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レシピ本の完成
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多く集まった絵の中から三人採用した。
一人だと挿絵の枚数が多過ぎて何年もかかりそうだった。
しかも工程中は時を止められない。目に焼き付けるにしても一枚か二枚分だろう。
描き上げれば、続きの工程を見せて描いてもらう。
もちろん描き直しもあった。
一枚の紙に絵が複数あった場合の書き直しは悲惨だ。
そのため、文字を間違えることなく書ける人が重要だ。忙しい人は駄目だ。
落ち着いて、集中して間違うことなく書ける人。
「試食権をください!」
そう。悶絶の彼だった。貴族出身の四男坊。
城勤務になるまでは書写のバイトをしていたらしい。
彼は一度も間違えなかった。
だからピザを作って振る舞った。
「うんまっ!!」
「生地、捏ねさせちゃってごめんなさい。
焼いてもらってしまって」
「そのくらいやりますよ。
ララちゃんの手作りを独り占めですよ?
しかも味が違う!
パンみたいに膨らむのかと思ったら薄くて硬めなんですね」
オーブンレンジで焼いていたので、この世界の窯を扱えなかった。
「お腹を膨らますことを優先するならパンみたいに膨らますといいですね。
でもこれなら何種類か口にできますし、他の料理も楽しめます。
私はこちらの生地が好きです。もう少しパリッとできたら良いのですが」
そう。宅配ピザのように味をハーフにしてみた。片方はマルゲリータ。片方は肉と野菜の具にした。
「はい。自家製ジュースですよ」
「ララちゃん!」
水に蜂蜜を溶かしてレモンやオレンジを切って一日寝かせた。
他の料理人達の目が怖い。
でもみんな、試し書写で間違えたから仕方ない。
「これ、大人のジュースだ。皮の渋みも感じる」
「好き嫌いがあるかもと思ったのですが私はそっちの方が好きです」
「あ~、ララちゃんと結婚したい!」
「馬鹿!口に出しちゃ駄目だろう!辺境に飛ばされるぞ」
「書写の仕事があるうちは安泰ですよ」
その夜。
「求婚されたんだって?」
「……チガイマス」
「違わないよね?」
「あれは一家に一台というレベルです」
「ん?」
「家にあったら便利な道具という意味です。
好きか嫌いかじゃなくて新作を食べたいだけで言っているのです。本気にしてはいけません」
「彼だけがララの手作りの昼食を食べたんだって?飲み物まで」
誰だ?スパイは!
「ねぇ、そろそろ返事欲しいんだけど。
“結婚します”という返事」
「だって」
ずっと領地の屋敷にいたのに王子妃ですよ!?
「屋敷が王子宮に変わっただけだよ」
だけではないよね。
「里帰りも一緒にするよ?」
「里帰り」
「嫁入りにカーラを連れてきていいんだからね」
うっ……カーラ付き!
「城にはディオスもいるし」
「でもまだ早いです」
「よし、署名して!」
「何で持ち歩いているんですか」
「当然だよ。
婚約はして、婚姻は18歳まで待つよ」
「ん~!」
「ララが大好きだ」
「私もリュシアン様が好きです」
「ララ!」
ギュウギュウに抱きしめられた。
今日までリュシアン様はとても良く面倒をみてくれた。
度々お散歩にも、外食にも、平民の店にも連れて行ってくれた。
レシピ本も率先して尽力してくれた。
よく分かってる。
私は結婚契約書に署名した。
父の署名が無いと無効だけど。
「本当!?」
「 はい 」
「はぁ~、幸せだ~!」
その後、父が王都にやってきた。
何やらリュシアン殿下と話し合った後、仕上がったレシピ本を見て父は驚いていた。
「プルシアの分は?」
「ないです」
「金は出すから作ってくれ」
「時間が掛かります。絵描きと文字書きがやると言えば作れますが、挿絵が多い分、費用がかかりますよ。色付きですし」
最初お父様に出してもらおうとしたら、どうせ王宮で買い取るのだからと、最初から全部負担してくれたのだ。
「ちゃんと払うから作ってくれ」
絵描きも悶絶くんも大喜びだった。
絵描きは、少し報酬を減らしていいから完成品を食べたいとお願いされた。
婚約成立となりリュシアン様と兄様と私でプルシア領に婚約の挨拶をした。
母「ようこそプルシア邸へおいでくださいました」
「義母上、結婚に同意してくださり感謝します」
「でも、ララはやっていけるのかしら」
「日々、実績を作っていますから大丈夫です。カーラも上手くやっております」
「公爵夫人でさえ嫌がっていたのに王子妃が務まるかしら」
「プルシア家で素晴らしい教育が施されています。刺繍も編み物も料理も素晴らしい」
刺繍と編み物はララ、料理は私だからね。
「料理なんていつ覚えたのかしら」
やばっ
「お母様、今夜は一緒に寝たいです」
「もう、この子ったら。婚約したのに甘えん坊なんだから」
「ディオスはどうするの?そろそろ真剣に考えないと」
「実は、城外管理部を統括しているセクレタ伯爵家のご令嬢を考えています」
「求婚したの!?」
「いえ。
レシピ本の時に、慈善活動をしていたご令嬢と出会しまして、伯爵からどうかと打診がありました」
「どうするんだ」
「父上と母上に判断していただこうと思っています」
テーブルの上に釣書を置いた。
「調査をお願いします」
「分かった」
一人だと挿絵の枚数が多過ぎて何年もかかりそうだった。
しかも工程中は時を止められない。目に焼き付けるにしても一枚か二枚分だろう。
描き上げれば、続きの工程を見せて描いてもらう。
もちろん描き直しもあった。
一枚の紙に絵が複数あった場合の書き直しは悲惨だ。
そのため、文字を間違えることなく書ける人が重要だ。忙しい人は駄目だ。
落ち着いて、集中して間違うことなく書ける人。
「試食権をください!」
そう。悶絶の彼だった。貴族出身の四男坊。
城勤務になるまでは書写のバイトをしていたらしい。
彼は一度も間違えなかった。
だからピザを作って振る舞った。
「うんまっ!!」
「生地、捏ねさせちゃってごめんなさい。
焼いてもらってしまって」
「そのくらいやりますよ。
ララちゃんの手作りを独り占めですよ?
しかも味が違う!
パンみたいに膨らむのかと思ったら薄くて硬めなんですね」
オーブンレンジで焼いていたので、この世界の窯を扱えなかった。
「お腹を膨らますことを優先するならパンみたいに膨らますといいですね。
でもこれなら何種類か口にできますし、他の料理も楽しめます。
私はこちらの生地が好きです。もう少しパリッとできたら良いのですが」
そう。宅配ピザのように味をハーフにしてみた。片方はマルゲリータ。片方は肉と野菜の具にした。
「はい。自家製ジュースですよ」
「ララちゃん!」
水に蜂蜜を溶かしてレモンやオレンジを切って一日寝かせた。
他の料理人達の目が怖い。
でもみんな、試し書写で間違えたから仕方ない。
「これ、大人のジュースだ。皮の渋みも感じる」
「好き嫌いがあるかもと思ったのですが私はそっちの方が好きです」
「あ~、ララちゃんと結婚したい!」
「馬鹿!口に出しちゃ駄目だろう!辺境に飛ばされるぞ」
「書写の仕事があるうちは安泰ですよ」
その夜。
「求婚されたんだって?」
「……チガイマス」
「違わないよね?」
「あれは一家に一台というレベルです」
「ん?」
「家にあったら便利な道具という意味です。
好きか嫌いかじゃなくて新作を食べたいだけで言っているのです。本気にしてはいけません」
「彼だけがララの手作りの昼食を食べたんだって?飲み物まで」
誰だ?スパイは!
「ねぇ、そろそろ返事欲しいんだけど。
“結婚します”という返事」
「だって」
ずっと領地の屋敷にいたのに王子妃ですよ!?
「屋敷が王子宮に変わっただけだよ」
だけではないよね。
「里帰りも一緒にするよ?」
「里帰り」
「嫁入りにカーラを連れてきていいんだからね」
うっ……カーラ付き!
「城にはディオスもいるし」
「でもまだ早いです」
「よし、署名して!」
「何で持ち歩いているんですか」
「当然だよ。
婚約はして、婚姻は18歳まで待つよ」
「ん~!」
「ララが大好きだ」
「私もリュシアン様が好きです」
「ララ!」
ギュウギュウに抱きしめられた。
今日までリュシアン様はとても良く面倒をみてくれた。
度々お散歩にも、外食にも、平民の店にも連れて行ってくれた。
レシピ本も率先して尽力してくれた。
よく分かってる。
私は結婚契約書に署名した。
父の署名が無いと無効だけど。
「本当!?」
「 はい 」
「はぁ~、幸せだ~!」
その後、父が王都にやってきた。
何やらリュシアン殿下と話し合った後、仕上がったレシピ本を見て父は驚いていた。
「プルシアの分は?」
「ないです」
「金は出すから作ってくれ」
「時間が掛かります。絵描きと文字書きがやると言えば作れますが、挿絵が多い分、費用がかかりますよ。色付きですし」
最初お父様に出してもらおうとしたら、どうせ王宮で買い取るのだからと、最初から全部負担してくれたのだ。
「ちゃんと払うから作ってくれ」
絵描きも悶絶くんも大喜びだった。
絵描きは、少し報酬を減らしていいから完成品を食べたいとお願いされた。
婚約成立となりリュシアン様と兄様と私でプルシア領に婚約の挨拶をした。
母「ようこそプルシア邸へおいでくださいました」
「義母上、結婚に同意してくださり感謝します」
「でも、ララはやっていけるのかしら」
「日々、実績を作っていますから大丈夫です。カーラも上手くやっております」
「公爵夫人でさえ嫌がっていたのに王子妃が務まるかしら」
「プルシア家で素晴らしい教育が施されています。刺繍も編み物も料理も素晴らしい」
刺繍と編み物はララ、料理は私だからね。
「料理なんていつ覚えたのかしら」
やばっ
「お母様、今夜は一緒に寝たいです」
「もう、この子ったら。婚約したのに甘えん坊なんだから」
「ディオスはどうするの?そろそろ真剣に考えないと」
「実は、城外管理部を統括しているセクレタ伯爵家のご令嬢を考えています」
「求婚したの!?」
「いえ。
レシピ本の時に、慈善活動をしていたご令嬢と出会しまして、伯爵からどうかと打診がありました」
「どうするんだ」
「父上と母上に判断していただこうと思っています」
テーブルの上に釣書を置いた。
「調査をお願いします」
「分かった」
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