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ある日、王妃様にお茶に呼ばれて登城していた。
天気がいいので庭園でお茶を飲もうと席につこうとした。
その時、給仕のメイドがナイフを取り出して、王妃に振り翳した。
「ストップ!!」
ナイフを振り上げたままメイドが固まった。
「王妃様!!」
騎士たちがさっと王妃を退避させようとした。
「待って!」
「王妃様、危険です」
「レイナ、貴女なの?」
「……はい」
「貴女がストップと言えば対象の生き物は止まるのね?」
「人でなくても止まります」
「ギフト……」
「そのようです」
それから大騒ぎになった。
第二王子は、
「レイナ。我が軍に来てくれ。君は逸材だ。大事にすると誓おう」
「兄上!レイナは私のです!
レイナ、怖かったね。大丈夫?どこも怪我してない?」
「レイナ、城の外での勤務以外は美味いものを用意しよう」
「兄上!食べ物で釣らないでください!
レイナ、私といれば朝昼晩毎日美味しいごはんだからね!」
「レイナ、コメというものが食べたいと言っていたな、他にも調味料が欲しいとか」
「兄上に手に入れられるなら私も手に入るからね? レイナ、目をキラキラさせないで」
「緑色の茶も欲しいと聞いたぞ」
「レイナ、こっち見て!あっちは見ちゃダメ! 」
結局、城内に限ることになった。
そこからは、あの我関せずの第二王子が気さくに絡んでくるようになり、その度にエルネストは不機嫌になる。
「レイナ!兄上を見ないで!」
「エル、困らせないで」
「レイナ……」
その後結婚をしてもエルネストは変わらなかった。
「体を繋げれば、少し落ち着くかもしれないわね」
母が領地から王都に来ていると知って会いに来た。
「だからといって嫌なのに繋げてもエルネスト様は喜ばないと思うわ」
「義姉様のような美しい人が相手なら王子でも不安になりますよ」
伯爵家は遠縁から養子を迎えた。
母もしばらく義息子の為にここにいるらしい。
二つ下でアーノルドという逞しい子だ。
筋骨隆々で強面だが、中身は心優しい青年なのだ。キナコと一緒に帰るとデレデレで猫に話しかける。
「キナちゃん!今日も美人ちゃんですね~!」
「アーノルド、キナコは雄だから」
「キナちゃん、泊まって行く?
新しい玩具を買っておいたからね!」
「ニャ~!」
「はぁ~可愛すぎる!」
「アーノルドも猫を飼えば?」
「キナちゃんほど可愛い子はいませんよ」
「仕方ないわね。明日キナコを届けて」
「やった!!キナちゃん~!!」
城に帰ってキナコがいないとちょっとさびしい。
「エル」
「どうしたの」
「一緒にお風呂に入ろう」
バサバサバサーッ
書類の束を落としたエルネストは固まっている。
「聞き間違えたみたいだ」
そう言いながら書類を拾い出した。
「おふろ!」
「っ!! レイナ、それは危険だ。
いくら私でも抑えがきかないよ」
「入ろう」
「……!! レイナ、解禁ってこと!?」
「試さないと分からない」
「でも、してもいいって思ったってこと?」
「……うん」
「準備させよう」
「泡風呂で」
「分かった」
初夜は、大丈夫だった。
浴室で一度エルネストが暴発して恥ずかしがっていたが、それ以外は問題なかった。吐き気もしなかった。
「レイナ」
「ん?」
「私はすごく気持ち良かったけど、レイナは無理してない?」
「してないよ」
「嫌じゃない?」
「嫌ではない」
「気持ちいい?」
「……それほどでも」
「えっ」
「待って、違うから!
快感を拾えるようになるまで、すぐの人もいれば何回かかかる人もいるし、稀に拾えない人もいるの。エルがどうこうじゃないの」
「頑張るよ」
「? うん」
ここで私が“うん”と曖昧に返事をしたのが悪かった。
蜜月に入ってしまったのだ。
月のモノがきて、やっと解放された。
「こんなに籠ってたら怒られるよ」
「大丈夫、宣言してあるから」
「は!?」
「みんな集めて蜜月宣言しておいた」
「みんなって?」
「みんなだよ」
メイドどころか従僕や庭師にも宣言したようだ。恥ずかしい!!
