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【エドワード】銀の卵
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【 ゼルベス王国 王太子エドワードの視点 】
ジーンは真剣な顔で父上の元へ近付くと跪き懇願した。
『国王陛下に申し上げます。
私ジーンはユリナ・リシューを娶るべく、次のお願いをいたします。
王位継承権を放棄いたします。
子爵位をいただき、王太子殿下の左足の小指の爪になります。
ユリナと私の婚姻を認めていただいた上で、王宮内か王都に住まわせてください』
『放棄など認めん!』
『ユリナは私の恩人です。…いえ、理由は愛しているからです!』
『子爵令嬢だったな。ならば妾として迎えて男児が産まれたら側妃にするといい』
『ユリナは身分の高い男の妻にはならないと断言しております。それに私はユリナ以外娶りませんし、手も付けません!』
『ジーン!お前は王子だろう!』
『では、廃嫡になさってください。身一つでユリナと国を出ます』
『ジーン!!』
『国王陛下』
ジーンの隣に行き私も跪いた。
『エドワード!?』
『全て条件を受け入れてくださいませんか』
『だが、』
『皆がジーンに遠慮していたということは、城内の皆がジーンの妃としてユリナを認めていたということです。子爵令嬢だから何です?未来の王妃になるわけではありません。彼女は価値を示したではありませんか。ジーンが更生したのはユリナのお陰です。なのに妾にしてしまえば城内が乱れます。
ユリナの方はその気はありませんが、ジーンがユリナしか見ていません。そこもジーンにとっては良い評価を得るでしょう。自分を導いた子爵令嬢に一途に慕う王子は継承権を手放して臣下に下った…絶対に支持を得ます。
城に住むなら子爵になろうが一緒です。この私がジーンのことを王子として敬意を払わせます。
ユリナは裕福になりたくないようなので、継承権放棄の分与金と婚姻の祝い金を出しましょう。
衣装や宝飾品は支給品として与えればいいでしょう。衣食住や使用人は今まで通りですし不自由はありません。ただ、個人的に財布に入れて使える金が2人の給金だということです。
足りなければ親からの小遣いだ、兄からの小遣いだと与えればいいことです』
『……エドワードがそこまで言うなら』
『ありがとうございます!では、ユリナの両親と本家の伯爵家に求婚して、ユリナを連れて帰ります!行ってきます!』
『はぁ…エドワード。親衛隊を見繕ってジーンに付けてくれ。あと、婚約を結ぶのだからキレ者を付き添わせてくれ。あいつの背中に浮かれた羽が見える』
『お任せください』
そしてジーンは満面の笑みでユリナを連れて帰って来た。恐ろしい数の禁止事項を記した契約書に目眩を起こしそうになったが、これを書いたのがジーンなら仕方ない。ユリナは途中で読むのを止めて署名をしたようだ。
信頼からか面倒臭かったかは2人が夫婦になったら聞いてみよう。
王太子妃は初めてユリナを見たらしく、“本当にジーン殿下がこの娘に?”と顔に出てしまっていたが、4人で茶を飲んでいるうちに納得したようだ。
「早く愛してもらえるといいですわね」
「まだジーンを友人くらいにしか見ていないからな」
「でも、夜を重ねればきっと変わりますわ」
「なるほど」
だからジーンに告げた。
「ユリナは生娘ではないのだろう?」
「な、何ですかっ」
「ならば気にせず抱いてしまえ」
「き、嫌われます!」
「男を知った身体なら順応も早い。ジーンは子爵なのだから王子の時のような縛りはない。恋人として体を重ねてユリナを絆せ」
「本気ですか!?」
「自分勝手な抱き方をしたら嫌われるからな」
「……」
「まさか?」
「け、経験くらいありますっ」
「適当にヤったんだな?」
「っ!」
「声や表情やナカの動きで分かるはずだ。女が悦ぶことをすればいいだけだろう。自分のことは二の次でユリナが気持ちよくなることだけ考えればいい」
「…はい」
「無理矢理は駄目だぞ」
数日後、ジーンが成功したのが分かった。
「まったく…分かりやすいやつだな」
「ええ、ユリナも分かりやすいですわ」
「本当だ」
ジーンは尻には敷かれているが男としての自信も取り戻しているし、ユリナは甘える仕草を見せるようになった。
