【完結】ずっと好きだった

ユユ

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国王夫妻

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【 国王の視点 】


今夜の催しには参加せず、晩餐を終えて王妃と酒を嗜んでした。

「陛下、王女殿下が至急会いたいといらしています」

「通してくれ」

現れたのは泣き腫らした王女愛娘だった。

慌てて駆け寄り抱きしめると泣き崩れた。

こんなことは今まで一度もなかったというのにどうしたことか。妻を見ても困惑しているので知らないようだ。

落ち着かせ、理由を聞くととんでもないことが分かった。

「宰相はまだいるか!いたら呼んでくれ!」

宰相に今の時点で判明していることを伝えてゲラン伯爵家に早馬を出した。

「ステファニー、彼等には話したのか」

「これからです。
その前に完治するまで接近禁止を命じて欲しいのです。私のせいで申し訳ありません!」

「アネット嬢に会ってからにする」

妻と共に医務室へ行くと祈るように手を握るヒューゼル隊長がいた。
彼は立ち上がると跪く。

「申し訳ございません」

「アネット嬢の確認をしに来た。医師を呼んでくれ」

「ハッ!」

アネット嬢を見ると絞首の痕跡がある。鬱血と点状出血も。
これは会わせられない。

医師からの説明に目を覆う。
刺されてもいるのか……。

妻は血の気が引いている。

「陛下」

「発言を許す」

「令嬢が完治するまで休みをいただきたくお願い申し上げます」

「隊長が何故」

「私が油断をしました。
せめて、訪問者を阻む盾をさせてください」

「……よかろう。休みではなく任務とする。もうひとりつけろ」

「副隊長のバーンズを指名したいのですが」

「では、その間、第二の副隊長に第三の隊長代理を任せる。其方達はアネット嬢の専属護衛として完治まで付き添え」

「感謝いたします」


王妃が倒れそうなので部屋にさがらせ、ステファニーと共にシオン殿下の元へ向かった。

部屋に入ると礼をとろうとする2人を制して座らせた。

「ステファニー、説明してくれ」

「…あの鎧の騎士はアネットです」

「「 は!? 」」

「アネットなの!」

娘が泣き出すとバルギル公爵令息は蒼白になり立ち上がった。

「アネットは何処ですか!」

「座ってくれ」

「アネットに会わせてください!」

「座れ!」

「っ!」

「オードリック…国王陛下の御前だ。頼むから座ってくれ」

令息が座ると娘にも声をかけた。

「ステファニー、お前が今することは泣くことではない」

カップを持って来させて冷めた茶を注いで飲ませた。

「説明するんだ」

「はい、お父様」

アネット嬢が何故騎士に変装したのか経緯を話した。

「素行調査…」

「どうしても第一印象が拭いきれないアネットは気持ちが動かなかった。
それに一目惚れなど信用できないと言っていたわ。どうせまた誰かに一目惚れするのだろうと。

せめて夜会での様子を見させて第一印象を変えられたらと計画をしたの」

「まだ意識は戻っていないから目覚めないと何とも言えない。
脇腹の刺し傷は浅いが縫合は必要だった。運が悪くなければそのまま塞がるだろう。

……其方達にも誰にもアネットが完治するまで会わせない」

「「 陛下! 」」

「絞首の痕跡がしっかりと顔や首に出ている。鬱血と点状出血もあって令嬢なら見られたくないと思うことは間違いない。

よって、接近禁止を言い渡す。これは王命だ」

バルギル公爵令息は頭を抱えて項垂れてしまった。

「其方達が滞在中に再会は叶わない。数日で治るものではない。

事故だから、そのまま期日に帰国してくれ」

「残ります」

「駄目だ。

縁談中だったな。一旦断るかたちをとらせてもらう。これから伯爵夫妻が登城するだろうから、面会後に落ち着いたら尋ねてみるが私と同じことを言うだろう」

「何でこんなことに…」


娘と部屋を出て応接室で伯爵夫妻を待つ。

「ステファニー、脇腹の傷は残るだろう」

「はい」

「心の傷も残るかもしれない」

「……はい」

「だからといって余計なことはするな。悪手の場合もある」

「私はアネットが大好きなのです。男に生まれていれば娶りたいと悪魔に願うほどに」

「お前がやるべきことは、アネット嬢を癒すことだ。優しく寄り添うだけでいい。企むな」

「はい」



到着した夫妻に説明し謝罪した後面会させた。ヒューゼル隊長も跪いて謝罪をした。

倒れそうになる夫人を支えながら伯爵は悲痛な顔をしていた。

「叔父様、叔母様、ごめんなさい」

「アネットの為にしてくださったことです。ただ運が悪かった」

「私が難色を示すアネットの気持ちを汲んでいれば…」

「ゲラン伯爵、縁談は一旦断ってよろしいか。もし、婚約させたいのなら完治してから改めてもらった方がいいと思ったのだが」

「お願いします。改めてこちらからも手紙を出します」

せめて外見の症状が完治するまで王宮で預かること。我々以外会わせないよう専属騎士をおくことを了承してもらった。

この姿で移動して見られたら噂の的になってしまうからだ。


再度、王子と公爵令息の部屋に行き、伯爵夫妻から縁談の断りがあったことを告げた。



翌朝報告が上がった。

夜中に目を覚ましたアネット嬢は取り乱したようだ。喉には違和感があるが声は出るし視力も聴力も問題なさそうだと言うことだった。


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