そして月のモノが終わるとまた籠った。
とっくに快感は拾えているのに離してもらえない。
「レイナの分も執務はしているから大丈夫」
「いつ!?」
「レイナが寝ている間にサッとやってるから安心して」
こっそり陛下が様子を伺いに来てくれた時は、
「あいつ、才能を隠していたな!」
「私の分まですみません」
「二人分でも余裕なのだな。レイナ、辛くないか」
「辛くはないですけど疲れます」
「終了させよう」
蜜月禁止令が出された。
だけど毎晩抱かれている。
「蜜月じゃないよ、夫婦の日常だよ」
そして懐妊した。
エルネストは閨をピタッと止めて毎日お腹を摩り、話しかけている。
「パパっていってごらん」
まだ産まれていないのに?
第二王子は、我が子と結婚させられないのが悔しいと嘆いている。
そんな中、産まれたのはミニチュアレイナだ。
「レイナにそっくり!」
「耳の形がエルネストだな」
「あら本当ですわ」
「息子の嫁に」
「兄上、レイナに近寄らないでください」
「なんでだ」
そして医者がゴーサインを出すと夫婦の日常が戻った。
避妊薬が欲しいといったら
「私が飲んでいるから大丈夫だ。しばらくそんな心配はいらない。
愛してるよ、レイナ」
「わ、私も」
「レイナ!」
「ちょっと!今は昼間です!」
「今日はレイナが私に愛を返してくれた記念日だ!籠るぞ」
「ダメ! あっ、」
***第二王子夫妻の視点
「長かった」
「これでレイナに逃げられることはないわね」
「血が近すぎてレイナの子を嫁にもらえないなんて」
「レイナそっくりの美少女になるわ。結婚はできなくてもドロドロに甘やかしましょう」
「ロイは剣を置いて赤ちゃんにベッタリね。ウィリアムは一歳差だから学園で守れるわね」
「殿下、お客様が見えました」
「通してくれ」
「第二王子夫妻にご挨拶申し上げます」
「座ってくれ」
「失礼いたします」
「屋敷を出るのか」
「正妻が二人目を妊娠中ですし、私に手を出しませんし、娘が可愛くないみたいですので」
「娘は置いていくのか」
「どっちでもいいと言われたので、一緒に連れて行きます。
公爵籍から抜く代わりに18歳までの養育費と、家の購入費と手切れ金をまとめてくださるそうです」
「其方には感謝している。好きでもない男に薬を盛って散々抱かれて、身籠って、数年肩身の狭い思いをさせてしまった。なのにしっかり約束を守ってくれた」
「実家に支援金をくださいました。
私はその対価として務めを果たしただけです。
これからは娘と実家の領地で気楽に過ごします。
目的は達成されましたでしょうか」
「勿論よ。婚約を解消して、時間はかかったけど可愛いレイナが手に入って、やっと子を産んだから、もう王家から逃げられないわ」
「お二人に見染められたレイナ様は幸運の持ち主ですわ」
「これ、謝礼金だ」
「支援金はいただきました」
「ボーナスだ。あっても困らないだろう。君のために使ってくれ。金貨といくつか宝石が入っている。小粒の物にしておいたから扱いやすいだろう。
結婚したい相手が出来たら名前と簡単な素性を手紙で寄越せば調べてやれる」
「ありがとうございます」
「本当にありがとう。助かったわ」
「そろそろ、失礼いたします」
女が帰ると二人は背もたれに身を預けた。
「バレなくて良かった」
「レイナに嫌われたら耐えられないものね」
エルネストはレイナに一目惚れをし、会う度に魅了されていた。
だが、その前レイナに一目惚れをしたのは第二王子妃だった。
第二王子は国王に、レイナをエルネストの婚約者にと推薦していた。
国王はシャルム家に婚約の打診をしたが、まさか妾の子を回してくるとは思わなかった。
第二王子妃はガッカリしたが、シャルム家に行ったエルネストが一目惚れをして帰ってきたのだ。
公爵令息とうまくいっていないと聞いていたのに怪我をして公爵家に囲われた時には気が気じゃなかった。
レイナの純潔を奪われかねなかったから。
その間に第二王子が公爵令息とレイナの婚約解消の計画を立て、役割を果たす令嬢を探し出し、話を持ちかけた。
思った以上にレイナが心に傷を負ってしまったことは誤算だった。
「はぁ、男に生まれたかった。
そうしたら私が結婚してレイナを抱いていろいろな顔を見れたのに。
達する時の顔を見れるのはエルネスト様だけだなんて。
注ぐことができれば支配欲も満たされたわ」
「君が男に生まれたら、私が君と結婚できないし、抱けないから駄目だ」
「貴方だってレイナを一目で気に入ったくせに」
「でも女として抱きたいのはお前だけだ」
「貴方がレイナも抱くと言えば第二妃に迎え入れてもっと親密になれたのに」
「それは悪かった」
「また赤ちゃん見に行こうかな」
「私も行こう」
終
天気がいいので庭園でお茶を飲もうと席につこうとした。
その時、給仕のメイドがナイフを取り出して、王妃に振り翳した。
「ストップ!!」
ナイフを振り上げたままメイドが固まった。
「王妃様!!」
騎士たちがさっと王妃を退避させようとした。
「待って!」
「王妃様、危険です」
「レイナ、貴女なの?」
「……はい」
「貴女がストップと言えば対象の生き物は止まるのね?」
「人でなくても止まります」
「ギフト……」
「そのようです」
それから大騒ぎになった。
第二王子は、
「レイナ。我が軍に来てくれ。君は逸材だ。大事にすると誓おう」
「兄上!レイナは私のです!
