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五国統一
中央国 フォルス
しおりを挟む中央国 フォルス王国の王城にフロワの騎士達が謁見を求めて門の前にいた。
「陛下、フロワ王国より遣いが来ております」
「氷魔法の国か。人数は」
「4名です。ひとりは子供です」
「子供?」
「その子供がリーダーのようです」
「子供だけ通しては何を言われるかわからん。4人とも通せ」
「はっ!」
1時間経ち、謁見が叶った。
「面を上げて名を名乗り要件を話せ」
「フロワ国王より書簡をお持ちしました。
国王直属部隊の隊長ノア・ヒートと申します」
側近が書簡を受け取りフォルス国王に渡した。
「本気なのか」
「はい」
「何故其方を寄越した」
「敬意を払った結果です」
「子供を送ることがか」
「武力のフォルス王国には力で応じます。
私はフロワ最強なので」
「4人を殺すことで返事としよう」
「その返答に間違いはないか?」
「そんな口を叩いた事を後悔させてやる」
広い謁見の間にゾロゾロと剣を抜いた騎士達が姿を現した。
ノアは部屋が石造りである事を確認して三人に合図を送る。
まず、国王の手足を凍らせて側近達の足を凍らせた。
エイダンが氷の矢を四方に放ち大勢が倒れた。命中率を恐ろしく上げたエイダンの氷の矢は額を貫いていた。
射抜かれた騎士の後ろから出てきた騎士達をロイクが氷剣で斬り倒す。残った数人は氷矢で射抜いた。
ガブリエルが側近の一人に近付くと手を当てて魔法を発動した。
側近の凍結を解くと倒れ込み苦しむ。
別の側近にも同じようにした。
「何をしたのだ!」
「こっちは肺を凍らせた。そっちは脳を凍らせた。
ノア様」
「狼煙を上げろ」
バルコニーから狼煙を上げると遠くで狼煙が上がった。
開戦の合図だった。
謁見の間には廊下に続く大きな扉が一つしかない。後は後方に国王が使う出入口だ。
どちらも開かないように塞いだ。
狼煙で事態を知った兵達が扉の外に押し寄せていた。
「バルコニーから側近を落として」
側近を落とすと次々と兵が外に集結していた。その間に登ろうと掛けられた縄を焼き切り、梯子を振り落とした。
密集しきった所でノアが魔法を放つ。
「黒炎」
焼死体の山は後片付けが大変だからと灰にした。人が焼ける臭いが城内に立ち込める。
恐らく王都周辺にも風に乗って臭いが届くだろう。
外に散った兵や退役兵など戦える者は武器を手に取って向かってくるはずだ。
潜伏部隊が使用人が使う門を突破して笛を鳴らす。
「扉を開けろ」
大扉の支えを取ると兵が傾れ込んでくるが通路という有限の幅がある為一気にとはいかない。その間に手前から片付けて行き、死体で進行が鈍くなった所でノアが唱える。
「炎息」
廊下を埋め尽くす兵に超高温の風が襲った。
顔を焼かれた兵達は目は見えず喉から気管を通り熱風を吸い込んだので呼吸もままならず
苦しみ生き絶えた。それを繰り返すともう兵が通れる隙間は無くなった。
「逃げないな」
根性のある男達に感心するが、それは長期戦を意味していた。投降しないということだ。
多分、国内の兵や退役兵などもそうだろう。
一方、フロワから攻め込んでいるフロワ兵の大群は、抵抗しなければ危害は加えないと言い続けて陥落させていった。
笛が鳴ったので、笛を吹き返してから通路の遺体を灰にした。
すると潜伏部隊が足を踏み入れた。
「ソーサ団長、皆は無事か」
「怪我人はいるが問題ない。
あそこに座っているのが国王だな」
「動けないようにしてある。城が完全に制圧できたら休憩しよう。
仮眠室をいくつか確保して欲しい」
だが、安心して仮眠ができるようになるまでかなりの時間を要した。
正門以外は完全封鎖した。
だがなんとか塀を乗り越えて侵入したり、把握できていない隠し通路から攻め入られたりしていたからだ。
正門の前にはオープンテントを張り、王族を繋いでいる。公開人質だ。
話せないようにしてあるし、アイコンタクトをとる距離ではない。
王族には屈辱だろう。子供の王族だけは檻のある貴族牢に入れた。
ノアは正門の前に立ち、卑怯者と詰る兵達に炎を見せて黙らせた。
「書簡を届けにきた子供の私をフォルスの国王は殺そうとしたのだ。
私達は其方達の主人とは違って武器を向けていない子供を殺そうとしたりしていないぞ。
現に、繋がれた王族の中に子供は居ないだろう?」
門の外の兵達に動揺が走った。
「檻付きの貴族牢には入れたが彼らのように縛りたくないし。だが彷徨われては危ないから仕方ない。
いいベッドも入れてあるし食事も不自由していない。ジュースも茶も菓子も与えているし本が読みたいと言えば与えている。
兄弟姉妹に会いたければ面会させている。
そこの王族達だって、君達が門を突破しようとしなければこんな所に繋がないよ。
最初の要求は従属国だったが、このままでは王族を全て処刑して、フロワの一部として消すしかない。
君達次第だよ。遠くの権力者達と連絡をとってよく話し合ってくれ」
そう言ってノアは城へ戻った。
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