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過去の恋人達と友人
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シーファ夫妻と私はオープンな関係だ。
「それは損をしているわよ。どうしてなのかしら」
膣内への挿入で達したことがないという話をしていたらキャシリーが前のめりに話を続ける。
「前戯ではあるわけでしょう」
「まあ。そうね」
「指では?」
「刺激はあるけど達することは無いわね」
「前戯不十分とかじゃないか?」
「基準が分からないから答えようがないわ」
「だったらレオンスと寝てみたら?元々その気でアリエルを誘ったんだから」
「ちゃんとお付き合いしてからそういう関係になってるの。身体が優先じゃないわ。
それにキャシリーと出会ったんだもの。レオンスとそんな関係には絶対にならないわ」
「かまわないのに」
「ダメなの!」
「キャシリーを会わせるんじゃなかったな」
「今の恋人も駄目なの?」
「いいの。博識でとても素敵な方なの。
とても優しいし不満はないわ」
「今度のうちの夜会は彼と来てよ」
「侯爵も呼んだんでしょう」
「招待状は別々なんだから問題ないし、秘密の関係でもないし構わないわよ」
「分かったわ。サシャ様に予定が無ければ誘ってみるわ」
夫妻と食事を終えて屋敷に帰った。
翌朝、本邸に呼ばれて行くと久しぶりに侯爵の姿を見た。
「シーファ伯爵家の夜会だが、そちらにも送られていると聞いた」
「いただきました」
「そうか。いつの間にそんな関係になったんだ」
「個人的なことですわ」
「……私はメリンダをエスコートする」
「ご自由にどうぞ。他にご用は?」
「特にない」
「では失礼しますわ」
はぁ。使用人を通せばいいだけの話なのに。
別棟に戻りサシャ様に手紙を書いた。
今日はラクロワ侯爵邸に来ている、
実家はお兄様がもうすぐ継ぐ予定だ。
お兄様は7つ上でしっかりした人だ。義姉になったクリスティ様は基本おっとりしてる。
「アリエル、元気だったか」
「はい、お父様」
「辛いことは無い?」
「大丈夫です。お母様」
フェリング侯爵家のこと、ヴォイエットのことを報告した。
「子爵領には行ったのか」
「去年は夏に行ったので今年は春に行ってきました。帳簿も全て問題ありません」
子爵領は母の弟が管理をしてくれている。
身内でも任せっぱなしは良くないと父に言われたので専門家を雇い監査を行う。
健全な運営が成されていればヴォイエット当主の私財としてもらえる分の3割をボーナスとして母の弟に渡している。
新たに採れ出した希少石と麻酔薬の収益は莫大で跳ね上がった3割のボーナスに胃を痛くしていた。
真面目で誠実な素敵な叔父に“叔父様と結婚したかったですわ”と言うと、叔父は“私は生まれ変わっても時を戻しても妻一筋なんだ。、ごめんね”と言いながら優しく微笑む。
思い出しただけでも胸が高鳴るわ。
報告が終わるとお兄様に呼ばれた。
「旦那とは上手くいっているのか」
「契約通りですわ」
「実は旦那の父親が此処にくる」
「此処に?」
「爵位を受け渡す側が存命の場合は3年間は仮だ。
アリエルの旦那は正確には後2年仮侯爵だからな。仮侯爵に不備があれば製造元に警告をしなくてはならない」
「ええ~」
「どうやら愛人が孕まないようだ。
順調なお前に目が向くのだろう」
「また陰口を言っていましたか。ある程度は放置してもいいですわ」
「父上はお前がそう言うから穏便にしているが俺はそのつもりはない」
そう。お兄様の性格は攻撃的な面を持つ。
特に私のこととなると容赦ない。
私が3歳の頃に階段から私を突き落とした令嬢をボコボコにした。比喩ではない。
突き落とした令嬢は兄と同い歳で、お茶会で兄にべったり甘える私が目障りだったようだ。
突き落とされた私は運良く擦り傷と痣で済んだが、元は10歳の令嬢による3歳児への殺人未遂事件だ。
二度と社交には出られない顔になっても令嬢の親は文句は言えなかった。
事件直後、令嬢の怪我が酷すぎるので、殺すつもりで殴ったのか聞かれた兄は“殺すつもりなら担いでルーフバルコニーから落としますよ”と笑って答えた。
この事件は一気に広まり、悪くは言われなかったがロビン・ラクロワを怒らせるなと隅々まで伝わったと言われている。
学園で令息とぶつかって転倒した時に兄にだけには言わないでくれと懇願されたので、
不思議に思って母に聞いたら教えてくれた。
「お兄様」
「そんな顔をしても駄目だ。旦那のやっていることは両家に泥を塗っている」
「はい」
「その後に旦那が何か仕掛けてくるようなら離縁して構わない」
「大丈夫ですわ」
「あと、騎士と付き合ったか?」
「うん?」
「ウォルトって言うブロンドの子爵家次男だ」
「あります」
「あいつは俺の友人のひとりだ。あまり可哀想なことをするな」
「は!? 振られたのは私なんですけど!」
「アリエルには分からないかもしれないが人間の感情は複雑なんだ」
「それじゃ私が人間じゃないみたいじゃないですか」
「ウォルトはお前に本気だった。愛していたんだ。だけどアリエルから愛されていないと感じて試したんだ。別れ話を嫌がってくれることを期待していたそうだ」
「はぁ!?」
「だが、爽やかに微笑んで了承して去ってしまったって」
「既婚で恋人を作っているのです。揉めるわけにもいかないのですからそうするに決まっていますわ」
「恋人同士で愛していたならそうはならない」
「私はウォルト様を好きでしたわ」
「温度差があるんだよ」