レイナ、怖かったね。大丈夫?どこも怪我してない?」
「レイナ、城の外での勤務以外は美味いものを用意しよう」
「兄上!食べ物で釣らないでください!
レイナ、私といれば朝昼晩毎日美味しいごはんだからね!」
「レイナ、コメというものが食べたいと言っていたな、他にも調味料が欲しいとか」
「兄上に手に入れられるなら私も手に入るからね? レイナ、目をキラキラさせないで」
「緑色の茶も欲しいと聞いたぞ」
「レイナ、こっち見て!あっちは見ちゃダメ! 」
結局、城内に限ることになった。
そこからは、あの我関せずの第二王子が気さくに絡んでくるようになり、その度にエルネストは不機嫌になる。
「レイナ!兄上を見ないで!」
「エル、困らせないで」
「レイナ……」
その後結婚をしてもエルネストは変わらなかった。
「体を繋げれば、少し落ち着くかもしれないわね」
母が領地から王都に来ていると知って会いに来た。
「だからといって嫌なのに繋げてもエルネスト様は喜ばないと思うわ」
「義姉様のような美しい人が相手なら王子でも不安になりますよ」
伯爵家は遠縁から養子を迎えた。
母もしばらく義息子の為にここにいるらしい。
二つ下でアーノルドという逞しい子だ。
筋骨隆々で強面だが、中身は心優しい青年なのだ。キナコと一緒に帰るとデレデレで猫に話しかける。
「キナちゃん!今日も美人ちゃんですね~!」
「アーノルド、キナコは雄だから」
「キナちゃん、泊まって行く?
新しい玩具を買っておいたからね!」
「ニャ~!」
「はぁ~可愛すぎる!」
「アーノルドも猫を飼えば?」
「キナちゃんほど可愛い子はいませんよ」
「仕方ないわね。明日キナコを届けて」
「やった!!キナちゃん~!!」
城に帰ってキナコがいないとちょっとさびしい。
「エル」
「どうしたの」
「一緒にお風呂に入ろう」
バサバサバサーッ
書類の束を落としたエルネストは固まっている。
「聞き間違えたみたいだ」
そう言いながら書類を拾い出した。
「おふろ!」
「っ!! レイナ、それは危険だ。
いくら私でも抑えがきかないよ」
「入ろう」
「……!! レイナ、解禁ってこと!?」
「試さないと分からない」
「でも、してもいいって思ったってこと?」
「……うん」
「準備させよう」
「泡風呂で」
「分かった」
初夜は、大丈夫だった。
浴室で一度エルネストが暴発して恥ずかしがっていたが、それ以外は問題なかった。吐き気もしなかった。
「レイナ」
「ん?」
「私はすごく気持ち良かったけど、レイナは無理してない?」
「してないよ」
「嫌じゃない?」
「嫌ではない」
「気持ちいい?」
「……それほどでも」
「えっ」
「待って、違うから!
快感を拾えるようになるまで、すぐの人もいれば何回かかかる人もいるし、稀に拾えない人もいるの。エルがどうこうじゃないの」
「頑張るよ」
「? うん」
ここで私が“うん”と曖昧に返事をしたのが悪かった。
蜜月に入ってしまったのだ。
月のモノがきて、やっと解放された。
「こんなに籠ってたら怒られるよ」
「大丈夫、宣言してあるから」
「は!?」
「みんな集めて蜜月宣言しておいた」
「みんなって?」
「みんなだよ」
メイドどころか従僕や庭師にも宣言したようだ。恥ずかしい!!
