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平穏?
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やっと自由になれた私は変装を止めた。
孤児院へ行くときだけは安全のために変装をした。
クラスのみんなは最初は見慣れない姿に戸惑っていたがすぐ元に戻った。ありがたい。
時折ニコラ殿下の視線を感じる。
彼の側には騎士団長の子息はいなかった。
そのうち、殿下の浮気リストが公になり、相手の令嬢の婚約はほとんど破棄された。
ピット男爵令嬢は自主退学をした。
腹が膨れてきたのと、殿下の寵愛を失ったから。
他にも9人の令嬢が妊娠を理由に自主退学をした。殿下は一気に10人の子の父親になるみたいだ。
王太子殿下がお気の毒だ。
その10人の子には、よっぽど似ていない子が産まれない限り、継承権が発生する。
ある日殿下が数日学園を休んだそうだ。
どうやら、これ以上子孫を残せないよう手術をしたらしい。
そして10人も妃、側妃、妾として迎えられないし、選考も難しい。
恐らくニコラ殿下は平民になるだろうと公爵様は仰った。
今、伯爵家で祝いの晩餐会をしている。
公爵とハミエル様も来てくれた。
公爵様は横領についてと、堕胎薬から妊娠の事実を教えてくださっていた。
「リリアーヌ嬢はこれからどうするんだ」
「何も考えておりません。卒業と孤児院のことだけです」
「縁談が多く来ているらしいけど」
「そうみたいですね」
「公爵、私はこの際、娘は結婚しなくても構わないと思っております」
「私も同じ意見です。リリには長い間犠牲を強いてきたのです。女性にとって大事な時期だったのに。
好きな男でもできれば、身綺麗なら結婚もいいですが、特に現れなければ私が面倒を見ますのでかまいません。
可愛いリリなら大歓迎ですからね」
「兄様ったら」
「では、縁談は断るのだな」
「そうなります。
あの、公爵様。本当にドレスとワンピースをいただいてもよろしいのでしょうか」
「勿論だ。アルゴスがドレスを駄目にしたお詫びだ。それに君はデイジーに素敵なワンピースを贈ってくれただろう。
大喜びでその夜は眠れなかったらしい」
「そうなのですね。
2着とも大事に着ますわ。ありがとうございました」
公爵様達が帰る時間となったので見送りに出た。
すると公爵様が私の前に立った。
ポケットから小さな箱を取り出すと私に渡した。
「公爵様?」
「これはアルゴスが怪我をさせたお詫びだ」
「ドレスをいただきましたので」
「あれは弁償。これは怪我に対するお詫びの気持ちだ。
君のために作ったので受け取って欲しい」
「…はい。ありがとうございます」
「では、また会おう」
「リリアーヌ先生、おやすみなさい」
「ハミエル様、おやすみなさい」
部屋へ戻って箱を開けると普段使いの可愛らしいネックレスとイヤリングだった。
「まさか、あの方からこんな素敵なものをいただける日が来るとは…」
「リリアーヌ」
「ママ」
「話があるの」
「はい」
「それは?」
「公爵様が怪我をさせたお詫びだとだと仰って」
「良かったわね。ちゃんと身につけるのよ」
「…はい」
「リリアーヌ、貴女、デクスター公爵が好きなのね?」
「…」
「もしかして、子供の頃の茶会で、王子を見ていたのではなく、その後ろの公爵を見ていたのね」
「…」
「咎めているのではないわ。貴女の気持ちを大事にしたいの」
「一目惚れです。でも既婚者だと知ったので…すぐ婚約の話もありましたし」
「今も好きなのね」
「はい」
「妻になりたいほど?」
「私などがそんな…」
「貴女の気持ちだけを聞いているの。他のことはどうだっていいわ」
「…お側にいたいです」
「わかったわ。
これから、公爵からのどんな些細な誘いも受けなさい。お茶でもパーティーでもお泊まりでも」
「ママ?」
「贈り物は全て笑顔で受け取りなさい。どんな高価な物でも」
「でも…」
「殿方はドレスもネックレスも、相手の女性の喜ぶ顔を見て満足するものよ。
強請るわけではないのだから、受け取りなさい」
「はい」
「もし、閨への誘いがあったら、素直に受けなさい。
閨の中では恥ずかしいことも言葉にして伝えなさい。喜ばれるわよ。
ハミエル様がいらっしゃるから、跡継ぎの心配はないから子が欲しくて貴女を求めるわけではないと思うから、婚姻までは避妊しなさい。
公爵家のメイドに言うのが恥ずかしければ、公爵に会う日は先に飲んでおきなさい」
「相手になどされないわ」
「それはどうかしら。私にはそうは思えないわ。
いい?公爵が貴女に手を出すときは勇気がいるはずよ。身持ちのかたい方のようだから。
貴女が公爵のものになってもいいと思ったら身を委ねなさい」
「ママ…」
「1度断ったら、もうチャンスは来ないかもしれないわ。
公爵が他の女性と親しくなっていくのを見守るつもりなの?公爵だって男だし、出会いがあればコトを進めるわよ」
「…」
「チャンスを自ら蹴って後悔しないようになさい」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
