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サヴァン子爵/接近
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【 エリックの視点 】
一週間後、コゼット嬢の婚約者の調査報告があった。
『ご報告を申し上げます。
フォリー公爵家の三兄弟の内の長男がダニエル殿です。
コゼット伯爵令嬢より二歳上で現在は跡継ぎ教育を始めました。
成績はあまり良くありません。
そして女性との関係もおありです。
ほとんどは一夜限りのお相手です。
コゼット嬢をパートナーとしてエスコートしたのはデビュータントのみ。後は別行動をとっております。
公爵も出席なさっているパーティの時だけコゼット嬢とダンスを踊るようです。
陰では婚約を嘆いていて、ブサイクだのブタだのと口走っているようです』
馬鹿だな。
『婚約はどうして結ばれた?』
『ダニエル殿の一目惚れです』
一目惚れ? なのに陰口を?
『伯爵家はなぜ受けたのか?』
『ダニエル殿が婚約したいと言うと伯爵家は断りました。
すると首にナイフを突き付けて、婚約してくれないなら死んでやると騒ぎを起こしたようで。
公爵が一生懸命に頼み込み、成立したようです』
『熱がさめたのか』
『婚約騒動の後、本当の意味で高熱を出し、二週間後に落ち着いた時には、その日の記憶がほぼ消えてしまったようです』
一目惚れした時の令嬢の姿を忘れてしまったのだな。
興味が湧いて、週末 令嬢がいる時間に孤児院へ出向いた。
ダンスの時間だったようだ。施設の人が説明してくれた。
『コゼット様のドレスですよ。子供の頃のドレスを持ってきてくださってダンスの練習させるのです。
子供達も難易度が違うと体感できて有り難いです』
隣の部屋ではメイドが令嬢の世話の仕方を教えていた。
『そうです。髪は少しずつとかしましょう。
令嬢方は髪が長いので絡まることもございます。
いきなり櫛やブラシを入れては引っ掛かり 痛みを与えてしまいます。それが原因で罰を与える方もいらっしゃいますので、自身を守るためにも丁寧にしましょう』
授業が終わると施設長が紹介してくれた。
『コゼット様、こちらはサヴァン子爵家のご令息のエリック様です』
『ブラウニー嬢、エリック・サヴァンと申します。
お見知り置きを』
その後、話をすると心の綺麗な令嬢だと感じた。
あっという間に惹かれてしまった。
孤児達も平民と貴族という垣根なく懐いている。
『サヴァン様はどうしてこちらに?』
『寄付をしに参りました』
『子供達の未来を繋いでくださりありがとうございます』
令嬢がお礼を述べた。まるで施設長だなとうっかり笑いが漏れてしまった。
『嫌だ 私ったら。私も外部の者なのに』
『いや、失礼。あまりにも可愛らしくて』
『……』
令嬢は目を逸らして頬をほんのり薄桃色に染めた。
毎回行くと怪しまれるので隔週で孤児院を訪れて物資の寄付をした。
『こんなに素敵な書庫を持つ孤児院はここくらいですわ』
大喜びだった。
ある週は浴場を改装した。
『素晴らしいわ!』
赤ちゃんやまだ排泄管理ができない幼児用の小さな浴槽。まだ月のモノが来ていない子用。それ以上の少女と職員が入るための浴槽の三種類を用意してくれた。
『湯が少しでも清潔に保てますね』
やはり幼子は湯を汚しやすい。
次の月はトイレを改装した。
『このおトイレ可愛いですわ』
幼児の体に合わせた小さな便器。掴まるところもあり、壁には 草原や青空や花や動物を描いた。
トイレを怖がる子も喜んで使った。
『それは何?』
『オムツを卒業した子にお祝いのぬいぐるみを作っているのです』
『クマか』
『…ネコです』
ちょっと拗ねる顔も可愛い。
そうやってコゼット嬢と時間を過ごすようになって一年後に友人のパーティで嫌な話を聞いた。
『フォリー公爵家の長男が愛人を常に伴わせているんだが、命知らずだな』
『せめて表に出すなよ』
『王太子夫妻がお怒りになるだろうな』
『……』
コゼット嬢の婚約者が出席する夜会を調べて見に行った。
相手は男爵家の令嬢だという。
いかにも無垢な害無しという雰囲気を令息に見せているが、王太子妃の妹を婚約者に持つ次期公爵と腕を組んで堂々と貴族達の前に顔を出す様を見ると、腹黒さがわかる。もしくは厚顔無恥か。
こんな二人にコゼット嬢が踏み躙られるのは耐え難かった。
一週間後、コゼット嬢の婚約者の調査報告があった。
『ご報告を申し上げます。
フォリー公爵家の三兄弟の内の長男がダニエル殿です。
コゼット伯爵令嬢より二歳上で現在は跡継ぎ教育を始めました。
成績はあまり良くありません。
そして女性との関係もおありです。
ほとんどは一夜限りのお相手です。
コゼット嬢をパートナーとしてエスコートしたのはデビュータントのみ。後は別行動をとっております。
公爵も出席なさっているパーティの時だけコゼット嬢とダンスを踊るようです。
陰では婚約を嘆いていて、ブサイクだのブタだのと口走っているようです』
馬鹿だな。
『婚約はどうして結ばれた?』
『ダニエル殿の一目惚れです』
一目惚れ? なのに陰口を?
