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困惑
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【 イザークの視点 】
4週間後の早朝、プリュムとサボデュールの国境に向かうために西側に来ていた。
そこに集まった騎士や兵士達の会話が聞こえて来た。
「お、怪我は治ったんだな」
「天使のようなお妃様達が毎日消毒してくれたからな」
「いいなぁ」
「それに王太子殿下も顔を出して労ってくださるようになって、病室なのに雰囲気が良いんだ」
「王太子殿下が?」
「“未成年の姫が働いているのに労わない馬鹿はいない”と仰っていた」
「言えてる」
リオナードが病室でクリステルと接触していた!?
そんなことは聞いてないぞ!
紅鷲の宮に連絡を取ろうとしたが出発を告げる角笛が低く鳴り響いた。
「将軍、参りましょう」
クソっ!
そのまま出発することになってしまった。
道中、休憩の度にクリステルの話が聞こえてくる。
どうやらクリステル達に看病された騎士や兵士達が何人も混じっているようだ。
「可愛いよな。あんな妹がいたら仕事なんか行かないよ」
「だよな」
「怒ると恐いけど、怒ってる顔は可愛いんだよな」
「あの細くて柔らかい手で一生懸命 包帯を巻いてくれてさ」
「王太子殿下もメロメロだよな」
「甲斐甲斐しく菓子を渡したり花を渡したりしていたしな」
「王妃殿下が茶会に呼んで可愛がっているらしい」
「王妃殿下が?」
「貴族籍の怪我人が家族にクリステル様のことを話して、感動した家族がお礼を言いたいと申し出るけど会うことは叶わないだろう?
だからクリステル様は、全ては国王陛下と王妃殿下の采配だと返事を出すんだ。そうすると、今度は陛下や王妃殿下にお礼状やら贈り物が届くから、茶会に呼んで労っているって近衛から聞いたよ」
「もしかして、その茶会に王太子殿下も現れるのか?」
「当然だろう。王太子妃は呼ばれないって聞いたな」
テント越しで筒抜けの会話に強烈な怒りが湧き立たった。
レイは何故報告しなかった!
翌日は宿に泊まれた。
娼婦を呼んで済ませ 帰した後、何か察した直近の部下ジャメルが部屋に入って来た。
「どうなさいましたか、将軍」
「何でもない」
「顔や態度に出ています。指揮に影響しますから、何か問題があるなら話してください」
仕方なくクリステルのことを話した。
「将軍はクリステル妃が成人しても、夜伽の女達を囲い、クリステル妃とは白い結婚を続けるつもりなのですか?」
「そういう契約だ」
「そんなの、成人したらクリステル妃の判断て覆ることです。このままではフラれますよ」
「何を言い出すんだ」
「子供だとか言い訳しているに過ぎません。将軍はクリステル妃に惹かれているのです。だから紅鷲の宮の離れにいて欲しいし、王太子殿下が近付くのが許せないんですよ」
「まさか。リオナードの方が年齢的にも釣り合っているから最初にリオナードを薦めたのだぞ」
「じゃあ、このまま王太子殿下がクリステル妃を口説き落として、将軍と離縁して王太子殿下と再婚すると言ったら祝ってあげるのですか?」
「そんなことは無理だろう」
「無理じゃありません。兄弟間では無理ですが、甥にかえるのは合法です。条件は純潔です。
つまり、リオナード王太子殿下はクリステル妃を側妃に迎えて子を産ませることができるのです」
は!?
「将軍、そんな顔をするくらいなら潔く自分の気持ちを認めてください。好きにしろなどと言って既に雲行きが怪しいのですから、次にクリステル妃に会ったら優しくして、一緒に過ごす時間を取るのです。誕生日以外にも贈り物をするとか」
「あ、」
「将軍?」
「……」
「まさか、一度も?」
「いや、」
「婚姻時、クリステル妃は14歳10ヶ月。つまりもうすぐ夫に祝ってもらえない3回目の誕生日を離れで迎えることになります」
「いや、忘れてたわけじゃない。最初に離れを任せたポールに、誕生日は好きな物を買ってやれと言ったはずだ」
「それは祝ったことにはなりませんよ。うわぁ…重症だ」
「女の…しかも14歳の欲しい物など分かるか!」
「それこそメイドに聞けばいいじゃないですか」
「一度花束を摘んだことはあったな」
「全然足りませんよ。
次はいつ帰国するんですか?まだ見通しが経っていませんよね。
帰る頃には成人していて、不憫に思った陛下が離縁させて 王太子殿下が娶って孕ませていますよ」
リオナードがクリステルを抱く?純潔の証は俺のためにあるのに?孕ませる!?
