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クズの狼狽
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四人話したところでクズがこちらに向かって来るのが見えた。もう食事会の開始時間から40分も過ぎている。
ガラス張りのサロンの中に国王陛下がいることに気が付いた王子は走った。
「ち、父上っ」
「……」
「父上がいらっしゃるなんて」
「しっかり私の名でお前にも招待状を出したであろう。わざわざ国王の印章を捺してな」
「あ…」
「42分の遅刻か。どこかの国が攻め入って来たのか?」
「……いいえ」
「王妃が危篤か?」
「……いいえ」
「姉王女の誰かが死んだか?」
「……いいえ」
「それともお前と侍従と専属護衛と専属メイドが一斉に意識を失っていたとか?」
「………いいえ」
「では何故遅れた?」
「……」
「パリス。王宮内のサロンに来るだけなのに何故アルメットは42分も遅れて来たんだ?」
「そ、それは…」
「アルメットを見るな。アルメットは雇用主ではない。アルメットの世話を命じたのもアルメットではない」
「……」
「偽りを申せば不敬罪になるのは分かるな?」
パリスは仕方ないと答えた。
「アルメット王子殿下が遅れた訳は、ご令嬢方を待たせる為です」
「何故待たせる必要があったのだ」
「従うしかない身の程を思い知るだろうと」
「思い知らせる必要性は?」
「なかったかと思います」
「アルメットの愚行にパリスは忠言をしたか?」
「一度」
「何と言ったのだ?」
「“国王陛下のご招待ですが大丈夫ですか”と」
「パリスは理解していたのだな」
「……実は、」
パリス侍従が俺達を呼びに来たときのやり取りを話すと、陛下は溜息を吐いた。
「指摘されていたのに側近候補の忠告を無視したのだな…。それに比べて さすが 私の選んだ側近候補だ。スタンサー君。よくやった」
「ですが、結果的に防ぐことは叶いませんでした」
「君達がアルメットの部屋に行って説得していたらいたら三人とも遅れただろう。パリスが説得できていたら遅れたにしても数分で済んだだろう。
もう学園も半年しかないというのに こうも大差ができてしまうとは情け無い」
「ち、父上」
「パリス」
「はい 陛下」
「降格だ。見習いからやり直せ」
「…はい。申し訳ございませんでした」
「アルメット。お前に付けた侍従は第一王子の侍従から見習いのその他一人に大きく降格したぞ?お前の阿呆な行動のせいだ。今の階級になるまでに何年努力したのだろうな。給金も変わってくるぞ?人を不幸にして楽しいか?」
「いえ、そんなことは、」
「やっているんだよ。
そもそも私と王妃が選んだ婚約者候補に愚かな理由で待たせようと?時間に合わせて食事を作っている者達はどうしたらいいんだ?」
「……」
「せっかく来てくれたのに愚息が申し訳なかったな。
アルメット。お前はそこで立っていろ。昼食会が終わっても明かりが消えてもそこで立っていろ。
灯りも付けないし暖も取らせない。夜の10時まで立ち続けろ。食事も明日のこの時間まで口にすることを許さん」
「…はい」
「お前はもう成人しているからそれだけではさすがに生温い。明日の夕方までに始末書を書いて提出せよ。動機 顛末 改善案とお前が迷惑をかけたと思う者の名を全て書き記せ。書くために必要な場所へ行くことは許すが原則として謹慎だ。納得のいくものが仕上がるまで学園へも通わせない。
必要な場所へ行く時は国王専属侍従を呼べ。1日に1時間だけ貸そう。分かったな」
「っ!……はい」
「さて、悪かったね、せっかくの昼食会に水を差して。話の続きをしよう」
国王陛下はわざとなのか、予定より1時間長く話し込み、昼食会をお開きにした。
「では、失礼するよ」
陛下が退室するために席を立ったので俺達も立ったのだが…
「っ!」
エレノアが立ち上がってすぐビクッと体を揺らし顔を赤くした。
「エレノア様、どうなさったのですか?」
「急に血行が良くなって…座り方が悪かったのかもしれませんわ」
下手な誤魔化し方だな。
昨夜の交わりのせいなんだろう?本当に注いだままにしたのだな。
「お気を付けになってください」
「そうしますわ。ありがとうございます」
このまま連れて帰りたい。たっぷり可愛がりたい。
…俺達、次に会うときはどうしたらいいんだ?次の予約をしてから帰るべきだったのに失念していた。
手紙なんか出したらバレてるって言っているようなものだしな。店はそういうやり取りを許していないし。
「フレデリック、うちに帰るぞ」
「ああ」
