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久しぶりの王宮行事
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離縁から1年後、私は4店舗のオーナーになっていた。
ハーブを使ったお菓子や飴や茶葉などを扱うお店、ハーブを使って効果を狙った石鹸やクリームや化粧品などのお店をリヨードに。
統合したお店をウィンストンと王都に。
薬草の資料を基に、こんなのが欲しいと言えばウィンストンが作ってくれる。
これってお兄様がオーナーのお店でいいんじゃないの?って気がするけど、お兄様は首を横に振る。
テレサが“オーナーが効果を出していないと商品は売れないと思うの” というので、叔母様とテレサと私で使って磨き上げている。
毛穴は何処へ?と聞きたくなるような陶器の様な肌はあまり化粧をする必要が無く、薄く整える程度。
髪には艶があり、手櫛の様に指を差し入れるとアーミンのような柔らかさで滑る。
どれを使っているのか聞かれても濁し、ただ“ウィンストンのアルテミスを長く使ったのよ”と言うだけ。
そうなると片っ端から一つずつ試していく者や、商品説明から自分の求めたものを試す者、贈り物や来客用のバスセットとして購入する者で店は溢れかえった。
またラベンダーやミント、柑橘系のルームフレグランスはまとまった数量で 高級ホテルや王宮などと契約を交わした。
アルテミスはサリオンがつけたブランド名だ。
悩み過ぎて寝付けなくなったエステルに見兼ねたサリオンが決めた。
「エステル おはよう」
チュッ
「おはようございます お兄様」
「私の可愛いエステル。私にもキスをくれないか」
チュッ
「支度をして降りておいで」
お兄様と入れ替わりでメイド達が入ってきた。
お兄様は段々距離を詰めてくる。
子供の頃のように膝の上に乗せたがり、小さな焼き菓子を食べさせたり。
まるでデートのように外出に連れて行き、チラチラと私を褒める。
“可愛いな” “綺麗だよ” “よく似合ってる”
そして“大好きだ” “愛してる” というようになった。
昔も言ってくれていたけど 昔と違う。
それはあの頃と年齢が違うせいだと思っていた…。
おはよう 行ってきます おやすみのときに頬にキスをするようになった。それは回を重ねるごとに移動して今では口の端辺りにする。
そして私にもしてと強請る。
眼差しに違和感があったが気付かなかった。
いや、気付かないフリをして気のせいだと思い込んだ。
リヨード家と一緒に王都へやってきた。王宮主催の建国記念日のお祝いに出席するためだ。
呼ばれたのは当主夫妻。だからクリスはこっちに来たけどタウンハウスで留守番。私はお兄様と出席した。
王城に来るのは三度目。
小さな頃にお父様に抱っこされて来た。次は成人の儀。
そしてちゃんとした社交も婚姻以来だ。
不安と緊張のせいで寝不足だった。胃に食べ物を入れず 到着早々一杯飲み干した。お酒も婚姻して婚家の状況を知ってから口にしていなかった。
お兄様とダンスを踊り、叔父様と踊り、学生時代の友人が話しかけて来た。
その間に酔いが完全にまわり 水を飲んだがふらつく。念のために化粧室へ向かった。
角を曲がった辺りで足がもつれた。
「大丈夫ですか?」
若い男だった。倒れそうになった私の腕を掴んで支えてくれた。
「どちらへ?」
「化粧室です…壁伝いに行きますので大丈夫です。
ありがとうございます」
「その様子では無理でしょう」
そう言って抱き上げられた。
「ちょっと、降ろしてください!」
「暴れると落ちて怪我をするよ」
男は早歩きで別の方へ向かう。
「降ろして!」
男は一旦降ろすと私の口にハンカチを詰めた。
その時に靴が片方脱げた。
そしてまた抱き上げて早足で進み部屋のドアを開けた。
まずい!
部屋に連れ込まれる前にもう片方の靴を落とした。
ハーブを使ったお菓子や飴や茶葉などを扱うお店、ハーブを使って効果を狙った石鹸やクリームや化粧品などのお店をリヨードに。
統合したお店をウィンストンと王都に。
薬草の資料を基に、こんなのが欲しいと言えばウィンストンが作ってくれる。
これってお兄様がオーナーのお店でいいんじゃないの?って気がするけど、お兄様は首を横に振る。
テレサが“オーナーが効果を出していないと商品は売れないと思うの” というので、叔母様とテレサと私で使って磨き上げている。
毛穴は何処へ?と聞きたくなるような陶器の様な肌はあまり化粧をする必要が無く、薄く整える程度。
髪には艶があり、手櫛の様に指を差し入れるとアーミンのような柔らかさで滑る。
どれを使っているのか聞かれても濁し、ただ“ウィンストンのアルテミスを長く使ったのよ”と言うだけ。
そうなると片っ端から一つずつ試していく者や、商品説明から自分の求めたものを試す者、贈り物や来客用のバスセットとして購入する者で店は溢れかえった。
またラベンダーやミント、柑橘系のルームフレグランスはまとまった数量で 高級ホテルや王宮などと契約を交わした。
アルテミスはサリオンがつけたブランド名だ。
悩み過ぎて寝付けなくなったエステルに見兼ねたサリオンが決めた。
「エステル おはよう」
チュッ
「おはようございます お兄様」
「私の可愛いエステル。私にもキスをくれないか」
チュッ
「支度をして降りておいで」
お兄様と入れ替わりでメイド達が入ってきた。
お兄様は段々距離を詰めてくる。
子供の頃のように膝の上に乗せたがり、小さな焼き菓子を食べさせたり。
まるでデートのように外出に連れて行き、チラチラと私を褒める。
“可愛いな” “綺麗だよ” “よく似合ってる”
そして“大好きだ” “愛してる” というようになった。
昔も言ってくれていたけど 昔と違う。
それはあの頃と年齢が違うせいだと思っていた…。
おはよう 行ってきます おやすみのときに頬にキスをするようになった。それは回を重ねるごとに移動して今では口の端辺りにする。
そして私にもしてと強請る。
眼差しに違和感があったが気付かなかった。
いや、気付かないフリをして気のせいだと思い込んだ。
リヨード家と一緒に王都へやってきた。王宮主催の建国記念日のお祝いに出席するためだ。
呼ばれたのは当主夫妻。だからクリスはこっちに来たけどタウンハウスで留守番。私はお兄様と出席した。
王城に来るのは三度目。
小さな頃にお父様に抱っこされて来た。次は成人の儀。
そしてちゃんとした社交も婚姻以来だ。
不安と緊張のせいで寝不足だった。胃に食べ物を入れず 到着早々一杯飲み干した。お酒も婚姻して婚家の状況を知ってから口にしていなかった。
お兄様とダンスを踊り、叔父様と踊り、学生時代の友人が話しかけて来た。
その間に酔いが完全にまわり 水を飲んだがふらつく。念のために化粧室へ向かった。
角を曲がった辺りで足がもつれた。
「大丈夫ですか?」
若い男だった。倒れそうになった私の腕を掴んで支えてくれた。
「どちらへ?」
「化粧室です…壁伝いに行きますので大丈夫です。
ありがとうございます」
「その様子では無理でしょう」
そう言って抱き上げられた。
「ちょっと、降ろしてください!」
「暴れると落ちて怪我をするよ」
男は早歩きで別の方へ向かう。
「降ろして!」
男は一旦降ろすと私の口にハンカチを詰めた。
その時に靴が片方脱げた。
そしてまた抱き上げて早足で進み部屋のドアを開けた。
まずい!
部屋に連れ込まれる前にもう片方の靴を落とした。
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