2 / 19
訳ありの王弟
しおりを挟む
【 イザークの視点 】
客室に案内され、装備を解き 椅子に座った。
「お食事の準備をいたします」
「頼む」
食事が運ばれ毒味後に食べた。
そして湯浴みを済ませてベッドに横になった。
14歳か…参ったな。
我がグリフ王国 アーサー王の代理でプリュム王国へ謝罪と今後の話し合いに来た。
姫を輿入れさせろと言われていた。確か19歳の未婚の姫がいると聞いていたのに14歳だという。
資料の生まれ年の下一桁の3が、本当は8だったということだろう。
グリフ王国は成人は17歳だが貴族以上の婚姻は0歳から可能だ。ただし17歳以上に達した女でないと初夜は迎えられない。
プリュム王国の成人は19歳。平民も貴族も19歳にならないと婚姻できない。
アーサー王に嫁ぐには歳が離れているので 王太子リオナードの側妃に収まるのが一番良いだろう。歳も近いし、リオナードは王妃似で美男子だしな。
翌朝、ガルム王に呼ばれ案内について行くと、王の他に王妃もいた。少し目が赤い。まだ子供の姫を他国へ出さなくてはならない悲しみから泣いていたのだろう。
「イザーク将軍。こちらの婚姻契約書に署名をして欲しい。この条件ならば応じよう」
渡された婚姻契約書にはクリステルと書いてあり、夫の名前は“イザーク”と書いてあった。
は? 俺?
昨日の話を聞いていなかったのか?
先王のお手付きで生まれた疎ましい存在で、妻を娶らずに愛してもいない女達を囲い、夜伽の相手をさせている男だぞ!?
“イザークの正妻とする
身体的な関係を持たない
学園卒業相当の知識をつけさせる
心身ともに健康にすごさせる
心身への暴力を禁ずる
予算を与え不自由をさせない
離縁可能な日が来たら速やかにプリュムへ返す”
なるほど…白い結婚を狙ったのか。
「リオナード王太子の側妃の方が良いのでは?
俺はお手付きの子だし、女も囲っているのだが?」
「王太子では初夜は必ず迎えることになるし、男児が産まれてしまえば正妃と、もしくは異母兄弟で争うことになるかもしれない。危険が伴うはずだ。
イザーク将軍が責任を持ってクリステルを守って欲しい」
「しかし、」
「クリステルは承諾したが?」
「……失礼した。署名しよう」
14歳の少女に決断させたら、俺は腹を括らねばならない。
署名をすると、国王は合図を送った。
ドアが開くとドレスを着た少女が入室した。
「お初にお目にかかります。グリフ王国の紅き鷲 イザーク将軍にクリステルがご挨拶を申し上げます」
小さいな…14歳の少女はこんなに小さかったか?
