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被害者
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【 ロジェの視点 】
父「この度は申し訳ございません」
リシュー子爵 ゲルズベル伯爵 アランに向けて頭を下げた。
子「謝ってもらっても意味はありません。娘は身も心も傷付きました。せめて婚約を許すのではなかったと激しく後悔していますよ」
伯「悪いと思うなら さっさと破棄を受け入れてもらえませんか」
父「まず、事情を説明させてください」
父はパーティでの事から今に至るまでの説明をした。
子「事が起きたら直ぐに報告に来るべきでした。
その間 娘はエンヴェル領に行って仕事をしていたのですよ?何も知らせずに働かせるなんて有り得ませんよ。しかも娘からの誘いは断って?挙句バレてからやっと来るという始末。誠意のカケラも見当たらないではありませんか」
父「申し訳ございません」
俺「裏を掴んでからと 間違ってしまいました」
伯「公女が黙っていたら、そのまま式を挙げたのでしょうな」
俺「……」
ア「リリー公女と貴方は縁談話があった仲だと聞きました。リリー公女は貴方にご執心だったとか。
そんな相手の誕生日のパーティに行くなんて…断れないのならユリナを連れて行くべきでした。婚約者のいる貴方が公女のパートナーのように側にいる必要も、部屋に送る必要も無かったと思いませんか?そんなのは使用人に任せればいいのです。
隙があるのか油断なのか馬鹿なのか…やっぱりあの時、貴方とは婚約するなとユリナを説得するべきでしたよ。
そもそも友人関係でさえ許してはいけなかった。
貴方がユリナを自分のもののように扱うから国内の縁談が上手くいかなかったのですから」
俺「ユリナに会わせてもらえませんか」
子「もうユリナを貴方と会わせるつもりはありません。公女が会いに来てからでは遅いのですよ」
父「子爵」
子「あの子は国内におりません」
俺「まさか、見合いを!?」
子「相手は公爵家、うちは子爵家。公女が言いふらしてはユリナは外にも出られません。
あの子は何一つ悪くないのにですよ?理不尽な世の中ですよ」
俺「別れたくありません」
子「公女は妊娠しているのですよね?
もうこちらの招待客には結婚の中止を伝えています。花嫁を公女に変えて挙式をしてもこちらは構いません」
俺「もう一度チャンスをください!お願いします!」
子「婚約の継続は出来ません。それにユリナがいつ戻るかは分かりません。このまま他国の貴族に嫁ぐことも十分に有り得ますから」
俺「子爵!」
伯「けじめですよ。破棄を受け入れてください。
公女とどうするか向き合うことをせずにチャンスとか言われましてもね」
父「式の件は分かりました。こちらも中止ということで対処します。破棄の件はフォンヌ公爵家と対峙してから考えさせてください。確かにご指摘通りですが、息子は被害者でもあります。息子は望まぬ相手との強要があったのです。このようなことは男でも女でも起こり得ること。男だから被害者として見てもらえないというのは納得がいきません。ユリナが幻覚剤を盛られて他の令息と関係を持つことになっても浮気と一括りにして責め立てますか?」
子「……」
父「息子の迂闊さは認めます。一人で参加したのは、ユリナを同伴して攻撃の的にされたくなかったから。何故ダンスをしたり部屋に送る羽目になったのかは、婚姻後のユリナの社交を邪魔するようなニュアンスのことを言われたから。2人きりではなくメイドも付き添っていたから。
息子なりにユリナを守りたかったのです」
ア「確かにそうですが、ご子息がユリナに会って説明をしないから、ユリナも我々もご子息が浮気をした挙句に乗り換えたと判断しました。本人が会おうとせず説明しなければ、こちらは公女や周囲の話で判断するしかないのです。
