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クズの親の葛藤
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俺達五人はかなり仲良くなった。
学食は毎日一緒に食べているし、別建の図書館の二階にある自習室で勉強を教え合う。時々五人のうちの誰かの屋敷に行ったり、街に出ることもある。
3ヶ月も王子が謹慎を続ける間に俺達は吹っ切れてファーストネームで呼び合い隠しもしない。全員の決意が決まっているからだ。
とは言っても親の指示に従うことになるが。
陛下専属侍従殿に俺は尊敬の念を禁じ得ない。3ヶ月だぞ?毎日王子の部屋に通い、1時間見守っているということだ。彼だって忙しいはずだしお守りは嫌だろう。こっそり教えたりヒントを出すことも出来たはずだ。
あと10日休んだら留年確定になる。本当に容赦ない。
エレノアとは週に二度、隠匿夜会で会っていたが週に一度に変えた。忙しくなったと伝えたが、彼女は信じていなさそうだった。
あと5日休めは王子は留年というところで俺とジェイクは陛下に呼び出されたので 学園の帰りに会いに行った。
案内されたのは何故か禁書保管室だった。
一応所持品検査を受けた後に入室すると国王陛下が肘掛椅子に座り本を読んでいた。グレッソンは側に立っていた。
「挨拶はいいから座りたまえ」
「「失礼します」」
茶を飲む程度のサイズの丸テーブルに書類が積まれていた。
「ここは静かでいい。陽射しは書物に当たらない設計になっている。書物は火災が起きたら終わりなので、照明は中央のガラス張りの空間にいくつも蝋燭を立てて火を灯す。ガラス越しに近寄れば書物を確認できる程度には明るい。それがまた神秘的な雰囲気を演出するのだ。冷静な判断をしたい時はここに来る」
陛下は本を置き、書類の上に手を乗せた。
「これはアルメットが提出した始末書で全て不合格だ。まさか三ヶ月以上かかっても終わらないとは思わなかった。何に引っ掛かっているのかわかるか?」
「迷惑をかけた相手が殿下には思い付かないのですね」
「その通りだよボルスト君。
それの何がまずいか分かるかな?スタンサー君」
「波及先を想定出来なければ政治的な判断も軍事的な判断もできません」
「有能な者達がいるのだからアルメットの支えにはなるはずだ。
だが人は立場や環境が変われば判断を誤ることもある。例えば多額の借金、病、恨み、悲しみ、愛しい者の立場や命を握られたなど様々な要因が引き金になることがある。
王が阿保では防げないし気付きもしない。助けてもやれないのだよ。
それにあの日 君達2人がパリスの迎えを断った理由を“国王陛下の招待に遅れるから2人は来れないそうです”と伝えていた。
アルメットは遅れてはいけない理由を耳にしたし、パリスも一度は早く向かうことを促したそうだ。
だが、アルメットは君達が来ないことに腹を立てているだけだったようだ。パリスにも“お前は私の言う通りに動けばいい、余計なことを言うな”と言ったようだ。
アルメットの危うさが露呈した。ここまで来ると教育したら良くなるというレベルにない気がする。
そこで君達に聞きたい。学園でのアルメットはどんな感じだ?国王になれると思うか?」
俺達は少し悩んだが、陛下が正確な報告と正直な気持ちを聞きたいというので全てを話すことにした。
ジェイクが先に口を開いた。
「殿下は学園に勉強をしに来ているという態度ではございません。一年生のときは好みの女生徒に話しかけたり、言い寄って来る女生徒の中から選んでお忍びをすることもありました。二年生になると出掛けるだけでは済まず、数人と体の関係を持ちました。三年生になると学園の王族専用の休憩室に連れて来たり呼び出してはそこで交わります。時には女生徒にも授業をサボらせます。もう既に四人目を捨てたところです。
三年生になってから、私が任されたことは、事を終えた殿下に避妊薬を引き出しから取り出して渡すことです。
私は卒業と同時に側近の辞退をさせていただく予定です。
そして王太子に指名することは避けた方がいいと感じております」
はっきり言ったな。