「イザークだ。姫の夫となった。顔を上げてくれ」
顔を上げた姫の容姿に驚いた。
艶やかな栗色の髪はフワリと揺れ、手付かずの美しい泉のような瞳は光が当たらなくとも宝石のようにキラキラと輝く。虹彩は外側は青、内側に向かって水色をしている。
ああ、目を伏せないでくれ。長い睫毛が瞳を隠してしまう。
少女の前に立ち 跪き、手の甲に唇を付けた。
柔らかくて小さな手だ。こんなに可愛い爪が付いてるものなのか。
白い肌から仄かに香る甘い匂いが鼻腔を捉え思考が薄れる。
「将軍?」
急いで立ち上がり、姫を椅子に座らせた。
「姫には好きな男はいなかったのだろうか」
「おりません」
「成長していつか恋に落ちるのだと思っていましたわ。長女は政略結婚でしたが、クリステルは恋愛結婚でもいいと思っておりましたの」
「……今から我々だけで式をあげないか」
「式ですか?」
「両親の前で花嫁にしたい。白いドレスはないだろうか」
3時間後、城内の祭壇の前で夫婦の誓いを立てた。
王妃と第三王女は泣いていて、王太子は険しい顔をしていた。
身を屈め 誓いの口付けをした。
小さな唇はゼリーのように柔らかかった。
「お気遣いいただきありがとうございます」
式を挙げたことに礼を言われた。
「家族から離してしまい申し訳ない」
「これも王女の務めです。どうかプリュムをお願いいたします」
翌日、姫を馬車に乗せてプリュムを出発した。
念のため、王太子の子供の頃の服を着せた。髪をボサボサにしてもらい、長い髪はひとつに結い、瞳は隠れるようにした。
まだ戦後間もない。サボデュールの残党や刺客、野盗の襲撃に備えてのことだ。
途中、ガルム王が手配した宿に泊まり、そこで姫は専属メイドを帰した。
数人連れて行って良いと言ったが、1人だけ国内の宿泊のために連れてきて、翌日の身支度をさせると解放した。
もうすぐ国境というところで襲撃を受けた。かなりの数で少し手間取った。サボデュールの兵士が野盗に転職したようだ。
「将軍!姫が!」
馬車を守らせていた兵士1人が刺され、もう1人は応戦中。敵兵が馬車の窓を破り内鍵を外しドアを開けた。
ザシュッ
ナイフに持ち替え 後ろから敵兵の喉を掻き切って車外に捨てた。
またドアを閉めて剣を握り討伐した。
「全部か」
「はい、逃げた者もいますが全部です」
「負傷者は」
「1名死亡、軽症多数、重症3名です」
「国境はもうすぐだ。死者も移動させよう。先ずは重症者の応急処置をしなくては」
「将軍…」
側近のバジルが指差す方を見た。
その先は馬車で、姫が馬車から出て負傷者に寄り添っていた。
「うぐぁっ!」
姫は 傷口に手を入れた後、馬車の荷物から鞄を取り出し、酒瓶を手にした。
客室に案内され、装備を解き 椅子に座った。
「お食事の準備をいたします」
「頼む」
食事が運ばれ毒味後に食べた。
そして湯浴みを済ませてベッドに横になった。
14歳か…参ったな。
我がグリフ王国 アーサー王の代理でプリュム王国へ謝罪と今後の話し合いに来た。
姫を輿入れさせろと言われていた。確か19歳の未婚の姫がいると聞いていたのに14歳だという。
資料の生まれ年の下一桁の3が、本当は8だったということだろう。
グリフ王国は成人は17歳だが貴族以上の婚姻は0歳から可能だ。ただし17歳以上に達した女でないと初夜は迎えられない。
プリュム王国の成人は19歳。平民も貴族も19歳にならないと婚姻できない。
アーサー王に嫁ぐには歳が離れているので 王太子リオナードの側妃に収まるのが一番良いだろう。歳も近いし、リオナードは王妃似で美男子だしな。
翌朝、ガルム王に呼ばれ案内について行くと、王の他に王妃もいた。少し目が赤い。まだ子供の姫を他国へ出さなくてはならない悲しみから泣いていたのだろう。
「イザーク将軍。こちらの婚姻契約書に署名をして欲しい。この条件ならば応じよう」
渡された婚姻契約書にはクリステルと書いてあり、夫の名前は“イザーク”と書いてあった。
は? 俺?
昨日の話を聞いていなかったのか?
先王のお手付きで生まれた疎ましい存在で、妻を娶らずに愛してもいない女達を囲い、夜伽の相手をさせている男だぞ!?
“イザークの正妻とする
身体的な関係を持たない
学園卒業相当の知識をつけさせる
心身ともに健康にすごさせる
心身への暴力を禁ずる
予算を与え不自由をさせない
離縁可能な日が来たら速やかにプリュムへ返す”
なるほど…白い結婚を狙ったのか。
「リオナード王太子の側妃の方が良いのでは?
