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決別?
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ライアンは王宮のエヴァンの私室を訪れていた。
数日前に次の休みに相談があるから来て欲しいと頼まれたからだ。
「ありがとう、ライアン」
「で、話って?」
「もっと、茶を飲んで世間話をしてからとかさ」
「学校でいつも側にいるのに?」
「部屋を見て感想とかさ」
「王族の部屋っぽいな」
「……」
「どうせミーシェのことなんだろ?」
「私はもう伴侶を決めなくてはならない。
卒業したら大急ぎで婚約者を選び一年で婚姻だ。王族の義務で避けることはできない。
私はずっとミーシェが好きで、一瞬も他の女を好きになったことなどない。
だがミーシェは私など眼中にないし、エスを忘れることはないだろう。
私はミーシェを好きなまま他の女を娶る覚悟を決めねばならないのか……」
「ミーシェは妃の器か?エヴァンと婚姻したらいずれ王妃になるだろう」
「そこは分からない。お祖父様が健在で、まだ母上が王妃になっていない。このままズレにズレたら私を飛ばして私の子に決まる可能性もある」
「シオン殿下の進みが遅いようだな」
「終えてはいるんだ。だが母上に苦労を掛けたくなくて、お祖父様で安定しているならと延ばしてしまっている。
それに私が実力不足だからだろう。
私はミーシェが王妃として力不足だと思わない。
彼女が私に気持ちがないのに私の世界に縛り付けるのはよくないということは分かっている。だが、ミーシェだけなんだ。
ミーシェをずっと好きだった。愛してるんだ」
「卒業パーティでプロポーズでもすればいいんじゃないか?」
「ライアン」
「言わなきゃ伝わらないし、聞かなきゃミーシェの気持ちは分からない。
エヴァンの気持ちを全部出し切るように伝えてみろ。後悔が微塵もないほど出し尽くせば振られても自分に納得するんじゃないか?」
「振られるのが前提かぁ」
「私はエヴァンが頑張ったのを知っている。
大人になったのも知っている。入学前とは違うとミーシェも知っている。
だから昔みたいに無視したりせず、本気で返事をくれると思うぞ」
「エスコート、申し込んでも良いのかな」
「そうか、エスコート」
「ライアン?」
「その件は保留にしてくれ」
「ん? 分かった」
「側近決まったんだな、おめでとう」
「ライアンはやってくれないんだろう」
「私はサルトを支えなくてはならない。
父は母より10歳くらい歳上だ。真剣に考えないとならないんだ」
「ロランは?」
「なんでロランが出てくるんだ」
「だってもう婿入りしたようなものだろう」
「まだ子供だろう」
「あっという間だと思うぞ」
「そもそもシーナが受け入れるのか疑問だ」
「次の長期休暇はサルトに行こうかな」
「来なくていいよ。王族が二人も揃うのはちょっと」
「ロランの様子を見たいんだ」
「ロランを返すか?」
「そっちにいるロランが見たいんだよ」
「ロランの心配もいいがミーシェに集中しろ」
それから数日後、ライアンはある令嬢に声を掛けた。
「ちょっときてくれ」
「はい」
人気の無い校舎の奥に着くとライアンは切り出した。
「卒業パーティのパートナーは決まっているのか」
「兄に頼むつもりでした」
「私がパートナーを申し込んでは駄目か」
「ええっ!?」
「困らせるつもりはない。無理なら無理と言ってくれ」
「本気ですか?」
「当然だろう」
「お、お受けします」
「良かった。母君に手紙を出してくれ。
一週間後にこちらからも手紙を出す」
「はい。直ぐに」
そして放課後。
「エヴァン」
手招きをしてエヴァンだけ廊下に出した。
「他の令嬢を誘って承諾を貰ったから私はミーシェのエスコートを出来なくなる」
「は? 誰だ」
「当日分かることだ。それよりミーシェを誘わなければ他の男に取られるぞ。今日昼にミーシェに言うから」
「今日!?」
「そうだ。教えたからな」
そして食堂で。
ラ「ミーシェ、悪いけど卒業パーティは他の令嬢をエスコートする」
ケ・ジ「は!?」
ラ「すまないな。もう承諾を貰ったから、ミーシェも誰か誘ってくれ」
ミ「嘘でしょ!?」
ケ・ジ「誰?」
ラ「当日まで秘密ですよ」
ジ「うわ~!怖い!」
ラ「失礼ですね、何が怖いんですか」
ケ「それはそうでしょう。卒業パーティが無事に終わるのか心配になりますよ」
エ「………」
ミ「ケインは?」
ケ「義姉に頼んだ」
ミ「ジスランは?」
ジ「婚約者がいる?」
ミ「なんで疑問系なのよ。
仕方ない。片っ端から声をかけよー」
エ「だったら私でいいだろう!!」
ラ「(この馬鹿!)」
エ「誰でもいいなら私でいいじゃないか」
ミ「何でキレてんのよ」
エ「は? お前が片っ端からなんて言うからだ!危機感が無いにも程がある!…イテッ」
ライアンの拳骨がエヴァンの頭頂部に落ちた。
ラ「馬鹿過ぎだろう!」
エ「っ!」
ミ「じゃあ、危機感を持ってパートナーを探せば文句ないんでしょ。じゃあ、お先に」
ケ「ミーシェ?何処へ?」
ミ「誘いに行くのよ」
ケ「だったら俺が、」
エ「ミーシェ!」
ミ「!!」
エ「座れ」
ミ「……」
エ「座ってくれ」
ミ「……」
ミーシェが座るとエヴァンは続けた。
エ「ミーシェ、当日迎えに行く。王宮で私が用意したドレスを着て、パートナーとして私のエスコートでパーティに行くんだ」
ミ「何で、」
エ「決定事項だ。これに異議は唱えさせない。教室へは皆で戻るんだ」
ミ「……」
ミーシェは不満そうに待って、教室へはみんなで戻った。
放課後。
「何で自らぶち壊すんだ」
「ミーシェが悪いだろう、片っ端からなんて」
「だとしても、告白を前提としているなら良い態度とは言えないな。
卒業パーティのパートナーにだけなるつもりなのか?」
「ライアンのその余裕は何処から出てくるんだ」
「余裕というわけではない。ただ大事なものを見失わないように努力しているだけだ。
自分にとって何が一番大事なのか、優先順位を常に考え、その大事なものを守るために行動し、大事なもののために自制する。
相手にとって何が良くて、何が駄目か。
相手は何を欲しているのか。
結局、大事なものが何なのか忘れずに行動すれば何らかの形で返ってくると信じている。
エヴァン、お前に足りないのは自制だ。
夫として王族として未来の国王として、それでは足りなさ過ぎる。
女も政治も外交も同じなんだよ。
優先順位、大事なもの、相手の気持ちや求めるものを理解出来ていなければ奇跡頼りだ。
さらに自制ができないとトラブルを抱える。女は去って行き、政治は内乱を起こし、外交は戦争だ。
エヴァン、もう甘えていられる年齢じゃないんだよ、私達は。
私の優先順位はミーシェそしてサルト家だ。
だから今のエヴァンにはミーシェを任せる気にはなれない。
プロポーズは他の令嬢にしてくれ」
「私を見捨てるのか」
「私の最優先はミーシェ、サルト家、次にサルト領、次に妻になる女だ。
エヴァンも大事だが全ては手に負えない。
本来なら学園に通うつもりはなかった。だけど陛下と契約して、学園生活を通して教えてきたつもりだ。
結果的に私では力が足りなかったのだろう。
卒業したら国王陛下の側仕えから始めて、一から学ぶといい」
この日からライアンは手助けはするが助言はしなくなった。
エヴァンは焦りと喪失感を抱えて苛立ち、ケインとジスランは戸惑うことになった。
数日前に次の休みに相談があるから来て欲しいと頼まれたからだ。
「ありがとう、ライアン」
「で、話って?」
「もっと、茶を飲んで世間話をしてからとかさ」
「学校でいつも側にいるのに?」
「部屋を見て感想とかさ」
「王族の部屋っぽいな」
「……」
「どうせミーシェのことなんだろ?」
「私はもう伴侶を決めなくてはならない。
卒業したら大急ぎで婚約者を選び一年で婚姻だ。王族の義務で避けることはできない。
私はずっとミーシェが好きで、一瞬も他の女を好きになったことなどない。
だがミーシェは私など眼中にないし、エスを忘れることはないだろう。
私はミーシェを好きなまま他の女を娶る覚悟を決めねばならないのか……」
「ミーシェは妃の器か?エヴァンと婚姻したらいずれ王妃になるだろう」
「そこは分からない。お祖父様が健在で、まだ母上が王妃になっていない。このままズレにズレたら私を飛ばして私の子に決まる可能性もある」
「シオン殿下の進みが遅いようだな」
「終えてはいるんだ。だが母上に苦労を掛けたくなくて、お祖父様で安定しているならと延ばしてしまっている。
それに私が実力不足だからだろう。
私はミーシェが王妃として力不足だと思わない。
彼女が私に気持ちがないのに私の世界に縛り付けるのはよくないということは分かっている。だが、ミーシェだけなんだ。
ミーシェをずっと好きだった。愛してるんだ」
「卒業パーティでプロポーズでもすればいいんじゃないか?」
「ライアン」
「言わなきゃ伝わらないし、聞かなきゃミーシェの気持ちは分からない。
エヴァンの気持ちを全部出し切るように伝えてみろ。後悔が微塵もないほど出し尽くせば振られても自分に納得するんじゃないか?」
「振られるのが前提かぁ」
「私はエヴァンが頑張ったのを知っている。
大人になったのも知っている。入学前とは違うとミーシェも知っている。
だから昔みたいに無視したりせず、本気で返事をくれると思うぞ」
「エスコート、申し込んでも良いのかな」
「そうか、エスコート」
「ライアン?」
「その件は保留にしてくれ」
「ん? 分かった」
「側近決まったんだな、おめでとう」
「ライアンはやってくれないんだろう」
「私はサルトを支えなくてはならない。
父は母より10歳くらい歳上だ。真剣に考えないとならないんだ」
「ロランは?」
「なんでロランが出てくるんだ」
「だってもう婿入りしたようなものだろう」
「まだ子供だろう」
「あっという間だと思うぞ」
「そもそもシーナが受け入れるのか疑問だ」
「次の長期休暇はサルトに行こうかな」
「来なくていいよ。王族が二人も揃うのはちょっと」
「ロランの様子を見たいんだ」
「ロランを返すか?」
「そっちにいるロランが見たいんだよ」
「ロランの心配もいいがミーシェに集中しろ」
それから数日後、ライアンはある令嬢に声を掛けた。
「ちょっときてくれ」
「はい」
人気の無い校舎の奥に着くとライアンは切り出した。
「卒業パーティのパートナーは決まっているのか」
「兄に頼むつもりでした」
「私がパートナーを申し込んでは駄目か」
「ええっ!?」
「困らせるつもりはない。無理なら無理と言ってくれ」
「本気ですか?」
「当然だろう」
「お、お受けします」
「良かった。母君に手紙を出してくれ。
一週間後にこちらからも手紙を出す」
「はい。直ぐに」
そして放課後。
「エヴァン」
手招きをしてエヴァンだけ廊下に出した。
「他の令嬢を誘って承諾を貰ったから私はミーシェのエスコートを出来なくなる」