ジーンは私の左足の小指の爪となるべく、他の側近の指示をよく聞いて働いた。ユリナもまた職人の募集をして指導をした。
婚約からもうすぐ1年が経とうとしていた。2人の式間近に、ジーンが相談したいと声を掛けてきた。まさか婚約解消なんてことはないだろうなと思いながら話を聞いた。
「実は………」
「何だ、はっきり言え」
「妊娠させました」
「は?」
「昨日、体調を崩して…診察を受けました。
どうやら月のモノが来ていなくて。ユリナは疲れだと思ったらしいのです。身体も怠かったのでてっきり…」
「避妊は」
「……」
上目遣いのジーンから察するに、心当たりに叱られる要素があるのだろう。
「怒らないから言ってみろ」
「昼休憩にも…」
「…分かった。ユリナは長期休職にする。式は頑張れ。以上だ」
「ご迷惑をお掛けします」
「ジーン」
「はい」
「ニタニタしながら言う台詞ではない」
ジーンは頬を叩くもニタニタと顔が緩んでしまう。
「もういいから、ユリナの元に帰れ。念のために言っておくが お前は休職じゃないからな」
「え?」
「……」
弟の顔が一瞬で嘆きの顔に変わった。
やっぱり私は不器用なジーンが可愛いらしい。
当面午後だけ仕事をさせることにしたが、それは1日で終わりを告げた。
「おはようございます」
「何でいるんだ?」
「悪阻のときに側を徘徊するなと追い出されました」
「ハハッ」
「兄上~っ」
「私に言ってもどうにもならん。妊娠中の妻には逆らうな」
「王太子妃殿下に相談してきます」
「私より厳しいと思うぞ」
結局、夫として父親としての心得を叩き込まれて戻ってきたときは涙目になっていた。
ユリナは金の卵とまではいかないが銀の卵と言っていい。
セドリックを除いた兄弟仲はとても良く、王太子妃との会話も増えた。
それに、壊死したセドリックの脚をようやく切り落とせたらしいが、手遅れだった。何の役にも立たず、落馬で死んだ王子のためにジーン達の結婚式を遅らせることはないと父上が判断した。
私に毒を盛った第三王子セドリックは痛みと恐怖に苦しみ抜き 孤独の中で死んだ。ユリナのお陰だと感謝している。
挙式は短めに、披露宴も新婦は早めに退がらせた
ジーンは真剣な顔で父上の元へ近付くと跪き懇願した。
『国王陛下に申し上げます。
私ジーンはユリナ・リシューを娶るべく、次のお願いをいたします。
王位継承権を放棄いたします。
子爵位をいただき、王太子殿下の左足の小指の爪になります。
ユリナと私の婚姻を認めていただいた上で、王宮内か王都に住まわせてください』
『放棄など認めん!』
『ユリナは私の恩人です。…いえ、理由は愛しているからです!』
『子爵令嬢だったな。ならば妾として迎えて男児が産まれたら側妃にするといい』
『ユリナは身分の高い男の妻にはならないと断言しております。それに私はユリナ以外娶りませんし、手も付けません!』
『ジーン!お前は王子だろう!』
『では、廃嫡になさってください。身一つでユリナと国を出ます』
『ジーン!!』
『国王陛下』
ジーンの隣に行き私も跪いた。
『エドワード!?』
『全て条件を受け入れてくださいませんか』
『だが、』
『皆がジーンに遠慮していたということは、城内の皆がジーンの妃としてユリナを認めていたということです。子爵令嬢だから何です?未来の王妃になるわけではありません。彼女は価値を示したではありませんか。ジーンが更生したのはユリナのお陰です。なのに妾にしてしまえば城内が乱れます。
ユリナの方はその気はありませんが、ジーンがユリナしか見ていません。そこもジーンにとっては良い評価を得るでしょう。自分を導いた子爵令嬢に一途に慕う王子は継承権を手放して臣下に下った…絶対に支持を得ます。
城に住むなら子爵になろうが一緒です。この私がジーンのことを王子として敬意を払わせます。
ユリナは裕福になりたくないようなので、継承権放棄の分与金と婚姻の祝い金を出しましょう。
衣装や宝飾品は支給品として与えればいいでしょう。衣食住や使用人は今まで通りですし不自由はありません。ただ、個人的に財布に入れて使える金が2人の給金だということです。
足りなければ親からの小遣いだ、兄からの小遣いだと与えればいいことです』
