仮面の令嬢と秘密の逢瀬

ユユ

文字の大きさ
上 下
16 / 35

クズの親の葛藤

しおりを挟む
俺達五人はかなり仲良くなった。
学食は毎日一緒に食べているし、別建の図書館の二階にある自習室で勉強を教え合う。時々五人のうちの誰かの屋敷に行ったり、街に出ることもある。

3ヶ月も王子が謹慎を続ける間に俺達は吹っ切れてファーストネームで呼び合い隠しもしない。全員の決意が決まっているからだ。
とは言っても親の指示に従うことになるが。

陛下専属侍従グレッソン殿に俺は尊敬の念を禁じ得ない。3ヶ月だぞ?毎日王子の部屋に通い、1時間見守っているということだ。彼だって忙しいはずだしお守りは嫌だろう。こっそり教えたりヒントを出すことも出来たはずだ。
あと10日休んだら留年確定になる。本当に容赦ない。

エレノアとは週に二度、隠匿夜会で会っていたが週に一度に変えた。忙しくなったと伝えたが、彼女は信じていなさそうだった。


あと5日休めは王子は留年というところで俺とジェイクは陛下に呼び出されたので 学園の帰りに会いに行った。

案内されたのは何故か禁書保管室だった。
一応所持品検査を受けた後に入室すると国王陛下が肘掛椅子に座り本を読んでいた。グレッソンは側に立っていた。

「挨拶はいいから座りたまえ」

「「失礼します」」

茶を飲む程度のサイズの丸テーブルに書類が積まれていた。

「ここは静かでいい。陽射しは書物に当たらない設計になっている。書物は火災が起きたら終わりなので、照明は中央のガラス張りの空間にいくつも蝋燭を立てて火を灯す。ガラス越しに近寄れば書物を確認できる程度には明るい。それがまた神秘的な雰囲気を演出するのだ。冷静な判断をしたい時はここに来る」

陛下は本を置き、書類の上に手を乗せた。

「これはアルメットが提出した始末書で全て不合格だ。まさか三ヶ月以上かかっても終わらないとは思わなかった。何に引っ掛かっているのかわかるか?」

「迷惑をかけた相手が殿下には思い付かないのですね」

「その通りだよボルスト君。
それの何がまずいか分かるかな?スタンサー君」

「波及先を想定出来なければ政治的な判断も軍事的な判断もできません」

「有能な者達がいるのだからアルメットの支えにはなるはずだ。
だが人は立場や環境が変われば判断を誤ることもある。例えば多額の借金、病、恨み、悲しみ、愛しい者の立場や命を握られたなど様々な要因が引き金になることがある。
王が阿保では防げないし気付きもしない。助けてもやれないのだよ。

それにあの日 君達2人がパリスの迎えを断った理由を“国王陛下の招待に遅れるから2人は来れないそうです”と伝えていた。
アルメットは遅れてはいけない理由を耳にしたし、パリスも一度は早く向かうことを促したそうだ。
だが、アルメットは君達が来ないことに腹を立てているだけだったようだ。パリスにも“お前は私の言う通りに動けばいい、余計なことを言うな”と言ったようだ。

アルメットの危うさが露呈した。ここまで来ると教育したら良くなるというレベルにない気がする。
そこで君達に聞きたい。学園でのアルメットはどんな感じだ?国王になれると思うか?」

俺達は少し悩んだが、陛下が正確な報告と正直な気持ちを聞きたいというので全てを話すことにした。

ジェイクが先に口を開いた。

「殿下は学園に勉強をしに来ているという態度ではございません。一年生のときは好みの女生徒に話しかけたり、言い寄って来る女生徒の中から選んでお忍びをすることもありました。二年生になると出掛けるだけでは済まず、数人と体の関係を持ちました。三年生になると学園の王族専用の休憩室に連れて来たり呼び出してはそこで交わります。時には女生徒にも授業をサボらせます。もう既に四人目を捨てたところです。
三年生になってから、私が任されたことは、事を終えた殿下に避妊薬を引き出しから取り出して渡すことです。

私は卒業と同時に側近の辞退をさせていただく予定です。
そして王太子に指名することは避けた方がいいと感じております」

はっきり言ったな。

「そうか…スタンサー君はどうかな」

俺もジェイクを見習ってはっきり伝えることにした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運命の人ではなかっただけ

Rj
恋愛
教会で結婚の誓いをたてる十日前に婚約者のショーンから結婚できないといわれたアリス。ショーンは運命の人に出会ったという。傷心のアリスに周囲のさまざまな思惑がとびかう。 全十一話

塩対応彼氏

詩織
恋愛
私から告白して付き合って1年。 彼はいつも寡黙、デートはいつも後ろからついていく。本当に恋人なんだろうか?

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、済まない。カノンが……。」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当に済まない。、ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものように済まなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ。ルミナス様、ゴホッ。さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

欲しがり病の妹を「わたくしが一度持った物じゃないと欲しくない“かわいそう”な妹」と言って憐れむ(おちょくる)姉の話 [完]

ラララキヲ
恋愛
 「お姉様、それ頂戴!!」が口癖で、姉の物を奪う妹とそれを止めない両親。  妹に自分の物を取られた姉は最初こそ悲しんだが……彼女はニッコリと微笑んだ。 「わたくしの物が欲しいのね」 「わたくしの“お古”じゃなきゃ嫌なのね」 「わたくしが一度持った物じゃなきゃ欲しくない“欲しがりマリリン”。貴女はなんて“可愛”そうなのかしら」  姉に憐れまれた妹は怒って姉から奪った物を捨てた。  でも懲りずに今度は姉の婚約者に近付こうとするが…………  色々あったが、それぞれ幸せになる姉妹の話。 ((妹の頭がおかしければ姉もそうだろ、みたいな話です)) ◇テンプレ屑妹モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい。 ◇なろうにも上げる予定です。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

処理中です...