「は? 誰だ」
「当日分かることだ。それよりミーシェを誘わなければ他の男に取られるぞ。今日昼にミーシェに言うから」
「今日!?」
「そうだ。教えたからな」
そして食堂で。
ラ「ミーシェ、悪いけど卒業パーティは他の令嬢をエスコートする」
ケ・ジ「は!?」
ラ「すまないな。もう承諾を貰ったから、ミーシェも誰か誘ってくれ」
ミ「嘘でしょ!?」
ケ・ジ「誰?」
ラ「当日まで秘密ですよ」
ジ「うわ~!怖い!」
ラ「失礼ですね、何が怖いんですか」
ケ「それはそうでしょう。卒業パーティが無事に終わるのか心配になりますよ」
エ「………」
ミ「ケインは?」
ケ「義姉に頼んだ」
ミ「ジスランは?」
ジ「婚約者がいる?」
ミ「なんで疑問系なのよ。
仕方ない。片っ端から声をかけよー」
エ「だったら私でいいだろう!!」
ラ「(この馬鹿!)」
エ「誰でもいいなら私でいいじゃないか」
ミ「何でキレてんのよ」
エ「は? お前が片っ端からなんて言うからだ!危機感が無いにも程がある!…イテッ」
ライアンの拳骨がエヴァンの頭頂部に落ちた。
ラ「馬鹿過ぎだろう!」
エ「っ!」
ミ「じゃあ、危機感を持ってパートナーを探せば文句ないんでしょ。じゃあ、お先に」
ケ「ミーシェ?何処へ?」
ミ「誘いに行くのよ」
ケ「だったら俺が、」
エ「ミーシェ!」
ミ「!!」
エ「座れ」
ミ「……」
エ「座ってくれ」
ミ「……」
ミーシェが座るとエヴァンは続けた。
エ「ミーシェ、当日迎えに行く。王宮で私が用意したドレスを着て、パートナーとして私のエスコートでパーティに行くんだ」
ミ「何で、」
エ「決定事項だ。これに異議は唱えさせない。教室へは皆で戻るんだ」
ミ「……」
ミーシェは不満そうに待って、教室へはみんなで戻った。
放課後。
「何で自らぶち壊すんだ」
「ミーシェが悪いだろう、片っ端からなんて」
「だとしても、告白を前提としているなら良い態度とは言えないな。
卒業パーティのパートナーにだけなるつもりなのか?」
「ライアンのその余裕は何処から出てくるんだ」
「余裕というわけではない。ただ大事なものを見失わないように努力しているだけだ。
自分にとって何が一番大事なのか、優先順位を常に考え、その大事なものを守るために行動し、大事なもののために自制する。
相手にとって何が良くて、何が駄目か。
相手は何を欲しているのか。
結局、大事なものが何なのか忘れずに行動すれば何らかの形で返ってくると信じている。
エヴァン、お前に足りないのは自制だ。
夫として王族として未来の国王として、それでは足りなさ過ぎる。
女も政治も外交も同じなんだよ。
優先順位、大事なもの、相手の気持ちや求めるものを理解出来ていなければ奇跡頼りだ。
さらに自制ができないとトラブルを抱える。女は去って行き、政治は内乱を起こし、外交は戦争だ。
エヴァン、もう甘えていられる年齢じゃないんだよ、私達は。
私の優先順位はミーシェそしてサルト家だ。
だから今のエヴァンにはミーシェを任せる気にはなれない。
プロポーズは他の令嬢にしてくれ」
「私を見捨てるのか」
「私の最優先はミーシェ、サルト家、次にサルト領、次に妻になる女だ。
エヴァンも大事だが全ては手に負えない。
本来なら学園に通うつもりはなかった。だけど陛下と契約して、学園生活を通して教えてきたつもりだ。
結果的に私では力が足りなかったのだろう。
卒業したら国王陛下の側仕えから始めて、一から学ぶといい」
この日からライアンは手助けはするが助言はしなくなった。
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