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密議
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国境の上に建てられている小さな建物は、ベルゼア側からの入り口とオネスティア側からの入り口がある。天井は低く通路は人ひとり通るのがやっとの幅。狭く短い通路の先はそれぞれ鍵を開けて部屋に入る。
中央は石の壁で仕切られていて、横に五つの小さな細長い穴があいている。そこから相手の顔が確認出来るし書類も渡せる。
ベルゼア側はラファエル王太子と副騎士団長エルバドとバルロック辺境伯。オネスティア側の空間にブレスト将軍、シトロエヌ辺境伯、そして最後にレミ王子が入室するとラファエルが穴に近寄った。
ラ「レミ!」
エ「王太子殿下、危険ですのでお下がりください!」
ラ「レミ!こっちに来い!」
将「自己紹介をさせていただきます。
将軍として この辺りを任されているアラン・ロプレストと申します。隣はシトロエヌ辺境伯。そしてレミ王子です」
ラ「私は王太子のラファエル。隣は副騎士団長のエルバド卿、そしてバルロック辺境伯です。
先ずはレミを返していただきたい」
将「レミ」
僕「心配かけてごめんなさい。説明をさせてください。
あの日、ヨラン隊長達に騙されて森の中に連れて行かれました。殴られて意識を失って、目が覚めたら一晩明かしていました。その時にはもう縛られていました。僕を人質に兄上を誘き寄せ殺そうと企んでいたのです。あの7人がバルロック領内の国境の町に放火をしてオネスティアのせいにしていました。
ベルトラン兄上を殺したのもあの7人です。隊長本人から聞きました」
バ「何ということだ…」
エ「大罪ですぞ…」
僕「それで、ヨラン隊長と口論になって、襲われたんです。でも将軍が助けてくださいました。
将軍は、僕を襲っていた男がベルゼアの国境警備隊の服を着ていたので、兄上達が近付いてきた時に、また僕が襲われると思って避難のためにオネスティアへ連れて行ってくださったのです。
ヨラン隊長に殴られて一晩森で気を失っていたせいで体が冷え切っていて、低体温症で倒れたんです。
将軍が近くの診療所まで運んでくださって治療を受けることができました。二度も命を助けてくださいました。足の捻挫も酷くて毎日看病してくださいました。
悪いのはヨラン隊長達でロプレスト将軍達ではありません」
ラ「ロプレスト将軍、心より感謝します。
レミ、ヨラン隊長は理由を言っていたか?」
僕「家族が惨殺されたのにオネスティアと戦ってくれないと不満を募らせた結果 ヨラン隊長は仲間と企んで実行に移したのです。
ヨラン隊長は家族を惨殺したのはオネスティア兵だと決め付けていましたが、それが本当ならヨラン隊長達が武装した男達を通したことになります。つけていたバッジが落ちていたなら、相応しい服を着ていたはずです。私服にオネスティア軍のバッジなんておかしいですからね。
犯人がわざと落としたか、だとしたらそれはオネスティアの者か ベルゼアの者か 他の国の者か。
もしくは家族の誰かが拾って持ち帰った可能もあります。その後で事件が起きたとか。
犯人がオネスティアへ向かったと証言がありましたが、オネスティアへ向かったからといってオネスティアの者とは限りません」
ラ「分かった。最初の事件を解決しないとどうしようもないな。
レミ、事情は分かったから こっちにおいで」
僕「僕はまだオネスティアに残ります」
ラ「レミ!?」
僕「ヨラン隊長は将軍が倒してくださいましたが、残りの6名は僕が気を失っている間にオネスティアへ向かったようなのです。彼等はオネスティアで悪さをするのか逃げるために密入国したのかは分かりませんが、いずれにしても大罪人ですし捕まえないと危険です。
顔を知っている僕がこっちに残ります」
ラ「別の者を派遣するから戻って来るんだ」
僕「嫌です」
ラ「レミ!」
僕「僕のやるべきことが見つかって、初めて役に立てそうなのです。ここで投げ出したくありません」
ラ「レミは第四王子なんだ。他の者に任せなさい」
僕「嫌です!」
ラ「レミ!!」
将「ベルゼアが自国の王子に17歳で戦いに参加させるのはパフォーマンスじゃありませんよね。
