっとお前のところへ行くからな。
悪いがそれまで待っていてくれ。
俺たちレウスの風の四人はお前に大恩を受けたが、この借りはきっと返すから。」
うーん、ファルクスの意気込みはわかったけれど、実現は難しいかもね。
だって、このサザンポール亜大陸どころか、隣のオズモール大陸を抜けてエルドリック大陸までの旅路なんだもの。
普通に旅をしていたなら数年はかかることになるから、その旅費だけでも大変なことになる。
このサザンポール亜大陸の東端で、カラガンダ夫妻はニオルカンに送り届けるつもりだけれど、そこからの旅路はとても早くなるはず。
おそらくはいくら頑張ってもファルクスでは追いつけないことになるだろう。
さりながら、せっかくの決意と意気地をへし折る必要もない。
だからにこやかに別れようと思って、マルコは言った。
「うん、命大事に頑張ってね。
僕も、旅路の空の下であなたたちの活躍を祈っています。」
「おう、まかせとけ。
そうして元気でな。
ほんとに、ほんとにありがとう。」
旅の間のつかの間の触れ合いを経て、無事にマルコ達はハンプティを旅立ちました。
マルコの際立った治癒能力が、貴族に知れるまでにはまだ時間がありそうですが、いずれは騒ぎになるかもしれません。
マルコはそのためにも暇があるときには、より東の転移場所を選定している最中です。
21
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
赤毛のアンナ 〜極光の巫女〜
桐乃 藍
ファンタジー
幼馴染の神代アンナと共に異世界に飛ばされた成瀬ユウキ。
彼が命の危機に陥る度に発動する[先読みの力]。
それは、終焉の巫女にしか使えないと伝えられる世界最強の力の一つだった。
世界の終わりとされる約束の日までに世界を救うため、ユウキとアンナの冒険が今、始まる!
※2020年8月17日に完結しました(*´꒳`*)
良かったら、お気に入り登録や感想を下さいませ^ ^
------------------------------------------------------
※各章毎に1枚以上挿絵を用意しています(★マーク)。
表紙も含めたイラストは全てinstagramで知り合ったyuki.yukineko様に依頼し、描いて頂いています。
(私のプロフィール欄のURLより、yuki.yukineko 様のインスタに飛べます。綺麗で素敵なイラストが沢山あるので、そちらの方もご覧になって下さい)
大賢者の弟子ステファニー
楠ノ木雫
ファンタジー
この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。
その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。
そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。
※他の投稿サイトにも掲載しています。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ひとりの少年と精霊ののんびりライフ
わんコロ餅
ファンタジー
ひとりの不老不死の魔導士と精霊獣ケットシーとのふたり(?)旅
それは奇妙で非常識な魔導士と常識獣のケットシーさんとのおかしな話。
のちに彼は召喚士と呼ばれ精霊は召喚獣と呼ばれる。
第14回ファンタジー大賞。第550位
続編:ひとりの獣人と精霊【連載開始】
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる