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第五章 催事と出来事
5-4 マルス ~厄災に備えて
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マルスとアンリはグラストンの話を聞いた三日後、公爵夫妻を前に異例の申し出をした。
史実にあった大津波の来襲に備えて、住民の避難訓練をすることを提唱したのである。
時期は未定であるが、翌月に実施すること。
全住民の参加を義務付けることを骨子として、館の見張り台に有る大きな鐘が連打されたならば住民全員が何を差し置いても館の門を潜って中に入らなければならず、違背した者には罰を与えるというものであった。
その際に可能な場合は緊急用の食糧や大事な物を携えて参加することが奨励された。
マルスは公爵の意志を恣意的に操作した。
アマンダの意志を操作するのは控えた。
アマンダの意識を読み取ることができないばかりでなく、操作そのものができるかどうかわからない上に、無理をすればアマンダの意識に傷を与えてしまうことを恐れたのである。
公爵は比較的簡単に納得し、訓練を実施することを承諾した。
だが、会見が終わってすぐにアマンダの部屋に二人が呼ばれた。
何時もついているお付の侍女に暫しの人払いを告げ、侍女が部屋を出て行くと二人を前にアマンダが言った。
「さて、マルス殿とアンリが協力して海女の水着を作ったことは聞いています。
工人舎の頭も新たな製品と販路の可能性に喜んでいると聞いています。
特にマルス殿が設計した編み物機械は、裏地だけでなく他の用途にも使えます。
それから新たに開発した接着剤の用途もね。
船の帆布を修理するのに非常に便利なことが分かったようです。
マルビスの特産物になる可能性が高いとも聞いています。
マルス殿が多彩な能力を持ち、しかもとても優秀なことはわかっています。
僅かに半月余りでそのような産業を立ち上げることなど普通の人にはできませんもの。
そんなマルス殿だから心配しています。
此度の訓練に何か隠された意味合いがあるのではないかと・・・。
公爵が納得されたものを妻の私が拒むことはできませんが、何か不安なのです。
訓練ならば住民の一部が参加するだけでもできます。
それを全住民の参加を強制して、参加しなかった者を罰する等通常ではありえない話です。
話してくれませんか。
何か隠された意図や裏の事情があるのであれば・・・。」
マルスはアンリに思念を送り、アマンダに自らの力の事を話すと知らせた。
アマンダはアンリの母であり、その子であるクレインとアンリに何らかの力が受け継がれたと考えることが妥当だからである。
「アマンダ夫人には正直にお話しいたしましょう。
僕は特殊な力を持っています。
そうしてアンリもまたその特殊な力を手に入れる可能性があります。
既にその一部は身に付けています。
そのことをどうお思いになりますか?」
暫し考え込んでからアマンダは言った。
「さて、・・・。
マルス殿の言っている意味が良くわかりません。
それに特殊な力と今回の訓練は何か関係があるのですか?」
「はい、ございます。
特殊な力を持っているが故にある者から警告を受けました。
近々、エルモ大陸とゲリア大陸の間の海底で大きな地震が起きます。
でも、陸地から相当に遠い場所での出来事ですから、このマルビスでは左程の揺れは無いかもしれません。
ですがその自選の所為で大津波がこのマルビスを襲います。
放置すれば140年前の大津波と同じ惨劇が繰り返されることになります。
アンリ殿と一緒に被害想定をしたところでは、仮に140年前と同じ規模の大津波が襲い来たとして、何もせずに放置すれば7割の住民の命が奪われ、市街地の半数は押し流されることになるでしょう。
城塞の西にある田畑も半分以上が海水に浸かることになると思われます。」
驚くべき予測を聞いたアマンダであるが或いはと思っていただけに冷静に言葉を返した。
「あなた方の被害予測が間違いとは言いません。
でもその警告をしてくれたと言う人は何者ですか?
それに遠くで起きる地震がなぜ今から予測できるのです。」
「そこが私の特殊な能力に関わってきます。
先ほど私は警告してくれた者と言いましたが、彼は人ではありません。
大地を司る精霊なのです。
私とアンリがその精霊に会って聞いた話です。
私とアンリは妖精や精霊と会話を交わすことができるのです。
アマンダ様はそれをお信じになれますか?」
流石にアマンダの予測を超えていた話であったので、唖然とした表情で二人を見ていたアマンダであるが、やがて言った。
「妖精というのはおとぎ話に出てくる妖精なのですか?」
「そうかも知れませんし、そうでないかも知れません。
おとぎ話の作者が実際に彼らを見ることができたのならそうでしょうし、単に想像で描いたものならば違うでしょう。」
「たとえば、どんな妖精や精霊がいるのですか?」
「アマンダ様に一番わかりやすい精霊ならば、この屋敷の精霊ダイロンがいます。
彼はこの屋敷内の事ならば何でも知っています。」
「あら、まぁ、妖精や精霊にも名前が有るのね。
今、お話はできるの?」
「私とアンリはできますが、アマンダ様には無理です。」
「私には見えず、話もできないのね。
そんなことではあなた方の話を俄かには信じられません。」
「では、何かダイロンにしてもらうことはありませんか。」
「そうね、・・・。
では、ダイロンという精霊に訊いてみてくれますか。
もう随分と前から私が嫁入りの際に持ってきたお婆様の形見の指輪が見当たらないの、どこにあるのか知っているかしら。」
ほんのわずかの間を置いて、すぐにアンリが答えた。
「ダイロンが答えてくれました。
お母様、マリエステという方を知っていらっしゃるわよね。」
アマンダが驚いた顔で言った。
「マリエステ?
何故、アンリがその名を知っているの?
お前が生まれる前に亡くなっているのに・・。」
「マリエステは、お母様がお父様に嫁いできたときに実家のルシアーノ家から侍女として付いてきた人。
そうしてお母様がお兄様を生むための陣痛が始まった時、怪我をしないようにと指輪を託した人。
マリエステは、その指輪をなくしたりしないようにある場所に保管しました。
クレイン兄様が生まれるまで忙しい時間を送ったマリエステさんは、その保管場所を後でお母様に告げるつもりでいたのだけれど、忙しさにかまけてできなかった。
そうしてたまたま階段で足を滑らせてそのまま不慮の死を遂げた。
だからお母様は指輪の保管場所を知らない。
マリエステは、指輪をお母様のお母様が大事に使っていた鏡台の中にある隠し場所に保管したの。
お母様のお母様は、マリエステにだけその隠し場所を知らせていた。
婚家に隠し事が有ってはいけないから、こんな隠し場所があることを知らせる必要は無いけれど本当に必要な場合には知らせてあげてと言って、マリエステにだけは頼んだのよ。」
「母の鏡台?
でもあれは鏡にひびが入って、もう処分したのでは?」
「いいえ、侍女の頭であるミーシャが捨てるのはいつでもできると言って屋根裏部屋に保管してありますよ。
ミーシャもお母様の輿入れの道具の一つと知っていたので簡単に捨ててはいけないと考えたようです。」
アマンダはその事実を自分で確かめるつもりで立ち上がった。
それを制するようにマルスが言った。
「確かめるなら屋根裏部屋に行く必要はありません。
僕が運びます。」
そう言った途端、忽然と鏡台が部屋の片隅に現れた。
埃だらけの鏡台であるが、確かにアマンダの母がくれたものに間違いは無かった。
鏡の隅に小さなひびが入っている。
そこへ歩み寄ろうとすると、勝手に鏡台の引き出しがすっと飛び出し、更にその奥にあった小箱が飛び出してきた。
その小箱の蓋がひとりでに開いて、中に納まっていた指輪が宙を跳んで立っているアマンダの目の前に浮かんでいた。
恐る恐るアマンダはそれを手に取った。
間違いなく形見の指輪であった。
赤い宝玉と台座の銀拵えに特徴がある稀有なものである。
マルスが言った。
「鏡台を屋根裏部屋に戻します。」
小箱が吸い込まれ、引き出しが仕舞われ、そうして鏡台がアマンダの視界から忽然と消えていた。
アマンダは、へなへなと腰が抜けたように椅子に座った。
「一体、どうやって?」
「僕が屋根裏部屋の鏡台を瞬時に移動させました。
そうして手も触れずに引き出しを開け、小箱を引き出し、中の指輪をアマンダ様の目の前までゆっくりと運びました。
全て思念の力ですが、信じますか?」
アマンダは力なく首を振った。
「自分の目で見たのだけれど、とても信じられないわ。
そんな力をアンリも持っているの?」
アンリが真面目な顔で答えた。
「私は、まだそこまでの力は持っていないの。
この力は危険でもあるから、マルス様は慎重に育てようとしています。
今のところ、私は妖精や精霊と御話ができて、マルス様とも思念で会話ができるだけ。」
マルスが後を続けた。
「でもこの力は人には余り知らせられません。
それを知った者が悪用しようとした場合に、困ることになります。
それに、国王の権力の座の周囲にいる者から見ればとても危険な存在です。
必要とあれば国王の命さえ奪える力だからです。
彼らはその力を利用できなければ排除しようとするでしょう。
権力とはそういうものです。
仮に盗賊団の一味が知れば、人質をとって悪事の片棒を担がせようとするかもしれません。
僕は大概の事には対応できるとは思っていますが、それでも危険は冒せないのです。
こうした能力を持つ者がいると知ったなら、通常の人は尊敬するか妬むかのどちらかの反応を示します。
残念なことに妬む人が多いので、その人は世間から疎んじられることになります。
マデリン教の魔女裁判がその典型例でしょう。
マデリン教の信徒は、神への信仰ゆえにそうした神の力にも似た力を認めようとはしませんでしたし、そのような兆候があれば悪魔の所業として断罪したのです。
罪がないと知りつつ、多くの人々を火炙りにしてきたのは神官と呼ばれる教養のある人物でした。
ですから、このことは誰にも秘密にしなければなりません。」
アマンダは頷いた。
「この話が私から漏れることは決して有りません。
それだけは信じて頂戴な。」
「はい、アマンダ夫人を信用しています。
ですから打ち明けました。」
「でも何故マルス殿やアンリにそのような力があるの?」
「僕の由来は僕自身知りません。
でもアンリ殿の由来はアマンダ夫人貴方です。
貴方は、アンリ殿と同じような力を持っている可能性があります。
そうして、アンリ殿のお兄さんであるクレイン殿にも引き継がれています。
但し、アンリ殿の可能性に比べるとクレイン殿が少し劣り、更にアマンダ夫人が劣ります。
理由は判りませんが、アマンダ夫人がお母様或いはお父様から引き継いだのかもしれません。
アマンダ様の御兄弟を調べるといずれもその可能性を持った方達でした。
但し、力を持つ可能性はかなり低いと見ています。
そうしてそのお子達も同様です。」
「じゃぁ、私にもそのような力があるかもしれないとそう言うのね。
根拠は何ですか?」
「アマンダ夫人の身体の周囲にある光芒です。
その光芒の大きさや色合いで可能性が判断できます。
アンリ殿は力を持てる大きさであることは今ではわかっています。
でもクレイン殿やアマンダ夫人が可能かどうかはわかりません。
いずれ確かめることも必要かとは存じますが、急ぐ必要は無いと思っています。」
「急ぐ必要がある場合もあると思っているのですか?」
「大地の精霊が言っていました。
8000年ほど前に生きていた女性がいます。
彼女は自らの力で特別な能力に目覚めてしまいました。
それを覚醒と呼んでいますが、・・・。
覚醒の際に大きな力を予期せずに発現させてしまい、村を二つ崩壊させています。
彼女が5歳の時であり、彼女もまたその時から大地の精霊と話ができるようになったようです。
制御できない形で大きな力を発現させてしまえば周囲にいる人たちが迷惑を蒙ることになりかねません。」
アマンダはふとあることに気づいた。
「マルス殿。
貴方の場合、覚醒はあったのですか?」
「はい、ありました。」
「その覚醒の力は、周囲に影響を及ぼさなかったのですか?」
「予感とでもいうのでしょうか、自分の身体から左程の時をおかず力が放出されるのがわかりました。
ですから周囲に影響を及ぼすのを恐れて、人のいない場所に行きました。
そこで力を意図的に放出しました。
その場所と言うか・・・・世界は消滅しました。」
「えっ・・・。
一体どこなのですか?
そこは。」
「良くは判りません。
でも多分、夜空に瞬く星の世界のどこかです。」
「世界が消滅したというのは?」
「この世界が丸い形をしており何もない空間に浮かんでいることをご承知かと思います。」
「ええ、学士たちがそのように申しておりますね。
私にはまるで実感がわきませんけれど。」
「この世界は空に輝く太陽の周囲を回っているのだそうです。
そうして夜空に見える無数の星はこの世界の太陽と同じものなのだそうです。
そうすると、どこかにこの世界と同じような丸い地上世界が有ってもおかしくは無いでしょう。
僕はそのような世界で生き物が全くいない世界をひとつ丸ごと消滅させてしまったんです。」
世界を丸ごと消滅させる力など、アマンダには想像もできなかったが、不思議にマルスを怖いとは思わなかった。
「そこまではどうやって?」
「鏡台を移動したように、自分の身体を移動しました。」
「では、では、マルス殿は遠いところへでも瞬時に移動できると?」
マルスが頷いた。
アマンダはその時に確信した。
アズラン峠で公爵家一家の命を狙った刺客集団を殲滅したのは間違いなくマルスであろうと。
「わかりました。
今はマルス殿とアンリの話を信ずるしかありませんね。
で、いずれ起きるであろう大津波はどうやって防ぐのですか?」
「残念ながら防ぎようが有りません。
大地の精霊にも訊ねてはみましたが、無理に地震を止めようとすれば別のところにしわ寄せが行くそうです。
たとえばゲリア大陸の半分が沈んでしまうとか、その結果は何もせずに地震が起きる場合よりも大きな被害を生じさせます。
ゲリア大陸の半分ほども沈みこむような事態になれば大津波も数倍の大きさになるでしょう。
それに発生した大津波を無理に防ごうとすれば説明のできないような現象が人目に触れてしまいます。
ましてそれがこのマルビスだけに起きたなら誰しもが不思議に思うでしょう。
他の海岸には大津波が襲来するのですから。
今の段階では、私やアンリが特殊な力を持っていることを知られるのだけは避けねばなりません。
ですから被害を最小限度にするために住民を避難させようとしているのです。」
「館の大鐘を鳴らしてこの屋敷へ避難させるのですね?」
「そうです。
大きな経済的被害は蒙るかもしれませんが、人の命は救いたいのです。
住民がいれば町の再建は可能ですが、人がいなければ再建も難しいと思うからです。」
「でも、マルス殿は後10日余りでカルベックに帰らねばなりませんね。」
「予定ではそうですが、今少しマルビス滞在をお許しいただけませんか?