俺はお手付きの子だし、女も囲っているのだが?」
「王太子では初夜は必ず迎えることになるし、男児が産まれてしまえば正妃と、もしくは異母兄弟で争うことになるかもしれない。危険が伴うはずだ。
イザーク将軍が責任を持ってクリステルを守って欲しい」
「しかし、」
「クリステルは承諾したが?」
「……失礼した。署名しよう」
14歳の少女に決断させたら、俺は腹を括らねばならない。
署名をすると、国王は合図を送った。
ドアが開くとドレスを着た少女が入室した。
「お初にお目にかかります。グリフ王国の紅き鷲 イザーク将軍にクリステルがご挨拶を申し上げます」
小さいな…14歳の少女はこんなに小さかったか?
「イザークだ。姫の夫となった。顔を上げてくれ」
顔を上げた姫の容姿に驚いた。
艶やかな栗色の髪はフワリと揺れ、手付かずの美しい泉のような瞳は光が当たらなくとも宝石のようにキラキラと輝く。虹彩は外側は青、内側に向かって水色をしている。
ああ、目を伏せないでくれ。長い睫毛が瞳を隠してしまう。
少女の前に立ち 跪き、手の甲に唇を付けた。
柔らかくて小さな手だ。こんなに可愛い爪が付いてるものなのか。
白い肌から仄かに香る甘い匂いが鼻腔を捉え思考が薄れる。
「将軍?」
急いで立ち上がり、姫を椅子に座らせた。
「姫には好きな男はいなかったのだろうか」
「おりません」
「成長していつか恋に落ちるのだと思っていましたわ。長女は政略結婚でしたが、クリステルは恋愛結婚でもいいと思っておりましたの」
「……今から我々だけで式をあげないか」
「式ですか?」
「両親の前で花嫁にしたい。白いドレスはないだろうか」
3時間後、城内の祭壇の前で夫婦の誓いを立てた。
王妃と第三王女は泣いていて、王太子は険しい顔をしていた。
身を屈め 誓いの口付けをした。
小さな唇はゼリーのように柔らかかった。
「お気遣いいただきありがとうございます」
式を挙げたことに礼を言われた。
「家族から離してしまい申し訳ない」
「これも王女の務めです。どうかプリュムをお願いいたします」
翌日、姫を馬車に乗せてプリュムを出発した。
念のため、王太子の子供の頃の服を着せた。髪をボサボサにしてもらい、長い髪はひとつに結い、瞳は隠れるようにした。
まだ戦後間もない。サボデュールの残党や刺客、野盗の襲撃に備えてのことだ。
途中、ガルム王が手配した宿に泊まり、そこで姫は専属メイドを帰した。
数人連れて行って良いと言ったが、1人だけ国内の宿泊のために連れてきて、翌日の身支度をさせると解放した。
もうすぐ国境というところで襲撃を受けた。かなりの数で少し手間取った。サボデュールの兵士が野盗に転職したようだ。
「将軍!姫が!」
馬車を守らせていた兵士1人が刺され、もう1人は応戦中。敵兵が馬車の窓を破り内鍵を外しドアを開けた。
ザシュッ
ナイフに持ち替え 後ろから敵兵の喉を掻き切って車外に捨てた。
またドアを閉めて剣を握り討伐した。
「全部か」
「はい、逃げた者もいますが全部です」
「負傷者は」
「1名死亡、軽症多数、重症3名です」
「国境はもうすぐだ。死者も移動させよう。先ずは重症者の応急処置をしなくては」
「将軍…」
側近のバジルが指差す方を見た。
その先は馬車で、姫が馬車から出て負傷者に寄り添っていた。
「うぐぁっ!」
姫は 傷口に手を入れた後、馬車の荷物から鞄を取り出し、酒瓶を手にした。
1,289
お気に入りに追加
1,477
あなたにおすすめの小説
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
(完結)お姉様、私を捨てるの?
青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・
中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる