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ルーナの父

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【 ルーナの父の視点 】

私には3人の息子と1人の娘がいる。

長男は騎士団へ。次男は次期侯爵として領地で学び、三男は婿養子に行った。

ヘイゼル侯爵家は幸せだった。

妻は領地で次男を支えていた。

ルーナと王都にいた。
何故ならルーナはサリフィス王太子の婚約者候補に選ばれたから。

ルーナやヘイゼル家が望んだ事ではない。
国王陛下が望んだことだった。

最終的に2人に絞られて、妃教育のために王城に泊まるようになった。

もう一人の令嬢はカトリーナ・ファフシー。伯爵家の令嬢だ。
彼女は可愛らしいことて有名で令息達の花だ。
私や陛下から見ればそれだけ。
愛妾としてならいいだろうが、何せ馬鹿だった。

主席卒業のルーナと勝負にならないはずなのに、書類選考で落ちた彼女が復活して いまだに残っているのは王太子の希望だ。



北の隣国と和平を結ぶため、国王陛下と一緒に北の国境へ向かう旅に出た。

『王妃もルーナを推している。ルーナに決まりだ』

だけどルーナは控えめな子だった。
そこが心配だった。
本当は王家に嫁がせたくない。
特にあの王太子には。
だが、陛下の希望だから断れなかった。

ルーナには嫌なら手を抜いて落ちていいと伝えたが、貴族の務めを果たしますと頑張ってしまった。



北の国境で隣国との締結を済ませた頃、城からの早馬が到着した。

『陛下?』

『ルーナ嬢が亡くなったらしい』

『は?』

『次期国王の証の指輪を盗んだ罪でサリフィスに断罪され、ヴォルカン将軍に嫁ぐよう王命書を出したようだ。

ヴォルカン領の手前で大型の熊に襲われて一行の半分が死んだと…その中にルーナ嬢が…』

手紙を奪い読んで怒りが込み上げた。

『陛下。サリフィス殿下に代理権を与えたのですか?』

『与えていない』

『あの指輪をルーナが盗んでも意味はありません。
それに肌身離さずつける物でしょう。可愛がられていた伯爵令嬢ならともかく、娘が盗めるチャンスなどありませんよ!』

『分かってる…急いで帰ろう』



帰路の馬車の中で、陛下は影と調査官を使って城内を徹底的に調べると約束してくださった。

王城に到着すると、ルーナの遺体を放置して帰ってきたと聞いて怒りに震えた。

置いてきた兵士の首を刎ねた。


ルーナの遺体を探しに行こうと旅支度をしにタウンハウスに寄った。

『父上!』

次男のアランが駆け寄った。

領地から来ているということは、訃報を知ったのだな。

『ルーナの遺体を探しに行く』

『落ち着いて聞いてください。ルーナは生きています』

『は?』

『ヴォルカン将軍から領地に手紙が届いたのです。
ルーナを見つけてヴォルカン城に運んだと』

『ルーナは!?』

『全身を打って、頭部に裂傷を負いましたが元気でした。
ヴォルカン将軍の妻のままにしてくれと言われました』

『あのヴォルカン将軍のか』

『はい。二度と王太子と伯爵令嬢に会いたくないそうです。
それと、冤罪だけは晴らしておいてくださいと言伝を預かりました』

『本当にヴォルカン将軍の妻でいいと言ったのだな?』

『はい。事故前とは違ってはっきり意思を口にしました』

『城内はルーナの死亡で話が進んでいる。
陛下にだけは知らせて、私はルーナの荷物を積んでヴォルカン城へ行ってくる。こっちを頼んだぞ』

私の机にはヴォルカン将軍からの手紙が置いてあった。
“ルーナ嬢は治療しました。ヴォルカン城でお預かりしております”

領地と王都の両方に知らせを送ってくれたのだな。

荷馬車2台にルーナの荷物と持参金を積んで、私兵とヴォルカン城に向かった。




南の砦 ヴォルカン城に到着すると将軍と副官、家令が出迎えてくれた。

「宰相閣下、ご無沙汰しております」

「ルーナを助けてくださり感謝いたします」

「ルーナ嬢の部屋へ案内いたします」


部屋に着くまでに、発見時の状態や、体の具合の説明を聞いた。

ヴォルカン将軍が見つけてくださらなかったら、血の匂いで獣を呼び寄せただろう。
感謝しかない。



コンコンコンコン

「ルーナ。宰相閣下が到着なさったぞ」

「どうぞ」

ドアを開けて中に進むとソファに座るルーナがいた。

「うわっ」

よく見ると、かなりでかい動物がルーナの膝の上に頭を乗せていた。

「お父様」

「そ、それは何だ」

「ピューマのキナコです」

「ピューマ!?」

「閣下、ルーナを散歩に出したら、野生のピューマが寄ってきてルーナに甘えたのです。
どうやら親とはぐれたのか、これでもまだ子供です。ミルクをやったら居付きまして、番猫になっています。

今は肉も少し与え始めました。もうすぐ大人の体に育ちきるらしいです」

「ルーナ。危ないだろう」

「驚きましたが、目が合うと困ってそうだったので、追い払おうとする兵士を止めたのです。

お風呂も入るんですよ。もうヴォルカン城のペットです」

幸せそうに笑うルーナを見て安心した。
婚約者候補に選ばれてから元気が無かったから。
医師が言うには後1ヶ月以内に完治の見込みらしい。


お茶を飲みながらルーナの意思を聞いた。

「ルーナ・ヴォルカンのままでいたいです。
オルポンス様はとても優しい方です。
ここには意地悪な人もいませんし、キナコもいます。
白紙に戻したら家出してオルポンス様に求婚します」

「将軍はどうですか?
突然 王太子に勝手に命じられて。
彼に代理権はありませんので簡単に白紙にできます」

「ルーナと宰相閣下が宜しければ、ルーナとこのまま生きていきたいと願っております。
彼女が居てくれると毎日が楽しく感じます」

「分かりました。婚儀はこちらで挙げますか?」

「お父様、式はやらなくていいです。
誓いだけ教会でサッとして、終わりにします。
もう入籍済みですし」

「ルーナ。ウエディングドレスを着たいと思わないのか?」

「全く思いません」

もしや、仮面を付けた将軍を気遣って?

「ルーナはドレスを作ろうと言っても嫌がるのです。締め付けたり重かったり動きにくい服は嫌だと言われてしまって、まだ注文できていません。
療養中は寝巻きにガウンでかまいませんが…。
治ったら採寸させて欲しいと頼み込んでいるところです」

「ルーナ。将軍の妻は身だしなみも大事だぞ」

「分かりました」

 
持ってきた荷物を見てルーナがガッカリしていた。

「ドレス…持ってきてしまったのですね」

「着なさい」



1週間滞在して、王都に戻った。

陛下が事件を調べている間に、私は婚姻祝いの品を選ぶことにした。




 
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