叶うことなら、僕がカルベックへ戻るのは、少なくとも住民避難を見届けてからにしたいと思います。
マルビスの再建にとって大事なことですので。」
「カルベックご夫妻にご迷惑をおかけすることになりませんか?」
「もともと一カ月と限っての話ではなかったように思います。
父は一カ月ほどと申しておりました。」
「それは、・・・確かにそうですね。
では、私からレア様に手紙を差し上げましょう。
一月に加えてもう半月ばかりの逗留を願い出て見ます。
でもそれ以上はだめですよ。」
「はい、そうしていただければ、多分大津波が襲って来た時にはマルビスに居ることができましょう。
左程のことはできないにしても、できるだけのことはしたいと思います。」
史実にあった大津波の来襲に備えて、住民の避難訓練をすることを提唱したのである。
時期は未定であるが、翌月に実施すること。
全住民の参加を義務付けることを骨子として、館の見張り台に有る大きな鐘が連打されたならば住民全員が何を差し置いても館の門を潜って中に入らなければならず、違背した者には罰を与えるというものであった。
その際に可能な場合は緊急用の食糧や大事な物を携えて参加することが奨励された。
マルスは公爵の意志を恣意的に操作した。
アマンダの意志を操作するのは控えた。
アマンダの意識を読み取ることができないばかりでなく、操作そのものができるかどうかわからない上に、無理をすればアマンダの意識に傷を与えてしまうことを恐れたのである。
公爵は比較的簡単に納得し、訓練を実施することを承諾した。
だが、会見が終わってすぐにアマンダの部屋に二人が呼ばれた。
何時もついているお付の侍女に暫しの人払いを告げ、侍女が部屋を出て行くと二人を前にアマンダが言った。
「さて、マルス殿とアンリが協力して海女の水着を作ったことは聞いています。
工人舎の頭も新たな製品と販路の可能性に喜んでいると聞いています。
特にマルス殿が設計した編み物機械は、裏地だけでなく他の用途にも使えます。
それから新たに開発した接着剤の用途もね。
船の帆布を修理するのに非常に便利なことが分かったようです。
マルビスの特産物になる可能性が高いとも聞いています。
マルス殿が多彩な能力を持ち、しかもとても優秀なことはわかっています。
僅かに半月余りでそのような産業を立ち上げることなど普通の人にはできませんもの。
そんなマルス殿だから心配しています。
此度の訓練に何か隠された意味合いがあるのではないかと・・・。
公爵が納得されたものを妻の私が拒むことはできませんが、何か不安なのです。
訓練ならば住民の一部が参加するだけでもできます。
それを全住民の参加を強制して、参加しなかった者を罰する等通常ではありえない話です。
話してくれませんか。
何か隠された意図や裏の事情があるのであれば・・・。」
マルスはアンリに思念を送り、アマンダに自らの力の事を話すと知らせた。
アマンダはアンリの母であり、その子であるクレインとアンリに何らかの力が受け継がれたと考えることが妥当だからである。
「アマンダ夫人には正直にお話しいたしましょう。
僕は特殊な力を持っています。
そうしてアンリもまたその特殊な力を手に入れる可能性があります。
既にその一部は身に付けています。
そのことをどうお思いになりますか?」
暫し考え込んでからアマンダは言った。
「さて、・・・。
マルス殿の言っている意味が良くわかりません。
それに特殊な力と今回の訓練は何か関係があるのですか?」
「はい、ございます。
特殊な力を持っているが故にある者から警告を受けました。
近々、エルモ大陸とゲリア大陸の間の海底で大きな地震が起きます。
でも、陸地から相当に遠い場所での出来事ですから、このマルビスでは左程の揺れは無いかもしれません。
ですがその自選の所為で大津波がこのマルビスを襲います。
放置すれば140年前の大津波と同じ惨劇が繰り返されることになります。
アンリ殿と一緒に被害想定をしたところでは、仮に140年前と同じ規模の大津波が襲い来たとして、何もせずに放置すれば7割の住民の命が奪われ、市街地の半数は押し流されることになるでしょう。
城塞の西にある田畑も半分以上が海水に浸かることになると思われます。」
驚くべき予測を聞いたアマンダであるが或いはと思っていただけに冷静に言葉を返した。
「あなた方の被害予測が間違いとは言いません。
でもその警告をしてくれたと言う人は何者ですか?
