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天使の匙
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今日はお店“天使の匙”のオープンの為にウィルソン夫人が来てくださった。
「息子達が来たがったけど上の子は学園だし、不公平になるから置いてきたわ」
「そうなのですね」
「お店はどういう仕組みなの」
「雑貨と同じで店内で選んで購入していただきます。刻印が必要であれば仕上がり日を伝えて引換券を渡します。
宝石を使う場合、店にある石を使うのであれば選んでいただき刻印と同じ手順にします。
石を持ち込み、もしくは入手依頼を出される場合は商談室へ。
量が多い場合も商談室へ。
石付きの場合、贈る相手を教えていただければ、既に当店の品が贈られているかお調べして結果報告を発送します」
「同じ品だと恥ずかしいものね。でも教えると購入を止めてしまうわよ」
「いいのです。信用第一ですから。
ただ、送り先を教えてくれるかどうかは購入者次第ですから漏れが出て、被ることもありますが」
「そうよね」
「ですから教えてくれる場合はこれを無料で付けます」
「お店のマークが入ったナプキン」
「はい。非売品です」
「商品のサイズは三種なのね」
「はい。赤ちゃんの記念のものと、子供用、大人用です」
「この中央のガラスの中は…」
「こちらは銀製で、ミニスプーンと持つところの付いた針状の物で毒を調べます。
こちらは介護用のスプーンです。溢しにくく飲ませやすくしました。
シリンジは全く動かせなくて飲ませることが困難な病状の方向けです。口や顎の怪我の場合もこれなら楽ですよ」
「ティーティアちゃん、買うわ!」
「ありがとうございます」
既に口コミが広まっていて、整理券を発行するまでになった。
後日談としては、その後売れに売れた。
宝石はアクセサリーに向かない劣等品。
売る時はそれを事前に説明。受注生産で、石を選べる。
いい石を付けたい場合は持ち込みか、探す時間をもらう。
さらにウケたのが、出産祝いや幼児の誕生祝いの品だ。
小さなフォーク三種、スプーン三種、ナイフ二種で、要望に合わせ劣等品から高級品まで指示通りの宝石をはめて専用の箱に入れて贈り物にしたのだ。
名前と日付だけ刻むことができる。
“お子さんの瞳や髪の色と同じにしても喜ばれますよ”
そして良かったのが、必ず送り手を聞いたこと。既にその子宛に購入があれば、石の色と一緒に情報を渡した。
“恥をかかなくてすみましたわ。ありがとう”
そう言ってくれた。
被るならと購入を諦める人もいたが、大抵は戻ってきた。自宅用や、他の人への祝い用に購入してくれるのだ。
毒を調べる専用のスプーンと針もよく売れた。
デザインもシンプルなものと可愛い物を用意した。来客があった時のテーブルに置かれても置物として見られるように入れ物にも凝った。
用事入れを大きくしたようなサイズの宝石箱を模したものに銀のスプーンや針を入れた。
介護用スプーンと介護用シリンジもよく売れた。
直ぐに来た定休日の夕方に国王陛下に挨拶に行った。
「繁盛しているようだな」
「ありがとうございます。お陰様で二日とも忙しく過ごせました。また明日から頑張ります」
「行きたいなぁ……混み過ぎて行けないとは」
「ご予約をいただければ定休日に特別にご案内いたします」
「誠か!よし、次の休みは日曜日だな」
「はい陛下」
「午後一番に向かおう」
「かしこまりました」
「ティーティアが領地に帰ると言い出してから半年か」
「そうですね」
「この後、ワルスベルトの件の話をしたいのだが時間はあるか」
「はい」
宰相、団長が呼ばれ説明があった。
団「王女がこちらへ来たのと同時に暗殺者と間者の遺体を国境で引き渡した。
取りに来た者達はひどく驚いていたようだ。
“ワルスベルトの者だと言うので引き渡す。間者は身分証もあるので確認なさるといい。
偽物の可能性もあるし、嘘の可能性もあるが、ワルスベルトの名が使われた以上、そちらも調査したいだろうと運んできた。
こちらでは何もわからぬ故、返却不要である。もし、何かわかったら教えてくれると有り難い”
と言ったら素直に荷馬車に積んで引き返して行った。
その後の音沙汰は無い」
宰「周辺諸国の王宮騎士に聖水の件を噂話にして伝えた」
「どうやって伝えたのですか」
宰「……子供は知らなくていい」
「中身は大人です」
宰「……色仕掛けだ」
「……はい」
宰「実際に国境と、王宮に出入りする者や使用人全てに飲ませてみたら反応した者が二人出たらしい。
それをまた違う国が聞いて、結局ワルスベルトに隣接する六国全てに反応する者がいたそうだ。
死んでしまうので尋問ができないのが残念だがな」
「聖水って、お茶を淹れる時に使ったら効果はないのでしょうか」
団「また変なことを言うな」
「水だとそのうち警戒して飲まない者がいるかもしれません。国境を通らない者だって。
だとしたら不定期に王宮のお茶やスープを聖水で作れたらなと。
水に祈りを込めているであっていますか?」
国「そうだ」
「なんで水なんですか?