いや、そんなことはあるはずがない。
「手は出せないが何度か添い寝したぞ」
「まあ、一応夫ですからね。嫌とは言わないでしょう。はぁ…どうしてそのまま愛を囁かないのですか。口説かなくても褒めたりすれば良いんです。
“可愛い”とか“一緒に寝れて嬉しい”とか。
今回の帰国の間に1度くらいデートに連れて行ってあげましたか?頼みますから“連れて行った”と言ってください」
「……」
「駄目だ……一刻も早く終わらせてクリステル妃の元へ帰りますよ。そうだ、プリュムの町で何か作らせるといいです。ってまさか、本当に花束しか贈ったことがなくて、結婚指輪とかネックレスとか髪留めとか贈ったことがないなんて言わないですよね」
「……」
「私の名は神ではありません。単なる人間のジャメルですからね?奇跡は起こせませんよ」
「……」
「まあ、ルイの気持ちも分かります。きっとクリステル妃を尊敬して主人として仕えているのです。なのに将軍の態度が悪いから、憤りがあったのでしょう。
ルイはクリステル妃主体の行動は報告したようですね。王太子殿下が病室にいらっしゃるのは王太子殿下の行動です。クリステル妃に危険はありません。寧ろ王太子殿下がいらっしゃることで牽制になっていると思います。
王妃殿下だって可愛がっているわけですし、そもそもクリステル妃が可哀想だと第三者に思わせることが問題なのです。
ライバルは王太子殿下だけじゃないと思いますよ」
その夜、夢を見た。3年後に帰国したら、クリステルの腹は大きくなっていて、リオナードに抱きしめられて幸せそうに微笑んでいた。
4週間後の早朝、プリュムとサボデュールの国境に向かうために西側に来ていた。
そこに集まった騎士や兵士達の会話が聞こえて来た。
「お、怪我は治ったんだな」
「天使のようなお妃様達が毎日消毒してくれたからな」
「いいなぁ」
「それに王太子殿下も顔を出して労ってくださるようになって、病室なのに雰囲気が良いんだ」
「王太子殿下が?」
「“未成年の姫が働いているのに労わない馬鹿はいない”と仰っていた」
「言えてる」
リオナードが病室でクリステルと接触していた!?
そんなことは聞いてないぞ!
紅鷲の宮に連絡を取ろうとしたが出発を告げる角笛が低く鳴り響いた。
「将軍、参りましょう」
クソっ!
そのまま出発することになってしまった。
道中、休憩の度にクリステルの話が聞こえてくる。
どうやらクリステル達に看病された騎士や兵士達が何人も混じっているようだ。
「可愛いよな。あんな妹がいたら仕事なんか行かないよ」
「だよな」
「怒ると恐いけど、怒ってる顔は可愛いんだよな」
「あの細くて柔らかい手で一生懸命 包帯を巻いてくれてさ」
「王太子殿下もメロメロだよな」
「甲斐甲斐しく菓子を渡したり花を渡したりしていたしな」
「王妃殿下が茶会に呼んで可愛がっているらしい」
「王妃殿下が?」
「貴族籍の怪我人が家族にクリステル様のことを話して、感動した家族がお礼を言いたいと申し出るけど会うことは叶わないだろう?
だからクリステル様は、全ては国王陛下と王妃殿下の采配だと返事を出すんだ。そうすると、今度は陛下や王妃殿下にお礼状やら贈り物が届くから、茶会に呼んで労っているって近衛から聞いたよ」
「もしかして、その茶会に王太子殿下も現れるのか?」
「当然だろう。王太子妃は呼ばれないって聞いたな」
テント越しで筒抜けの会話に強烈な怒りが湧き立たった。
レイは何故報告しなかった!