そして避妊薬を飲むところまで見届けるべきでした。飲まないなら医師を呼んで何か盛られたと騒ぐべきでした。私ならそうします」
父「そうですね。
とにかく、王都に戻って公女と対峙します。連絡が取れたらユリナにも伝えてください」
俺「ユリナしか愛していないんです。絶対に他の女と関係を持とうなどと思うわけがないのです。どうかユリナに伝えてください。お願いします」
最後にもう一度頭を下げて子爵邸を後にした。
帰りの馬車で、
「父上」
「先ずは式の中止をしなくては。
後は公爵家との話し合いだが、難しいだろうな。
あの夜、一緒に公女を部屋まで送ったメイドを探し出して確保出来れば逆転はあるかもしれない」
「俺は許せません。殺したいくらいです」
「西の公爵と連絡を取ろう。フォンヌ公爵家とは犬猿の仲だからな」
「何故 犬猿なのですか」
「昔、アベルツ公爵家の婚約者をフォンヌ公爵家の令息が取ってしまったんだ。相思相愛だったのに令息が口説いてしまった」
「ゲルズベル伯爵家のアラン殿も相当怒っていたなな」
「アランと彼の婚約者は政略結婚になるそうです。それがなければアランはきっとユリナを選んだでしょう」
アランはユリナが好きなんだと思う。多分ユリナが才能を発揮する前から。
もし才能を発揮した後だったとしても伯爵は領内にいる子爵令嬢と縁を結ぶより 他領の令嬢との婚姻でゲルズベル伯爵家の利益を優先させ政略結婚をさせるだろう。
アランは嫡男として伯爵の意向に従った。ユリナへの気持ちを押し殺して。その代わりアランはユリナの側にいて守ることで胸に刻める思い出を作っていたのだろう。
俺とは違う選択をする男だが いい男だと思うし信用できる。出来ればアランとは仲良くしたい。
既成事実の時のアランの殺気は凄かった。よく一発殴られただけで済んだなと驚くほどの殺気なのに、止められて冷静さを取り戻し怒りを抑え込んだ。すごいと思う。
王都に帰るとリリー公女からの手紙に返信をして、派手に揺さぶることにした。
父「この度は申し訳ございません」
リシュー子爵 ゲルズベル伯爵 アランに向けて頭を下げた。
子「謝ってもらっても意味はありません。娘は身も心も傷付きました。せめて婚約を許すのではなかったと激しく後悔していますよ」
伯「悪いと思うなら さっさと破棄を受け入れてもらえませんか」
父「まず、事情を説明させてください」
父はパーティでの事から今に至るまでの説明をした。
子「事が起きたら直ぐに報告に来るべきでした。
その間 娘はエンヴェル領に行って仕事をしていたのですよ?何も知らせずに働かせるなんて有り得ませんよ。しかも娘からの誘いは断って?挙句バレてからやっと来るという始末。誠意のカケラも見当たらないではありませんか」
父「申し訳ございません」
俺「裏を掴んでからと 間違ってしまいました」
伯「公女が黙っていたら、そのまま式を挙げたのでしょうな」
俺「……」
ア「リリー公女と貴方は縁談話があった仲だと聞きました。リリー公女は貴方にご執心だったとか。
そんな相手の誕生日のパーティに行くなんて…断れないのならユリナを連れて行くべきでした。婚約者のいる貴方が公女のパートナーのように側にいる必要も、部屋に送る必要も無かったと思いませんか?そんなのは使用人に任せればいいのです。
隙があるのか油断なのか馬鹿なのか…やっぱりあの時、貴方とは婚約するなとユリナを説得するべきでしたよ。
そもそも友人関係でさえ許してはいけなかった。
貴方がユリナを自分のもののように扱うから国内の縁談が上手くいかなかったのですから」
俺「ユリナに会わせてもらえませんか」
子「もうユリナを貴方と会わせるつもりはありません。公女が会いに来てからでは遅いのですよ」
父「子爵」
子「あの子は国内におりません」
俺「まさか、見合いを!?」
子「相手は公爵家、うちは子爵家。公女が言いふらしてはユリナは外にも出られません。
あの子は何一つ悪くないのにですよ?理不尽な世の中ですよ」
俺「別れたくありません」
子「公女は妊娠しているのですよね?