それに遠くで起きる地震がなぜ今から予測できるのです。」
「そこが私の特殊な能力に関わってきます。
先ほど私は警告してくれた者と言いましたが、彼は人ではありません。
大地を司る精霊なのです。
私とアンリがその精霊に会って聞いた話です。
私とアンリは妖精や精霊と会話を交わすことができるのです。
アマンダ様はそれをお信じになれますか?」
流石にアマンダの予測を超えていた話であったので、唖然とした表情で二人を見ていたアマンダであるが、やがて言った。
「妖精というのはおとぎ話に出てくる妖精なのですか?」
「そうかも知れませんし、そうでないかも知れません。
おとぎ話の作者が実際に彼らを見ることができたのならそうでしょうし、単に想像で描いたものならば違うでしょう。」
「たとえば、どんな妖精や精霊がいるのですか?」
「アマンダ様に一番わかりやすい精霊ならば、この屋敷の精霊ダイロンがいます。
彼はこの屋敷内の事ならば何でも知っています。」
「あら、まぁ、妖精や精霊にも名前が有るのね。
今、お話はできるの?」
「私とアンリはできますが、アマンダ様には無理です。」
「私には見えず、話もできないのね。
そんなことではあなた方の話を俄かには信じられません。」
「では、何かダイロンにしてもらうことはありませんか。」
「そうね、・・・。
では、ダイロンという精霊に訊いてみてくれますか。
もう随分と前から私が嫁入りの際に持ってきたお婆様の形見の指輪が見当たらないの、どこにあるのか知っているかしら。」
ほんのわずかの間を置いて、すぐにアンリが答えた。
「ダイロンが答えてくれました。
お母様、マリエステという方を知っていらっしゃるわよね。」
アマンダが驚いた顔で言った。
「マリエステ?
何故、アンリがその名を知っているの?
お前が生まれる前に亡くなっているのに・・。」
「マリエステは、お母様がお父様に嫁いできたときに実家のルシアーノ家から侍女として付いてきた人。
そうしてお母様がお兄様を生むための陣痛が始まった時、怪我をしないようにと指輪を託した人。
マリエステは、その指輪をなくしたりしないようにある場所に保管しました。
クレイン兄様が生まれるまで忙しい時間を送ったマリエステさんは、その保管場所を後でお母様に告げるつもりでいたのだけれど、忙しさにかまけてできなかった。
そうしてたまたま階段で足を滑らせてそのまま不慮の死を遂げた。
だからお母様は指輪の保管場所を知らない。
マリエステは、指輪をお母様のお母様が大事に使っていた鏡台の中にある隠し場所に保管したの。
お母様のお母様は、マリエステにだけその隠し場所を知らせていた。
婚家に隠し事が有ってはいけないから、こんな隠し場所があることを知らせる必要は無いけれど本当に必要な場合には知らせてあげてと言って、マリエステにだけは頼んだのよ。」
「母の鏡台?
でもあれは鏡にひびが入って、もう処分したのでは?」
「いいえ、侍女の頭であるミーシャが捨てるのはいつでもできると言って屋根裏部屋に保管してありますよ。
ミーシャもお母様の輿入れの道具の一つと知っていたので簡単に捨ててはいけないと考えたようです。」
アマンダはその事実を自分で確かめるつもりで立ち上がった。
それを制するようにマルスが言った。
「確かめるなら屋根裏部屋に行く必要はありません。
僕が運びます。」
そう言った途端、忽然と鏡台が部屋の片隅に現れた。
埃だらけの鏡台であるが、確かにアマンダの母がくれたものに間違いは無かった。
鏡の隅に小さなひびが入っている。
そこへ歩み寄ろうとすると、勝手に鏡台の引き出しがすっと飛び出し、更にその奥にあった小箱が飛び出してきた。
その小箱の蓋がひとりでに開いて、中に納まっていた指輪が宙を跳んで立っているアマンダの目の前に浮かんでいた。
恐る恐るアマンダはそれを手に取った。
間違いなく形見の指輪であった。
赤い宝玉と台座の銀拵えに特徴がある稀有なものである。
マルスが言った。
「鏡台を屋根裏部屋に戻します。」
小箱が吸い込まれ、引き出しが仕舞われ、そうして鏡台がアマンダの視界から忽然と消えていた。
アマンダは、へなへなと腰が抜けたように椅子に座った。
「一体、どうやって?」
「僕が屋根裏部屋の鏡台を瞬時に移動させました。
