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制裁(サリオン)

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【 サリオンの視点 】


エステルの義母だったヘイリーは、プジ男爵家出身だ。

多額の債権がオルフォード男爵に移ったので直ぐに役立たずのフィリップを追い出すだろう。当然母付きで。

ケヴィンについては迷ったが、友人もいて善悪の判断を十分にできる歳だ。罪のない人を殴ってはいけない、無抵抗の女性に暴力を振るってはいけない、罵倒してもいけない。

判断がつかないというならメイドにも義母にも友人の家族やそこで働くメイドにも同じことをしていたはずだ。
なのにケヴィンはエステルだけを標的にした。
母親と認めないと言いながら無償の愛があると分かっていたのだ。

だからプジ家には予め、ケヴィンの所業と引き取らない理由を書き、そしてそれはヘイリーの責任だということも書いて送った。
自分達は散財し、エステルを働かせてケヴィンが産まれると直ぐに取り上げ悪魔に育てたと。

謝罪の手紙が届き、ケヴィンはプジ家の領地の孤児院へ預けると書いてあった。


新聞にネグルワ子爵家に管財人がついたと載った。
それから1ヶ月後、プジ男爵家から手紙が届いた。

フィリップが実母と無理心中をしたこと、フィリップは殺人と自害の罪で墓には入れられないので、灰にして川に流したと書いてあった。

優しいエステルが気に病むと困るので教えなかった。

ケヴィンから届いた手紙と一緒に燃した。

“僕が何をしてしまったのかやっと分かりました。
ごめんなさい。今度はお母様を大事にします”

冗談じゃない。

他の男との子など見たくもないのに やり直すことになったら殺してしまいそうだ。
エステルを愛しているが、ケヴィンはエステルが他の男に身体を許した証拠だ。どうしても想像して腑が煮え繰り返る。

 
「お兄様、お呼びですか」

「貸し付けたお金が戻ったよ」

「愛人の家が立て替えたのですね」

「そうだ。嫌か?」

「私が生きていくために必要なお金です。誰からであろあと受け取ります」

この子はまだ 私から離れようと考えている。
愛してもらえないなら…また消えてしまうなら いっそのこと領地で軟禁して孕ませよう…そう思っていた。



「ねえ。サリオン兄様」

「何だ」

「エステルに求婚するんでしょう?」

「……」

双子の片割れテレサがニヤニヤしながら尋ねた。
双子は私のことを兄と呼んで慕う。
つい可愛いと思ってしまうのだ。

「私は大賛成よ。最初から兄様と結ばれたら良かったのに、兄様がさっさと愛を囁かないから 初心なエステルは他の男に絆されちゃったのよ。

今度こそ、ゆっくりでも確実に優しく口説いてよ。
絶対にエステルは傷が癒えれば兄様を受け入れるわ」

「その時はちゃんとテレサにエステルを会わせるからな」

「約束よ。1ヶ月滞在しても嫌な顔しないでね」

「テレサの夫が嫌な顔をするだろう」

「大丈夫。愛人がいるから」

「え?」

「いつもメイドに手を出しては飽きると入れ替えるの。今の子は長いわね。だから私の中で愛人に昇格させたわ」

「思い知らせてやろうか?」

「いいのいいの。政略結婚だから」

「嫌になったら実家に戻れ。分家の立場を分かっていないような男に我慢する必要はない。
実家に戻り辛いならウィルソンうちに来い」

「やった!第二夫人にして!」

「は?」

「だって養女は無理でしょう?なら第二夫人がいいわ。もちろん閨事なんて望まない。私はエステルと一緒にいたいの」

「なら別の方法で、」

「兄様も好きなの。エステルという存在がなかったら夜這いをかけたわね」

「……」

「そんな顔しないで。こんないい男を好きになるなって方が無理だもの。
私は愛しい兄様と一緒にエステルを愛でるからいいの」

「可愛いテレサ」

「知ってる」

「クリスも可愛いがな」

「ライバルなのに?」

「それでも慕ってくれるし、弟だと思っているよ」

「喜びそうだからクリスには黙っておこうかな」

テレサの頭を撫でていると、遠くでクリスと一緒にいたエステルが寄って来た。

シ「ずるい」

テ「たまには譲ってよ」

シ「イヤ」

テ「私だって撫でてもらいたいもの」

シ「クリスがいるじゃない」

テ「貸すわ。

クリス~! エステルが頭撫でてほしいって~!」

シ「ちょっと!」

クリスは真っ赤になり膝を抱えてしまった。

シ「あれ?泣いてる?」

エステルがクリスの元に戻り頭を撫で出した。

シ「よしよし。まだ泣き虫だったのね」

ク「……」

あいつ、嫁を貰って子まで作っておいて何であんなに恥ずかしがるんだよ。

私「クリスの性感帯は頭頂部にあるのか?」

テ「エステルの触るところ全てが性感帯に早変わりするのよ」

私「危険だな」


穏やかな日々が帰ってきた。
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