孤児院へ行くときだけは安全のために変装をした。
クラスのみんなは最初は見慣れない姿に戸惑っていたがすぐ元に戻った。ありがたい。
時折ニコラ殿下の視線を感じる。
彼の側には騎士団長の子息はいなかった。
そのうち、殿下の浮気リストが公になり、相手の令嬢の婚約はほとんど破棄された。
ピット男爵令嬢は自主退学をした。
腹が膨れてきたのと、殿下の寵愛を失ったから。
他にも9人の令嬢が妊娠を理由に自主退学をした。殿下は一気に10人の子の父親になるみたいだ。
王太子殿下がお気の毒だ。
その10人の子には、よっぽど似ていない子が産まれない限り、継承権が発生する。
ある日殿下が数日学園を休んだそうだ。
どうやら、これ以上子孫を残せないよう手術をしたらしい。
そして10人も妃、側妃、妾として迎えられないし、選考も難しい。
恐らくニコラ殿下は平民になるだろうと公爵様は仰った。
今、伯爵家で祝いの晩餐会をしている。
公爵とハミエル様も来てくれた。
公爵様は横領についてと、堕胎薬から妊娠の事実を教えてくださっていた。
「リリアーヌ嬢はこれからどうするんだ」
「何も考えておりません。卒業と孤児院のことだけです」
「縁談が多く来ているらしいけど」
「そうみたいですね」
「公爵、私はこの際、娘は結婚しなくても構わないと思っております」
「私も同じ意見です。リリには長い間犠牲を強いてきたのです。女性にとって大事な時期だったのに。
好きな男でもできれば、身綺麗なら結婚もいいですが、特に現れなければ私が面倒を見ますのでかまいません。
可愛いリリなら大歓迎ですからね」
「兄様ったら」
「では、縁談は断るのだな」
「そうなります。
あの、公爵様。本当にドレスとワンピースをいただいてもよろしいのでしょうか」
「勿論だ。アルゴスがドレスを駄目にしたお詫びだ。それに君はデイジーに素敵なワンピースを贈ってくれただろう。
大喜びでその夜は眠れなかったらしい」
「そうなのですね。
2着とも大事に着ますわ。ありがとうございました」
公爵様達が帰る時間となったので見送りに出た。
すると公爵様が私の前に立った。
ポケットから小さな箱を取り出すと私に渡した。
「公爵様?」
「これはアルゴスが怪我をさせたお詫びだ」
「ドレスをいただきましたので」
「あれは弁償。これは怪我に対するお詫びの気持ちだ。
君のために作ったので受け取って欲しい」
「…はい。ありがとうございます」
「では、また会おう」
「リリアーヌ先生、おやすみなさい」
「ハミエル様、おやすみなさい」
部屋へ戻って箱を開けると普段使いの可愛らしいネックレスとイヤリングだった。
「まさか、あの方からこんな素敵なものをいただける日が来るとは…」
「リリアーヌ」
「ママ」
「話があるの」
「はい」
「それは?」
「公爵様が怪我をさせたお詫びだとだと仰って」
「良かったわね。ちゃんと身につけるのよ」
「…はい」
「リリアーヌ、貴女、デクスター公爵が好きなのね?」
「…」
「もしかして、子供の頃の茶会で、王子を見ていたのではなく、その後ろの公爵を見ていたのね」
「…」
「咎めているのではないわ。貴女の気持ちを大事にしたいの」
「一目惚れです。でも既婚者だと知ったので…すぐ婚約の話もありましたし」
「今も好きなのね」
「はい」
「妻になりたいほど?」
「私などがそんな…」
「貴女の気持ちだけを聞いているの。他のことはどうだっていいわ」
「…お側にいたいです」
「わかったわ。
これから、公爵からのどんな些細な誘いも受けなさい。お茶でもパーティーでもお泊まりでも」
「ママ?」
「贈り物は全て笑顔で受け取りなさい。どんな高価な物でも」
「でも…」
「殿方はドレスもネックレスも、相手の女性の喜ぶ顔を見て満足するものよ。
強請るわけではないのだから、受け取りなさい」
「はい」
「もし、閨への誘いがあったら、素直に受けなさい。
閨の中では恥ずかしいことも言葉にして伝えなさい。喜ばれるわよ。
ハミエル様がいらっしゃるから、跡継ぎの心配はないから子が欲しくて貴女を求めるわけではないと思うから、婚姻までは避妊しなさい。
公爵家のメイドに言うのが恥ずかしければ、公爵に会う日は先に飲んでおきなさい」
「相手になどされないわ」
「それはどうかしら。私にはそうは思えないわ。
いい?公爵が貴女に手を出すときは勇気がいるはずよ。身持ちのかたい方のようだから。
貴女が公爵のものになってもいいと思ったら身を委ねなさい」
「ママ…」
「1度断ったら、もうチャンスは来ないかもしれないわ。
公爵が他の女性と親しくなっていくのを見守るつもりなの?公爵だって男だし、出会いがあればコトを進めるわよ」
「…」
「チャンスを自ら蹴って後悔しないようになさい」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
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