『……エドワードがそこまで言うなら』
『ありがとうございます!では、ユリナの両親と本家の伯爵家に求婚して、ユリナを連れて帰ります!行ってきます!』
『はぁ…エドワード。親衛隊を見繕ってジーンに付けてくれ。あと、婚約を結ぶのだからキレ者を付き添わせてくれ。あいつの背中に浮かれた羽が見える』
『お任せください』
そしてジーンは満面の笑みでユリナを連れて帰って来た。恐ろしい数の禁止事項を記した契約書に目眩を起こしそうになったが、これを書いたのがジーンなら仕方ない。ユリナは途中で読むのを止めて署名をしたようだ。
信頼からか面倒臭かったかは2人が夫婦になったら聞いてみよう。
王太子妃は初めてユリナを見たらしく、“本当にジーン殿下がこの娘に?”と顔に出てしまっていたが、4人で茶を飲んでいるうちに納得したようだ。
「早く愛してもらえるといいですわね」
「まだジーンを友人くらいにしか見ていないからな」
「でも、夜を重ねればきっと変わりますわ」
「なるほど」
だからジーンに告げた。
「ユリナは生娘ではないのだろう?」
「な、何ですかっ」
「ならば気にせず抱いてしまえ」
「き、嫌われます!」
「男を知った身体なら順応も早い。ジーンは子爵なのだから王子の時のような縛りはない。恋人として体を重ねてユリナを絆せ」
「本気ですか!?」
「自分勝手な抱き方をしたら嫌われるからな」
「……」
「まさか?」
「け、経験くらいありますっ」
「適当にヤったんだな?」
「っ!」
「声や表情やナカの動きで分かるはずだ。女が悦ぶことをすればいいだけだろう。自分のことは二の次でユリナが気持ちよくなることだけ考えればいい」
「…はい」
「無理矢理は駄目だぞ」
数日後、ジーンが成功したのが分かった。
「まったく…分かりやすいやつだな」
「ええ、ユリナも分かりやすいですわ」
「本当だ」
ジーンは尻には敷かれているが男としての自信も取り戻しているし、ユリナは甘える仕草を見せるようになった。
ジーンは私の左足の小指の爪となるべく、他の側近の指示をよく聞いて働いた。ユリナもまた職人の募集をして指導をした。
婚約からもうすぐ1年が経とうとしていた。2人の式間近に、ジーンが相談したいと声を掛けてきた。まさか婚約解消なんてことはないだろうなと思いながら話を聞いた。
「実は………」
「何だ、はっきり言え」
「妊娠させました」
「は?」
「昨日、体調を崩して…診察を受けました。
どうやら月のモノが来ていなくて。ユリナは疲れだと思ったらしいのです。身体も怠かったのでてっきり…」
「避妊は」
「……」
上目遣いのジーンから察するに、心当たりに叱られる要素があるのだろう。
「怒らないから言ってみろ」
「昼休憩にも…」
「…分かった。ユリナは長期休職にする。式は頑張れ。以上だ」
「ご迷惑をお掛けします」
「ジーン」
「はい」
「ニタニタしながら言う台詞ではない」
ジーンは頬を叩くもニタニタと顔が緩んでしまう。
「もういいから、ユリナの元に帰れ。念のために言っておくが お前は休職じゃないからな」
「え?」
「……」
弟の顔が一瞬で嘆きの顔に変わった。
やっぱり私は不器用なジーンが可愛いらしい。
当面午後だけ仕事をさせることにしたが、それは1日で終わりを告げた。
「おはようございます」
「何でいるんだ?」
「悪阻のときに側を徘徊するなと追い出されました」
「ハハッ」
「兄上~っ」
「私に言ってもどうにもならん。妊娠中の妻には逆らうな」
「王太子妃殿下に相談してきます」
「私より厳しいと思うぞ」
結局、夫として父親としての心得を叩き込まれて戻ってきたときは涙目になっていた。
ユリナは金の卵とまではいかないが銀の卵と言っていい。
セドリックを除いた兄弟仲はとても良く、王太子妃との会話も増えた。
それに、壊死したセドリックの脚をようやく切り落とせたらしいが、手遅れだった。何の役にも立たず、落馬で死んだ王子のためにジーン達の結婚式を遅らせることはないと父上が判断した。
私に毒を盛った第三王子セドリックは痛みと恐怖に苦しみ抜き 孤独の中で死んだ。ユリナのお陰だと感謝している。
挙式は短めに、披露宴も新婦は早めに退がらせた
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