「お兄様は誰の味方なのですか!?」
「アリエルだよ」
「……ならいいです」
「それは損をしているわよ。どうしてなのかしら」
膣内への挿入で達したことがないという話をしていたらキャシリーが前のめりに話を続ける。
「前戯ではあるわけでしょう」
「まあ。そうね」
「指では?」
「刺激はあるけど達することは無いわね」
「前戯不十分とかじゃないか?」
「基準が分からないから答えようがないわ」
「だったらレオンスと寝てみたら?元々その気でアリエルを誘ったんだから」
「ちゃんとお付き合いしてからそういう関係になってるの。身体が優先じゃないわ。
それにキャシリーと出会ったんだもの。レオンスとそんな関係には絶対にならないわ」
「かまわないのに」
「ダメなの!」
「キャシリーを会わせるんじゃなかったな」
「今の恋人も駄目なの?」
「いいの。博識でとても素敵な方なの。
とても優しいし不満はないわ」
「今度のうちの夜会は彼と来てよ」
「侯爵も呼んだんでしょう」
「招待状は別々なんだから問題ないし、秘密の関係でもないし構わないわよ」
「分かったわ。サシャ様に予定が無ければ誘ってみるわ」
夫妻と食事を終えて屋敷に帰った。
翌朝、本邸に呼ばれて行くと久しぶりに侯爵の姿を見た。
「シーファ伯爵家の夜会だが、そちらにも送られていると聞いた」
「いただきました」
「そうか。いつの間にそんな関係になったんだ」
「個人的なことですわ」
「……私はメリンダをエスコートする」
「ご自由にどうぞ。他にご用は?」
「特にない」
「では失礼しますわ」
はぁ。使用人を通せばいいだけの話なのに。
別棟に戻りサシャ様に手紙を書いた。
今日はラクロワ侯爵邸に来ている、
実家はお兄様がもうすぐ継ぐ予定だ。
お兄様は7つ上でしっかりした人だ。義姉になったクリスティ様は基本おっとりしてる。
「アリエル、元気だったか」
「はい、お父様」
「辛いことは無い?」
「大丈夫です。お母様」
フェリング侯爵家のこと、ヴォイエットのことを報告した。
「子爵領には行ったのか」
「去年は夏に行ったので今年は春に行ってきました。帳簿も全て問題ありません」
子爵領は母の弟が管理をしてくれている。
身内でも任せっぱなしは良くないと父に言われたので専門家を雇い監査を行う。
健全な運営が成されていればヴォイエット当主の私財としてもらえる分の3割をボーナスとして母の弟に渡している。
新たに採れ出した希少石と麻酔薬の収益は莫大で跳ね上がった3割のボーナスに胃を痛くしていた。
真面目で誠実な素敵な叔父に“叔父様と結婚したかったですわ”と言うと、叔父は“私は生まれ変わっても時を戻しても妻一筋なんだ。、ごめんね”と言いながら優しく微笑む。
思い出しただけでも胸が高鳴るわ。
報告が終わるとお兄様に呼ばれた。
「旦那とは上手くいっているのか」
「契約通りですわ」
「実は旦那の父親が此処にくる」
「此処に?」
「爵位を受け渡す側が存命の場合は3年間は仮だ。
アリエルの旦那は正確には後2年仮侯爵だからな。仮侯爵に不備があれば製造元に警告をしなくてはならない」
「ええ~」
「どうやら愛人が孕まないようだ。
順調なお前に目が向くのだろう」
「また陰口を言っていましたか。ある程度は放置してもいいですわ」
「父上はお前がそう言うから穏便にしているが俺はそのつもりはない」
そう。お兄様の性格は攻撃的な面を持つ。
特に私のこととなると容赦ない。
私が3歳の頃に階段から私を突き落とした令嬢をボコボコにした。比喩ではない。
突き落とした令嬢は兄と同い歳で、お茶会で兄にべったり甘える私が目障りだったようだ。
突き落とされた私は運良く擦り傷と痣で済んだが、元は10歳の令嬢による3歳児への殺人未遂事件だ。
二度と社交には出られない顔になっても令嬢の親は文句は言えなかった。
事件直後、令嬢の怪我が酷すぎるので、殺すつもりで殴ったのか聞かれた兄は“殺すつもりなら担いでルーフバルコニーから落としますよ”と笑って答えた。
この事件は一気に広まり、悪くは言われなかったがロビン・ラクロワを怒らせるなと隅々まで伝わったと言われている。
学園で令息とぶつかって転倒した時に兄にだけには言わないでくれと懇願されたので、
不思議に思って母に聞いたら教えてくれた。
「お兄様」
「そんな顔をしても駄目だ。旦那のやっていることは両家に泥を塗っている」
「はい」
「その後に旦那が何か仕掛けてくるようなら離縁して構わない」
「大丈夫ですわ」
「あと、騎士と付き合ったか?」
「うん?」
「ウォルトって言うブロンドの子爵家次男だ」
「あります」
「あいつは俺の友人のひとりだ。あまり可哀想なことをするな」
「は!? 振られたのは私なんですけど!」
「アリエルには分からないかもしれないが人間の感情は複雑なんだ」
「それじゃ私が人間じゃないみたいじゃないですか」
「ウォルトはお前に本気だった。愛していたんだ。だけどアリエルから愛されていないと感じて試したんだ。別れ話を嫌がってくれることを期待していたそうだ」
「はぁ!?」
「だが、爽やかに微笑んで了承して去ってしまったって」
「既婚で恋人を作っているのです。揉めるわけにもいかないのですからそうするに決まっていますわ」
「恋人同士で愛していたならそうはならない」
「私はウォルト様を好きでしたわ」
「温度差があるんだよ」
「お兄様は誰の味方なのですか!?」
「アリエルだよ」
「……ならいいです」
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