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二章-首都の御三家-
16『ライス・カツカレーと少女』
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首都にある洋食屋の一つ『洋食屋乃ルフラン』にて…戦マキナ『共鳴特異・量産型』の【有左】の内の一人は、目の前への勝負に対する勝率を思考している…
「皆さんの直近の言動…視線の動向…そのた諸々から推測出来る私の勝率は…65%です。勝利の奇跡は起こります。」
有左は、同じテーブルに着き勝負する…テフナ、桜、葵に対して宣言する。
「有左ちゃん、じゃんけん程度にそんな大袈裟な…しかも、勝率そんなに高くないし…」
葵がやれやれっと言った表情を見せながら突っ込む。
「小町の挑戦も終盤だし、私達も決着を着けないと…」
妙に真剣なトーンで促す桜は、眼鏡のフレームの右側を持ち、眼鏡の位置を調節する。
「あれ…もしかして、桜も緊張してる?」
そう言い放ったテフナの語気は震えている…
少女達にとっての大勝負の火種となっているのは…約4キログラムのライスカツカレーを制限時間30分以内に食べきる挑戦であり…
成功すれば、最大5名までのお連れ様の会計が無料になるが、失敗すると会計が5割増しになってしまうと言うルールである。
その大食いへの挑戦者である小町は、開始直後からペースを落とすことなく大量のカレーを食している…
これから行われるじゃんけんに負けた人間が、小町が大食い挑戦に失敗した際の支払いを行う流れになっている。
「グーを出せば、65%の確率で私の勝利です。」
有左が真顔で高らかに宣言する。
「う、うん…(その一言で勝率が0%になった様なものでしょ…)」
テフナと葵は呆れた返事をする。
「(それは駆け引きなの?…それとも、本当に?)」
疑心暗鬼に陥った桜は、眼鏡のブリッジ部分を右手の人差し指で小刻みに震わせる。
「じゃあ、いくよ…最初はグー!じゃんけん…」
葵が勝負の時を告げる。
「…ポン!」
勝負に参戦した少女たちはお互いの手元を確認する…
「嘘です…そんな…」
勝負は一度で決着が着き、敗れた有左が失意の言葉を漏らす。
そうこうしていると…小町の挑戦の制限時間も残り1分を切る。
「小町さんの勝率は、ひゃ、ひゃひゃく、100%です…そうでないと、私の財布が持ちません。」
さっきまで冷静に分析していた有左の目が踊り出し、しどろもどろになる。
「くっ、フフ…それにしても、有左ちゃんは空軍の私達との食事に付いてきても良かったのかなぁ?」
葵が含みのある笑みを見せる。
「はっ、はい?…はい、私達のご主人…じゃなくて、影盛様から空軍側の戦マキナの動向を探っ…じゃなくて、交流を深めるのも良いだろ言われたのですよん。」
じゃんけんに負け、財布が弾け飛ぶ可能性に晒されたショックで、有左が託された命令が見え隠れしてしまう。
そんな状態の有左の耳に、制限時間の終わりを告げるストップウォッチの音が届く。
「小町、どうなの?」
桜が挑戦者とライスカレーが盛られていた食器の様子を確認する。
「あぁ、とても美味だったな!」
小町は完食したことを証明する為に、口を開ける。
「本当に!?凄い、おめでとう!」
テフナ達が称賛と歓喜の声を上げる一方で…緊張の糸が切れた有左は、まるでオーバーヒートした機械のような呼吸と共に、座っていた椅子の背もたれを滑り落ちていき…正面に座る桜の視界からフェードアウトする。
「大丈夫?有左ちゃん?」
そう気にかけた葵が、テーブルの下を覗き込む。
「はい、お気遣いありがとうございます。」
冷静さを取り繕う為に、有左はスッと立ち上がる。
「そっか…有左ちゃん達って今のところ3人いるじゃない?パッと見で誰が誰なのか分かりたいからさ、良かったらこれあげるよ。」
そう続けた葵は、赤、青、黒の各色のリボンを差し出す。
「ありがとうございます…宜しいのでしょうか?」
僅かにキョトンした有左が受け取る。
「欲しい色とリボン争奪戦のじゃんけんで何を出すか今のうちから考えていたら?」
葵が提案する。
「はい…今から考えておきます…」
そう答えた有左の一人は、赤色のリボンが気に入った様に見える。