もうこちらの招待客には結婚の中止を伝えています。花嫁を公女に変えて挙式をしてもこちらは構いません」
俺「もう一度チャンスをください!お願いします!」
子「婚約の継続は出来ません。それにユリナがいつ戻るかは分かりません。このまま他国の貴族に嫁ぐことも十分に有り得ますから」
俺「子爵!」
伯「けじめですよ。破棄を受け入れてください。
公女とどうするか向き合うことをせずにチャンスとか言われましてもね」
父「式の件は分かりました。こちらも中止ということで対処します。破棄の件はフォンヌ公爵家と対峙してから考えさせてください。確かにご指摘通りですが、息子は被害者でもあります。息子は望まぬ相手との強要があったのです。このようなことは男でも女でも起こり得ること。男だから被害者として見てもらえないというのは納得がいきません。ユリナが幻覚剤を盛られて他の令息と関係を持つことになっても浮気と一括りにして責め立てますか?」
子「……」
父「息子の迂闊さは認めます。一人で参加したのは、ユリナを同伴して攻撃の的にされたくなかったから。何故ダンスをしたり部屋に送る羽目になったのかは、婚姻後のユリナの社交を邪魔するようなニュアンスのことを言われたから。2人きりではなくメイドも付き添っていたから。
息子なりにユリナを守りたかったのです」
ア「確かにそうですが、ご子息がユリナに会って説明をしないから、ユリナも我々もご子息が浮気をした挙句に乗り換えたと判断しました。本人が会おうとせず説明しなければ、こちらは公女や周囲の話で判断するしかないのです。
そして避妊薬を飲むところまで見届けるべきでした。飲まないなら医師を呼んで何か盛られたと騒ぐべきでした。私ならそうします」
父「そうですね。
とにかく、王都に戻って公女と対峙します。連絡が取れたらユリナにも伝えてください」
俺「ユリナしか愛していないんです。絶対に他の女と関係を持とうなどと思うわけがないのです。どうかユリナに伝えてください。お願いします」
最後にもう一度頭を下げて子爵邸を後にした。
帰りの馬車で、
「父上」
「先ずは式の中止をしなくては。
後は公爵家との話し合いだが、難しいだろうな。
あの夜、一緒に公女を部屋まで送ったメイドを探し出して確保出来れば逆転はあるかもしれない」
「俺は許せません。殺したいくらいです」
「西の公爵と連絡を取ろう。フォンヌ公爵家とは犬猿の仲だからな」
「何故 犬猿なのですか」
「昔、アベルツ公爵家の婚約者をフォンヌ公爵家の令息が取ってしまったんだ。相思相愛だったのに令息が口説いてしまった」
「ゲルズベル伯爵家のアラン殿も相当怒っていたなな」
「アランと彼の婚約者は政略結婚になるそうです。それがなければアランはきっとユリナを選んだでしょう」
アランはユリナが好きなんだと思う。多分ユリナが才能を発揮する前から。
もし才能を発揮した後だったとしても伯爵は領内にいる子爵令嬢と縁を結ぶより 他領の令嬢との婚姻でゲルズベル伯爵家の利益を優先させ政略結婚をさせるだろう。
アランは嫡男として伯爵の意向に従った。ユリナへの気持ちを押し殺して。その代わりアランはユリナの側にいて守ることで胸に刻める思い出を作っていたのだろう。
俺とは違う選択をする男だが いい男だと思うし信用できる。出来ればアランとは仲良くしたい。
既成事実の時のアランの殺気は凄かった。よく一発殴られただけで済んだなと驚くほどの殺気なのに、止められて冷静さを取り戻し怒りを抑え込んだ。すごいと思う。
王都に帰るとリリー公女からの手紙に返信をして、派手に揺さぶることにした。
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