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光を失った(ケヴィン)

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【 ケヴィンの視点 】


3ヶ月後、父上と一緒に説明を受けた。

「子爵とご子息は平民となります」

「……」

「え?」

管財人という人が来てそう告げた。

「領地からは出た方がいいでしょう。命を狙われます」

「……」

「!!」

「ヘイリー大奥様の実家からは提案が届いています。
ヘイリー様の世話をすることを条件に領地の空き家に住まわせて生活費を負担してもいいと。
断れば子爵は部屋探しと職探しから始めなければなりません。
どちらにしてもケヴィンくんは孤児院へ預けます」

「父上は城勤めだったのでは?」

「……」

「君のお父上は貴族枠の臨時職員なんだ。
問題を起こした相手は男爵家だし、奥様も伯爵家の出身。もう城では働けないんだよ」

「母と暮らすことは」

「籍も親権もお父上が持っているし、君、エステル様に暴言や暴力を振るっていたと報告があった。
虫が良すぎるんじゃないか?

エステル様は女性だ。君は男だから 近いうちにエステル様は力で敵わなくなる。エステル様は夫を信じて領民のため 使用人達の雇用のために尽力した素晴らしいお方だ。
彼女を危険に晒したくない。

エステル様のご実家も離縁後に独自に調査を入れたようで、兄君が激怒なさっておられた。
“女性に暴力を振るうような輩は甥ではない”と引き取りを拒否なさった。
それに再婚の足枷になるだろう?」

「再婚?」

「婚歴や出産歴があっても、領地経営と私財を増やしたエステル様には複数の求婚者が現れるだろう」

「ケヴィン、止めなさい。
母の面倒をみます」

「ではそうお伝えいたします」


子爵位は返上、領地も返上。国預かりになった。


北にあるお祖母様の実家の男爵領に連れてこられ、先に孤児院の前で降ろされた。

父上は微笑んだ。

「元気でな」

「え?」

生きた父上を見たのはそれが最後だった。

慣れない孤児院では、歳上の子に殴られたり脚をかけられたり食べ物を取られたりされた。

お母様のおかげで恵まれた生活をしていたことが分かったし、自分がされて自分がお母様にしたことを理解した。

一ヶ月も経たないうちに連れてこられたのは墓地だ。

「君の祖母は私の叔母にあたる。叔母は君の父に殺されたよ。無理心中だった。
これは叔母の墓だ。

君の父は罪人で自殺をしたから埋葬できない。
燃やして灰にして川に弔った」

「川!?」

「自分の心配をしたまえ。
平民として生きられないと爪弾きに遭うぞ。
君の父は罪人だから、君が貴族に返り咲くのはほぼ無理だろう。
馴染んで勉強して就職するんだな」


馬車に乗せられて孤児院に戻ってきた。

もう勉強して良い職を見つけることしか生き残る術がない。

読んでもらえるかは分からないがお母様宛に謝罪の手紙を送った。
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