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女なめんな

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同期だからと営業でもない水瀬に自分から頼るなんて、きっと出来なかった。せいぜいお酒を飲みながら愚痴るだけ。

そうやってぐるぐる同じところをただ回ってるだけの私の思考を掬い上げて、進むべき方向を照らしてくれる。

水瀬がいつも、本当にいつも助けてくれる。

「……ジェットコースターとかゲーセンの部品作ってるところなんだけどね」

私はこの半年の生田化成とのやり取りを順を追って説明した。

真剣に聞いてくれる彼に力を貰って、一度デスクに戻ってプレゼン用の資料を持ってきてさらに詳しく内容を話す。

元々半年前までは同じ課で同じ仕事をしていただけあって、短い時間で理解してくれた。

すると私の話を聞いていた水瀬は腕を組んだまま考え込み、閃いたようにパッと私に向き直った。

「いける! 佐倉、この案件うちの部署も巻き込もう」
「えぇっ?」

言っている意味がわからずに聞き返すと、水瀬は既に道筋が見えたと勝ち気に微笑んだ。


「今俺が関わってるモデルタウンの案件、何の施設を入れるかで意見が割れてるんだ」
「あぁ、会議長引くって言ってたもんね」
「そこに生田化成と取引のあるアミューズメントパークを誘致しようと思う」
「あっ、なるほど!」

水瀬が言っているのはこうだ。

今水瀬が所属する首都圏プロジェクト室が推し進めている都市再開発のモデルタウン。マンションや病院、ホテルを建ててひとつの街を作る事業だ。

そこに誘致する施設で意見が纏まらず停滞しているところに、生田化成との取引があるアミューズメントパークを入れようというのだ。

今注目されているモデルタウンに入れるとなればアミューズメントパーク運営側も断らないだろうし、そこと契約している生田化成にも旨味は存分にある。

その対価として、生田化成の工場の移転を我が社が請け負うという筋書き。

お互いウィンウィンの関係というわけだ。

「いいと思う! めっちゃいいと思う!」

興奮して声が大きくなる私に嫌な顔ひとつしないで嬉しそうに笑ってくれる。

「うちの部署にも話通して合同のプロジェクトに出来るよう掛け合ってみる」
「水瀬……」
「佐倉。これはお前の案件だ」

大きく頷いてみせる。

もちろんだ。水瀬がくれたチャンスを、絶対に活かしてみせる。

「ありがとう、水瀬」
「あぁ」
「諦めたらそこで試合終了だもんね」
「まぁ、名言だよな」
「バスケがしたいです!」
「仕事してくれ」

私の様子に満足したように微笑んだ水瀬は、わしゃわしゃと頭を撫でると「じゃ、お互いの上司に報告だな」と会議室を出ていった。

くちゃくちゃになった髪を直しながら、赤くなっているであろう顔を抑えて、やっぱりパンダのお面が欲しいと切実に思った。


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