そうして手も触れずに引き出しを開け、小箱を引き出し、中の指輪をアマンダ様の目の前までゆっくりと運びました。
全て思念の力ですが、信じますか?」
アマンダは力なく首を振った。
「自分の目で見たのだけれど、とても信じられないわ。
そんな力をアンリも持っているの?」
アンリが真面目な顔で答えた。
「私は、まだそこまでの力は持っていないの。
この力は危険でもあるから、マルス様は慎重に育てようとしています。
今のところ、私は妖精や精霊と御話ができて、マルス様とも思念で会話ができるだけ。」
マルスが後を続けた。
「でもこの力は人には余り知らせられません。
それを知った者が悪用しようとした場合に、困ることになります。
それに、国王の権力の座の周囲にいる者から見ればとても危険な存在です。
必要とあれば国王の命さえ奪える力だからです。
彼らはその力を利用できなければ排除しようとするでしょう。
権力とはそういうものです。
仮に盗賊団の一味が知れば、人質をとって悪事の片棒を担がせようとするかもしれません。
僕は大概の事には対応できるとは思っていますが、それでも危険は冒せないのです。
こうした能力を持つ者がいると知ったなら、通常の人は尊敬するか妬むかのどちらかの反応を示します。
残念なことに妬む人が多いので、その人は世間から疎んじられることになります。
マデリン教の魔女裁判がその典型例でしょう。
マデリン教の信徒は、神への信仰ゆえにそうした神の力にも似た力を認めようとはしませんでしたし、そのような兆候があれば悪魔の所業として断罪したのです。
罪がないと知りつつ、多くの人々を火炙りにしてきたのは神官と呼ばれる教養のある人物でした。
ですから、このことは誰にも秘密にしなければなりません。」
アマンダは頷いた。
「この話が私から漏れることは決して有りません。
それだけは信じて頂戴な。」
「はい、アマンダ夫人を信用しています。
ですから打ち明けました。」
「でも何故マルス殿やアンリにそのような力があるの?」
「僕の由来は僕自身知りません。
でもアンリ殿の由来はアマンダ夫人貴方です。
貴方は、アンリ殿と同じような力を持っている可能性があります。
そうして、アンリ殿のお兄さんであるクレイン殿にも引き継がれています。
但し、アンリ殿の可能性に比べるとクレイン殿が少し劣り、更にアマンダ夫人が劣ります。
理由は判りませんが、アマンダ夫人がお母様或いはお父様から引き継いだのかもしれません。
アマンダ様の御兄弟を調べるといずれもその可能性を持った方達でした。
但し、力を持つ可能性はかなり低いと見ています。
そうしてそのお子達も同様です。」
「じゃぁ、私にもそのような力があるかもしれないとそう言うのね。
根拠は何ですか?」
「アマンダ夫人の身体の周囲にある光芒です。
その光芒の大きさや色合いで可能性が判断できます。
アンリ殿は力を持てる大きさであることは今ではわかっています。
でもクレイン殿やアマンダ夫人が可能かどうかはわかりません。
いずれ確かめることも必要かとは存じますが、急ぐ必要は無いと思っています。」
「急ぐ必要がある場合もあると思っているのですか?」
「大地の精霊が言っていました。
8000年ほど前に生きていた女性がいます。
彼女は自らの力で特別な能力に目覚めてしまいました。
それを覚醒と呼んでいますが、・・・。
覚醒の際に大きな力を予期せずに発現させてしまい、村を二つ崩壊させています。
彼女が5歳の時であり、彼女もまたその時から大地の精霊と話ができるようになったようです。
制御できない形で大きな力を発現させてしまえば周囲にいる人たちが迷惑を蒙ることになりかねません。」
アマンダはふとあることに気づいた。
「マルス殿。
貴方の場合、覚醒はあったのですか?」
「はい、ありました。」
「その覚醒の力は、周囲に影響を及ぼさなかったのですか?」
「予感とでもいうのでしょうか、自分の身体から左程の時をおかず力が放出されるのがわかりました。
ですから周囲に影響を及ぼすのを恐れて、人のいない場所に行きました。
そこで力を意図的に放出しました。
その場所と言うか・・・・世界は消滅しました。」
「えっ・・・。
一体どこなのですか?