そして月のモノが終わるとまた籠った。
とっくに快感は拾えているのに離してもらえない。
「レイナの分も執務はしているから大丈夫」
「いつ!?」
「レイナが寝ている間にサッとやってるから安心して」
こっそり陛下が様子を伺いに来てくれた時は、
「あいつ、才能を隠していたな!」
「私の分まですみません」
「二人分でも余裕なのだな。レイナ、辛くないか」
「辛くはないですけど疲れます」
「終了させよう」
蜜月禁止令が出された。
だけど毎晩抱かれている。
「蜜月じゃないよ、夫婦の日常だよ」
そして懐妊した。
エルネストは閨をピタッと止めて毎日お腹を摩り、話しかけている。
「パパっていってごらん」
まだ産まれていないのに?
第二王子は、我が子と結婚させられないのが悔しいと嘆いている。
そんな中、産まれたのはミニチュアレイナだ。
「レイナにそっくり!」
「耳の形がエルネストだな」
「あら本当ですわ」
「息子の嫁に」
「兄上、レイナに近寄らないでください」
「なんでだ」
そして医者がゴーサインを出すと夫婦の日常が戻った。
避妊薬が欲しいといったら
「私が飲んでいるから大丈夫だ。しばらくそんな心配はいらない。
愛してるよ、レイナ」
「わ、私も」
「レイナ!」
「ちょっと!今は昼間です!」
「今日はレイナが私に愛を返してくれた記念日だ!籠るぞ」
「ダメ! あっ、」
***第二王子夫妻の視点
「長かった」
「これでレイナに逃げられることはないわね」
「血が近すぎてレイナの子を嫁にもらえないなんて」
「レイナそっくりの美少女になるわ。結婚はできなくてもドロドロに甘やかしましょう」
「ロイは剣を置いて赤ちゃんにベッタリね。ウィリアムは一歳差だから学園で守れるわね」
「殿下、お客様が見えました」
「通してくれ」
「第二王子夫妻にご挨拶申し上げます」
「座ってくれ」
「失礼いたします」
「屋敷を出るのか」
「正妻が二人目を妊娠中ですし、私に手を出しませんし、娘が可愛くないみたいですので」
「娘は置いていくのか」
「どっちでもいいと言われたので、一緒に連れて行きます。
公爵籍から抜く代わりに18歳までの養育費と、家の購入費と手切れ金をまとめてくださるそうです」
「其方には感謝している。好きでもない男に薬を盛って散々抱かれて、身籠って、数年肩身の狭い思いをさせてしまった。なのにしっかり約束を守ってくれた」
「実家に支援金をくださいました。
私はその対価として務めを果たしただけです。
これからは娘と実家の領地で気楽に過ごします。
目的は達成されましたでしょうか」
「勿論よ。婚約を解消して、時間はかかったけど可愛いレイナが手に入って、やっと子を産んだから、もう王家から逃げられないわ」
「お二人に見染められたレイナ様は幸運の持ち主ですわ」
「これ、謝礼金だ」
「支援金はいただきました」
「ボーナスだ。あっても困らないだろう。君のために使ってくれ。金貨といくつか宝石が入っている。小粒の物にしておいたから扱いやすいだろう。
結婚したい相手が出来たら名前と簡単な素性を手紙で寄越せば調べてやれる」
「ありがとうございます」
「本当にありがとう。助かったわ」
「そろそろ、失礼いたします」
女が帰ると二人は背もたれに身を預けた。
「バレなくて良かった」
「レイナに嫌われたら耐えられないものね」
エルネストはレイナに一目惚れをし、会う度に魅了されていた。
だが、その前レイナに一目惚れをしたのは第二王子妃だった。
第二王子は国王に、レイナをエルネストの婚約者にと推薦していた。
国王はシャルム家に婚約の打診をしたが、まさか妾の子を回してくるとは思わなかった。
第二王子妃はガッカリしたが、シャルム家に行ったエルネストが一目惚れをして帰ってきたのだ。
公爵令息とうまくいっていないと聞いていたのに怪我をして公爵家に囲われた時には気が気じゃなかった。
レイナの純潔を奪われかねなかったから。
その間に第二王子が公爵令息とレイナの婚約解消の計画を立て、役割を果たす令嬢を探し出し、話を持ちかけた。
思った以上にレイナが心に傷を負ってしまったことは誤算だった。
「はぁ、男に生まれたかった。
そうしたら私が結婚してレイナを抱いていろいろな顔を見れたのに。
達する時の顔を見れるのはエルネスト様だけだなんて。
注ぐことができれば支配欲も満たされたわ」
「君が男に生まれたら、私が君と結婚できないし、抱けないから駄目だ」
「貴方だってレイナを一目で気に入ったくせに」
「でも女として抱きたいのはお前だけだ」
「貴方がレイナも抱くと言えば第二妃に迎え入れてもっと親密になれたのに」
「それは悪かった」
「また赤ちゃん見に行こうかな」
「私も行こう」
終
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