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謁見
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あの日以降、ケイン兄様が私を観察している。
まぁ、突然あのようなことを言い出せばね。
でもどうやって誤魔化しながら伝えようかなど考えている余裕はなかったから仕方ない。
クロエ様から手紙が来て、陛下と医師に話した結果、可能性があるということで直ぐに2つ先の国ミュゲールへ出発させたようだ。
助かったら呼ばれるだろうな。
私は学校へ復帰して図書館へ通い詰め、病の記載のある本を見つけた。
よし!これでいこう!
学園は16、17歳の2年間通う。
後1年半、あの2人を避けないと。
そう思っていたのに…
「イリス伯爵令嬢!」
来たよロバート…
「ごきげんよう」
「…話があるから来てくれ」
「ここでお願いします」
「は?」
「ここでお願いします」
「いいから来い!」
「長く休んでいてやることが多いのです。
それにまだ完治はしておらず、不要な移動は避けたいのです。また予期せぬ事故にあうと困りますので」
「なっ!」
「それに、パトリシア様がまたお騒になるといけませんので。
どうしてもここでお話しできないようでしたら屋敷にいらしてください、父が同席いたします」
「もういい!」
この会話を聞いたら、一部の人は噂を流すだろう。
その一部の人とは、私が転落時にロバートと会っていたことを知っている者達だ。
あの日もこうやって呼びに来た。その時教室に居合わせたクラスメイトは数名だった。
私の言葉はただの事故ではないと言ったようなものだった。
数日後、ロバートとパトリシアの噂はさらに酷いものになった。
『婚約者に援助してもらっているくせに浮気するなんて。顔と爵位があってもな』
『邪魔になった婚約者を突き落としたそうよ。怖いわ!』
『あのアバズレはレイノルズ公爵令息を引っ掛ける前は4股だったわよ!』
『公爵令息が引っかかったら、挨拶すらしなくなったらしいぞ。あからさまだな』
『あれじゃ、良くて愛人だろうに。肝心の婚約者を蔑ろにしてどうするつもりなんだ』
まぁ、その通りだから仕方ないよね。
『実は従兄弟が見かけたんだけど、公爵令息らしき男とミルズ子爵令嬢らしき女が宿屋にいたらしい』
『バカ!こんなところで話すな!噂の出所を特定されたら報復されるぞ!』
卒業パーティまで保たないかもしれないわね。
王太子殿下の病の話をしてから1ヶ月半後、父と王宮に来ている。
私の話は見事に的中し、騎士達が持ち帰った薬で危篤から脱したのだ。
「国王陛下、レオナルド王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「其方がニーナ嬢か」
「はい」
「其方のおかげで王太子が生還した。投与しても間に合うかどうか分からぬ程衰弱していた。助言が無ければ死んでいた。心より感謝する」
「以前読んだ書物にミュゲール王国の病のことが載っていたのです。もしかしてと思いクロエ王女殿下にお話をいたしました」
「伯爵家の書物か?」
「学校の図書室にあります」
「そうだったか。勤勉で素晴らしい娘をもったな伯爵」
「お役に立てたことを誇りに思います」
「褒美を取らそう。其方は何を望むかな」
「ひとつお願いがございます。
ミュゲールと断絶や制裁をするよりも原因解明に向けて両国で協力しあっていただきたいのです」
「……つまり?」
「この病はミュゲール王国内でしか感染しないと言われてきましたが違うことが証明されたとなると、何故王太子殿下が感染なさったのか解明しないと同じことが起こり得ます。
今迄我が国での感染例が無いとなると、単純な感染ではありません。
人から菌を貰うだけでは発症せず、今回の土産物のどれかが菌を悪いものに変化させているのではないかと思っています。
ミュゲールでは普通に食べられる物でも他国では口にしない物が怪しいかと。
もしかして、毒見役の方だけ発病なさいませんでしたか」
「…その通りだ。毒見役だけ発病した」
「ミュゲールと断絶してもミュゲールの周辺諸国の者から持ち込まれるかもしれません。
解明して、対象の土産品の持ち込みを厳禁にすれば済みます。
それに2つの恩を売ることができます。
ひとつは王太子殿下を危篤に追いやった国に対する寛大な対処。もう一つは解明のための協力です。
きっと感謝なさると思いますし、ミュゲールの歴史書にも我が国の英断が記されますわ」
「…伯爵。ニーナ嬢をレイノルズ家にやるのはもったいなくないか?」
「そちらの方もニーナの計画を実行中でございます」
「いつ頃分かる」
「卒業までには分かるのではないかと」
「注視しよう」
「陛下」
「レオナルド」
「ニーナ嬢から私宛に進捗報告の手紙を定期的にいただくのはいかがですか。勿論手紙を陛下にもお見せいたします」
「…いいだろう。詳細を2人で決めればいい。私はまだ伯爵と話があるから別室へ行きなさい」
「ありがとうございます。行こう、ニーナ嬢」
「はい」
なんで~!!
王太子殿下用の応接間に入り人払いが成された。
緊張する!何を話せばいいの!?
早く要件を済ませて解放して!!
「クククッ」
??