そこは。」
「良くは判りません。
でも多分、夜空に瞬く星の世界のどこかです。」
「世界が消滅したというのは?」
「この世界が丸い形をしており何もない空間に浮かんでいることをご承知かと思います。」
「ええ、学士たちがそのように申しておりますね。
私にはまるで実感がわきませんけれど。」
「この世界は空に輝く太陽の周囲を回っているのだそうです。
そうして夜空に見える無数の星はこの世界の太陽と同じものなのだそうです。
そうすると、どこかにこの世界と同じような丸い地上世界が有ってもおかしくは無いでしょう。
僕はそのような世界で生き物が全くいない世界をひとつ丸ごと消滅させてしまったんです。」
世界を丸ごと消滅させる力など、アマンダには想像もできなかったが、不思議にマルスを怖いとは思わなかった。
「そこまではどうやって?」
「鏡台を移動したように、自分の身体を移動しました。」
「では、では、マルス殿は遠いところへでも瞬時に移動できると?」
マルスが頷いた。
アマンダはその時に確信した。
アズラン峠で公爵家一家の命を狙った刺客集団を殲滅したのは間違いなくマルスであろうと。
「わかりました。
今はマルス殿とアンリの話を信ずるしかありませんね。
で、いずれ起きるであろう大津波はどうやって防ぐのですか?」
「残念ながら防ぎようが有りません。
大地の精霊にも訊ねてはみましたが、無理に地震を止めようとすれば別のところにしわ寄せが行くそうです。
たとえばゲリア大陸の半分が沈んでしまうとか、その結果は何もせずに地震が起きる場合よりも大きな被害を生じさせます。
ゲリア大陸の半分ほども沈みこむような事態になれば大津波も数倍の大きさになるでしょう。
それに発生した大津波を無理に防ごうとすれば説明のできないような現象が人目に触れてしまいます。
ましてそれがこのマルビスだけに起きたなら誰しもが不思議に思うでしょう。
他の海岸には大津波が襲来するのですから。
今の段階では、私やアンリが特殊な力を持っていることを知られるのだけは避けねばなりません。
ですから被害を最小限度にするために住民を避難させようとしているのです。」
「館の大鐘を鳴らしてこの屋敷へ避難させるのですね?」
「そうです。
大きな経済的被害は蒙るかもしれませんが、人の命は救いたいのです。
住民がいれば町の再建は可能ですが、人がいなければ再建も難しいと思うからです。」
「でも、マルス殿は後10日余りでカルベックに帰らねばなりませんね。」
「予定ではそうですが、今少しマルビス滞在をお許しいただけませんか?
叶うことなら、僕がカルベックへ戻るのは、少なくとも住民避難を見届けてからにしたいと思います。
マルビスの再建にとって大事なことですので。」
「カルベックご夫妻にご迷惑をおかけすることになりませんか?」
「もともと一カ月と限っての話ではなかったように思います。
父は一カ月ほどと申しておりました。」
「それは、・・・確かにそうですね。
では、私からレア様に手紙を差し上げましょう。
一月に加えてもう半月ばかりの逗留を願い出て見ます。
でもそれ以上はだめですよ。」
「はい、そうしていただければ、多分大津波が襲って来た時にはマルビスに居ることができましょう。
左程のことはできないにしても、できるだけのことはしたいと思います。」
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その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
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*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
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