『伯爵家はなぜ受けたのか?』
『ダニエル殿が婚約したいと言うと伯爵家は断りました。
すると首にナイフを突き付けて、婚約してくれないなら死んでやると騒ぎを起こしたようで。
公爵が一生懸命に頼み込み、成立したようです』
『熱がさめたのか』
『婚約騒動の後、本当の意味で高熱を出し、二週間後に落ち着いた時には、その日の記憶がほぼ消えてしまったようです』
一目惚れした時の令嬢の姿を忘れてしまったのだな。
興味が湧いて、週末 令嬢がいる時間に孤児院へ出向いた。
ダンスの時間だったようだ。施設の人が説明してくれた。
『コゼット様のドレスですよ。子供の頃のドレスを持ってきてくださってダンスの練習させるのです。
子供達も難易度が違うと体感できて有り難いです』
隣の部屋ではメイドが令嬢の世話の仕方を教えていた。
『そうです。髪は少しずつとかしましょう。
令嬢方は髪が長いので絡まることもございます。
いきなり櫛やブラシを入れては引っ掛かり 痛みを与えてしまいます。それが原因で罰を与える方もいらっしゃいますので、自身を守るためにも丁寧にしましょう』
授業が終わると施設長が紹介してくれた。
『コゼット様、こちらはサヴァン子爵家のご令息のエリック様です』
『ブラウニー嬢、エリック・サヴァンと申します。
お見知り置きを』
その後、話をすると心の綺麗な令嬢だと感じた。
あっという間に惹かれてしまった。
孤児達も平民と貴族という垣根なく懐いている。
『サヴァン様はどうしてこちらに?』
『寄付をしに参りました』
『子供達の未来を繋いでくださりありがとうございます』
令嬢がお礼を述べた。まるで施設長だなとうっかり笑いが漏れてしまった。
『嫌だ 私ったら。私も外部の者なのに』
『いや、失礼。あまりにも可愛らしくて』
『……』
令嬢は目を逸らして頬をほんのり薄桃色に染めた。
毎回行くと怪しまれるので隔週で孤児院を訪れて物資の寄付をした。
『こんなに素敵な書庫を持つ孤児院はここくらいですわ』
大喜びだった。
ある週は浴場を改装した。
『素晴らしいわ!』
赤ちゃんやまだ排泄管理ができない幼児用の小さな浴槽。まだ月のモノが来ていない子用。それ以上の少女と職員が入るための浴槽の三種類を用意してくれた。
『湯が少しでも清潔に保てますね』
やはり幼子は湯を汚しやすい。
次の月はトイレを改装した。
『このおトイレ可愛いですわ』
幼児の体に合わせた小さな便器。掴まるところもあり、壁には 草原や青空や花や動物を描いた。
トイレを怖がる子も喜んで使った。
『それは何?』
『オムツを卒業した子にお祝いのぬいぐるみを作っているのです』
『クマか』
『…ネコです』
ちょっと拗ねる顔も可愛い。
そうやってコゼット嬢と時間を過ごすようになって一年後に友人のパーティで嫌な話を聞いた。
『フォリー公爵家の長男が愛人を常に伴わせているんだが、命知らずだな』
『せめて表に出すなよ』
『王太子夫妻がお怒りになるだろうな』
『……』
コゼット嬢の婚約者が出席する夜会を調べて見に行った。
相手は男爵家の令嬢だという。
いかにも無垢な害無しという雰囲気を令息に見せているが、王太子妃の妹を婚約者に持つ次期公爵と腕を組んで堂々と貴族達の前に顔を出す様を見ると、腹黒さがわかる。もしくは厚顔無恥か。
こんな二人にコゼット嬢が踏み躙られるのは耐え難かった。
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