【完結】見染められた令嬢

ユユ

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怪我から4ヶ月。私はレオナール様と父方の祖父母を訪ねた。

領地のシャルム邸から馬車で15分程の景色のいい場所に住んでいた。

「いらっしゃい」

「疲れただろう。座りなさい」

「彼は私の婚約者です」

「レオナール・フラムです。滞在を許可していただきありがとうございます」

「レイナのお守りなのでしょう?助かりますわ」

「レイナ、先祖を遡りたいということだったな」

「はい。隠された血筋も全て遡りたいのです」

「どうして急に」

「私の色が両親や祖父母と違うからです」

「「……」」

やっぱり心当たりがありそう。

「母がこの地でひとり暮らしている理由はご存知ないのですか?」

「どういうことだ」

お祖父様達は知らない!?

「母が不義の子を産んだと疑いをかけられて別居に至っていると思っています」

「そんな!」

「性格の不一致だと思っていた」

「私の色に心当たりがあるのではないですか」

「レイナは私の母の色なんだ。

私の父と正妻は政略結婚で仲が悪く子も出来なかった。父はいつの間にか愛人を作っていた。正妻は愛人がいても興味がなかった。

だが、愛人が懐妊すると正妻は怒り狂った。

父は正妻が孕まない以上、他の手段で跡取りをどうにかしなくてはならない。
だから父は正妻の両親を説得して出産して落ち着くまで正妻を実家に預けた。

その後産まれたのは父にそっくりな私だ。

愛人の母と私は別の屋敷で囲われ、正妻は戻された。

だが、貴族の妻の役目は跡取りを産むこと。
それができていない正妻に父は選択を迫った。

子を実子として届ける。愛人と子に危害を加えずに秘密を守るなら伯爵夫人のまま屋敷に住んでもいいが、受け入れられないなら離縁しかないと。

正妻は実家の両親を呼んで泣き付いたが、彼らも貴族。叱責して従わせた。

だから私は父と正妻の子として通っているが、産みの母は愛人なのだよ。

優しくて美しい人だった。レイナは母によく似ている。色も同じだ」

「絵姿はありますか」

「あるよ」

「それを見せながら今の話を父にしてもらえませんか」

「そうするつもりだ。まさかそんなことになっているとは思わず、辛い思いをさせてしまった。すまなかった」

「もし、元に戻れなかったら、母を支えていただけますか」

「勿論だ」




翌日、祖父母は私達と一緒に王都に来てくれた。

そして伯爵家で父にお祖父様の産みの母について真実を語った。

私に似た女性とお祖父様のお父様と、幼い頃のお祖父様の肖像画を見せた。

「なんてことだ…私はずっと妻を責め続けてしまった」

父は泣き崩れた。

祖父母も泣いている。

私はレオナール様に抱きしめられている。
あったかい。

「お父様、何故私を捨てなかったのですか。シンシアが産まれたのに」

「私は不貞をしたと思った妻と別れられなかった。大恋愛だった。私の血が入っていなくても愛した人の子を捨てるなんてできなかった。それに子に罪はない。そう思ったからだ。

だがレイナも紛れもなくシャルムの血を引いた私の娘だった。

レイナ…すまなかった」

「許されなくても母への冤罪を解くために母に会いに行って謝ってください」

「勿論そうするよ。すぐにな」


一週間程、祖父母は滞在をして父と一緒に領地へ帰って行った。




長い休暇が終わると学校に復学した。
平日は週2回レオナール様が伯爵家に来て、週末は私が公爵家に行っている。

母は涙を流しながら祖父の話を聞いていた。
父は泣きながら謝ったようだが母に拒絶されたらしい。

“冤罪をかけられて十数年。とても許せないわ。それに浮気をしてレイナと歳の近い子を産ませているじゃない!
できるなら離縁して欲しいわ”

父は絶対離縁したくないと言って本邸に移るよう願い出たようだが、母が拒否した。


父は憔悴して帰ってきた。

まぁ、仕方ないよね。
父はある意味被害者かもしれないけど加害者で、母は完全な被害者だから。


父は母方の祖父母にも謝罪に行って祖母に平手打ちをくらったようだ。




私は母に手紙を書いた。母が追い出されてからレイナがどう生きてきたかを書き綴った。
妾とシンシアのことも。

中身が麗奈だってことは来年の長期休暇に会いに行って話すつもりだ。

“見たくない色かもしれないけど来年会って欲しい”と書いた。

返事は“ひとりにしてごめんなさい。待ってるわ”

父は母からの手紙にソワソワしているが、見せるわけにはいかない。





レオナール様の場合は、本人が気にしてないかもしれないし、何か言い出したら協力しよう。そう思っていたのに。

「レオナール、近々葬儀に参列するからそのつもりでいてくれ」

「どうしたのですか」

「おまえの曽祖母が亡くなったんだ」

「曽祖母様が…」

「お前はそっくりで可愛がられていたからな」

「えっ」

「どうしたレイナ」

「いえ、そっくりだと仰ったのでお会いしたかったなと」

「一緒には無理だな。長く休学したばかりだからな」

「いつかお墓参りに連れて行ってください」

「レイナさんは可愛いわね。レオナールは見る目があるわ」

「大事にするんだぞ」

「はい」


レオナールが不義の子なんてくだらない噂の域だったのね。良かった。
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