「新奈」
まぁ、突然あのようなことを言い出せばね。
でもどうやって誤魔化しながら伝えようかなど考えている余裕はなかったから仕方ない。
クロエ様から手紙が来て、陛下と医師に話した結果、可能性があるということで直ぐに2つ先の国ミュゲールへ出発させたようだ。
助かったら呼ばれるだろうな。
私は学校へ復帰して図書館へ通い詰め、病の記載のある本を見つけた。
よし!これでいこう!
学園は16、17歳の2年間通う。
後1年半、あの2人を避けないと。
そう思っていたのに…
「イリス伯爵令嬢!」
来たよロバート…
「ごきげんよう」
「…話があるから来てくれ」
「ここでお願いします」
「は?」
「ここでお願いします」
「いいから来い!」
「長く休んでいてやることが多いのです。
それにまだ完治はしておらず、不要な移動は避けたいのです。また予期せぬ事故にあうと困りますので」
「なっ!」
「それに、パトリシア様がまたお騒になるといけませんので。
どうしてもここでお話しできないようでしたら屋敷にいらしてください、父が同席いたします」
「もういい!」
この会話を聞いたら、一部の人は噂を流すだろう。
その一部の人とは、私が転落時にロバートと会っていたことを知っている者達だ。
あの日もこうやって呼びに来た。その時教室に居合わせたクラスメイトは数名だった。
私の言葉はただの事故ではないと言ったようなものだった。
数日後、ロバートとパトリシアの噂はさらに酷いものになった。
『婚約者に援助してもらっているくせに浮気するなんて。顔と爵位があってもな』
『邪魔になった婚約者を突き落としたそうよ。怖いわ!』
『あのアバズレはレイノルズ公爵令息を引っ掛ける前は4股だったわよ!』
『公爵令息が引っかかったら、挨拶すらしなくなったらしいぞ。あからさまだな』
『あれじゃ、良くて愛人だろうに。肝心の婚約者を蔑ろにしてどうするつもりなんだ』
まぁ、その通りだから仕方ないよね。
『実は従兄弟が見かけたんだけど、公爵令息らしき男とミルズ子爵令嬢らしき女が宿屋にいたらしい』
『バカ!こんなところで話すな!噂の出所を特定されたら報復されるぞ!』
卒業パーティまで保たないかもしれないわね。
王太子殿下の病の話をしてから1ヶ月半後、父と王宮に来ている。
私の話は見事に的中し、騎士達が持ち帰った薬で危篤から脱したのだ。
「国王陛下、レオナルド王太子殿下にご挨拶を申し上げます」
「其方がニーナ嬢か」
「はい」
「其方のおかげで王太子が生還した。投与しても間に合うかどうか分からぬ程衰弱していた。助言が無ければ死んでいた。心より感謝する」
「以前読んだ書物にミュゲール王国の病のことが載っていたのです。もしかしてと思いクロエ王女殿下にお話をいたしました」
「伯爵家の書物か?」
「学校の図書室にあります」
「そうだったか。勤勉で素晴らしい娘をもったな伯爵」
「お役に立てたことを誇りに思います」
「褒美を取らそう。其方は何を望むかな」
「ひとつお願いがございます。
ミュゲールと断絶や制裁をするよりも原因解明に向けて両国で協力しあっていただきたいのです」
「……つまり?」
「この病はミュゲール王国内でしか感染しないと言われてきましたが違うことが証明されたとなると、何故王太子殿下が感染なさったのか解明しないと同じことが起こり得ます。
今迄我が国での感染例が無いとなると、単純な感染ではありません。
人から菌を貰うだけでは発症せず、今回の土産物のどれかが菌を悪いものに変化させているのではないかと思っています。
ミュゲールでは普通に食べられる物でも他国では口にしない物が怪しいかと。
もしかして、毒見役の方だけ発病なさいませんでしたか」
「…その通りだ。毒見役だけ発病した」
「ミュゲールと断絶してもミュゲールの周辺諸国の者から持ち込まれるかもしれません。
解明して、対象の土産品の持ち込みを厳禁にすれば済みます。
それに2つの恩を売ることができます。
ひとつは王太子殿下を危篤に追いやった国に対する寛大な対処。もう一つは解明のための協力です。
きっと感謝なさると思いますし、ミュゲールの歴史書にも我が国の英断が記されますわ」
「…伯爵。ニーナ嬢をレイノルズ家にやるのはもったいなくないか?」
「そちらの方もニーナの計画を実行中でございます」
「いつ頃分かる」
「卒業までには分かるのではないかと」
「注視しよう」
「陛下」
「レオナルド」
「ニーナ嬢から私宛に進捗報告の手紙を定期的にいただくのはいかがですか。勿論手紙を陛下にもお見せいたします」
「…いいだろう。詳細を2人で決めればいい。私はまだ伯爵と話があるから別室へ行きなさい」
「ありがとうございます。行こう、ニーナ嬢」
「はい」
なんで~!!
王太子殿下用の応接間に入り人払いが成された。
緊張する!何を話せばいいの!?
早く要件を済ませて解放して!!
「クククッ」
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「新奈」
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