翌日は宿に泊まれた。
娼婦を呼んで済ませ 帰した後、何か察した直近の部下ジャメルが部屋に入って来た。
「どうなさいましたか、将軍」
「何でもない」
「顔や態度に出ています。指揮に影響しますから、何か問題があるなら話してください」
仕方なくクリステルのことを話した。
「将軍はクリステル妃が成人しても、夜伽の女達を囲い、クリステル妃とは白い結婚を続けるつもりなのですか?」
「そういう契約だ」
「そんなの、成人したらクリステル妃の判断て覆ることです。このままではフラれますよ」
「何を言い出すんだ」
「子供だとか言い訳しているに過ぎません。将軍はクリステル妃に惹かれているのです。だから紅鷲の宮の離れにいて欲しいし、王太子殿下が近付くのが許せないんですよ」
「まさか。リオナードの方が年齢的にも釣り合っているから最初にリオナードを薦めたのだぞ」
「じゃあ、このまま王太子殿下がクリステル妃を口説き落として、将軍と離縁して王太子殿下と再婚すると言ったら祝ってあげるのですか?」
「そんなことは無理だろう」
「無理じゃありません。兄弟間では無理ですが、甥にかえるのは合法です。条件は純潔です。
つまり、リオナード王太子殿下はクリステル妃を側妃に迎えて子を産ませることができるのです」
は!?
「将軍、そんな顔をするくらいなら潔く自分の気持ちを認めてください。好きにしろなどと言って既に雲行きが怪しいのですから、次にクリステル妃に会ったら優しくして、一緒に過ごす時間を取るのです。誕生日以外にも贈り物をするとか」
「あ、」
「将軍?」
「……」
「まさか、一度も?」
「いや、」
「婚姻時、クリステル妃は14歳10ヶ月。つまりもうすぐ夫に祝ってもらえない3回目の誕生日を離れで迎えることになります」
「いや、忘れてたわけじゃない。最初に離れを任せたポールに、誕生日は好きな物を買ってやれと言ったはずだ」
「それは祝ったことにはなりませんよ。うわぁ…重症だ」
「女の…しかも14歳の欲しい物など分かるか!」
「それこそメイドに聞けばいいじゃないですか」
「一度花束を摘んだことはあったな」
「全然足りませんよ。
次はいつ帰国するんですか?まだ見通しが経っていませんよね。
帰る頃には成人していて、不憫に思った陛下が離縁させて 王太子殿下が娶って孕ませていますよ」
リオナードがクリステルを抱く?純潔の証は俺のためにあるのに?孕ませる!?
いや、そんなことはあるはずがない。
「手は出せないが何度か添い寝したぞ」
「まあ、一応夫ですからね。嫌とは言わないでしょう。はぁ…どうしてそのまま愛を囁かないのですか。口説かなくても褒めたりすれば良いんです。
“可愛い”とか“一緒に寝れて嬉しい”とか。
今回の帰国の間に1度くらいデートに連れて行ってあげましたか?頼みますから“連れて行った”と言ってください」
「……」
「駄目だ……一刻も早く終わらせてクリステル妃の元へ帰りますよ。そうだ、プリュムの町で何か作らせるといいです。ってまさか、本当に花束しか贈ったことがなくて、結婚指輪とかネックレスとか髪留めとか贈ったことがないなんて言わないですよね」
「……」
「私の名は神ではありません。単なる人間のジャメルですからね?奇跡は起こせませんよ」
「……」
「まあ、ルイの気持ちも分かります。きっとクリステル妃を尊敬して主人として仕えているのです。なのに将軍の態度が悪いから、憤りがあったのでしょう。
ルイはクリステル妃主体の行動は報告したようですね。王太子殿下が病室にいらっしゃるのは王太子殿下の行動です。クリステル妃に危険はありません。寧ろ王太子殿下がいらっしゃることで牽制になっていると思います。
王妃殿下だって可愛がっているわけですし、そもそもクリステル妃が可哀想だと第三者に思わせることが問題なのです。
ライバルは王太子殿下だけじゃないと思いますよ」
その夜、夢を見た。3年後に帰国したら、クリステルの腹は大きくなっていて、リオナードに抱きしめられて幸せそうに微笑んでいた。
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