その葵と有左の隣では、小町が挑戦成功の記念撮影を行っており…その様子を見ていたテフナは店先の入り口付近から視線を感じて振り向くと…
そこには、テフナ達に比べて微かに幼さを感じさせ…目元のそばかすが特徴的な女学生と目が合う。
「皆さんの直近の言動…視線の動向…そのた諸々から推測出来る私の勝率は…65%です。勝利の奇跡は起こります。」
有左は、同じテーブルに着き勝負する…テフナ、桜、葵に対して宣言する。
「有左ちゃん、じゃんけん程度にそんな大袈裟な…しかも、勝率そんなに高くないし…」
葵がやれやれっと言った表情を見せながら突っ込む。
「小町の挑戦も終盤だし、私達も決着を着けないと…」
妙に真剣なトーンで促す桜は、眼鏡のフレームの右側を持ち、眼鏡の位置を調節する。
「あれ…もしかして、桜も緊張してる?」
そう言い放ったテフナの語気は震えている…
少女達にとっての大勝負の火種となっているのは…約4キログラムのライスカツカレーを制限時間30分以内に食べきる挑戦であり…
成功すれば、最大5名までのお連れ様の会計が無料になるが、失敗すると会計が5割増しになってしまうと言うルールである。
その大食いへの挑戦者である小町は、開始直後からペースを落とすことなく大量のカレーを食している…
これから行われるじゃんけんに負けた人間が、小町が大食い挑戦に失敗した際の支払いを行う流れになっている。
「グーを出せば、65%の確率で私の勝利です。」
有左が真顔で高らかに宣言する。
「う、うん…(その一言で勝率が0%になった様なものでしょ…)」
テフナと葵は呆れた返事をする。
「(それは駆け引きなの?…それとも、本当に?)」
疑心暗鬼に陥った桜は、眼鏡のブリッジ部分を右手の人差し指で小刻みに震わせる。
「じゃあ、いくよ…最初はグー!じゃんけん…」
葵が勝負の時を告げる。
「…ポン!」
勝負に参戦した少女たちはお互いの手元を確認する…
「嘘です…そんな…」
勝負は一度で決着が着き、敗れた有左が失意の言葉を漏らす。
そうこうしていると…小町の挑戦の制限時間も残り1分を切る。
「小町さんの勝率は、ひゃ、ひゃひゃく、100%です…そうでないと、私の財布が持ちません。」
さっきまで冷静に分析していた有左の目が踊り出し、しどろもどろになる。
「くっ、フフ…それにしても、有左ちゃんは空軍の私達との食事に付いてきても良かったのかなぁ?」
葵が含みのある笑みを見せる。
「はっ、はい?…はい、私達のご主人…じゃなくて、影盛様から空軍側の戦マキナの動向を探っ…じゃなくて、交流を深めるのも良いだろ言われたのですよん。」
じゃんけんに負け、財布が弾け飛ぶ可能性に晒されたショックで、有左が託された命令が見え隠れしてしまう。
そんな状態の有左の耳に、制限時間の終わりを告げるストップウォッチの音が届く。
「小町、どうなの?」
桜が挑戦者とライスカレーが盛られていた食器の様子を確認する。
「あぁ、とても美味だったな!」
小町は完食したことを証明する為に、口を開ける。
「本当に!?凄い、おめでとう!」
テフナ達が称賛と歓喜の声を上げる一方で…緊張の糸が切れた有左は、まるでオーバーヒートした機械のような呼吸と共に、座っていた椅子の背もたれを滑り落ちていき…正面に座る桜の視界からフェードアウトする。
「大丈夫?有左ちゃん?」
そう気にかけた葵が、テーブルの下を覗き込む。
「はい、お気遣いありがとうございます。」
冷静さを取り繕う為に、有左はスッと立ち上がる。
「そっか…有左ちゃん達って今のところ3人いるじゃない?パッと見で誰が誰なのか分かりたいからさ、良かったらこれあげるよ。」
そう続けた葵は、赤、青、黒の各色のリボンを差し出す。
「ありがとうございます…宜しいのでしょうか?」
僅かにキョトンした有左が受け取る。
「欲しい色とリボン争奪戦のじゃんけんで何を出すか今のうちから考えていたら?」
葵が提案する。
「はい…今から考えておきます…」
そう答えた有左の一人は、赤色のリボンが気に入った様に見える。
その葵と有左の隣では、小町が挑戦成功の記念撮影を行っており…その様子を見ていたテフナは店先の入り口付近から視線を感じて振り向くと…
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