レミ王子殿下はご自身で見つけたやるべきことに真摯に取り組もうとしていらっしゃいます。
人生において大事な岐路にいらっしゃいます。きっと重大な経験となることでしょう」
ラ「レミには無理です」
将「適材適所ですよ、王太子殿下。 レミ王子殿下は剣は扱えずとも、警備隊長の違和感に気付きましたし、仲間の似顔絵はとても上手でした。王子殿下の得意なことを活かせばいいのです」
エ「ですが、王族をひとりでそちらに滞在させるわけには…」
将「今回の争いがどんな結果となろうとも レミ王子殿下の安全はアラン・ロプレストが命をかけてお守ります」
ラ「国王陛下がお許しになっていないのです」
僕「王子だからこそ残るのです。ベルゼア王国が採用し、隊長にまでした者が此度の争いを引き起こしています。オネスティアの兵士や一般人、ベルゼアの兵士や一般人がどれだけ命を失い怪我を負ったか。やれることがあるのならベルゼアの王子としてやるべきなのです。犯人達がオネスティアにいるのなら捕まえないと」
エ「そのように陛下に伝えましょう」
ラ「エルバド卿!」
バ「私もレミ王子殿下を支持いたします」
ラ「だが!」
バ「王太子殿下、過保護過ぎます」
シ「ただし今の状態では、ベルゼアにいい感情を持っていないのがオネスティアの現状です。放火一つにしても、そちらでは人に害が無かったようですが、こちらは20人近くが放火によって焼死しているのです。その後も夜襲もありました。なのにそちらの警備隊長達の罪を被せられて戦いとなりました。そんな中で彼が王子だと知られたら標的になりかねません。従って安全のため、レミ王子殿下はレミという平民女性として預かります。
ロプレスト将軍が一目惚れをして連れて来て婚約したということにしています。ロプレスト将軍の女に手を出そうなどという男はいないでしょう」
僕「心配かけてごめんなさい 兄上。次に会うときは残りの6名を捕まえた後です」
ラ「……手紙を書くように」
僕「ありがとうございます!」
ラ「レミ、手を」
壁の穴から手を出すと、兄上が両手で挟んだ。
ラ「帰って来たらオラスに厳しく見張らせるぞ」
僕「オラス卿にも手紙を書きます」
ラ「はぁ~」
オラス卿がいたら、こっちに来てもらうところだけど、彼は今回一緒に来なかった。
ラファエル兄上はまだブツブツ言っていたけど、密議を終わらせてシトロエヌ城に戻った。
中央は石の壁で仕切られていて、横に五つの小さな細長い穴があいている。そこから相手の顔が確認出来るし書類も渡せる。
ベルゼア側はラファエル王太子と副騎士団長エルバドとバルロック辺境伯。オネスティア側の空間にブレスト将軍、シトロエヌ辺境伯、そして最後にレミ王子が入室するとラファエルが穴に近寄った。
ラ「レミ!」
エ「王太子殿下、危険ですのでお下がりください!」
ラ「レミ!こっちに来い!」
将「自己紹介をさせていただきます。
将軍として この辺りを任されているアラン・ロプレストと申します。隣はシトロエヌ辺境伯。そしてレミ王子です」
ラ「私は王太子のラファエル。隣は副騎士団長のエルバド卿、そしてバルロック辺境伯です。
先ずはレミを返していただきたい」
将「レミ」
僕「心配かけてごめんなさい。説明をさせてください。
あの日、ヨラン隊長達に騙されて森の中に連れて行かれました。殴られて意識を失って、目が覚めたら一晩明かしていました。その時にはもう縛られていました。僕を人質に兄上を誘き寄せ殺そうと企んでいたのです。あの7人がバルロック領内の国境の町に放火をしてオネスティアのせいにしていました。
ベルトラン兄上を殺したのもあの7人です。隊長本人から聞きました」
バ「何ということだ…」
エ「大罪ですぞ…」
僕「それで、ヨラン隊長と口論になって、襲われたんです。でも将軍が助けてくださいました。
将軍は、僕を襲っていた男がベルゼアの国境警備隊の服を着ていたので、兄上達が近付いてきた時に、また僕が襲われると思って避難のためにオネスティアへ連れて行ってくださったのです。
ヨラン隊長に殴られて一晩森で気を失っていたせいで体が冷え切っていて、低体温症で倒れたんです。
将軍が近くの診療所まで運んでくださって治療を受けることができました。二度も命を助けてくださいました。足の捻挫も酷くて毎日看病してくださいました。
悪いのはヨラン隊長達でロプレスト将軍達ではありません」
ラ「ロプレスト将軍、心より感謝します。
レミ、ヨラン隊長は理由を言っていたか?」
僕「家族が惨殺されたのにオネスティアと戦ってくれないと不満を募らせた結果 ヨラン隊長は仲間と企んで実行に移したのです。
ヨラン隊長は家族を惨殺したのはオネスティア兵だと決め付けていましたが、それが本当ならヨラン隊長達が武装した男達を通したことになります。つけていたバッジが落ちていたなら、相応しい服を着ていたはずです。私服にオネスティア軍のバッジなんておかしいですからね。
犯人がわざと落としたか、だとしたらそれはオネスティアの者か ベルゼアの者か 他の国の者か。
もしくは家族の誰かが拾って持ち帰った可能もあります。その後で事件が起きたとか。
犯人がオネスティアへ向かったと証言がありましたが、オネスティアへ向かったからといってオネスティアの者とは限りません」
ラ「分かった。最初の事件を解決しないとどうしようもないな。
レミ、事情は分かったから こっちにおいで」
僕「僕はまだオネスティアに残ります」
ラ「レミ!?」
僕「ヨラン隊長は将軍が倒してくださいましたが、残りの6名は僕が気を失っている間にオネスティアへ向かったようなのです。彼等はオネスティアで悪さをするのか逃げるために密入国したのかは分かりませんが、いずれにしても大罪人ですし捕まえないと危険です。
顔を知っている僕がこっちに残ります」
ラ「別の者を派遣するから戻って来るんだ」
僕「嫌です」
ラ「レミ!」
僕「僕のやるべきことが見つかって、初めて役に立てそうなのです。ここで投げ出したくありません」
ラ「レミは第四王子なんだ。他の者に任せなさい」
僕「嫌です!」
ラ「レミ!!」
将「ベルゼアが自国の王子に17歳で戦いに参加させるのはパフォーマンスじゃありませんよね。
レミ王子殿下はご自身で見つけたやるべきことに真摯に取り組もうとしていらっしゃいます。
人生において大事な岐路にいらっしゃいます。きっと重大な経験となることでしょう」
ラ「レミには無理です」
将「適材適所ですよ、王太子殿下。 レミ王子殿下は剣は扱えずとも、警備隊長の違和感に気付きましたし、仲間の似顔絵はとても上手でした。王子殿下の得意なことを活かせばいいのです」
エ「ですが、王族をひとりでそちらに滞在させるわけには…」
将「今回の争いがどんな結果となろうとも レミ王子殿下の安全はアラン・ロプレストが命をかけてお守ります」
ラ「国王陛下がお許しになっていないのです」
僕「王子だからこそ残るのです。ベルゼア王国が採用し、隊長にまでした者が此度の争いを引き起こしています。オネスティアの兵士や一般人、ベルゼアの兵士や一般人がどれだけ命を失い怪我を負ったか。やれることがあるのならベルゼアの王子としてやるべきなのです。犯人達がオネスティアにいるのなら捕まえないと」
エ「そのように陛下に伝えましょう」
ラ「エルバド卿!」
バ「私もレミ王子殿下を支持いたします」
ラ「だが!」
バ「王太子殿下、過保護過ぎます」
シ「ただし今の状態では、ベルゼアにいい感情を持っていないのがオネスティアの現状です。放火一つにしても、そちらでは人に害が無かったようですが、こちらは20人近くが放火によって焼死しているのです。その後も夜襲もありました。なのにそちらの警備隊長達の罪を被せられて戦いとなりました。そんな中で彼が王子だと知られたら標的になりかねません。従って安全のため、レミ王子殿下はレミという平民女性として預かります。
ロプレスト将軍が一目惚れをして連れて来て婚約したということにしています。ロプレスト将軍の女に手を出そうなどという男はいないでしょう」
僕「心配かけてごめんなさい 兄上。次に会うときは残りの6名を捕まえた後です」
ラ「……手紙を書くように」
僕「ありがとうございます!」
ラ「レミ、手を」
壁の穴から手を出すと、兄上が両手で挟んだ。
ラ「帰って来たらオラスに厳しく見張らせるぞ」
僕「オラス卿にも手紙を書きます」
ラ「はぁ~」
オラス卿がいたら、こっちに来てもらうところだけど、彼は今回一緒に来なかった。
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