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ダニエル/求婚への旅
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【 ダニエルの転覆 】
翌日の昼前、私は荷造りと身支度をしていた。
ミリアに求婚しに行くためだ。
現在ミリアは親類の屋敷に滞在している。
一緒に男爵領へ向かう予定だ。
ノックの後に執事の声がした。
「ダニエル様、旦那様がお呼びです」
「今支度中なんだ」
暫く不在にすると言わないとな。
「いえ、今すぐでございます」
仕方ない。
そのまま連れてこられたのはエントランスだった。
「アダム、カーラ。残りの荷造りを頼む」
「「かしこまりました」」
父上が執事のアダムとメイドのカーラに指示をした。
荷造り?
更に次男のジョゼフと三男のカルヴィンがいた。
母上はいない。
「どうしたのですか、父上」
「コゼット嬢と婚約を破棄したのだな」
「ご存知でしたか」
「……」
「もっと早く破棄すれば良かったのです。
私はミリアを妻にします」
「ミリアとは、トゥローペル男爵家の長女だな?」
「はい。四姉妹の長女です」
「長旅か」
「はい。男爵領に行って求婚して参ります」
「これは男爵宛の手紙だ。必ず男爵が開封するように。そして銀貨一袋と金貨20枚入ってる。足しにしてくれ」
旅費の足しということか?
手紙は二通あった。
少し待つとアダムとカーラが戻ってきた。
大きめの旅行鞄が一つ。そして扉を開けた。
平民が使うような乗合馬車が待っていた。
「往復代だ。宿代や食事代も入ってる。帰りは連れて戻らないように」
「かしこまりました」
父上が御者に袋を手渡しながら指示を出した。
下男が荷物を馬車に積んだ。
「あの、この馬車は誰が?」
「乗れ」
「え?」
「いいから乗れ」
父上の圧に負けて馬車のドアを開けると中にはミリアが座っていた。
「え?」
乗るとドアを閉められた。
「元気でな」
そういうと、父上は別の手紙を手渡してきた。
「出してくれ」
「はっ!」
馬車が出発した。
「父上! 父上っ!!」
チラッと見ると不機嫌そうなミリアがどういうことかと聞いてきた。
「トゥローペル邸に向かうからと、朝から荷物を纏めさせられましたの。どういうことですか!?」
「男爵に求婚しなくちゃいけないだろう」
「で、何で平民の辻馬車を貸切に?」
「さ、さあ」
手元にあるのは封筒に“ダニエルへ” と書いてある父上から手渡された手紙だった。
「そうだ。昼食を王都に出る前にとらないと」
「昼食を預かりました」
ミリアが紙袋を持っていた。
「でも、」
レストランで食べたいので止まれと指示を出すが御者は無視した。
郊外で一度休憩の為に停車すると抗議をした。
「依頼主の公爵様から王都内で止めるなとの命令を受けておりますので」
「……」
「飲み物も宿に着くまで口を濡らす程度でお願いします。休憩が多くなると、宿まで辿り着けず野宿となりますのでお気を付けください」
飲み物は気を付けたが馬車の座席が木の板で、痛くて耐えられず休憩をはさんだので野宿となった。
3日目の夜にやっと宿をとれた。
そこで手紙の封を開けた。
翌日の昼前、私は荷造りと身支度をしていた。
ミリアに求婚しに行くためだ。
現在ミリアは親類の屋敷に滞在している。
一緒に男爵領へ向かう予定だ。
ノックの後に執事の声がした。
「ダニエル様、旦那様がお呼びです」
「今支度中なんだ」
暫く不在にすると言わないとな。
「いえ、今すぐでございます」
仕方ない。
そのまま連れてこられたのはエントランスだった。
「アダム、カーラ。残りの荷造りを頼む」
「「かしこまりました」」
父上が執事のアダムとメイドのカーラに指示をした。
荷造り?
更に次男のジョゼフと三男のカルヴィンがいた。
母上はいない。
「どうしたのですか、父上」
「コゼット嬢と婚約を破棄したのだな」
「ご存知でしたか」
「……」
「もっと早く破棄すれば良かったのです。
私はミリアを妻にします」
「ミリアとは、トゥローペル男爵家の長女だな?」
「はい。四姉妹の長女です」
「長旅か」
「はい。男爵領に行って求婚して参ります」
「これは男爵宛の手紙だ。必ず男爵が開封するように。そして銀貨一袋と金貨20枚入ってる。足しにしてくれ」
旅費の足しということか?
手紙は二通あった。
少し待つとアダムとカーラが戻ってきた。
大きめの旅行鞄が一つ。そして扉を開けた。
平民が使うような乗合馬車が待っていた。
「往復代だ。宿代や食事代も入ってる。帰りは連れて戻らないように」
「かしこまりました」
父上が御者に袋を手渡しながら指示を出した。
下男が荷物を馬車に積んだ。
「あの、この馬車は誰が?」
「乗れ」
「え?」
「いいから乗れ」
父上の圧に負けて馬車のドアを開けると中にはミリアが座っていた。
「え?」
乗るとドアを閉められた。
「元気でな」
そういうと、父上は別の手紙を手渡してきた。
「出してくれ」
「はっ!」
馬車が出発した。
「父上! 父上っ!!」
チラッと見ると不機嫌そうなミリアがどういうことかと聞いてきた。
「トゥローペル邸に向かうからと、朝から荷物を纏めさせられましたの。どういうことですか!?」
「男爵に求婚しなくちゃいけないだろう」
「で、何で平民の辻馬車を貸切に?」
「さ、さあ」
手元にあるのは封筒に“ダニエルへ” と書いてある父上から手渡された手紙だった。
「そうだ。昼食を王都に出る前にとらないと」
「昼食を預かりました」
ミリアが紙袋を持っていた。
「でも、」
レストランで食べたいので止まれと指示を出すが御者は無視した。
郊外で一度休憩の為に停車すると抗議をした。
「依頼主の公爵様から王都内で止めるなとの命令を受けておりますので」
「……」
「飲み物も宿に着くまで口を濡らす程度でお願いします。休憩が多くなると、宿まで辿り着けず野宿となりますのでお気を付けください」
飲み物は気を付けたが馬車の座席が木の板で、痛くて耐えられず休憩をはさんだので野宿となった。
3日目の夜にやっと宿をとれた。
そこで手紙の封を開けた。
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