「そうか…スタンサー君はどうかな」
俺もジェイクを見習ってはっきり伝えることにした。
学食は毎日一緒に食べているし、別建の図書館の二階にある自習室で勉強を教え合う。時々五人のうちの誰かの屋敷に行ったり、街に出ることもある。
3ヶ月も王子が謹慎を続ける間に俺達は吹っ切れてファーストネームで呼び合い隠しもしない。全員の決意が決まっているからだ。
とは言っても親の指示に従うことになるが。
陛下専属侍従殿に俺は尊敬の念を禁じ得ない。3ヶ月だぞ?毎日王子の部屋に通い、1時間見守っているということだ。彼だって忙しいはずだしお守りは嫌だろう。こっそり教えたりヒントを出すことも出来たはずだ。
あと10日休んだら留年確定になる。本当に容赦ない。
エレノアとは週に二度、隠匿夜会で会っていたが週に一度に変えた。忙しくなったと伝えたが、彼女は信じていなさそうだった。
あと5日休めは王子は留年というところで俺とジェイクは陛下に呼び出されたので 学園の帰りに会いに行った。
案内されたのは何故か禁書保管室だった。
一応所持品検査を受けた後に入室すると国王陛下が肘掛椅子に座り本を読んでいた。グレッソンは側に立っていた。
「挨拶はいいから座りたまえ」
「「失礼します」」
茶を飲む程度のサイズの丸テーブルに書類が積まれていた。
「ここは静かでいい。陽射しは書物に当たらない設計になっている。書物は火災が起きたら終わりなので、照明は中央のガラス張りの空間にいくつも蝋燭を立てて火を灯す。ガラス越しに近寄れば書物を確認できる程度には明るい。それがまた神秘的な雰囲気を演出するのだ。冷静な判断をしたい時はここに来る」
陛下は本を置き、書類の上に手を乗せた。
「これはアルメットが提出した始末書で全て不合格だ。まさか三ヶ月以上かかっても終わらないとは思わなかった。何に引っ掛かっているのかわかるか?」
「迷惑をかけた相手が殿下には思い付かないのですね」
「その通りだよボルスト君。
それの何がまずいか分かるかな?スタンサー君」
「波及先を想定出来なければ政治的な判断も軍事的な判断もできません」
「有能な者達がいるのだからアルメットの支えにはなるはずだ。
だが人は立場や環境が変われば判断を誤ることもある。例えば多額の借金、病、恨み、悲しみ、愛しい者の立場や命を握られたなど様々な要因が引き金になることがある。
王が阿保では防げないし気付きもしない。助けてもやれないのだよ。
それにあの日 君達2人がパリスの迎えを断った理由を“国王陛下の招待に遅れるから2人は来れないそうです”と伝えていた。
アルメットは遅れてはいけない理由を耳にしたし、パリスも一度は早く向かうことを促したそうだ。
だが、アルメットは君達が来ないことに腹を立てているだけだったようだ。パリスにも“お前は私の言う通りに動けばいい、余計なことを言うな”と言ったようだ。
アルメットの危うさが露呈した。ここまで来ると教育したら良くなるというレベルにない気がする。
そこで君達に聞きたい。学園でのアルメットはどんな感じだ?国王になれると思うか?」
俺達は少し悩んだが、陛下が正確な報告と正直な気持ちを聞きたいというので全てを話すことにした。
ジェイクが先に口を開いた。
「殿下は学園に勉強をしに来ているという態度ではございません。一年生のときは好みの女生徒に話しかけたり、言い寄って来る女生徒の中から選んでお忍びをすることもありました。二年生になると出掛けるだけでは済まず、数人と体の関係を持ちました。三年生になると学園の王族専用の休憩室に連れて来たり呼び出してはそこで交わります。時には女生徒にも授業をサボらせます。もう既に四人目を捨てたところです。
三年生になってから、私が任されたことは、事を終えた殿下に避妊薬を引き出しから取り出して渡すことです。
私は卒業と同時に側近の辞退をさせていただく予定です。
そして王太子に指名することは避けた方がいいと感じております」
はっきり言ったな。
「そうか…スタンサー君はどうかな」
俺もジェイクを見習ってはっきり伝えることにした。
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