砂糖とか、塩とかはダメなのですか?
熱を通しても大丈夫なら小麦粉なんていいですよね。
パンとかいろいろ使いますから。
お酒や薬や飴でもいいですね!」
宰「恐ろしく発想が自由だな」
団「効果あるのか検証できませんね」
「もし効き目があるのなら、周辺諸国と結託してワルスベルト行きの輸出品に効力を持たせれば根刮ぎが出来るかもしれません。
まあ、どうやって生み出しているのか分かりませんけど」
国「結託か」
「うちからの物だとバレた場合、報復が怖いですが、隣国全てなら孤立を悟ってくれるのではありませんか」
宰「結託できるか?」
「さあ、それは皆様の手腕の範疇ですから」
宰「グッ、そうだった」
さて帰ろうかな。
「そろそろ失礼します」
団「ダリウスとユリウスがセイン殿下と騎士団にいるから会ってやってはくれないか」
「は、はい」
団「気不味くならなくていい」
「はい」
「息子達が来たがったけど上の子は学園だし、不公平になるから置いてきたわ」
「そうなのですね」
「お店はどういう仕組みなの」
「雑貨と同じで店内で選んで購入していただきます。刻印が必要であれば仕上がり日を伝えて引換券を渡します。
宝石を使う場合、店にある石を使うのであれば選んでいただき刻印と同じ手順にします。
石を持ち込み、もしくは入手依頼を出される場合は商談室へ。
量が多い場合も商談室へ。
石付きの場合、贈る相手を教えていただければ、既に当店の品が贈られているかお調べして結果報告を発送します」
「同じ品だと恥ずかしいものね。でも教えると購入を止めてしまうわよ」
「いいのです。信用第一ですから。
ただ、送り先を教えてくれるかどうかは購入者次第ですから漏れが出て、被ることもありますが」
「そうよね」
「ですから教えてくれる場合はこれを無料で付けます」
「お店のマークが入ったナプキン」
「はい。非売品です」
「商品のサイズは三種なのね」
「はい。赤ちゃんの記念のものと、子供用、大人用です」
「この中央のガラスの中は…」
「こちらは銀製で、ミニスプーンと持つところの付いた針状の物で毒を調べます。
こちらは介護用のスプーンです。溢しにくく飲ませやすくしました。
シリンジは全く動かせなくて飲ませることが困難な病状の方向けです。口や顎の怪我の場合もこれなら楽ですよ」
「ティーティアちゃん、買うわ!」
「ありがとうございます」
既に口コミが広まっていて、整理券を発行するまでになった。
後日談としては、その後売れに売れた。
宝石はアクセサリーに向かない劣等品。
売る時はそれを事前に説明。受注生産で、石を選べる。
いい石を付けたい場合は持ち込みか、探す時間をもらう。
さらにウケたのが、出産祝いや幼児の誕生祝いの品だ。
小さなフォーク三種、スプーン三種、ナイフ二種で、要望に合わせ劣等品から高級品まで指示通りの宝石をはめて専用の箱に入れて贈り物にしたのだ。
名前と日付だけ刻むことができる。
“お子さんの瞳や髪の色と同じにしても喜ばれますよ”
そして良かったのが、必ず送り手を聞いたこと。既にその子宛に購入があれば、石の色と一緒に情報を渡した。
“恥をかかなくてすみましたわ。ありがとう”
そう言ってくれた。
被るならと購入を諦める人もいたが、大抵は戻ってきた。自宅用や、他の人への祝い用に購入してくれるのだ。
毒を調べる専用のスプーンと針もよく売れた。
デザインもシンプルなものと可愛い物を用意した。来客があった時のテーブルに置かれても置物として見られるように入れ物にも凝った。
用事入れを大きくしたようなサイズの宝石箱を模したものに銀のスプーンや針を入れた。
介護用スプーンと介護用シリンジもよく売れた。
直ぐに来た定休日の夕方に国王陛下に挨拶に行った。
「繁盛しているようだな」
「ありがとうございます。お陰様で二日とも忙しく過ごせました。また明日から頑張ります」
「行きたいなぁ……混み過ぎて行けないとは」
「ご予約をいただければ定休日に特別にご案内いたします」
「誠か!よし、次の休みは日曜日だな」
「はい陛下」
「午後一番に向かおう」
「かしこまりました」
「ティーティアが領地に帰ると言い出してから半年か」
「そうですね」
「この後、ワルスベルトの件の話をしたいのだが時間はあるか」
「はい」
宰相、団長が呼ばれ説明があった。
団「王女がこちらへ来たのと同時に暗殺者と間者の遺体を国境で引き渡した。
取りに来た者達はひどく驚いていたようだ。
“ワルスベルトの者だと言うので引き渡す。間者は身分証もあるので確認なさるといい。
偽物の可能性もあるし、嘘の可能性もあるが、ワルスベルトの名が使われた以上、そちらも調査したいだろうと運んできた。
こちらでは何もわからぬ故、返却不要である。もし、何かわかったら教えてくれると有り難い”
と言ったら素直に荷馬車に積んで引き返して行った。
その後の音沙汰は無い」
宰「周辺諸国の王宮騎士に聖水の件を噂話にして伝えた」
「どうやって伝えたのですか」
宰「……子供は知らなくていい」
「中身は大人です」
宰「……色仕掛けだ」
「……はい」
宰「実際に国境と、王宮に出入りする者や使用人全てに飲ませてみたら反応した者が二人出たらしい。
それをまた違う国が聞いて、結局ワルスベルトに隣接する六国全てに反応する者がいたそうだ。
死んでしまうので尋問ができないのが残念だがな」
「聖水って、お茶を淹れる時に使ったら効果はないのでしょうか」
団「また変なことを言うな」
「水だとそのうち警戒して飲まない者がいるかもしれません。国境を通らない者だって。
だとしたら不定期に王宮のお茶やスープを聖水で作れたらなと。
水に祈りを込めているであっていますか?」
国「そうだ」
「なんで水なんですか?
砂糖とか、塩とかはダメなのですか?
熱を通しても大丈夫なら小麦粉なんていいですよね。
パンとかいろいろ使いますから。
お酒や薬や飴でもいいですね!」
宰「恐ろしく発想が自由だな」
団「効果あるのか検証できませんね」
「もし効き目があるのなら、周辺諸国と結託してワルスベルト行きの輸出品に効力を持たせれば根刮ぎが出来るかもしれません。
まあ、どうやって生み出しているのか分かりませんけど」
国「結託か」
「うちからの物だとバレた場合、報復が怖いですが、隣国全てなら孤立を悟ってくれるのではありませんか」
宰「結託できるか?」
「さあ、それは皆様の手腕の範疇ですから」
宰「グッ、そうだった」
さて帰ろうかな。
「そろそろ失礼します」
団「ダリウスとユリウスがセイン殿下と騎士団にいるから会ってやってはくれないか」
「は、はい」
団「気不味くならなくていい」
「はい」
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