「一緒に来たんですか?仲がいいですね」
「ちょっと用があったんです」
立たされた王子の横を通り過ぎ馬車乗り場へ向かった。
ガラス張りのサロンの中に国王陛下がいることに気が付いた王子は走った。
「ち、父上っ」
「……」
「父上がいらっしゃるなんて」
「しっかり私の名でお前にも招待状を出したであろう。わざわざ国王の印章を捺してな」
「あ…」
「42分の遅刻か。どこかの国が攻め入って来たのか?」
「……いいえ」
「王妃が危篤か?」
「……いいえ」
「姉王女の誰かが死んだか?」
「……いいえ」
「それともお前と侍従と専属護衛と専属メイドが一斉に意識を失っていたとか?」
「………いいえ」
「では何故遅れた?」
「……」
「パリス。王宮内のサロンに来るだけなのに何故アルメットは42分も遅れて来たんだ?」
「そ、それは…」
「アルメットを見るな。アルメットは雇用主ではない。アルメットの世話を命じたのもアルメットではない」
「……」
「偽りを申せば不敬罪になるのは分かるな?」
パリスは仕方ないと答えた。
「アルメット王子殿下が遅れた訳は、ご令嬢方を待たせる為です」
「何故待たせる必要があったのだ」
「従うしかない身の程を思い知るだろうと」
「思い知らせる必要性は?」
「なかったかと思います」
「アルメットの愚行にパリスは忠言をしたか?」
「一度」
「何と言ったのだ?」
「“国王陛下のご招待ですが大丈夫ですか”と」
「パリスは理解していたのだな」
「……実は、」
パリス侍従が俺達を呼びに来たときのやり取りを話すと、陛下は溜息を吐いた。
「指摘されていたのに側近候補の忠告を無視したのだな…。それに比べて さすが 私の選んだ側近候補だ。スタンサー君。よくやった」
「ですが、結果的に防ぐことは叶いませんでした」
「君達がアルメットの部屋に行って説得していたらいたら三人とも遅れただろう。パリスが説得できていたら遅れたにしても数分で済んだだろう。
もう学園も半年しかないというのに こうも大差ができてしまうとは情け無い」
「ち、父上」
「パリス」
「はい 陛下」
「降格だ。見習いからやり直せ」
「…はい。申し訳ございませんでした」
「アルメット。お前に付けた侍従は第一王子の侍従から見習いのその他一人に大きく降格したぞ?お前の阿呆な行動のせいだ。今の階級になるまでに何年努力したのだろうな。給金も変わってくるぞ?人を不幸にして楽しいか?」
「いえ、そんなことは、」
「やっているんだよ。
そもそも私と王妃が選んだ婚約者候補に愚かな理由で待たせようと?時間に合わせて食事を作っている者達はどうしたらいいんだ?」
「……」
「せっかく来てくれたのに愚息が申し訳なかったな。
アルメット。お前はそこで立っていろ。昼食会が終わっても明かりが消えてもそこで立っていろ。
灯りも付けないし暖も取らせない。夜の10時まで立ち続けろ。食事も明日のこの時間まで口にすることを許さん」
「…はい」
「お前はもう成人しているからそれだけではさすがに生温い。明日の夕方までに始末書を書いて提出せよ。動機 顛末 改善案とお前が迷惑をかけたと思う者の名を全て書き記せ。書くために必要な場所へ行くことは許すが原則として謹慎だ。納得のいくものが仕上がるまで学園へも通わせない。
必要な場所へ行く時は国王専属侍従を呼べ。1日に1時間だけ貸そう。分かったな」
「っ!……はい」
「さて、悪かったね、せっかくの昼食会に水を差して。話の続きをしよう」
国王陛下はわざとなのか、予定より1時間長く話し込み、昼食会をお開きにした。
「では、失礼するよ」
陛下が退室するために席を立ったので俺達も立ったのだが…
「っ!」
エレノアが立ち上がってすぐビクッと体を揺らし顔を赤くした。
「エレノア様、どうなさったのですか?」
「急に血行が良くなって…座り方が悪かったのかもしれませんわ」
下手な誤魔化し方だな。
昨夜の交わりのせいなんだろう?本当に注いだままにしたのだな。
「お気を付けになってください」
「そうしますわ。ありがとうございます」
このまま連れて帰りたい。たっぷり可愛がりたい。
…俺達、次に会うときはどうしたらいいんだ?次の予約をしてから帰るべきだったのに失念していた。
手紙なんか出したらバレてるって言っているようなものだしな。店はそういうやり取りを許していないし。
「フレデリック、うちに帰るぞ」
「ああ」
「一緒に来たんですか?仲がいいですね」
「ちょっと用があったんです」
立たされた王子の横を通り過ぎ馬車乗り場へ向かった。
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