【完結】さようならと言うしかなかった。

ユユ

文字の大きさ
上 下
11 / 35

被害者

しおりを挟む
【 ロジェの視点 】


父「この度は申し訳ございません」

リシュー子爵 ゲルズベル伯爵 アランに向けて頭を下げた。

子「謝ってもらっても意味はありません。娘は身も心も傷付きました。せめて婚約を許すのではなかったと激しく後悔していますよ」

伯「悪いと思うなら さっさと破棄を受け入れてもらえませんか」

父「まず、事情を説明させてください」

父はパーティでの事から今に至るまでの説明をした。

子「事が起きたら直ぐに報告に来るべきでした。
その間 娘はエンヴェル領に行って仕事をしていたのですよ?何も知らせずに働かせるなんて有り得ませんよ。しかも娘からの誘いは断って?挙句バレてからやっと来るという始末。誠意のカケラも見当たらないではありませんか」

父「申し訳ございません」

俺「裏を掴んでからと 間違ってしまいました」

伯「公女が黙っていたら、そのまま式を挙げたのでしょうな」

俺「……」

ア「リリー公女と貴方は縁談話があった仲だと聞きました。リリー公女は貴方にご執心だったとか。
そんな相手の誕生日のパーティに行くなんて…断れないのならユリナを連れて行くべきでした。婚約者のいる貴方が公女のパートナーのように側にいる必要も、部屋に送る必要も無かったと思いませんか?そんなのは使用人に任せればいいのです。
隙があるのか油断なのか馬鹿なのか…やっぱりあの時、貴方とは婚約するなとユリナを説得するべきでしたよ。
そもそも友人関係でさえ許してはいけなかった。
貴方がユリナを自分のもののように扱うから国内の縁談が上手くいかなかったのですから」

俺「ユリナに会わせてもらえませんか」

子「もうユリナを貴方と会わせるつもりはありません。公女が会いに来てからでは遅いのですよ」

父「子爵」

子「あの子は国内におりません」

俺「まさか、見合いを!?」

子「相手は公爵家、うちは子爵家。公女が言いふらしてはユリナは外にも出られません。
あの子は何一つ悪くないのにですよ?理不尽な世の中ですよ」

俺「別れたくありません」

子「公女は妊娠しているのですよね?
もうこちらの招待客には結婚の中止を伝えています。花嫁を公女に変えて挙式をしてもこちらは構いません」

俺「もう一度チャンスをください!お願いします!」

子「婚約の継続は出来ません。それにユリナがいつ戻るかは分かりません。このまま他国の貴族に嫁ぐことも十分に有り得ますから」

俺「子爵!」

伯「けじめですよ。破棄を受け入れてください。
公女とどうするか向き合うことをせずにチャンスとか言われましてもね」

父「式の件は分かりました。こちらも中止ということで対処します。破棄の件はフォンヌ公爵家と対峙してから考えさせてください。確かにご指摘通りですが、息子は被害者でもあります。息子は望まぬ相手との強要があったのです。このようなことは男でも女でも起こり得ること。男だから被害者として見てもらえないというのは納得がいきません。ユリナが幻覚剤を盛られて他の令息と関係を持つことになっても浮気と一括りにして責め立てますか?」

子「……」

父「息子の迂闊さは認めます。一人で参加したのは、ユリナを同伴して攻撃の的にされたくなかったから。何故ダンスをしたり部屋に送る羽目になったのかは、婚姻後のユリナの社交を邪魔するようなニュアンスのことを言われたから。2人きりではなくメイドも付き添っていたから。
息子なりにユリナを守りたかったのです」

ア「確かにそうですが、ご子息がユリナに会って説明をしないから、ユリナも我々もご子息が浮気をした挙句に乗り換えたと判断しました。本人が会おうとせず説明しなければ、こちらは公女や周囲の話で判断するしかないのです。
そして避妊薬を飲むところまで見届けるべきでした。飲まないなら医師を呼んで何か盛られたと騒ぐべきでした。私ならそうします」

父「そうですね。
とにかく、王都に戻って公女と対峙します。連絡が取れたらユリナにも伝えてください」

俺「ユリナしか愛していないんです。絶対に他の女と関係を持とうなどと思うわけがないのです。どうかユリナに伝えてください。お願いします」

最後にもう一度頭を下げて子爵邸を後にした。


帰りの馬車で、

「父上」

「先ずは式の中止をしなくては。
後は公爵家との話し合いだが、難しいだろうな。
あの夜、一緒に公女を部屋まで送ったメイドを探し出して確保出来れば逆転はあるかもしれない」

「俺は許せません。殺したいくらいです」

「西の公爵と連絡を取ろう。フォンヌ公爵家とは犬猿の仲だからな」

「何故 犬猿なのですか」

「昔、アベルツ公爵家の婚約者をフォンヌ公爵家の令息が取ってしまったんだ。相思相愛だったのに令息が口説いてしまった」

「ゲルズベル伯爵家のアラン殿も相当怒っていたなな」

「アランと彼の婚約者は政略結婚になるそうです。それがなければアランはきっとユリナを選んだでしょう」

アランはユリナが好きなんだと思う。多分ユリナが才能を発揮する前から。
もし才能を発揮した後だったとしても伯爵は領内にいる子爵令嬢と縁を結ぶより 他領の令嬢との婚姻でゲルズベル伯爵家の利益を優先させ政略結婚をさせるだろう。
アランは嫡男として伯爵の意向に従った。ユリナへの気持ちを押し殺して。その代わりアランはユリナの側にいて守ることで胸に刻める思い出を作っていたのだろう。
俺とは違う選択をする男だが いい男だと思うし信用できる。出来ればアランとは仲良くしたい。
既成事実の時のアランの殺気は凄かった。よく一発殴られただけで済んだなと驚くほどの殺気なのに、止められて冷静さを取り戻し怒りを抑え込んだ。すごいと思う。


王都に帰るとリリー公女からの手紙に返信をして、派手に揺さぶることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...